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生成AIや機械学習を活用した業務改革が進むなか、「うちの会社でもAIを導入するらしい」という声を耳にする法務部員も増えてきました。
しかし、技術部門やDX推進室が主導することが多く、法務が関与するタイミングを逃してしまうケースも……。
本記事では、「AI活用の社内プロジェクトに、法務がいつ・どこで・何をチェックすべきか?」という実務的な論点を整理し、リスクレビュー体制の作り方を解説します。
1. AI導入プロセスの全体像
AI導入に関する社内プロセスはおおむね以下のように進みます。
- ①企画・検討:課題設定とソリューション選定
- ②PoC・検証:ツールの評価と試験導入
- ③本番導入:契約締結、社内展開
- ④運用フェーズ:利用状況の管理と改善
- ⑤終了・更新:契約の終了または更新
この各フェーズで、法務が関与すべきタイミングを明確にしておくことが重要です。
2. 法務が関与すべき主要ポイント
法務部門が「全部見ます」は現実的ではありません。以下のような重点領域を定めましょう。
■ 情報リスク
- 機密情報・個人情報がAIツールに入力される可能性(Promptリスク)
- 外部AIツールのデータ保持・再学習・サーバー所在地の確認
■ 契約リスク
- 提供元との契約:ライセンス、責任、免責、利用制限
- 業務委託契約:AI活用有無の確認と再委託制限
- 出力データの知的財産権の扱い
■ コンプライアンス/倫理リスク
- 偏見・差別・誤情報など生成AI特有の出力リスク
- 説明責任や判断プロセスの透明性
- 社内の利用ルール遵守(AIガイドライン・規程)
3. リスクレビュー体制の作り方
以下のような体制があると、リスク漏れのない運用が可能になります。
✔ チェックリスト作成
AI導入の相談があったら確認すべき事項を定型フォーマットで整理します。
- どのツールを使うか?
- どこにデータが送信されるか?
- 出力結果は人の確認を経て使われるか?
✔ 法務とDX部門の連携窓口を設置
「AI活用の相談は必ず法務も含めて」というルールづくりを。初期段階から法務が入る文化が重要です。
✔ 利用規程・誓約書の整備
社内ユーザーがAIを使う際の行動ルール(Prompt禁止事項など)を明文化しましょう。
✔ モニタリング・運用監査の仕組み
導入後も「放置しない」体制を整えましょう。プロンプト履歴・ログ保存の仕組み、定期的な見直し会議なども有効です。
4. 法務主導でやってはいけないこと
- 技術の内容に無理に踏み込む(開発責任まで背負わない)
- 一律禁止で終わらせる(導入が遅れると現場と対立)
- 契約書だけで満足してしまう(運用フェーズのチェックが漏れる)
5. まとめ:法務の役割は“実行可能なルールづくり”
AI導入における法務の本質的な役割は、「リスクの見える化」と「判断のための材料提供」です。
技術や業務を“止める”のではなく、安心して“進められる”ように、共に考える伴走者であることが求められています。