法務部員が本音で語る:ChatGPTで助かった業務・困った業務
~AI導入1年半、現場で見えてきたリアルな実情~
こんにちは。企業法務歴10年以上の筆者です。
ChatGPTの登場から2年。法務の現場でもAI活用が本格化してきましたが、実際に使ってみると、
- 「これは本当に助かる!」という業務
- 「いや、これは使えない…」と感じる業務
がはっきり分かれるようになってきました。
今回は、法務部員のリアルな使用体験をもとに、「ChatGPTが役立った業務」と「意外と困った業務」を本音でご紹介します。
📈 想像以上に助かった業務TOP5
🥇 1位:社内説明資料の作成
✔️ 助かった理由
- 複雑な法律用語をやさしい言葉に置き換えてくれる
- 「経営視点」での構成案を自動で考えてくれる
- PowerPoint用の骨子まで出力してくれる
📌 活用プロンプト例:
2025年4月施行の改正育児介護休業法について、役員会向けの説明資料構成案を作成してください。経営への影響度・対応コスト・スケジュールの観点でお願いします。
これだけで、資料作成の「たたき台」が爆速で完成します。
🥈 2位:英文契約書の初期理解
✔️ 助かった理由
- 条文の趣旨をかみ砕いて説明してくれる
- 日本法との違いを指摘してくれる
- リスクの高い表現を警告してくれる
“Party A shall indemnify and hold harmless Party B…” この英文条項について、日本語訳と法的リスクを解説してください。
弁護士相談の前段階としての「理解の地ならし」に最適です。
🥉 3位:契約書の“やんわり修正案”作成
✔️ 助かった理由
- 法的に妥当かつ、柔らかい表現の文案を複数出してくれる
- 相手方への配慮もある
「以下の条文を、相手にとって受け入れやすい形で修正してください:『甲の責任により損害が生じた場合、甲は乙に一切の損害を賠償する。』」
「ダメです」だけでは交渉になりません。修正案まで提示できるのは大きな強み。
4位:社内問い合わせへの一次回答
- 「この契約、印紙いくら?」
- 「取締役変更、何の書類出す?」
- 「このプレスリリース、問題ある?」
定型的な質問には、ChatGPTでたたき台を出して人間が仕上げる流れが定着しつつあります。
5位:議事録・会議メモの清書
- 箇条書きメモをきれいな文章に整えてくれる
- 重要なポイントを自動で強調してくれる
会議中は内容理解に集中し、記録作業はChatGPTに任せる。そんな分業が定着してきました。
😅 意外と困った業務TOP5
💀 1位:複雑な法的判断
- 自信満々で間違った解釈を提示することがある
- 「断定」が危ない
- 最新の法改正に未対応なことも
ChatGPTは「知らない」とは言いません。だからこそ、盲信は危険です。
💀 2位:業界固有の商慣行
- 「一般論」としては正しいが、実務に噛み合わない
- 業界の暗黙知が反映されない
💀 3位:社内政治・人間関係が絡む案件
- 組織内の力関係を理解していない
- 「誰が調整するか」という視点がない
💀 4位:緊急案件
- 情報収集に時間がかかる
- 「結論はこれ」とは出してくれない
💀 5位:機密性の高い案件
本当はChatGPTを使いたい。でも機密情報は入力できない──このジレンマ。
🎯 ChatGPTを活用するためのアドバイス
✅ 上手な使い方のコツ
- 「たたき台」として割り切る(6割の精度でOK)
- 複数の視点で質問する(比較して精度UP)
- 自社ルールと組み合わせる(ローカル事情を補完)
⚠️ 注意すべきポイント
- 法的判断は最終的に人間が行う
- 機密情報は絶対に入力しない
- 最新情報は別途確認する
ChatGPTは、優秀な“新人アシスタント”のような存在。
任せるべきことと、自分で判断すべきことを切り分けることが、AI時代の法務の第一歩です。
※この記事は2025年6月時点の情報に基づいています。AI技術の進化により、今後内容が変わる可能性があります。