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近年、訴訟対応業務においても生成AIの活用が進んでいます。
契約審査や社内文書の作成だけでなく、訴訟リスクの把握、主張整理、証拠の洗い出しなど、これまで弁護士や法務部員が時間をかけて行っていた作業にもAIが入り込んできています。
1. 実務で役立つAI活用シーン
- 想定問答の作成:想定される反論や裁判所の着眼点を整理する際に、AIに助言させることで視野を広げる。
- 主張・反論の骨子整理:事案の概要や時系列を入力し、論点ベースのアウトラインを作らせる。
- 証拠リストの初期案出し:メールや契約書、会議メモなどの記録から、どの資料がどの主張に資するかをAIに振ってみる。
- 裁判例や法的論点のリサーチ支援:AIが過去の類似事案や重要判決の概要を要約することで、スピーディな初期調査が可能に。
2. 利用上の注意点
とはいえ、訴訟対応は一歩間違えば企業の命運に関わる分野。生成AIの活用には慎重さが求められます。
- ファクトの正確性に注意:AIが出力する内容は“それっぽい”文章であっても事実とは限りません。特に証拠や時系列の正確性は人が必ずチェックを。
- 社外秘情報の扱い:AIに入力する際は、守秘義務の観点から事案の抽象化や加工が必須。モデル外流出のリスクも踏まえましょう。
- 弁護士との連携を前提に:AIは弁護士を代替するものではありません。あくまで準備・補助ツールとして活用し、重要判断は必ず専門家に委ねるべきです。
3. 訴訟対応におけるAI活用の「限界」
AIは過去の情報を元に予測・出力を行うツールであり、「新しい理論を展開する」「事実認定における微妙なニュアンスを読み取る」といった能力はありません。
また、現時点では裁判官の傾向分析なども精度に限界があり、あくまで補助的な参考情報にとどめるべきでしょう。
4. 法務部として押さえておきたい3つのスタンス
- ① 調査・構想フェーズでの積極的活用
「考えるための叩き台」としてのAI活用に割り切ることで、業務のスピードと精度を高められます。 - ② 社内報告書や稟議の草案作成に活用
専門的な文章の初稿をAIに作らせ、人間がレビュー・修正する流れが有効です。 - ③ 社外対応・提出書面は必ず人の手で精査
最終成果物は必ず人が責任を持つ、という原則は忘れずに。
5. 弁護士との「共通言語」を持つ相棒として
訴訟対応では、顧問弁護士や代理人弁護士が作成する準備書面を、社内法務がレビュー・整理する場面も少なくありません。
このとき生成AIを活用することで、「論点の洗い出し」や「論理構成のチェック」「主張・反論の整理」など、弁護士との会話の土台づくりに大いに役立ちます。
例えば、AIに準備書面の草案を読み込ませ、要点の箇条書き化や反論されそうなポイントの指摘を求めることで、弁護士とのやり取りがよりスムーズに進みます。
あくまで法的判断は弁護士に委ねつつも、「読み解く・問い直す・理解を深める」パートナーとして、AIは心強い“相棒”になるでしょう。
まとめ:
訴訟対応においても、生成AIは「第二のブレスト相手」として有効です。ただし、あくまで補助ツールであることを忘れず、最後は人間が責任を持って判断するという原則を守ることが、AI活用の鍵です。