「うちの会社は大丈夫?」「何から手をつければいい?」——本記事では、改正内容と企業が対応すべきステップを徹底解説します。
2027年労働基準法改正の3本柱
2025年1月に公表された「労働基準関係法制研究会報告書」で提言された、改正の3つの柱を押さえましょう。
勤務間インターバル11時間の義務化
終業から翌始業まで11時間以上の休息確保が法的義務に。努力義務から大幅格上げ。
連続勤務13日超の禁止
14日以上の連続勤務を禁止。4週4休の変形制でも、連続勤務は最大13日まで。
法定休日の事前指定義務
週1日の法定休日を就業規則で事前に特定。絶対的必要記載事項に追加。
※出典:厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」(2025年1月)
勤務間インターバルとは?
「勤務間インターバル」とは、終業時刻から翌日の始業時刻までの休息時間のことです。
- インターバルは「努力義務」
- 導入企業は約6%にとどまる
- 法的拘束力なし
- 11時間以上の確保が法的義務
- 違反には罰則適用の見込み
- 労働基準法に明記
※導入企業6%:厚生労働省「就労条件総合調査」(2024年)より
22時に退勤 → 翌日の始業は9時以降(22時+11時間=翌9時)
23時まで残業 → 翌日の始業を10時に繰り下げが必要
報告書では、災害対応や緊急の呼び出しなど、やむを得ない場合の特例ルールも検討されています。ただし、特例を適用した場合でも、代償休息の付与などの措置が求められる見込みです。
連続勤務の制限とは?
- 週1日の休日付与が原則
- 4週4休の変形制も可
- 理論上、最大24連勤も合法
- 14日以上の連続勤務を禁止
- 変形制でも13日が上限
- 原則として例外なく適用見込み
❌ 避けるべき例:早番(6:00〜15:00)→ 遅番(15:00〜24:00)の連続配置
→ インターバルが6時間しか確保できない
✅ 推奨パターン:遅番 → 休み → 早番、または遅番 → 遅番 → 早番
→ 間に休日を挟むか、同じシフト帯を連続させる
なぜ今、法改正が行われるのか?
過労死・過労自殺の深刻化
精神障害の労災認定件数は年々増加傾向にあります。長時間労働と睡眠不足が、メンタルヘルス不調の大きな要因です。
EU諸国との格差
EUでは1993年から「24時間につき最低連続11時間の休息」が義務化されています。日本は約30年遅れで、ようやく国際基準に追いつきます。
働き方改革の総仕上げ
2019年の「働き方改革関連法」で残業時間の上限規制が導入されましたが、インターバルは努力義務でした。今回の改正で、「休息時間の確保」が法的義務として完成します。
企業への影響度チェック
自社がどの程度影響を受けるか、チェックしてみましょう。
- 深夜営業・24時間営業がある 影響:高
- 交替制・シフト制を採用している 影響:高
- 繁忙期に連続勤務が発生する 影響:高
- 法定休日を明確に定めていない 要改定
- 現在のインターバル実績が11時間未満のケースがある 要対応
- 従業員の退勤〜出社時間を正確に把握・集計できていない 要対応
人事担当者が今すぐ始めるべき5つのステップ
2027年4月の施行まで、約1年半。計画的に準備を進めましょう。
現状分析
自社の勤怠データを分析し、現状を把握します。
- インターバル11時間未満の発生件数・発生率
- 連続勤務7日以上の発生件数
- 部門別・職種別の影響度
就業規則の改定
改定が必要な主な条項:
- 勤務間インターバルに関する条項(新設)
- 連続勤務の制限に関する条項(新設)
- 法定休日の特定に関する条項(改定)
- 適用除外・特例に関する条項(新設)
シフト・勤務表の見直し
シフト制・交替制の企業は、勤務パターンの見直しが必要です。
- インターバル11時間を確保できるシフトパターン
- 連続勤務が13日を超えないローテーション
- 繁忙期の人員配置
勤怠システムの改修
勤怠管理システムに追加すべき機能:
- インターバル11時間未満のアラート
- 連続勤務日数のカウント・警告
- 法定休日の管理機能
社内周知・研修
全従業員への周知と、管理職向け研修を実施します。
- 改正法の概要と罰則
- 管理職の責任(使用者責任)
- 具体的な運用ルール
対応しない場合のリスク
後回しにすると、以下のリスクがあります。
罰則の適用
6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性
是正勧告・企業名公表
悪質な場合は企業名が公表され、採用・取引に悪影響
損害賠償請求
健康被害が発生した場合、安全配慮義務違反で訴訟リスク
採用競争力の低下
働き方改革対応が遅れた企業は求職者から敬遠される
よくある質問
📝 まとめ
改正の3本柱
- 勤務間インターバル11時間の義務化
- 連続勤務13日超の禁止
- 法定休日の事前指定義務
対応ステップ
- 現状分析(勤怠データの分析)
- 就業規則の改定
- シフト・勤務表の見直し
- 勤怠システムの改修
- 社内周知・研修
「何から手をつければいいかわからない」方は、まず現状分析から始めてみてください。
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