再エネ業界にいると、つくづく思うのが「土地・行政・法務の三位一体で初めてプロジェクトは動き出す」ということ。
まずは土地の確保。再エネ事業、それもメガソーラーや風力発電のような大規模プロジェクトでは、広大な敷地が必要です。地権者は1人では済まず、10人、20人、それ以上も珍しくありません。
この地権者交渉、通常は専門の「取り纏め業者」が担ってくれるとはいえ、成果物である交渉記録を見れば一目瞭然。粘り強い交渉と信頼関係の構築がすべて。年配の地権者に丁寧に説明を重ね、疑問や不安を解消して、ようやく印鑑をいただける世界です。
しかも、ただ土地があればいいというわけではなく、工事車両が進入できるかどうかまで確認が必要です。大型トレーラーが通行可能な道路幅があるか、近隣住民への影響はどうか、造成の必要があるか——実務はまさに地形と生活の読み解きです。
さらに、対象地が農地であれば「農地法」の壁があります。地目変更、農転許可、非農地証明……所管の農業委員会との協議は一筋縄ではいきません。地域によって対応温度感が違うのも悩ましいところ。
こうした準備を経て、ようやく法務の出番。法務DD(デューデリジェンス)では、地役権の設定状況、過去の契約履歴、担保設定の有無、関係者間の契約整合性、行政許認可など、確認すべきポイントは山積みです。
関与してくださる弁護士の先生方も、「これほど確認項目が多い案件は珍しい」と驚かれることもしばしば。それだけ、再エネは土地・行政・法務が複雑に絡み合った業界だということです。
でも、だからこそ、運転開始の日の達成感はひとしお。見えない努力の積み重ねが、目に見える「電力」となって社会に届く。そんな仕事に携われることに、今日もちょっとだけ誇りを持っています。