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「押印後に誤字に気づいた夜」の続編です。前回記事はこちら:
▶ 押印後に誤字に気づいた夜
法務部の”うっかり”をAIが救う?
ChatGPTチェックの落とし穴と使いこなし術
「押印後に誤字に気づいた夜」の続編です。前回記事はこちら:
▶ 押印後に誤字に気づいた夜
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🧠 ChatGPTチェックで見落とした実話
早い段階でAIチェックを入れるようになった
ChatGPTが登場してから、契約書作成のドラフト段階でAIに目を通してもらうようになりました。
「この契約書案に問題はありませんか?」と聞けば、AIが文面全体をスキャンして、不自然な箇所を指摘してくれる。もはや誤字脱字の心配もない——そう思っていました。
ある業務委託契約での”見落とし”
ChatGPTにも中間チェックしてもらい、「特に問題は見当たりません」という回答。そのまま社内確認、押印・送付まで完了。
ところが翌日、相手方からの丁寧なメール。
契約書の第12条の『甲は乙に対して』の主語が逆になっているようですが…
……え?
慌てて確認すると、確かに”甲乙”を取り違えた条文が。委託者が受託者の義務を負う、まさかの逆転でした。
🤖 なぜAIは見抜けなかったのか?
再確認したら、ちゃんと指摘された
同じ契約書を、今度は「甲が委託者、乙が受託者です。この前提で矛盾はありませんか?」と具体的に聞いてみました。
すると今度は、
「第12条で甲(委託者)が乙(受託者)の業務を代行する内容になっており、通常の業務委託契約とは逆の関係になっています」
と、きちんと問題点を指摘してくれました。
見えてきたAIの”クセ”
- 断定調だけど大雑把:「問題なし」と言われても、実は細かく読んでいない。
- 具体的な指示がないと本気を出さない:「甲乙の整合性を見て」と言えばチェックできる。
- 法令知識は”おぼろげ”:「改正民法第◯条〜」と間違うことも(最近は改善)。
- こちらが教えると「確かにそうですね」:まるで新人部下にフィードバックするような感覚。
✅ ChatGPTへの依頼、こう変えました
NGな聞き方
この契約書をチェックして
効果的な聞き方(今の私の定番)
この契約書について、以下の観点で具体的にチェックしてください:
1. 甲乙の権利義務関係の整合性
2. 条項間の論理的矛盾
3. 法律用語の正確性
4. 当事者の立場に応じた適切な義務配分
見つかった問題は具体的に指摘してください。
さらに、AIチェックの後は必ず人の目で最終確認。これが大原則です。
📝 まとめ:AIは「やる気のない有能な部下」
生成AIは、うまく使えば頼れる相棒になります。ただし、丸投げすると”とりあえず処理”で返されてしまう。
法務に求められるスキルは、契約書の読解力だけではなく、AIをマネジメントする力へと進化しているのかもしれません。
📌 本記事の要点まとめ
- AIは誤字脱字には強いが、文脈理解には具体的指示が必須
- 「甲乙逆転」などは、構造的な誤りとしてAIもスルーしがち
- 良いプロンプトが、AIの力を引き出す鍵
- 最終チェックは人間が責任を持って行う
『企業法務1年目の教科書 契約書作成・レビューの実務』(幡野直人 著)
契約書レビューの流れ・コメントの書き方など、現場で役立つ基本がこの一冊に。