AI時代の法務部──これからの役割と、新任法務が最初にやるべきこと

導入:AIが定型業務を代替する今、法務の主戦場は「設計・翻訳・調整」へと移行しています。本稿は新任法務や法務部の実務担当者向けに、最初に押さえるべき観点と実務で使えるAI活用例を整理します。

法務部はこれからどう変わるのか?

AIが定型業務を代替する今、法務の主戦場は「設計・翻訳・調整」へとシフトしています。

1. 「契約書を読む人」から「仕組みを整える人」へ

契約書の一次チェックやリスク抽出はAIが高速化します。代わりに法務は契約プロセス全体の設計やリスク分担のルール作りに時間を割く必要があります。関連して、最新のAI規制や企業の対応事例については当サイトの解説「2025年AI新法施行|法務部が今すぐ対応すべき3つのチェックポイント」を参照してください(社内ガイドライン整備の実例あり)。(AI新法対応ガイド)

従来の法務

  • 契約書の条文チェック
  • 個別案件のリスク判定
  • 定型的な法的問題への対応

これからの法務

  • 契約プロセス全体の構築・改善
  • リスクの予見・分担をビジネス目線で調整
  • 経営判断の土台となる「ルール」と「仕組み」を整備

2. 「調整力」と「翻訳力」が価値になる

単に法律を知っているだけでなく、ビジネスインパクトに翻訳できる能力が重要です。AIツールの種類や法務適用例については当サイトの技術比較記事や「思考型法務」の議論が参考になります。(思考 vs 作業の記事)

新任法務がまず取り組むべき3つのこと

1. AIが使える業務領域を見つける

注意:AI利用は必ず社内の情報セキュリティポリシー・ガイドラインに従ってください。
  • 契約書ドラフト作成の補助(機密情報は除く)
  • 法改正情報の要約・整理
  • 社内研修資料の下書き作成

ポイント:「任せられる作業」と「人がやるべき判断」を明確に線引きすること。

2. 自社の「文脈」を学ぶ

過去のトラブル、意思決定スタイル、重視する会社価値(信用・スピード等)を把握することが重要です。先輩や営業に同行して現場の空気を掴みましょう。

3. 「契約を見る」より「全体を見る」

起案・承認・署名・保管までのプロセス整備や、契約管理システム連携を優先的に改善すると、現場の遅延やリスクが減ります。

実例:署名権限者の不在で締結が1週間遅延。プロセス定義で解消。

AI活用の具体例:法務での実践

📋 契約書レビュー支援

  • 入力: 契約ドラフト(個人情報・機密情報は除外)
  • 出力: 一般的なリスクポイントの指摘
  • 人間の仕事: 自社固有リスク判定と交渉戦略の決定

📝 社内規程の下書き

  • 入力:「テレワーク規程を作りたい。従業員50名、IT企業」
  • 出力: 規程のたたき台
  • 人間の仕事: 実情に合わせた調整と法的精査

📚 法改正情報の整理

  • 入力: 官報や省庁の告知文
  • 出力: ポイントを整理した要約
  • 人間の仕事: 自社影響度判定と対応策立案

採用や評価の観点でもAIスキルの重要性が高まっています(参考:法務採用動向記事)。(採用動向)

おわりに:AI時代の法務部は「翻訳者」から「設計者」へ

AIは単なる効率化ツールではなく、法務の仕事の「質」を変える機会です。若手法務はまず全体を俯瞰し、仕組みづくりとビジネス視点の翻訳力を磨いてください。

※注意:AI活用は社内ポリシーに従い、機密情報の取り扱いに留意してください。

本記事は法務実務の参考を目的としています。最終的な法的判断は弁護士等の専門家にご確認ください。