この記事でわかること

  • 多段階プロンプト設計とは何か──単発指示との違いと、法務で有効な理由
  • 効く業務・向かない業務──契約レビュー、法改正分析、M&A・法務DDなどの適用マップ
  • 基本テンプレート──すぐ使える3段階〜5段階の設計型
  • 失敗パターンと再設計手順──よくある5つの落とし穴と具体的な改善法
  • 組織導入の進め方──入力統制・社内標準化・評価設計まで
前提:AIの出力はあくまで検討材料です。法的判断と最終責任は必ず人間が担います。機密情報の取扱い、ハルシネーション(AIが事実と異なる内容をもっともらしく出力する現象)への警戒は常に必要です。
補足: 法務部や総務部の作業は、 この無料ツールを使うと便利に処理できます (一次整理・マスキング・論点整理など)

対象読者と、この手法が向かない場面

対象読者

  • 企業法務部門で生成AIを業務に活用したい方
  • ChatGPT / Claude / Gemini で契約レビューや法改正対応を効率化したい方
  • プロンプト設計を社内で標準化・教育したい管理者
  • 一人法務・少人数法務でAIを一次整理の補助ツールとして活用したい方

この手法が向かない場面

  • 一次資料の確認を省いて外部発信する業務
  • 弁護士・専門家の判断が必須の高リスク案件の「代替」
  • 機密情報をそのまま外部AIへ入力する運用
  • 事実確認だけで完結する単純問い合わせ

第1章:法務で多段階プロンプト設計が必要な理由

1.1 単発プロンプトの限界

「この契約書をレビューしてください」──このような一文だけの指示でも、最新の生成AIはそれなりの回答を返します。しかし法務実務で必要なのは「それなりの答え」ではなく、再現性・監査可能性・出力統制が担保された成果物です。

単発プロンプトでは、どの観点から分析したのか、何を前提としたのかが不透明になり、担当者ごとに出力品質がばらつきます。

1.2 多段階設計で何が変わるか

多段階プロンプト設計とは、一つの法務タスクを複数のステップに分解し、段階ごとにAIへ指示を出して中間成果物を確認・修正しながら進める手法です。法務の論理構造(事実認定→法的論点の抽出→リスク評価→修正提案→エグゼクティブサマリー)と相性がよく、各段階で人間がレビューを挟めるため、ハルシネーションの被害を最小化できます。

単発プロンプト 一括指示 一括出力(検証困難) 多段階プロンプト 事実整理 論点抽出 リスク分類 修正文案 サマリー ▲ 人間確認 ▲ 人間確認 ▲ 人間確認 ▲ 人間確認

1.3 法務特有の適合性

法務業務は本質的に段階的な思考プロセスで構成されています。事実の確認、法令・判例の適用、リスクの評価、そして具体的な対処案の策定。この流れをAIへの指示設計にそのまま反映できる点が、多段階プロンプト設計と法務の相性が良い最大の理由です。

2026年時点の実務動向:「プロンプトの書き方」だけでなく、モデル選定・評価設計(Evals=AI出力の正確性・再現性・実務有用性を検証する仕組み)・ナレッジ投入・ツール連携を含めた運用全体で捉える流れが主流です。本記事はプロンプト設計を軸にしつつ、評価・社内標準化まで含めて解説します。

1.4 有効な業務と段階数の目安

業務タイプ 推奨段階数 主な用途
契約書レビュー(定型) 3段階 事実整理→論点抽出→修正案
契約書レビュー(複雑・大型) 5段階 +リスク分類+交渉戦略
法改正影響分析 4段階 改正要点→自社影響→対応策→周知案
M&A・法務DD 5〜7段階 対象整理→論点網羅→リスク評価→報告書
コンプライアンス体制構築 4〜6段階 現状診断→Gap分析→規程案→研修設計
社内FAQ・説明資料 2〜3段階 要点整理→文面生成→トーン調整

関連記事:多段階プロンプト設計法とは何か? “思考補助AI”時代の新スタンダード

第2章:基本テンプレート──まず使える3段階・5段階型

まず、多くの法務タスクに応用できる基本型を2つ紹介します。細かい理論は後章で解説しますので、まずはこの型をコピーして試してみてください。

2.1 基本3段階型(定型業務向け)

テンプレート:基本3段階型 【第1段階:事実と前提の整理】 以下の契約書(または法令・社内文書)について、 当事者、契約類型、対象業務、契約期間、準拠法を整理してください。 当社の立場は[委託者/受託者/売主/買主]です。 — (ここに契約書テキストを貼付) — 【第2段階:論点の抽出とリスク分類】 第1段階の整理を踏まえ、以下の観点でリスクを3段階(高・中・低)に分類してください。 観点:損害賠償の上限、知的財産権の帰属、秘密保持義務の範囲、 解除条件、競業避止、反社条項の有無、[業界固有の観点]。 【第3段階:修正提案とサマリー】 高リスク・中リスクの各項目について、 (a) 当社に有利な修正案、(b) 交渉上の落としどころ案を提示し、 最後に経営層向け1枚サマリー(A4・300字以内)を作成してください。

2.2 基本5段階型(複雑案件向け)

テンプレート:基本5段階型 【第1段階】事実整理:当事者・取引構造・背景事情を整理 【第2段階】法的論点の網羅的抽出:MECEに論点を洗い出し 【第3段階】リスク評価:各論点を「発生可能性×影響度」で分類 【第4段階】自己検証:第3段階の結論に対し、相手方の立場から       反論を試みて盲点がないか確認 【第5段階】最終成果物:修正案+交渉戦略+経営向けサマリー
ポイント:第4段階の「自己検証」──AIに自身の回答を相手方の視点から批判させるステップです。法務が最も懸念するハルシネーション対策として有効で、盲点の洗い出しに役立ちます。詳細は上級編(第5章)で解説します。

より体系的なプロンプト設計を実務で使いたい場合は、法務AIプロンプト集100選(全10カテゴリ・100本収録)もご活用ください。契約レビュー、法改正対応、コンプライアンスなど業務別に設計済みのプロンプトを収録しています。

第3章:初級編──法務プロンプトの基本構造

3.1 CLEAR原則──法務プロンプト設計の5要素

本記事では、法務実務向けのプロンプト設計要素を以下の5つに整理し、「CLEAR原則」と呼びます(本記事独自の整理です)。

要素 意味 記載例
Context 前提・背景 当社は製造業。発注者として業務委託契約を締結予定
Legal 適用法令・判例 民法、下請法、フリーランス新法を考慮
Exact 出力形式・精度 リスクを高・中・低の3段階で分類し表形式で出力
Action 期待する行動 修正条項案を3パターン提示
Restriction 制約・禁止事項 海外法令には触れない。固有名詞は匿名化済

3.2 頻出業務別の初級プロンプト

契約書レビュー(初級)

プロンプト例:NDAレビュー 【背景】当社(情報開示側)が取引先と締結予定のNDAです。 【指示】以下の観点でリスクを指摘し、修正案を提示してください。 1. 秘密情報の定義が広すぎないか 2. 残存義務の期間は適切か 3. 返還・破棄の手続きが明確か 4. 適用除外の範囲は当社に不利でないか 【出力形式】観点ごとに「現状条項→リスク評価→修正提案」の3列表。 【制約】日本法に基づく分析のみ。 — (NDA全文を貼付)

NDAレビューの詳細チェックリストはNDAチェックリスト:目的限定・残存義務・不開示情報を実例で解説もご参照ください。

法改正対応(初級)

プロンプト例:法改正の社内周知 【背景】2026年1月施行の中小受託取引適正化法(取適法)について 社内向け周知資料を作成します。 【指示】以下の3点を整理してください。 1. 改正の概要(主な変更点3〜5項目) 2. 当社の業務に影響する項目 3. 部門別の対応アクション(調達・法務・経理) 【出力形式】社内配信メール文面(A4・1枚相当)。 【制約】2026年1月施行済みの内容に限定。未確定の省令には触れない。
名称変更に関する注記:2026年1月1日施行の改正により、従来の下請法は「中小受託取引適正化法(通称:取適法)」へ改称・改正されています。本記事では、文脈に応じて「改正下請法」「取適法」を併用しています。

関連記事:取適法を知らない会社は取引停止?改正下請法で変わる5つのこと

3.3 初級者が陥りやすい3つの失敗

失敗1:指示が曖昧

「この契約書を見てください」だけでは、AIは何を重点的に分析すべきか判断できません。当社の立場分析観点は必須です。

失敗2:出力形式が未指定

長文の地の文で返されると実務に使いにくい。表形式、箇条書き、A4・1枚など具体的に形式を指定しましょう。

失敗3:一度に全部を求める

論点抽出と修正案を同時に頼むと精度が落ちます。段階を分けるのが多段階設計の本質です。

第4章:中級編──業務フロー統合と社内標準化

4.1 再利用可能なテンプレート設計

初級で学んだCLEAR原則を踏まえ、中級では業務横断で再利用できるテンプレートを設計します。ポイントは、業務ごとに毎回ゼロから書くのではなく、「型」を決めて変数部分だけ差し替える設計です。

テンプレート:変数差替え型 【役割】あなたは企業法務の専門家です。 【背景】当社は{業種}。{取引の立場}として{契約類型}を{目的}で締結予定。 【分析対象】以下の契約書全文(匿名化済み)。 【指示】 第1段階:{分析観点リスト}でリスクを3段階評価 第2段階:高リスク項目について修正案を提示 第3段階:交渉上の優先順位と落としどころ案 【出力形式】{指定形式} 【制約】{制約条件} — {契約書テキスト}

4.2 業務統合型プロンプトチェーン

中級レベルでは、複数の業務ステップを連続して実行するチェーン設計が重要になります。たとえば契約書レビュー→交渉コメント作成→稟議書ドラフトを一気通貫で設計できます。

契約書レビュー 修正コメント生成 稟議書ドラフト 経営向けサマリー

4.3 プロンプトライブラリの社内標準化

属人化を防ぐには、検証済みのプロンプトを社内ライブラリとして共有し、バージョン管理する仕組みが必要です。

  • Notion / SharePoint に「業務別プロンプト台帳」を作成
  • テンプレートの変更履歴と担当者を記録
  • 月次で出力品質をサンプル評価し、テンプレートを更新

関連記事:【中級編】ChatGPTプロンプト術|法務で使える”鉄板テンプレ”10選 / 【Claude版】法務で使える”鉄板プロンプト”10選

契約レビューの多段階プロンプトを「そのまま使いたい」方へ

10STEPの設計済みプロンプトで、NDA・業務委託・売買契約のレビューを標準化できます。

契約書AIレビュー プロンプト集(10STEP)を見る

第5章:上級編──複雑案件の多段階設計(M&A・法務DD・規制対応)

5.1 中間成果物を定義する段階分解

上級編の核心は、AIに「思考過程」を出させるのではなく、「人がレビューできる中間成果物」を段階ごとに出させる設計です。

法務実務では、事実整理→論点抽出→リスク分類→修正文案→エグゼクティブサマリーのように、各段階の成果物が次の段階の入力になる構造が自然です。

5.2 M&A DD向け多段階プロンプト

テンプレート:M&A法務DD(5段階) 【第1段階:対象会社の基本情報整理】 設立年月日、事業内容、株主構成、主要取引先、 許認可一覧、過去の訴訟・行政処分歴を整理してください。 【第2段階:法的論点のMECE的洗い出し】 以下のカテゴリで論点を網羅してください。 (1)会社法関連 (2)契約関連 (3)知的財産 (4)労務 (5)許認可・規制 (6)訴訟・紛争 (7)環境法 (8)個人情報保護 【第3段階:リスク評価マトリクス】 各論点を「発生可能性(高・中・低)×影響度(大・中・小)」で マトリクス分類し、表形式で出力してください。 【第4段階:自己検証──売主側からの反論】 第3段階の分析に対して、売主側弁護士の立場から 反論・反証を試みてください。盲点の発見が目的です。 【第5段階:DD報告書ドラフト】 発見事項・リスク評価・推奨アクション・ クロージング条件への反映案をA4・5枚以内で作成してください。

5.3 自己検証(Self-Verification)プロトコル

上記第4段階のように、AIの出力に対して別の立場から批判・検証させるステップを組み込むことで、見落としやハルシネーションの検出力が向上します。

自己検証の設計パターン
(a) 相手方の立場:売主→買主、委託者→受託者として反論させる
(b) 監査人の立場:法令遵守・証拠の十分性をチェックさせる
(c) 新人教育の立場:結論に至った論理を平易に説明させ、矛盾を検出

5.4 高度な設計技法

技法 概要 法務での活用場面
ロールプレイ指定 AIに特定の専門家役を演じさせる 「相手方弁護士の視点で反論せよ」
Few-shot 入出力の具体例を提示して精度を上げる 過去のレビュー結果を模範例として添付
構造化出力 XML/JSON/表形式で出力させる 社内システムへ取り込むデータ形式を指定
段階間のゲート 人間の確認を挟んでから次へ進む リスク評価結果を法務部長が確認してから修正案生成

関連記事:【上級編】複雑案件を攻略する多段階プロンプト設計法 / 企業紛争対応における多段階プロンプト

第6章:再エネ法務×多段階プロンプト──業界特化の設計例

差別化ポイント:再エネ法務に特化した多段階プロンプト設計の解説は、一般的な「法務×AI」記事にはない本サイト独自のコンテンツです。

6.1 再エネ法務で多段階設計が特に有効な場面

  • EPC契約レビュー:設計・調達・建設の各フェーズで異なるリスクを段階的に分析
  • FIT/FIP制度移行の契約影響分析:制度変更→既存契約への影響→修正要否→交渉方針
  • 農地法・都市計画法の許認可チェック:事実関係の整理→法令適用→リスク評価
  • 工事請負契約の追加変更管理:変更事項の特定→コスト影響→契約修正案

6.2 FIP移行期の契約影響分析プロンプト

テンプレート:FIP移行・契約影響分析(4段階) 【第1段階:制度変更の整理】 FIT→FIP移行により変更される制度要件を (a)売電価格 (b)バランシング義務 (c)計画値同時同量 (d)交付金算定 の4項目で整理してください。 【第2段階:既存契約への影響特定】 以下の既存契約について、制度変更の影響を受ける条項を 特定してください。 対象契約:PPA、O&M契約、系統接続契約、地権者契約 【第3段階:リスク評価】 影響を受ける各条項について、 修正不要/修正推奨/修正必須 の3段階で評価してください。 【第4段階:対応計画】 修正必須・修正推奨の項目について、 (a)修正案 (b)交渉相手 (c)交渉開始の推奨時期 を整理し、 対応計画表を作成してください。

関連記事:【業界特化編】再エネ法務×多段階プロンプト──FIT/FIP制度対応の自動化 / Non-FIT時代の再エネ法務

第7章:失敗しやすい設計パターンと再設計の手順

7.1 よくある失敗パターンTOP5

# 失敗パターン 典型的な症状 改善方針
1 一括丸投げ 論点が散漫で使い物にならない 段階分割+中間レビュー
2 コンテキスト不足 当社に不利な前提で分析される CLEAR原則のC(背景)を明記
3 出力形式の未指定 長文の地の文で返され、要点が不明 表・箇条書き・字数を指定
4 検証ステップの省略 ハルシネーションが成果物に混入 自己検証ステップを追加
5 属人化したプロンプト 担当者以外が再現できない テンプレート化+変数の明示

7.2 再設計の5ステップ

  1. 症状の特定:出力のどこが使えないかを言語化
  2. 原因の分類:上記5パターンのどれに該当するか
  3. 段階の再分割:「一度に2つ以上のことを頼んでいないか」をチェック
  4. 模範出力の提示:Few-shotで理想の出力例を添付
  5. 3回テスト:同一条件で3回実行し、出力のブレを確認
「3回テスト」の考え方──同じプロンプトを3回実行して出力の一致度を確認する手法です。実務ではこれに加え、(a) 正解例・模範レビューとの整合(正答性評価)、(b) 修正提案が実際に交渉・稟議で使えるか(実務有用性評価)の視点も加えると、評価の質が上がります。

関連記事:【実践編】多段階プロンプトの失敗事例と対策 / プロンプト設計の黄金則|段階化×出力制御×検証ループ

第8章:組織導入・品質管理・入力統制

8.1 段階的導入ロードマップ

フェーズ 期間(目安) 内容 成果物
1. 試行 1〜2か月 特定業務(NDAレビュー等)でパイロット運用 パイロット報告書
2. 標準化 2〜3か月 テンプレート整備、入力ルール策定、教育 プロンプト台帳・利用ガイドライン
3. 展開 3〜6か月 対象業務の拡大、他部門への横展開 業務別テンプレート集
4. 最適化 継続 評価設計(Evals)の導入、品質モニタリング 月次品質レポート

8.2 法務部が最低限決めるべきAI入力ルール

「機密情報は含めない」だけでは不十分です。

以下の5項目を社内規程(またはAI利用ガイドライン)に明記することを推奨します。

  1. 匿名化基準:固有名詞・金額・日付は匿名化して入力(例:A社→甲社、1億円→X円)
  2. 利用可能なAIサービスの指定:業務利用できるサービスをホワイトリスト管理
  3. 出力の外部利用禁止ルール:AIの出力をそのまま対外文書に転用しない。人手チェックを必須化
  4. データ保存・学習ポリシーの確認:利用するAIサービスのデータ取扱い方針を確認し記録
  5. 承認フロー:対外文書への転用は法務部長承認を経る等のゲート設置

関連記事:【テンプレ付】生成AIガバナンスの作り方|法務のAI利用ルール・契約チェックリスト / 生成AI利用ガイドライン策定の完全自動化

8.3 品質評価の3層モデル

再現性評価

同一条件で3回実行し、出力のブレ幅を確認。ブレが大きい場合はプロンプトの曖昧さを疑う。

正答性評価

過去のレビュー結果や弁護士見解を「正解例」とし、AIの出力と比較。抜け漏れ率を記録。

実務有用性評価

修正提案が交渉・稟議で実際に使えたか。「そのまま使えた / 加筆で使えた / 使えなかった」を記録。

参考KPI(暫定指標):各組織の業務特性に応じて調整してください。
・出力一致度(3回テスト):目安70〜90%以上
・抜け漏れ率(正答性):対象論点の5%以下が理想
・実務利用率:「加筆で使えた」以上が80%を目標に

法改正・コンプライアンス対応のプロンプトを一括導入

取適法(2026年施行)、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)、個人情報保護法の対応プロンプトをセットで。

法改正対応セットを見る

第9章:導入モデルケース(仮想事例)

注意:以下は導入効果のイメージをつかむための仮想事例(モデルケース)です。特定の企業を指すものではなく、数値は想定効果・試算例です。

9.1 モデルケースA:製造業法務部(法務5名体制)

想定課題

  • 契約書レビューに1件あたり平均2〜3日
  • 担当者ごとにレビュー品質にバラつき
  • 法改正情報の社内展開が後手に回りがち

導入シナリオ

NDAレビューからパイロット開始→3か月で業務委託契約・法改正対応に拡大→6か月で全契約類型のテンプレート整備。

想定効果(試算)

指標 導入前 導入後(想定) 想定改善幅
契約レビュー所要日数 2〜3日 1〜1.5日 約50%短縮
レビュー品質のバラつき 担当者依存 テンプレート準拠で均質化 定量評価は導入後に計測
法改正対応の着手速度 2〜3週間 3〜5日 約70%短縮

9.2 モデルケースB:スタートアップ法務(一人法務)

想定課題

  • 法務担当が1名で、あらゆる相談に対応
  • 新規事業の法的調査に手が回らない
  • 外部弁護士への依頼コストが経営を圧迫

導入シナリオ

定型業務(NDA・業務委託)の初期ドラフト生成を自動化→浮いた時間で新規事業の法的リスク調査に注力。

想定効果(試算)

  • 月間対応可能件数:5件→10〜15件程度に拡大
  • 外部弁護士費用:年間20〜40%削減を目標
  • 一人法務の業務負荷:定型業務の時間を約半分に圧縮し、戦略業務へシフト

関連記事:法務部門のAI導入ROI算出方法 / AI時代の法務部門再設計ガイド

第10章:プロンプトライブラリ【抜粋版】

本章では業務別のプロンプト例を抜粋して掲載します。フルバージョン(100本収録)は法務AIプロンプト集100選をご覧ください。

10.1 契約関連

プロンプト例:契約リスク分析(汎用) 【目的】{契約種類}の包括的リスク分析 【前提】当社立場:{委託者/受託者/売主/買主}     業種:{業種} 準拠法:日本法 【分析観点】 1. 損害賠償条項(上限・免責の範囲) 2. 知的財産権の帰属と利用許諾 3. 秘密保持義務の範囲と残存期間 4. 解除条件(任意解除・債務不履行解除) 5. 競業避止義務の有無と範囲 6. 反社排除条項の有無 7. {業界固有の観点} 【出力形式】観点ごとに 「条項要旨→リスク評価(高/中/低)→修正提案」の3列表 【制約】日本法に基づく分析のみ。

10.2 法改正対応

プロンプト例:法改正影響分析(4段階) 【第1段階】{法令名}の改正概要を5項目以内で整理 【第2段階】当社事業({事業内容})への影響を 「影響大/影響中/影響小/影響なし」で分類 【第3段階】影響大・中の項目について (a)必要な社内規程の改定 (b)業務フローの変更 (c)対応期限 【第4段階】社内周知メール(A4・1枚)と 経営報告用サマリー(300字以内)を作成

10.3 ハラスメント対応

プロンプト例:ハラスメント通報の初動分析 【背景】社内通報窓口に{ハラスメント類型}に関する通報あり。 【指示】以下の段階で初動分析を行ってください。 第1段階:通報内容から事実関係のポイントを整理 第2段階:法令・ガイドラインに照らした類型判定 第3段階:調査設計(ヒアリング対象・順序・質問項目案) 第4段階:初動対応チェックリスト 【制約】通報者の匿名性に配慮。 厚労省指針(令和2年告示第5号)に準拠。

関連記事:ハラスメント通報への対応フロー完全版 / カスハラ対応の判断基準と対応終了のタイミング

まとめ──プロンプト設計は法務DXの「実装力」

生成AIの性能が向上しても、法務実務で求められる再現性・監査可能性・出力統制を担保するには、人間による段階的な設計と検証が不可欠です。

本記事で紹介した多段階プロンプト設計は、AIをブラックボックスにせず、各段階で人間がレビューを挟むことで品質を担保する手法です。まずは基本3段階型からNDAレビューで試してみてください。

ただし、最も重要な原則は変わりません──AIはあくまで思考の補助ツールであり、最終的な法的判断と責任は人間が担います

※本記事は2026年3月時点の法制度・AI技術水準に基づいて作成しています。AI技術・法制度は随時変更されるため、最新動向は継続的にキャッチアップしてください。

※AIの出力により生じた損害について、当サイトは一切の責任を負いません。プロンプト例の利用にあたっては、機密情報の匿名化と人間による最終確認を必ず行ってください。

📄 コピペで使える実務プロンプト

契約書リスク分析プロンプト【基本版】

契約書の法的リスクを30〜90分で包括分析。不利な条項・欠落条項を3段階評価し、具体的な修正提案まで自動生成します。

取引先提示の契約書、リスクを見逃していませんか?

業務委託契約、秘密保持契約、売買契約など、あらゆる契約書の法的リスクを即座に可視化。損害賠償条項の妥当性、知財権の明確性、欠落条項まで、AIが企業法務の視点で徹底チェックします。コピペするだけで、弁護士レベルの契約書レビューが完了します。

📋 収録内容(全9ページ)

  • すぐ使えるプロンプト本体 – コピペで契約書を3段階リスク評価
  • 実践的な入力例 – 業務委託契約の分析シナリオを完全収録
  • AI出力サンプル – リスク項目と修正提案の実例を掲載
  • 業種別カスタマイズガイド – 製造業・IT・金融・小売ごとの注意点
  • よくある質問集 – 英文契約・上司報告の実務ノウハウ
  • 関連プロンプト紹介 – 詳細版・修正案生成への発展方法
時間短縮
30〜90分
難易度
★★☆ 中程度
ページ数
全9ページ
対応AI
GPT-5.1 / Claude 4.5 / Gemini 2.5

💡 使い方のヒント:プロンプトをコピーして、分析したい契約書の全文または主要条項を貼り付けるだけ。機密情報は匿名化してご使用ください。AIの出力は検討材料であり、最終判断は必ず人が行ってください。

読後すぐ使える無料ツール
法務業務を「そのまま回せる」無料ツール一覧
この記事の内容を、実務にそのまま落とし込むためのツールです。
契約依頼の一次整理マスキング論点アラート
稟議一枚化まで、作業時間を短縮しつつ判断精度を底上げできます。
一次整理 マスキング 論点アラート 運用引継ぎ 稟議一枚化 法務依頼受付台帳
今すぐ使えるツールを見る →
インストール不要 ・ 完全オフライン対応 ・ すべて無料