🎯 ライセンス契約の基礎
法務担当者のための完全ガイド〜最新法改正対応版〜
⚖️法改正の要旨
- 令和2年著作権法改正(2020.10.1施行)
- 令和5年損害賠償額見直し(2024.1.1施行)
- 平成23年特許法改正
🎯実務の優先事項
- 許諾範囲の明確化
- ロイヤリティと監査
- リスク管理体制
📊本ガイドの特徴
- 最新法令の完全対応
- 実務で使える条項例
- チェックリスト完備
📖 ライセンス契約の基礎知識
ライセンス契約とは
ライセンス契約(使用許諾契約)とは、知的財産権で保護されている特許、意匠、著作物、商標などの実施・使用等を、第三者に許諾する内容の契約です。
💡 譲渡契約との違い
譲渡契約では権利そのものが移転しますが、ライセンス契約では権利者が権利を保持したまま、使用を許諾します。このため、複数の相手にライセンスを与えることも可能です。
ライセンス契約の種類
① 特許ライセンス契約
特許権を取得した発明について、第三者による実施を許諾する契約です。
📌 重要な法改正
平成23年特許法改正により「通常実施権の当然対抗制度」が導入されました(特許法99条)。
特許権が第三者に譲渡されても、ライセンシーは登録なしに新権利者に対して通常実施権を対抗できるようになりました。
② 著作権ライセンス契約
著作物(ソフトウェア、音楽、映像、キャラクターなど)の利用を許諾する契約です。
🎊 画期的な法改正
令和2年著作権法改正により「利用権の当然対抗制度」が導入されました。
しかも、経過措置により令和2年10月1日以前に締結したライセンス契約も対象となっています。
③ 商標ライセンス契約
商標権によって保護されている登録商標の使用を許諾する契約です。
⚠️ 重要な注意事項
商標権は登録対抗主義を採用しています(商標法31条4項)。
必須対応通常使用権を第三者に対抗するには登録が必要です。
商標ライセンス契約を締結したら、必ず登録手続きを行ってください(登録免許税:1件3万円)。
📝 ライセンス契約の基本的条項
1. 許諾対象の特定
何についてのライセンスなのかを明確に特定することが最も重要です。
2. 実施権・使用権の種類
種類 | 独占性 | 登録 | 対抗力 |
---|---|---|---|
専用実施権 | 完全独占 | 必須 | 登録により対抗可能 |
独占的通常実施権 | 独占的 | 任意 | ✅ 当然対抗 |
非独占的通常実施権 | 非独占的 | 任意 | ✅ 当然対抗 |
3. ロイヤリティ
方式 | メリット | デメリット |
---|---|---|
一時金のみ | 早期回収、管理不要 | 将来の成功に連動しない |
売上連動 | 公平、実績連動 | 報告・監査コスト |
一時金+ランニング | 双方のメリット | 計算が複雑 |
ミニマム保証 | 最低収入確保 | 負担増 |
🔄 最新の法改正と実務への影響
令和5年著作権法改正
✨ 損害賠償額算定方法の見直し
主な改正内容:
- 著作権者の販売能力を超える部分についてもライセンス料相当額を損害に算定
- 著作権侵害を前提とした交渉額を考慮可能に
実務への影響:侵害に対する損害賠償額が増額される可能性が高まり、適切なライセンス契約の重要性が一層増しています。
当然対抗制度の整備状況
権利 | 対抗制度 | 法的根拠 | 改正時期 |
---|---|---|---|
特許権 | 当然対抗 | 特許法99条 | 平成23年 |
著作権 | 当然対抗 | 著作権法63条の2 | 令和2年 |
商標権 | 登録対抗 | 商標法31条4項 | – |
🎯 見落としがちな重要条項
補償条項(Indemnification)
第三者から知的財産権侵害の主張を受けた場合の対応を明確にします。
エスクロー条項(Escrow)
ソフトウェアのソースコードを第三者に預託し、一定条件下でライセンシーに引き渡す仕組みです。
ロイヤリティ監査条項
AIモデル・データライセンスの特約
🤖 AI時代の新しい条項
学習データの権利処理:
- 学習データを適法に取得していることの保証
- 第三者の権利を侵害していないことの確認
- 個人情報保護法の遵守
生成物の権利帰属:
- AIが生成した出力物の著作権はライセンシーに帰属
- ライセンシーは生成物を自由に利用可能
✅ 実務チェックリスト
基本事項
- 許諾対象の知的財産権は特定されているか
- 独占的か非独占的か明確に記載されているか
- 地域的範囲、時間的範囲は明確か
ロイヤリティ
- ロイヤリティの計算方法は明確か
- 「正味売上高」の定義は明確か
- 支払時期、支払方法は明確か
- 監査権は確保されているか
リスク管理
- 補償条項は適切に設計されているか
- 免責・責任制限条項は適切か
- エスクロー条項(ソフトウェア)は必要か
- 改良発明の取扱いは明確か
- 商標の場合、登録手続きは規定されているか
💡 ポイント:ライセンス契約は、単なる権利の使用許諾ではなく、企業間の戦略的パートナーシップを構築するツールです。適切に設計することで、双方がwin-winの関係を築くことができます。
