個人情報保護法改正でプライバシーポリシーの何を変える?
2025年改正案を見据えたプライバシーポリシー見直しの実務ポイント
はじめに:なぜ今プライバシーポリシーの見直しが必要なのか
個人情報保護委員会は2025年1月22日に「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討」の今後の検討の進め方について公表し、2025年の改正に向けた具体的な検討が進んでいます。
前回の改正スケジュールと比較すると、今回の個人情報保護法改正は成立が2025年秋以降になる可能性も出てきており、2025年8月現在、法案は未だ成立していません。本記事で取り上げる「2025年改正案」は全て検討段階の素案であり、最終的な法案では変更される可能性があります。
法務担当者として押さえておくべきは、「施行日に間に合わせる」ではなく「施行前に運用開始」を目標とすることです。改正内容の確定を待つのではなく、検討案ベースでの準備を今から始める必要があります。
改正状況の全体像(2025年8月現在)
区分 | 状況 | 対応優先度 | 施行予定 |
---|---|---|---|
🟢 2024年改正 | 施行済み | 最高 | 2024年4月〜 |
🟡 2025年改正案 | 検討中 | 高 | 2026年頃見込み |
🔵 課徴金制度 | 導入是非を検討中 | 中 | 未定 |
🟢【確定・対応必須】2024年改正のプライバシーポリシー対応
ウェブスキミング対策関連(個人情報保護法施行規則第7条第3号改正)
改正背景: 近年、ECサイト等に不正プログラムを設置し、ユーザー入力情報を事業者のサーバを介さずに直接窃取する「ウェブスキミング」被害が深刻化。従来は「個人データ」になる前の「個人情報」段階での窃取は報告対象外でしたが、被害実態を踏まえ対象を拡大。
改正内容: 2024年4月1日施行の個人情報保護法施行規則改正により、一定の漏えい等発生時に義務づけられている個人情報保護委員会への報告と本人への通知の対象が、「個人データ」から「個人データ以外であっても不正利用のおそれがある個人情報」まで拡大されました。
具体的には:
- 「個人情報取扱事業者が取得し、又は取得しようとしている個人情報であって、個人データとして取り扱われることが予定されているもの」(個人情報保護法施行規則第7条第3号)
- 「不正目的をもって行われたおそれがある行為」による漏えい等が対象
プライバシーポリシーへの必要な追記例:
📋 今月中の必須チェック項目
🟡【検討案ベース】2025年改正案の想定変更点
以下は個人情報保護委員会が公表している検討案をベースに整理した想定です。最終案では変更される可能性があります。
1. 同意規制の柔軟化(検討案)
検討内容: 個人の権利利益への直接の影響の有無という観点を考慮し、本人同意を要しないデータ利活用ができると整理される可能性があります。
プライバシーポリシーへの想定影響:
- 利用目的の記載方法の見直し
- 第三者提供時の同意取得条件の明確化
- 統計分析等における個人への影響度の説明追加
2. 漏洩等発生時の本人通知義務の緩和(検討案)
検討内容: 本人への通知が行われなくても本人の権利利益の保護に欠けるおそれが少ない場合においては、本人通知を要しないものと整理される方向です。
プライバシーポリシーへの想定影響:
- 漏洩時の対応手順の詳細化
- 通知を行わない場合の基準明示
- 代替的な対応措置の説明
3. 委託先事業者に対する規律強化(検討案)
検討内容: DXの進展に伴い、委託された個人データ等の取扱いの態様や、その適正性を確保する能力などを強化する検討が進んでいます。
プライバシーポリシーへの想定影響:
- 委託先の監督体制に関する説明の充実
- クラウドサービス利用時の責任分界点の明確化
- 委託先変更時の通知方法の見直し
🔵【導入是非を検討中】課徴金制度
現状: 個人情報保護法の見直しに関する検討会で議論が進められており、課徴金制度導入の是非や金額水準は継続検討中です。
プライバシーポリシーへの想定影響:
- 違反時のペナルティに関する説明の追加(導入された場合)
- 法令遵守体制に関する記載の充実
実務対応チェックリスト
🟢【最優先・今月中】2024年改正完全対応
🟡【年内目標】2025年改正案準備
🔵【継続対応】基本事項の確認
AI活用による効率化と注意点
活用可能な領域
- 改正内容の影響分析:改正法令の要点整理と自社業務への影響評価(AIでたたき台を作成し、人が検証) — 社内周知テンプレ作成例は別稿で解説しています(社内向け周知テンプレ集)。
- プライバシーポリシー修正案作成:条文変更に対応する修正案のドラフト生成
- 社内説明資料作成:従業員向け研修資料の構成案作成
- 正確性の限界:AIによる条文解釈や修正案は必ず法務担当者による検証を経ること
- 情報の機密性:プロンプトに社内の機密情報や個人情報を入力しないこと
- 最新性の確認:AI生成物は最新の法令改正やガイドライン改正を反映していない可能性があること
(社内周知テンプレ集の参考)社内向けの伝え方やテンプレは、運用時の工数を大きく下げるため、社内周知テンプレの実務例も併せて検討してください。
段階的対応スケジュール
Phase 1(2025年8月〜12月):基盤固め
- 2024年改正の完全対応完了
- 2025年改正案の詳細分析(影響範囲分析テンプレを活用)
- 現行プライバシーポリシーの全体見直し
(影響範囲分析のテンプレ例は別稿で解説しています。)
Phase 2(2026年1月〜3月):法案成立後の迅速対応
- 確定した改正内容に基づく修正案作成
- パブリックコメント対応(該当する場合)
- 社内承認プロセスの実行
Phase 3(2026年4月〜施行前):運用体制構築
- 新プライバシーポリシーの運用開始
- 全社研修の実施
- 委託先への対応要請
今月中にやるべき具体的アクション
🎯 緊急度:高
- 現在のプライバシーポリシーの2024年改正対応状況確認
- 委託先契約書の安全管理措置条項の見直し
- 社内の漏洩対応マニュアルの更新
🎯 緊急度:中
- 2025年改正案の最新情報収集体制の構築
- 業界別ガイドラインの改正状況確認
- AI活用による効率化の検討開始
🎯 緊急度:低(但し重要)
- プライバシーガバナンス体制の見直し検討
- 国際データ移転に関する体制整備
- 定期的な法改正情報収集の仕組み化
まとめ:「守り」から「攻め」のプライバシー戦略へ
個人情報保護法の改正対応は、単なる法令遵守を超えて企業価値向上の機会として捉えることが重要です。
- 🔒 信頼性向上:最新法令準拠による顧客・取引先からの信頼獲得
- ⚡ 業務効率化:データ利活用フローの最適化による新サービス創出可能性
- 🌐 グローバル対応力:国際基準準拠による海外展開時の競争優位性
- 一括更新による効率化:改正対応を機に関連規程類を一括見直し
- AI活用による工数削減:ただし最終判断は必ず人間が実施
- 継続改善体制の構築:3年ごとの見直しサイクルに対応できる仕組み作り
⚠️ 重要な免責事項
本記事は2025年8月時点の公表資料・検討状況を基に作成しています。
- 2025年改正に関する記載は全て検討案であり、確定事項ではありません
- 改正内容は国会審議や政省令策定過程で変更される場合があります
- 実務対応におきましては、必ず最新の法令、ガイドライン、Q&A等を直接ご参照いただき、必要に応じて専門家にご相談ください
最新情報は個人情報保護委員会の公式サイトで必ずご確認ください。
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