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法務部員のつぶやき

弁護士との付き合い方 〜定型業務だけじゃない“信頼関係”のつくり方〜

弁護士との付き合い方 〜定型業務だけじゃない”信頼関係”のつくり方〜

最終更新:2025年10月

企業法務において、外部弁護士との関係性をどう構築するかは、組織のリスク管理体制や意思決定のスピードに直結する重要な課題です。本記事では、定型的な法律相談にとどまらない、戦略的な弁護士活用のあり方について、実務経験をもとに解説します。

TL;DR(この記事の要点)

  • 定型業務は基本:契約書チェック、規程整備、訴訟対応などは弁護士活用の土台
  • 信頼関係の構築:経営層との接点づくりや、ビジネス提案への関与など付加価値の創出
  • 法務部の役割:丸投げせず背景を共有し、感謝を伝える小さな配慮の積み重ねが重要
  • 弁護士は社外資産:スピード感ある意思決定とリスク管理を支える戦略パートナー

1. 企業が弁護士に依頼する定型業務とは

企業法務の現場で弁護士に依頼する業務の多くは、以下のような定型的かつ専門性の高い領域です。

1-1. 契約書の内容確認・レビュー

取引基本契約、秘密保持契約(NDA)、業務委託契約など、各種契約書のリーガルチェックは最も頻繁に発生する依頼内容です。条項の抜け漏れ、リスク条項の指摘、相手方提示条件の妥当性評価などを専門的視点から精査してもらいます。

1-2. 契約ひな形のアップデート

法改正や判例の蓄積により、自社で保有する契約ひな形が陳腐化することがあります。民法改正(2020年施行)、個人情報保護法改正、下請法改正など、法令変更に応じたひな形の見直しを定期的に依頼します。

1-3. 社内規程のリーガルチェック

就業規則、個人情報取扱規程、コンプライアンス規程、内部通報規程など、社内ルールの策定・改定時には法令適合性の確認が不可欠です。労働基準法、個人情報保護法、公益通報者保護法などの関連法令との整合性を確認してもらいます。

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1-4. 法令改正情報の共有

顧問契約を結んでいる場合、弁護士から定期的に法改正情報のレポートを受け取ることがあります。改正内容の概要、施行時期、自社への影響度、対応の要否などを整理した情報提供は、法務部門の情報収集コストを大幅に削減します。

1-5. 訴訟や係争対応の相談

取引先とのトラブル、労働紛争、知的財産権侵害の疑い、行政指導への対応など、法的紛争のリスクが顕在化した際の相談・代理業務も弁護士の重要な役割です。訴訟提起の要否判断、和解交渉、訴訟代理人としての活動などを依頼します。

2. 定型業務を超えた弁護士との関係構築

前述の定型業務は、どの企業でも共通して発生する「基本的な使い方」です。しかし、それ以上の付加価値を引き出せるかどうかは、企業側の姿勢と弁護士との信頼関係の深さによって大きく変わります。

2-1. 企業ごとに異なる”関係構築スタイル”

弁護士との付き合い方は、会社の風土、経営陣のスタンス、法務部門の位置づけによって多様です。以下は、定型業務を超えた関係構築の実例です。

経営層との接点づくり

  • 社長や役員が交代した際に、顧問弁護士との「顔合わせ」として食事会を開催
  • 経営会議やリスク管理委員会にオブザーバーとして参加してもらい、法的観点からの助言を求める
  • 重要な意思決定(M&A、新規事業参入、海外展開など)の初期段階から相談し、リーガルリスクの洗い出しを依頼

ビジネスネットワークの活用

  • 弁護士の人脈を通じて、他社との協業案件や業界団体への参加機会を紹介してもらう
  • 専門性の高い他分野の弁護士(税務、労務、知財など)を紹介してもらい、案件ごとに最適な専門家を起用
  • 弁護士事務所主催のセミナーや勉強会に参加し、業界動向や最新判例の情報を収集

このように、法律相談という枠を超えて、ビジネスパートナーとしての関わりを持つことで、弁護士の価値を最大限に引き出すことができます。

2-2. 信頼関係構築のために法務部が意識すべきこと

弁護士との良好な関係性を維持・発展させるために、法務部員として以下の点を意識しています。

① 相談しやすい関係性をキープする

  • 定期的なコミュニケーション(月次報告、四半期面談など)を通じて、雑談から業務相談に自然につながる雰囲気をつくる
  • 緊急時だけでなく、平時から「こんなことがあったんですが」と気軽に相談できる関係を維持
  • 対面・電話・メール・チャットなど、複数のコミュニケーション手段を使い分け、弁護士の業務スタイルに合わせる

② 「丸投げしない」依頼の出し方を心がける

  • 相談内容の背景、目的、期待する回答のレベル感を丁寧に共有
  • 「この契約書をチェックしてください」だけでなく、「今回の取引の特殊性はこの点で、特にこの条項について懸念があります」と具体的に伝える
  • 社内の意思決定プロセスや関係部署の意見も整理して提供し、弁護士が的確なアドバイスをしやすい環境を整える

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③ 日頃の対応に対する感謝をきちんと伝える

  • 迅速な対応、的確な助言、予防的な提案などに対して、都度お礼を伝える
  • 年末や年度末には、1年間の協力に対する感謝の意を改めて表明(メッセージや贈答など)
  • 社内で弁護士のアドバイスが役立った事例を共有し、弁護士の貢献を可視化

当たり前のようでいて、こうした小さな配慮の積み重ねが、信頼関係を築く基盤になっています。

3. 弁護士を”社外資産”として活用する意義

現代のビジネス環境では、スピード感ある意思決定と的確なリスク管理の両立が求められます。そのような状況において、頼れる弁護士の存在は、企業にとっての重要な社外資産です。

3-1. 意思決定のスピードアップ

法的リスクの見極めを迅速に行える弁護士がいることで、経営判断のスピードが上がります。新規事業のローンチ、契約条件の交渉、トラブル対応など、法的論点が絡む場面で即座に相談できる体制は、競争優位性を生みます。

3-2. リスク管理の質向上

予防法務の観点から、事前に潜在的リスクを洗い出し、対策を講じることができます。訴訟や行政処分のリスクを未然に防ぐことは、企業の信頼性維持とコスト削減に直結します。

3-3. 経営層への安心感提供

経営陣にとって、「困ったときに相談できる弁護士がいる」という安心感は、積極的な経営判断を後押しする要素になります。法務部門が弁護士との強固な関係を築いていることは、組織全体の安定性を高めます。

4. 弁護士選定・契約形態の検討ポイント

弁護士との関係性を深めるためには、そもそもどのような弁護士を選び、どのような契約形態を採用するかが重要です。

4-1. 顧問契約 vs スポット契約

顧問契約

  • 月額固定報酬で継続的にサポートを受ける形態
  • 定期的なコミュニケーションにより、自社の事業内容や経営方針を理解してもらいやすい
  • 緊急時の相談や簡易な問い合わせも気軽にできる

スポット契約

  • 案件ごとに個別に依頼する形態
  • 専門性の高い特定分野(M&A、知財訴訟など)に特化した弁護士を起用しやすい
  • コストは発生した業務量に応じて変動

多くの企業では、日常的な法務相談は顧問弁護士に依頼し、専門性が求められる案件では別途スポット契約を活用するハイブリッド型を採用しています。

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4-2. 弁護士選定の基準

  • 専門性:自社の事業領域や業界特性に精通しているか
  • 実績:類似案件の対応経験や、訴訟での勝訴実績
  • コミュニケーション:説明が分かりやすいか、レスポンスが早いか
  • 料金体系:明確で納得感のある料金設定か
  • 相性:社内の関係者と円滑に協働できる人柄か

5. 法務部門の役割:弁護士と社内をつなぐハブ機能

法務部門は、弁護士と社内各部門をつなぐハブ機能を担います。弁護士のアドバイスを社内に適切に翻訳し、現場で実行可能な形に落とし込むことが求められます。

5-1. 社内への情報共有

弁護士から得た法改正情報やリスク情報を、関係部署に分かりやすく展開します。法律用語をそのまま伝えるのではなく、「実務でどう動くべきか」に焦点を当てた説明が重要です。

5-2. 社内ニーズの集約

各部署から寄せられる法的相談を整理し、優先度をつけて弁護士に依頼します。「何を聞きたいのか」「どのレベルの回答が必要か」を明確にすることで、弁護士の時間を効率的に活用できます。

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6. まとめ:定型業務を超えた価値ある関係性を育てる

弁護士との付き合い方は、定型業務は粛々と、それ以上の価値ある関係性も少しずつ育てていくことが理想です。

法務部員として意識すべきは以下の3点です。

  1. 丁寧なコミュニケーション:背景を共有し、感謝を伝え、相談しやすい雰囲気をつくる
  2. 戦略的な活用:経営層との接点づくりや、ビジネスネットワークの活用を視野に入れる
  3. 社内ハブ機能の強化:弁護士のアドバイスを実務に落とし込み、社内に浸透させる

弁護士は単なる「法律の専門家」ではなく、企業の成長を支える戦略的パートナーです。信頼関係を土台に、長期的な視点で関係性を深めていくことが、法務部門の重要な役割といえるでしょう。

FAQ:弁護士との付き合い方でよくある質問

Q1:顧問弁護士がいない中小企業でも、弁護士との関係構築は必要ですか?

A:はい、必要です。顧問契約がなくてもスポット契約で相談できる弁護士を複数確保しておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。また、自治体や商工会議所が提供する無料法律相談なども活用し、日頃から法的視点を取り入れる習慣をつけることが重要です。

Q2:弁護士に依頼する際、どの程度まで社内で検討してから相談すべきですか?

A:基本的な事実関係や社内の意見は整理したうえで相談するのが望ましいですが、「どこまで調べればいいか分からない」段階でも早めに相談することをおすすめします。初期段階での相談により、調査の方向性や論点整理が明確になり、結果的に時間とコストの節約につながります。

Q3:弁護士との関係が形式的になってしまっています。どうすれば深められますか?

A:定期的な面談を設定し、案件相談だけでなく「最近の業界動向」「他社事例」などについて意見交換する時間を持つことが有効です。また、社内セミナーの講師を依頼する、経営会議への参加を打診するなど、弁護士が自社の事業を深く理解する機会を増やすことで、関係性が深まります。

Q4:弁護士のアドバイスが抽象的で、実務に落とし込みにくいことがあります。どうすべきですか?

A:相談時に「具体的にどう動けばいいか」「契約書でどう書くべきか」まで踏み込んだ回答を求めることが大切です。また、「こういう運用を考えているが法的に問題ないか」と具体案を提示して確認する形にすると、実務的なアドバイスを得やすくなります。

Q5:弁護士費用を抑えつつ、質の高いサービスを受けるコツはありますか?

A:事前準備を徹底し、相談内容を明確にすることで、弁護士の作業時間を削減できます。また、顧問契約の範囲内で対応できる業務を最大限活用し、スポット契約が必要な案件を見極めることも重要です。さらに、複数の弁護士から見積もりを取り、料金体系を比較検討することも有効です。


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