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印鑑証明書が必要な契約書一覧:これだけは押さえたい10種類

印鑑証明書が必要な契約書一覧|これだけは押さえたい10種類

印鑑証明書が必要な契約書一覧

これだけは押さえたい10種類

はじめに

契約書への押印は日本の商慣習として定着していますが、特に重要な契約や高額な取引では印鑑登録証明書の添付が求められることがあります。印鑑登録証明書は、押印された印鑑が確かに本人の実印であることを公的に証明する重要な書類です。

本記事では、実務上印鑑登録証明書が必要となる主要な契約書10種類について、法的根拠を明示しながら詳しく解説します。

印鑑登録証明書(実印証明)の基礎知識

印鑑登録証明書の定義と法的根拠

印鑑登録証明書(正式名称)は、地方自治法第244条の2および各市区町村の印鑑条例に基づき、市区町村に登録された印鑑(実印)が本人のものであることを公的に証明する書類です。

実印とは:印鑑登録を経た印影のことであり、単に大切な印鑑を指す慣習的な「実印」とは法的に区別されます。実印と印鑑登録証明書をセットで提出することで、契約当事者本人の意思による押印であることを客観的に証明できます。

なぜ印鑑登録証明書が必要なのか

  • 本人確認の確実性:実印は一人一つしか登録できず(市区町村条例による)、本人以外が取得・使用することは困難
  • 法的効力の強化:民事訴訟法第228条4項により、実印による押印は本人の意思による推定を受ける
  • 悪用防止:第三者による契約書の偽造や不正使用を防ぐ

印鑑証明書が必要な契約書10種類一覧表

表1. 印鑑登録証明書が必要な契約書10種類一覧

契約書種類 要求場面 有効期限 必要通数 法的根拠
①不動産売買契約書 所有権移転登記 発行から3か月以内 2通(契約用・登記用) 不動産登記法第58条
②金銭消費貸借契約書(高額融資) 銀行融資、公正証書化 発行から3~6か月以内※1 債務者・連帯保証人各1通 民法第461条~464条
③遺産分割協議書 相続登記、預金解約 登記:期限なし
金融機関:3~6か月以内
相続人全員各1通 相続法第907条、不動産登記法第63条
④公正証書作成時の委任状 代理人による公正証書作成 発行から3か月以内 1通 公証人法第9条、第26条
⑤株式譲渡契約書(M&A) 最終契約締結、クロージング 発行から3か月以内 1通(法人は法務局発行) 商業登記法第62条(法人の場合)
⑥建設工事請負契約書 大規模工事契約、入札参加 発行から3か月以内 1通+保証人分 建設業法第19条
⑦賃貸借契約書(事業用) 法人契約、高額物件 発行から3か月以内 賃借人・連帯保証人各1通※2 民法第601条
⑧自動車売買契約書 移転登録(名義変更) 発行から3か月以内 1通 道路運送車両法第13条
⑨組合契約書・出資契約書 LPS設立、出資申込 発行から3か月以内 出資者全員各1通 有限責任事業組合法第5条
⑩和解契約書・示談書 高額賠償、公正証書化 発行から3か月以内 当事者各1通 民事訴訟法第267条

※1:メガバンク(三井住友銀行、三菱UFJ銀行等)では6か月以内を認める運用が一般的

※2:保証会社利用時は連帯保証人の印鑑登録証明書は不要

各契約書の詳細解説

各契約書について、以下の観点から解説します:

  • 必要性の理由:なぜ印鑑登録証明書が必要か
  • ポイント:実務上の重要事項
  • 実務上の注意点:よくある落とし穴や対処法

①不動産売買契約書

必要性の理由

不動産は高額な資産であり、所有権の移転という重大な法的効果を伴うため、不動産登記法第58条により印鑑登録証明書の添付が義務付けられています。

ポイント

  • 売主側:所有権移転登記の際に必須(なりすまし防止)
  • 買主側:住宅ローンを利用する場合は金融機関から要求される
  • 有効期限:発行から3か月以内(不動産登記規則第48条)
  • 必要枚数:契約用と登記用で2通必要な場合が多い

実務上の注意点

  • 共有不動産の場合は、共有者全員の印鑑登録証明書が必要
  • ただし、共有者の委任状による代替も可能(不動産登記法第23条)
  • 2024年4月の相続登記義務化(改正不動産登記法)により、相続による所有権移転でも印鑑登録証明書の重要性が増している

②金銭消費貸借契約書(高額融資)

必要性の理由

民法第461条~464条の債務者の意思表示の確認、および金融機関の内部規程により、高額融資では印鑑登録証明書が要求されます。

ポイント

  • 対象金額:一般的に数百万円以上の融資で要求
  • 保証人:連帯保証人がいる場合はその印鑑登録証明書も必要
  • 金融機関別の運用
    • 地方銀行:発行から3か月以内
    • メガバンク(三井住友銀行、三菱UFJ銀行等):発行から6か月以内

実務上の注意点

  • 公正証書にする場合は、公証役場でも印鑑登録証明書(発行から3か月以内)が必要
  • 根保証契約の場合は、極度額の設定に関する書面にも実印押印が求められる

③遺産分割協議書

必要性の理由

相続法第907条に基づく遺産分割協議の真正性を担保し、相続人全員の合意を証明するために不可欠です。

ポイント

  • 相続人全員分が必要:一人でも欠けると手続きが進まない
  • 有効期限
    • 相続登記:期限なし(不動産登記法第63条)
    • 金融機関:3~6か月以内(各行の内規による)
  • 原本還付:複数の手続きで使用する場合は原本還付請求が可能

実務上の注意点

  • 海外在住者の対応
    • 日本領事館でのサイン証明書(署名証明書)取得
    • 居住国の公証人による翻訳証明+サイン証明
    • 居住国の法定代理人証明(アポスティーユ付き)
  • 原本還付請求の手続き:申請書に「原本と相違ない」旨を記載し、申請者の記名押印(手数料無料、処理期間約1週間)

④公正証書作成時の委任状

必要性の理由

公証人法第9条および第26条により、公証人に対して委任状が本人の意思により作成されたことを証明するため必要です。

ポイント

  • 代理人による手続き:本人が公証役場に行けない場合
  • 有効期限:発行から3か月以内
  • 委任状への実印押印:印鑑登録証明書と照合される

実務上の注意点

  • 具体的な使用例
    • 離婚協議書の公正証書化(養育費、財産分与等)
    • 遺言公正証書の作成
    • 金銭消費貸借契約の公正証書化(強制執行認諾文言付き)
  • 強制執行認諾約款を含む場合は、委任状にその旨を明記する必要がある

⑤株式譲渡契約書(M&A関連)

必要性の理由

企業の支配権の移動を伴う重大な取引であり、商業登記法第62条(法人の場合)に基づき、契約の真正性確保が必要です。

ポイント

  • 実務慣行:法的義務はないが、M&Aでは実印・印鑑登録証明書が一般的
  • 法人の印鑑登録証明書:法務局発行(商業登記法第62条)
  • クロージング時:最終的な権利移転時に必要

実務上の注意点

  • デューデリジェンス後の最終契約では、表明保証条項の重要性から実印での締結が推奨
  • 投資事業有限責任組合(LPS)のスキームでは、金商法上の「組合持分取得申込書」にも印鑑登録証明書が必要

⑥建設工事請負契約書(大規模工事)

必要性の理由

建設業法第19条に基づく書面契約の要件として、また契約保証金の提出とともに契約当事者の確実な特定が必要です。

ポイント

  • 公共工事:入札参加資格審査時から印鑑登録証明書が必要
  • 民間大規模工事:契約金額が数千万円以上で要求
  • 契約保証金:履行保証とセットで要求されることが多い

実務上の注意点

  • 工事完成保証人を立てる場合、保証人の印鑑登録証明書も必要
  • 下請契約では、元請からの要求により必要となる場合がある
  • JV(共同企業体)の場合は、構成員全社の印鑑登録証明書が必要

⑦賃貸借契約書(事業用不動産・高額物件)

必要性の理由

民法第601条の賃貸借契約において、事業用不動産や高額物件では契約の安定性と当事者の信用性確保が重要です。

ポイント

  • 法人契約:オフィスや店舗の賃貸借では一般的
  • 連帯保証人:保証人の印鑑登録証明書も必要
  • 保証会社利用時:連帯保証人は不要だが、保証委託契約書で押印・証明が求められる場合あり

実務上の注意点

  • 更新時にも印鑑登録証明書を求められる場合がある
  • 個人の住居用賃貸では印鑑登録証明書不要なケースが増加
  • 定期借家契約では、公正証書化する場合に印鑑登録証明書が必要

⑧自動車売買契約書(移転登録)

必要性の理由

道路運送車両法第13条に基づく所有権移転登録(名義変更)手続きにおいて、運輸支局への提出が必要です。

ポイント

  • 有効期限:発行から3か月以内
  • 譲渡証明書:様式第8号に実印の押印と印鑑登録証明書の添付が必須
  • 必要枚数:通常1通で足りる

実務上の注意点

  • 普通自動車:譲渡証明書+印鑑登録証明書が必須
  • 軽自動車:申請依頼書+認印+住民票で手続き可能(印鑑登録証明書不要)
  • 所有権留保付き車両の場合は、ローン会社の印鑑登録証明書も必要

⑨組合契約書・出資契約書

必要性の理由

有限責任事業組合法第5条等により、複数の当事者が資金を出し合って事業を行う重要な契約であり、出資者の確実な特定が必要です。

ポイント

  • 投資事業有限責任組合(LPS):出資者全員の印鑑登録証明書が一般的
  • 匿名組合契約:営業者・匿名組合員双方で必要
  • 出資金額:高額出資の場合は特に必要

実務上の注意点

  • 組合の登記が必要な場合、登記申請時にも印鑑登録証明書が必要
  • 金商法上の「組合持分取得申込書」にも印鑑登録証明書を添付
  • GP(無限責任組合員)とLP(有限責任組合員)で要求書類が異なる場合がある

⑩重要な和解契約書・示談書

必要性の理由

民事訴訟法第267条の和解、および紛争解決の最終的な合意であり、後日の紛争再燃を防ぐため確実な本人確認が必要です。

ポイント

  • 高額な損害賠償:支払額が高額な場合
  • 権利関係の確定:不動産や知的財産権に関する和解
  • 裁判上の和解:裁判所での和解調書作成時

実務上の注意点

  • 強制執行認諾約款付き公正証書として作成する場合
    • 公証役場での手続きが必要
    • 債務不履行時の強制執行が可能
  • 訴訟上の和解の場合は、裁判所での本人確認により印鑑登録証明書不要な場合もある

印鑑登録証明書取得の実務

取得方法と必要書類

  • 市区町村役場での取得:印鑑登録証(カード)と本人確認書類が必要
  • 手数料:一般的に300円~500円(自治体により異なる)
  • 代理取得:委任状と代理人の本人確認書類が必要
  • 郵送請求:一部自治体では可能(手数料別途送料要)

有効期限に関する実務ポイント

印鑑登録証明書自体に有効期限はありませんが、各種手続きにおいて発行からの期限が定められています。一般的な有効期限は以下の通りです:

  • 登記手続き:発行から3か月以内(不動産登記規則第48条)
  • 金融機関:3~6か月以内(各行の内規による)
  • 公証役場:発行から3か月以内

電子契約時代における印鑑証明書の位置づけ

デジタル変革の進展により、多くの契約が電子化されていますが、印鑑登録証明書が必要な契約分野では以下の動向が見られます:

電子契約への移行状況

  • 進んでいる分野:一般的な商取引契約、雇用契約等
  • 従来通りの分野:不動産取引、相続関連、公正証書作成等

今後の展望

2021年のデジタル改革関連法により、押印義務の見直しが進んでいますが、本人確認の重要性が高い取引では、引き続き印鑑登録証明書の役割は重要です。電子証明書やマイナンバーカードを活用した新しい本人確認手段との併用が今後の課題となります。

まとめとチェックリスト

印鑑登録証明書が必要な契約書チェックリスト

  1. □ 不動産売買契約書(所有権移転登記)
  2. □ 金銭消費貸借契約書(高額融資・公正証書化)
  3. □ 遺産分割協議書(相続登記・預金解約)
  4. □ 公正証書作成時の委任状
  5. □ 株式譲渡契約書(M&A関連)
  6. □ 建設工事請負契約書(大規模工事)
  7. □ 賃貸借契約書(事業用不動産・高額物件)
  8. □ 自動車売買契約書(移転登録)
  9. □ 組合契約書・出資契約書
  10. □ 重要な和解契約書・示談書

実務上の重要ポイント

  • 有効期限の確認:ほとんどの手続きで発行から3か月以内が基準
  • 必要通数の把握:契約用・登記用等で複数通必要な場合が多い
  • 関係者全員分の準備:共有者、相続人、連帯保証人等の分も忘れずに
  • 代替手段の検討:海外在住者等の特殊事情への対応

印鑑登録証明書は、重要な契約における本人確認と意思確認の要となる書類です。電子契約が普及する現代においても、高額取引や権利移転を伴う契約では依然として重要な役割を果たしています。各契約の性質と法的要件を理解し、適切な手続きを行うことが円滑な取引の実現につながります。

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