2026年10月1日更新

取締役会・株主総会の議事録実務ガイド|電子署名・みなし決議・テンプレ付き

取締役会議事録・株主総会議事録は、作成して終わりではありません。取締役会のみなし決議(書面決議・会社法370条)の要件確認、株主総会のみなし決議(会社法319条)との違い、オンライン開催時の議事録記載、電子署名の選定、異議留保の残し方、議事録の保存期間(備置期間)の管理まで、実務上の事故ポイントは多岐にわたります。

本記事では、2026年10月1日時点の現行会社法・会社法施行規則・商業登記関係法令と法務省の公表資料を前提に、議事録実務で見落としやすい論点を「作成時」「開催時」「保存・開示時」の3フェーズで整理し、テンプレート4種(+付属書式2種)とチェックリストを示します。あわせて、2026年7月21日に運用が開始された商業登記リモート署名と、法制審議会で審議中の会社法制見直し(2026年3月の中間試案後、2026年8月26日の第17回会議まで)の状況を、現行法と明確に区別して紹介します。

最終更新:2026年10月1日|執筆:Legal GPT 編集部

議事録実務で押さえるべき論点マップ

議事録の実務上の論点は、大きく作成時・開催時・保存開示時の3フェーズに分類できます。以下の図は、各フェーズと本記事で扱う論点の対応関係を示したものです。

作成時の論点 電子署名の要件整理 異議留保の記載 みなし決議の要件・記載事項 会社法369条3項〜5項/施行規則225条 会社法370条・319条 施行規則101条4項・72条4項 開催時の論点 オンライン開催の記録 招集省略と決議省略の区別 職務執行状況報告 施行規則101条3項1号 会社法368条2項・363条2項・372条2項 保存・開示の論点 備置期間の起算日管理 同意書・関連資料の紐付け 過料制裁リスク 会社法371条・318条・319条2項 会社法976条 + 商業登記リモート署名(2026年7月21日〜)+ テンプレート + チェックリスト

第1部:議事録作成時の論点

取締役会 電子署名の要件整理 ── 「会社法上の成立」と「商業登記での利用」は別の確認事項

電子議事録をめぐる実務の混乱は、性質の異なる2つの問いが1つに束ねられていることに起因します。次のように分けて確認するのが安全です。

確認事項問いの内容参照すべき法令・資料
問①
会社法上の成立
その電磁的記録が、会社法上の取締役会議事録として適法に作成されているか会社法369条3項・4項、会社法施行規則225条
問②
商業登記での利用
その電子議事録を、商業登記のオンライン申請における添付書面情報として使用できるか商業登記法・商業登記規則(電子署名・電子証明書の要件、印鑑証明書を要する書面の規律)、法務省「商業・法人登記のオンライン申請について」

問①をクリアしていても、問②を当然にクリアしているとは限りません。逆に、登記に用いない議事録であれば、問②の検討は不要です。まず「その議事録を登記に使うのか」を決めてから、必要な署名方式を選ぶ順序が実務上は合理的です。

問①:会社法上の要件(369条3項・4項、施行規則225条)

会社法369条3項は、取締役会の議事について法務省令の定めるところにより議事録を作成すべきこと、および議事録が書面で作成されているときは出席した取締役および監査役がこれに署名し、または記名押印しなければならないことを定めています。議事録が電磁的記録で作成されている場合は、署名または記名押印に代わる措置として法務省令で定めるもの(会社法施行規則225条の電子署名)をとる必要があります(369条4項)。

要件内容(会社法施行規則225条)
本人性当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
非改変性当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること

この2要件は特定の事業者や技術方式を指定するものではないため、いわゆる立会人型(事業者署名型)のクラウド型電子署名サービスであっても、上記の要件を満たす限り、取締役会議事録の電子署名として用いる余地があります。ただし、ここでの判断はあくまで会社法上の要件の問題であり、問②とは別に検討します。

株主総会議事録との違い:株主総会議事録については、会社法318条1項・会社法施行規則72条が作成義務と記載事項を定めていますが、会社法上、出席者の署名・記名押印は要求されていません。実務で議長・出席取締役が押印する例が多いのは、定款・社内規程上の取扱いや、登記の添付書面としての要請によるものです。取締役会議事録と同じ感覚で「署名がないから無効」と判断しないよう注意してください。

問②:商業登記のオンライン申請で使えるか

法務省の案内によれば、オンライン申請の添付書面情報には作成者の電子署名を付与する必要があり、作成者とは作成する権限のある者(取締役会議事録であれば、これに署名すべき出席取締役など)をいうとされています。そのうえで、書面申請であれば市区町村長作成の印鑑証明書が必要とされる添付書面については、商業登記電子証明書、公的個人認証サービス電子証明書(マイナンバーカードの署名用電子証明書)、法務大臣の定める特定認証業務電子証明書など、使用できる電子証明書が限定されています。それ以外の添付書面情報については、法務大臣の指定を受けた事業者署名型(クラウド型)電子署名サービス等の電子証明書も使用でき、その一覧は法務省サイトで随時更新されています(商業登記規則102条5項2号に基づく指定)。

断定を避けるべきポイント:「このサービスを使えば、会社法上も商業登記上も必ず要件を満たす」という整理はできません。①会社法施行規則225条の要件、②当該登記事由で印鑑証明書が必要な書面か(必要なら使える電子証明書が限定される)、③利用する電子証明書が法務省の一覧に掲載されているか、④申請に使用するシステムが当該方式に対応しているか、を別々に確認してください。最終的には管轄登記所への事前確認で裏を取る運用を推奨します。

商業登記リモート署名 ── 2026年7月21日運用開始

法務省およびデジタル庁は、2026年(令和8年)7月21日午前9時から商業登記リモート署名の運用を開始しました。法務省は、これを商業登記電子証明書の新しい利用方法と位置づけています。

項目内容(法務省特設ページ・FAQ、デジタル庁公表資料に基づく)
署名鍵の保管署名鍵および電子証明書は、法務省が構築したクラウド環境上のハードウェアに保管されます。
利用できる場面会社・法人の代表者等が行政手続のオンライン申請や企業間の電子契約などに用いることができるとされています。
認証・署名認可商業登記電子認証ポータルへのGビズIDによるログインに加え、電子署名時は「鍵パスワード」の入力と、GビズIDアプリを導入した「認可端末」(スマートフォン)での認可コード入力が必要です。認可端末は1つの電子証明書につき1台のみ紐付け可能です。
立会人型との違い事業者署名型(立会人型)サービスが事業者の署名鍵で署名するのに対し、商業登記リモート署名は利用者自身の署名鍵で署名します。
既存証明書の転用既存のファイル形式の商業登記電子証明書はリモート署名では利用できず、リモート署名を使う場合は商業登記電子認証ポータルを用いて新規に取得する必要があります。リモート署名対応の証明書を取得しても既存のファイル形式の証明書は無効にならず、併せて保有する形になります。
ICカード形式民間事業者によるICカード格納サービスは引き続き利用できますが、ICカード形式ではリモート署名は利用できません。
発行手数料従来の商業登記電子証明書と同額(証明期間1か月500円、3か月1,100円…27か月8,300円)。発行手数料以外の料金は発生しないとされています。

取得までの流れ(商業登記電子認証ポータル+GビズID)

手順内容
事前準備利用予定の行政手続システム・署名アプリがリモート署名に対応しているかを確認し、GビズIDアカウントとGビズIDアプリを準備します。ポータルはプライム・エントリー・メンバーで利用可能ですが、アカウント種別により利用できる機能が異なり、鍵ペア作成・証明書取得等はメンバーでは原則利用できません(支配人として承認されたメンバーを除く)。
手順1商業登記電子認証ポータルの「鍵ペア及び証明書発行申請ファイル作成」機能で署名鍵と申請データを作成し、認可端末を紐付けます。
手順2管轄登記所へ電子証明書の発行申請を行います(窓口・郵送、または申請用総合ソフトによるオンライン申請。オンライン申請の方法自体は従来から変更なし)。
手順3交付されたシリアル番号を用い、ポータルの「電子証明書の取得」機能で電子証明書をリモート署名システムに登録します。
署名方法「署名ドライバソフト連携方式」(法務省提供の無償ソフトを導入)と「システム連携方式」(行政サービスがリモート署名システムと直接連携)があります。リモート署名システムのAPIを直接利用する方式は行政機関のみ利用可能で、民間事業者は利用できないとされています。
実務上の制約:商業登記リモート署名ドライバソフトは、法務省が公表するAPI仕様上、Windows 11 Home/Proを動作環境としており、ポータルFAQでもドライバはWindowsのみ対応と案内されています(ポータル自体の利用環境とは別です)。また、API仕様では繰り返し署名生成処理の回数上限は10回とされています。これはドライバの技術仕様上の上限であり、「あらゆる利用場面で常に10ファイルまで」という一般的な法的制限を意味するものではありません。利用する署名アプリ・行政サービス側の対応状況もあわせて確認してください。

商業登記電子認証ソフトのサポート終了予定

法務省FAQによれば、従来の「商業登記電子認証ソフト」は、リモート署名導入後も一定期間提供・サポートが継続されますが、サポートは令和9年(2027年)3月31日に終了する予定です。サポート終了後も一定期間提供は継続される予定ですが、再発行等の新規発行以外の用途に限られ、動作保証はなく、予告なく提供を終了する場合があるとされています。ファイル形式の商業登記電子証明書は、現時点では令和12年(2030年)まで発行が可能となる予定とされています。

スケジュール整理(2026年10月1日時点の法務省公表内容)
・2026年7月21日:商業登記リモート署名・商業登記電子認証ポータルの運用開始
・2027年3月31日:商業登記電子認証ソフトのサポート終了(予定)
・2030年まで:ファイル形式の商業登記電子証明書の発行が可能となる予定
いずれも予定であり、変更の可能性があります。

実務上の整理(まとめ表)

利用場面法的根拠・資料確認すべき要件
通常の取締役会議事録(電磁的記録)会社法369条4項・会社法施行規則225条出席取締役・監査役について本人性・非改変性を満たす電子署名がとられているか
登記申請の添付書面情報として使用する議事録・同意書商業登記法・商業登記規則、法務省オンライン申請案内印鑑証明書を要する書面か、使用する電子証明書が認められる種別か、申請システムが対応しているか
商業登記電子証明書をリモート署名で使う場合法務省・デジタル庁の運用(2026年7月21日〜)ポータルで新規取得済みか、GビズID・認可端末の準備、利用システムの対応状況、署名回数の制約
定款・社内規程に押印規定がある場合定款自治・社内規程電子化と規定の整合(定款変更の要否を含む)

異議留保の記載と責任推定 ── 会社法369条5項

取締役会の決議に参加した取締役であって、議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定されます(会社法369条5項)。この推定規定は、取締役の任務懈怠責任(423条1項)の追及場面で意味を持つため、法務担当者にとって重要です。

区分内容
法定(369条5項)決議に参加し、議事録に異議をとどめない取締役は賛成したものと推定される
実務上の推奨反対意見がある場合は、①「○○取締役より異議留保」と明記、②異議の理由を簡潔に記録、③賛成者・反対者・棄権者を明確に区別して記載

記載例:

「○○取締役より、『△△のリスクが十分に検討されていない』との理由により本議案に反対し、異議をとどめる旨の発言があった。」
みなし決議との関係:370条のみなし決議は「議決に加わることができる取締役全員の同意」が要件なので、反対の取締役がいれば成立しません。異議留保が問題となるのは、実際に会議を開催する取締役会です。

取締役会 みなし決議(書面決議)── 会社法370条の要件

会社法370条は、取締役会設置会社が一定の要件のもとで取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができるとする規定です。いわゆる「取締役会 書面決議」「決議の省略」と呼ばれる制度です。要件を分解すると次のとおりです。

No.要件実務上の確認ポイント
1定款に決議省略の定めがあること定款がない状態でみなし決議を行っても、決議の効力は生じません。最新の定款で条番号・文言を確認します。
2取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をすること提案者は取締役です(監査役・株主は提案者になれません)。提案書には提案者の氏名と決議事項を特定して記載します。
3当該提案につき、当該事項について議決に加わることができる取締役の全員が同意すること「在任取締役全員」ではありません。特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができないため(369条2項)、同意を要する取締役から除かれます。
4同意が書面または電磁的記録によること口頭・電話の同意では足りません。メール等の電磁的記録は可能ですが、後述の確認事項を満たす運用が必要です。
5監査役設置会社では、監査役が当該提案について異議を述べていないこと監査役の「同意」は要件ではありません。異議が述べられた場合はみなし決議は成立しません(次項参照)。
「在任取締役全員」との混同に注意:370条が求めるのは「当該事項について議決に加わることができる取締役」全員の同意です。たとえば取締役と会社との利益相反取引の承認(365条・356条)で当該取締役が特別利害関係人に当たる場合、その取締役の同意は不要であり、逆に同意書を集めて議決権を行使させたかのような外観を作ると、かえって議事の適法性が疑われかねません。特別利害関係の有無は議案ごとに判断し、該当者がいる場合は議事録・同意書の管理表に明記しておくのが安全です。

監査役の「異議がないこと」── 同意要件ではない

370条の括弧書は、監査役設置会社について「監査役が当該提案について異議を述べたとき」を除外しています。つまり法律上の要件は、取締役全員の積極的な同意と、監査役が異議を述べていないという消極的要件の2つであり、性質が異なります。

対象法律上の要件実務運用
議決に加わることができる取締役全員が書面・電磁的記録により同意の意思表示をすること同意書(またはメール等)を全員分取得・保存
監査役(監査役設置会社の場合)異議を述べていないこと(積極的同意は不要)後日の証跡を明確にするため、「異議がない旨の確認書」を任意に取得する例がある
「異議なし確認書」の位置づけ:監査役から確認書を取得する実務は、法律上の積極的同意要件を満たすためのものではなく、「異議が述べられなかったこと」を後日立証しやすくするための実務運用です。確認書がなくても異議が述べられていなければ要件は満たされますが、いつの時点まで異議がなかったのかを示す証跡として有用です。なお、会社法上の「監査役設置会社」には、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社は含まれない(会社法2条9号)ため、自社がどちらに当たるかもあわせて確認してください。

「招集手続の省略」「決議の省略」「報告の省略」の違い ── 368条2項・370条・372条

名称が似ているため混同されやすい3つの制度を整理します。

招集手続の省略(368条2項)決議の省略(370条)報告の省略(372条1項)
会議の開催開催する(招集通知の手続だけを省略)開催しない(決議があったものとみなす)開催しない(報告を要しないものとする)
要件取締役(監査役設置会社では取締役および監査役)全員の同意定款の定め+取締役の提案+議決に加わることができる取締役全員の書面・電磁的記録による同意+監査役の異議がないこと取締役・会計参与・監査役・会計監査人が、取締役(監査役設置会社では取締役および監査役)の全員に報告事項を通知
定款の定め不要必要不要
議事録の記載事項通常の取締役会議事録(施行規則101条3項)施行規則101条4項1号施行規則101条4項2号
使えない場面─反対者・未回答者がいる場合など要件を欠く場合代表取締役・業務執行取締役の職務執行状況報告(363条2項)には使えない(372条2項)

368条2項で招集手続を省略しても、会議自体は実際に開催するため、議事録は通常の取締役会議事録として作成し、出席取締役・監査役の署名等(369条3項・4項)が必要です。「全員同意で招集を省略した」ことと「全員同意で決議を省略した」ことは別物であり、議事録の様式も異なります。

メール・チャットによる同意 ── 一律に有効・無効と断定しない

370条は同意の方式を「書面又は電磁的記録」と定めており、メールなどの電磁的記録による同意も会社法上の方式として予定されています。同意の意思表示自体に電子署名を付すことは会社法上の要件ではありません。もっとも、「確認しました」「了解です」といった返信が常に有効、または常に無効と言えるわけではありません。次の観点で個別に確認する運用が安全です。

確認事項見るべき点運用上の工夫
提案の特定どの提案(議案)に対する返信かが明確か提案メールに議案番号・決議事項の全文(または添付PDF)を記載し、返信は引用付きで受ける
同意意思の明確性「受領した」「確認した」にとどまらず、可決に同意する意思が読み取れるか「第○号議案に同意します」等の定型文言での返信を依頼する
本人の特定当該取締役本人が送信したと確認できるか会社が把握する本人アドレスからの送信に限る、秘書等による代理送信の扱いを規程化する
記録の保存可能性10年間(371条1項)備え置き、閲覧等に対応できる形で保存できるかメール原本(ヘッダ情報を含む)をエクスポートし、議事録と紐付けて保存する
同意の時点最後の同意が到達した日がいつか(みなされた日の特定)同意管理表に各取締役の同意日時を記録する

チャットツールについても考え方は同じです。メッセージの削除・編集が可能な設定や、退職・アカウント削除で履歴が消える仕様の場合、保存可能性の点で不安が残るため、エクスポート手順を決めておくか、正式な同意はメールまたは電子署名付き同意書で受ける運用が無難です。登記に使う同意書は、後述のとおり別途の要件があります。

みなし決議の議事録記載事項と署名・押印 ── 施行規則101条4項1号

370条によって取締役会の決議があったものとみなされた場合も、会社は取締役会議事録を作成します。その内容は会社法施行規則101条4項1号により、次の事項とされています。

記号記載事項(施行規則101条4項1号)
イ取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロイの事項の提案をした取締役の氏名
ハ取締役会の決議があったものとみなされた日
ニ議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

署名・押印については、次の4つを分けて考えます。

区分内容
会社法上の議事録記載事項上記イ〜ニの4項目(施行規則101条4項1号)。開催型の議事録記載事項(同条3項:日時・場所、議事の経過の要領および結果等)とは異なります。
法律上要求される署名等369条3項・4項の署名・記名押印(電子署名)は「出席した取締役及び監査役」に課されるものです。みなし決議では実際の会議が開催されず出席者が存在しないため、会社法上、みなし決議の議事録に特定の者の署名・記名押印を求める規定はありません。
社内実務としての記名押印議事録の真正を示すため、「議事録の作成に係る職務を行った取締役」が記名押印(または電子署名)する運用は広く行われていますが、これは法定要件ではなく社内規程・証跡管理上の運用です。社内規程で定める場合は、その規程に従って統一します。
商業登記の添付書面として使う場合登記申請では、みなし決議について「当該場合に該当することを証する書面」が問題となり(商業登記法46条3項)、会社法上の議事録署名義務とは別に、登記事由ごとの押印・電子署名・印鑑証明書等の要件を確認する必要があります。特に代表取締役の選定を会社法370条のみなし決議で行い、その登記に用いる場合には、法務局の公表記載例で、取締役全員の記名押印等を求める取扱いが示されています。したがって、「370条の議事録には会社法上の署名義務がない」ことだけを理由に、登記用書面も無押印で足りると判断してはいけません(後述)。
よくある誤り:取締役会みなし決議の議事録に「同意株式数」や「出席取締役○名」を記載するケースが見られますが、370条の要件は議決に加わることができる取締役全員の同意であり、株式数や出席者は無関係です。株式数の記載は319条(株主総会みなし決議)側の発想であり、取締役会テンプレートへの混入は誤記の原因になります。

株主総会 みなし決議 ── 会社法319条(現行法)

2026年10月1日時点の現行319条1項は、取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす、と定めています。

取締役会(370条)株主総会(319条1項)
定款の定め必要不要
提案者取締役取締役または株主
同意の主体当該事項について議決に加わることができる取締役全員当該事項について議決権を行使することができる株主全員
監査役の異議監査役設置会社では、監査役の異議がないことも要件─
議事録記載事項施行規則101条4項1号(4項目)施行規則72条4項1号(①みなされた事項の内容、②提案をした者の氏名または名称、③みなされた日、④議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名)
同意書等の備置議事録または同意の意思表示を記載・記録した書面等を、みなされた日から10年間本店に備置(371条1項)同意の書面・電磁的記録を、みなされた日から10年間本店に備置(319条2項)。支店備置の規定はありません
議事録の備置上記に同じ(371条1項)本店10年・支店に写し5年(318条2項・3項。電磁的記録で支店閲覧に対応する措置をとる場合の例外あり)
改正検討との関係(現行法ではありません):法制審議会の部会では、株主総会の書面決議制度を「議決権の10分の9以上の同意+通知から1週間以内に異議を述べた株主がいないこと」で成立させる見直しが検討されており、2026年7月の第16回会議資料では、その対象を上場会社でない株式会社に限定する案が示されています。これは未成立・未施行の検討段階の案であり、現行319条は「議決権を行使できる株主全員の同意」です(→ 第6部で詳述)。

登記に使う場合の添付書面 ── 登記事由ごとに確認

取締役会決議が登記の原因となる場合(代表取締役の選定、本店移転〔定款所定の範囲内での具体的所在場所の決定〕、支店設置、募集株式の発行(公開会社の場合等)など)、添付書面は登記事由・申請方式・会社の状況によって異なります。「みなし決議なら常に○○が必要」とは一律に言えません。主な確認軸は次のとおりです。

確認項目根拠・考え方代表取締役選定(取締役会設置会社)での例
議事録 or 証する書面開催型は取締役会議事録(商業登記法46条2項)。みなし決議の場合は議事録に代えて「当該場合に該当することを証する書面」(同条3項)みなし決議なら各取締役の同意書等とみなし決議の議事録を準備するのが一般的
定款定款の定めがなければ登記すべき事項に無効原因が生じる申請では定款の添付が必要(商業登記規則61条)。みなし決議は定款の定めが前提みなし決議による選定では定款の添付を求められるのが通常
印鑑証明書(選定を証する書面に押された印鑑)代表取締役の選定を証する書面に係る押印・印鑑証明書の要否は、商業登記規則61条および登記事由・申請態様により確認する必要があります。変更前代表取締役が登記所に提出している印鑑を押印している場合に例外が認められる場面があります。会社法370条のみなし決議で代表取締役を選定するケースについて、法務局の公表記載例では、取締役全員の記名押印を求め、既存の代表取締役が登記所届出印を押印できない場合には、取締役全員の実印と各印鑑証明書を求める取扱いが示されています。通常の議案のみなし決議と代表取締役選定登記を同一扱いせず、具体的な登記事由について最新の法務局様式・記載例を確認してください。
就任承諾書・その印鑑証明書取締役会設置会社の代表取締役の就任承諾書の印鑑につき印鑑証明書を要する(再任の場合を除く。商業登記規則61条)新任の代表取締役の就任承諾書と印鑑証明書を準備
オンライン申請の電子署名印鑑証明書を要する書面に相当する添付書面情報には、商業登記電子証明書・マイナンバーカード等の限定された電子証明書による電子署名が必要。法務省案内では、代表取締役の選任を証する情報について、変更前の代表取締役がこれらの電子証明書で署名すれば、他の取締役は法務大臣指定のクラウド型電子署名等で足りる例が示されています電子署名で行う場合は、誰がどの電子証明書で署名するかを事前に設計

株主総会のみなし決議(319条)を登記に用いる場合も、議事録に代えて「当該場合に該当することを証する書面」(商業登記法46条3項)を添付し、株主リスト(商業登記規則61条)等の要否を確認します。具体的な書式は法務局の申請書様式・記載例で確認し、迷う場合は管轄登記所に照会してください。

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第2部:開催時の論点

取締役会 オンライン開催 ── 370条のみなし決議とは別問題

Web会議・電話会議で取締役が実際に議論し、即時に意思疎通しながら決議する取締役会は、会議を開催している点で370条のみなし決議とはまったく別の制度です。オンライン開催の取締役会では、定足数・決議要件(369条1項)を満たす必要があり、議事録は開催型として作成し、出席取締役・監査役の署名等(369条3項・4項)を要します。

会社法にオンライン開催を直接定める条文はありませんが、会社法施行規則101条3項1号は、議事録記載事項として「取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)」を掲げており、会議の場所にいない者が出席する形態を前提としています。一般には、出席者の音声(映像)が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明を互いにできる状態であることが、出席と扱う前提と理解されています。

区分内容
議事録の法定記載事項との関係開催日時・場所に加え、場所に存しない者の出席方法(例:「Web会議システムにより出席」)を記載(施行規則101条3項1号)
実務上の確認事項
(規程化推奨)
①接続方法・本人確認方法を事前に決め、冒頭で全員の音声・映像の双方向性を確認した旨を記録
②通信障害発生時の一時中断・再開の手順を規程化
③途中退席・再参加の時刻を記録し、各議案の採決時の出席者を特定
④バックアップ接続手段(電話等)の事前準備

開催場所の欄は、「当社本店○階会議室(議長所在地)。取締役○○はWeb会議システムにより出席」のように、物理的な場所と出席方法を分けて記載すると、後日の確認が容易です。完全オンラインの場合も、議長の所在場所などを場所として記載する例が一般的です。

株主総会との関係(改正検討中):法制審議会では、バーチャルオンリー株主総会について、議事録記載事項に「通信の方法」「場所を定めなかった旨」を加える案、通信記録等の作成・保存(直近の部会資料では株主総会の日から2年間とする案)などが検討されています。いずれも株主総会に関する未成立の改正案であり、取締役会に直接及ぶものではありませんが、オンライン会議の記録化の方向性として参考になります(→ 第6部)。

職務執行状況報告(363条2項)── 報告の省略はできない

代表取締役および業務執行取締役として選定された取締役(363条1項各号)は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(363条2項)。同項は本文のみの規定で、定款で報告頻度を緩和できる旨のただし書は置かれていません。

この報告については、372条1項の「取締役会への報告の省略」が適用されません(372条2項)。そのため、少なくとも3か月に1回は実際に取締役会を開催して報告を受ける必要があり、370条のみなし決議や372条1項の報告省略だけで1年間を回すことはできません。オンラインで実際に開催する取締役会であれば、この報告の場として用いることができます。なお、指名委員会等設置会社では、執行役の職務執行状況報告(417条4項)について同様に報告の省略ができないとされています(372条3項)。

区分内容
法定義務(363条2項・372条2項)3か月に1回以上の報告。報告の省略不可(実際の取締役会が必要)。
運用上の推奨事項年間開催計画で報告回を固定し、間隔が3か月を超えないよう管理。KPI・リスク管理状況等を含む報告資料を整備し、社外役員が監督機能を果たせる水準にする。

第3部:保存・開示の論点

取締役会 議事録 保存期間 ── 会社法371条と株主総会議事録

取締役会設置会社は、取締役会の日(370条により決議があったものとみなされた日を含む。)から10年間、369条3項の議事録または370条の意思表示を記載・記録した書面もしくは電磁的記録(「議事録等」)を本店に備え置かなければなりません(371条1項)。取締役会議事録には支店備置の規定はありません。

対象起算点期間・場所根拠
取締役会議事録(開催型)取締役会の日10年・本店371条1項
みなし決議の議事録・取締役の同意書等(書面・電磁的記録)決議があったものとみなされた日10年・本店371条1項
株主総会議事録株主総会の日本店10年、支店に写し5年(例外あり)318条2項・3項
株主総会みなし決議の株主の同意書等決議があったものとみなされた日10年・本店319条2項

実務上問題になりやすいのは、開催日(みなされた日)基準での保存満了管理と、別紙・添付資料・同意書・監査役確認書等の紐付け漏れです。とくにみなし決議では、議事録本体だけでなく同意の意思表示そのものが371条の備置対象になる点を意識してください。株主・債権者等による閲覧・謄写請求(371条2項以下)に対応できる管理も必要です。

デジタル保管の法的留意点

電磁的記録で作成・保管する場合でも、本店備置義務の内容は変わりません。商業登記電子証明書の証明期間は最長27か月であり、10年の備置期間と一致しません。なお、会社法が一律に長期署名フォーマットやタイムスタンプ更新を義務付けているわけではありませんが、証拠性・真正性を長期間検証できる状態を維持するという文書管理上の観点から、利用する電子署名サービスの検証方法、失効情報・証明書情報の保存、必要に応じた長期署名やタイムスタンプ等の運用を検討してください。

過料制裁リスク ── 会社法976条

議事録を作成しない、記載すべき事項を記載せず虚偽の記載をする、議事録等を備え置かない、正当な理由なく閲覧等を拒む、といった場合、取締役等は100万円以下の過料に処せられる可能性があります(会社法976条各号)。発生頻度は高くないとしても、議事録作成の社内チェック体制、定期的な議事録監査、役員への周知が基本的対応となります。

第4部:議事録テンプレート集(全4種+付属書式2種)

以下は、会社法および施行規則の法定記載事項を踏まえた記載例です。実際の使用にあたっては、各社の定款、社内規程、個別事情に応じた修正が必要です。

※「議事録事務担当者」「署名方式」「電子署名サービス名」等は必ず差し替えてください。登記申請に使用する場合は、法務局の申請書様式・記載例を確認し、必要に応じて管轄登記所に照会してください。

テンプレート1:取締役会議事録(開催型・書面作成版)

株式会社○○○○   第○回取締役会議事録  1. 開催日時:令和○年○月○日(○曜日)午後○時○分〜午後○時○分   2. 開催場所:当社本店○階会議室      (取締役○○○○は、Web会議システム(○○)により出席した。      議長は、開会に先立ち、出席者の音声及び映像が即時に他の出席者に      伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が      互いにできる状態であることを確認した。)   3. 出席者:      取締役総数○名中○名出席       ○○○○(議長)、○○○○、○○○○      監査役総数○名中○名出席       ○○○○   4. 議事の経過の要領及びその結果:      議長は、定足数を充足していることを確認し、開会を宣した。     第1号議案 ○○○○の件      議長より、別紙資料に基づき○○について説明がなされた。      質疑応答の後、議長が本議案の賛否を諮ったところ、出席取締役の      全員一致をもって原案どおり承認可決された。      (特別の利害関係を有する取締役がいる場合:取締役○○○○は、      本議案について特別の利害関係を有するため、決議に加わらなかった。)     【決議事項】      ○○○○について、別紙のとおり承認する。     (報告事項がある場合)      代表取締役○○○○より、会社法第363条第2項に基づき、自己の      職務の執行の状況について報告がなされた。  5. 議長:代表取締役 ○○○○  以上の議事の経過の要領及びその結果を明確にするため、この議事録を   作成し、出席した取締役及び監査役は次に署名又は記名押印する。  令和○年○月○日  取締役(議長)○○○○ ㊞   取締役    ○○○○ ㊞   監査役    ○○○○ ㊞

テンプレート2:取締役会議事録(開催型・電磁的記録版)

株式会社○○○○   第○回取締役会議事録  (注)本議事録は電磁的記録により作成し、出席した取締役及び監査役が   会社法第369条第4項及び会社法施行規則第225条に基づく電子署名を付した。    電子署名方式:○○社提供クラウド型署名サービス          (又は 商業登記電子証明書によるリモート署名/           ファイル形式の商業登記電子証明書/           マイナンバーカードの署名用電子証明書 等)    タイムスタンプ:○○(利用する場合)  1. 開催日時:令和○年○月○日(○曜日)午後○時○分〜午後○時○分   2. 開催場所:当社本店○階会議室(議長所在地)      (取締役○○○○は、Web会議システム(○○)により出席した。      議長は、出席者の音声及び映像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な      意見表明が互いにできる状態であることを確認した。)   3. 出席者:      取締役総数○名中○名出席       ○○○○(議長)、○○○○、○○○○      監査役総数○名中○名出席       ○○○○   4. 議事の経過の要領及びその結果:      議長は、定足数を充足していることを確認し、開会を宣した。     第1号議案 ○○○○の件      議長より、別紙資料に基づき○○について説明がなされた。      質疑応答の後、議長が本議案の賛否を諮ったところ、出席取締役の      全員一致をもって原案どおり承認可決された。     【決議事項】      ○○○○について、別紙のとおり承認する。  5. 議長:代表取締役 ○○○○   6. 議事録事務担当者:総務部 ○○○○  出席した取締役及び監査役は、法令に従い電子署名を付した。  (備考1)本議事録を商業登記手続に使用する場合は、印鑑証明書を要する   書面に相当するかを確認し、該当する場合は商業登記電子証明書、   マイナンバーカードの署名用電子証明書等、法務省が認める電子証明書に   よる電子署名を付すこと。会社法上の要件充足とは別に確認すること。   (備考2)商業登記電子証明書をリモート署名方式で使用する場合は、   商業登記電子認証ポータルで取得した対応証明書であること、及び   利用する申請システム・署名アプリが当該方式に対応していることを   確認すること。

テンプレート3:取締役会議事録(会社法370条のみなし決議)

株式会社○○○○   取締役会議事録(決議の省略)  会社法第370条及び当社定款第○条の規定に基づき、次のとおり取締役会の   決議があったものとみなされたので、会社法施行規則第101条第4項第1号に   基づき本議事録を作成する。  1. 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容:      第1号議案 ○○○○の件      ○○○○について、別紙のとおり承認する。  2. 上記事項の提案をした取締役の氏名:      代表取締役 ○○○○      (提案日:令和○年○月○日)  3. 取締役会の決議があったものとみなされた日:      令和○年○月○日      (当該事項について議決に加わることができる取締役○名全員が、      書面又は電磁的記録により同意の意思表示をした。監査役は、      当該提案について異議を述べなかった。)      (特別の利害関係を有する取締役がいる場合:取締役○○○○は、      本事項について特別の利害関係を有するため、議決に加わることが      できる取締役に含まれない。)  4. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名:      取締役 ○○○○  令和○年○月○日   株式会社○○○○   議事録の作成に係る職務を行った取締役 ○○○○ ㊞(社内規程による)  (注1)会社法上、みなし決議の議事録に特定の者の署名・記名押印を   求める規定はありません。上記の記名押印は、社内規程・証跡管理上の   運用として行うものです。   (注2)監査役設置会社では、監査役が異議を述べていないことが要件   です(会社法370条括弧書)。監査役から「異議がない旨の確認書」を   取得する運用は、法律上の同意要件ではなく、異議がなかったことを   後日示すための任意の証跡です。   (注3)各取締役の同意の意思表示を記載・記録した書面又は電磁的記録は、   本議事録とともに、決議があったものとみなされた日から10年間、本店に   備え置く必要があります(会社法371条1項)。   (注4)登記申請に使用する場合は、「当該場合に該当することを証する書面」   (商業登記法46条3項)、定款、同意書等、押印・電子署名、印鑑証明書その他   の要否を登記事由ごとに確認してください。特に、会社法370条のみなし決議で   代表取締役を選定する場合、法務局の公表記載例では取締役全員の記名押印等を   求める取扱いが示されています。会社法上の議事録署名義務の有無と、商業登記   上の添付書面・押印要件は別問題として確認してください。

付属書式A:取締役の同意書(370条)

同意書  株式会社○○○○ 御中  私は、会社法第370条及び貴社定款第○条に基づき、令和○年○月○日付けで   代表取締役○○○○から提案のあった下記事項について、当該提案を可決する   ことに同意します。  記   第1号議案 ○○○○の件   (決議事項)○○○○について、別紙のとおり承認する。  令和○年○月○日   (住所:登記に使用し印鑑証明書を添付する場合は記載)   取締役 ○○○○ ㊞  ※登記に使用する場合、押印する印鑑の種類(実印か否か)や電子署名の    種別は、登記事由と会社の状況に応じて事前に確認してください。

付属書式B:監査役の確認書(任意の証跡)

確認書  株式会社○○○○ 御中  私は、令和○年○月○日付けで代表取締役○○○○から取締役全員に対して   された下記提案(会社法第370条に基づく取締役会の決議の省略に係るもの)   について、異議を述べません。  記   第1号議案 ○○○○の件  令和○年○月○日   監査役 ○○○○ ㊞  ※本書面は、監査役が異議を述べていないことを後日明確にするための    任意の書面であり、会社法上の監査役の同意要件を定めるものでは    ありません。

テンプレート4:株主総会議事録(会社法319条のみなし決議)

株式会社○○○○   臨時株主総会議事録(決議の省略)  会社法第319条第1項の規定に基づき、次のとおり株主総会の決議が   あったものとみなされたので、会社法施行規則第72条第4項第1号に基づき   本議事録を作成する。  1. 株主総会の決議があったものとみなされた事項の内容:      第1号議案 取締役○名選任の件      取締役として○○○○及び○○○○を選任する。  2. 上記事項の提案をした者の氏名又は名称:      代表取締役 ○○○○      (提案日:令和○年○月○日)  3. 株主総会の決議があったものとみなされた日:      令和○年○月○日  4. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名:      代表取締役 ○○○○  (任意記載)      当該事項について議決権を行使することができる株主の総数:○名      上記株主の議決権の数:○個      上記株主全員から、書面又は電磁的記録により同意の意思表示を得た。  令和○年○月○日   株式会社○○○○   代表取締役 ○○○○ ㊞(社内規程・登記の要請による)  (注1)株主全員の同意の意思表示を記載・記録した書面又は電磁的記録は、   決議があったものとみなされた日から10年間、本店に備え置く必要が   あります(会社法319条2項)。支店備置の規定はありません。   (注2)本議事録自体は、本店に10年間、支店に写しを5年間備え置きます   (会社法318条2項・3項。電磁的記録の場合の例外あり)。   (注3)株主総会のみなし決議は定款の定めなく利用できますが(319条1項)、   取締役会のみなし決議(370条)は定款の定めが必要です。   (注4)会社法上、株主総会議事録に出席者の署名・記名押印は要求されて   いません。押印は社内規程又は登記の添付書面としての要請に基づくもの   として整理してください。   (注5)登記に使用する場合は、議事録に代えて「当該場合に該当すること   を証する書面」(商業登記法46条3項)、株主リスト、就任承諾書等の要否を   確認してください。   (注6)法制審議会で検討中の「議決権の10分の9以上の同意+異議なし」   による書面決議の見直し案は未成立です。現行法では全員の同意が必要です。

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第5部:実務チェックリスト

作成時チェック

電子署名関連(会社法サイド)

  • 電磁的記録で作成する場合、出席取締役・監査役が署名等に代わる措置(369条4項)をとっているか
  • 使用する電子署名が施行規則225条の要件(本人性・非改変性)を満たすか
  • 電子署名方式(サービス名・タイムスタンプの有無)を議事録または管理台帳に記録
  • 定款・社内規程に押印規定がある場合の整合性を確認

電子署名関連(商業登記サイド)

  • 登記に使用する可能性がある場合、印鑑証明書を要する書面に相当するかを確認
  • 使用する電子証明書が法務省の案内に掲載された種別・サービスか確認
  • 商業登記電子証明書をリモート署名で使う場合、ポータルで新規取得済みか(既存のファイル形式は転用不可)
  • GビズIDアカウント種別・認可端末(スマートフォン)の準備状況を確認
  • 利用予定の申請システム・署名アプリがリモート署名に対応しているか確認
  • 署名ドライバ方式の署名回数制限(1回の署名認可で10ファイルまで)を考慮
  • 商業登記電子認証ソフトのサポート終了予定(2027年3月31日)を踏まえた移行計画を策定

異議留保関連

  • 反対・異議がある場合、取締役名・理由を明記(369条5項の推定規定に対応)
  • 賛成者・反対者・棄権者、特別利害関係により決議に加わらなかった者を区別して記載

取締役会のみなし決議(370条)

  • 定款に決議省略の定めがあることを最新の定款で確認
  • 提案者が取締役であり、提案書で決議事項が特定されているか
  • 特別の利害関係を有する取締役の有無を議案ごとに判断(369条2項)
  • 議決に加わることができる取締役全員から書面・電磁的記録による同意を取得
  • 監査役設置会社の場合、監査役が異議を述べていないことを確認(確認書は任意の証跡)
  • メール等の同意は、提案の特定・同意意思・本人性・保存可能性・同意日時を確認
  • 施行規則101条4項1号の4項目を議事録に網羅
  • 議事録と同意書等をみなされた日から10年間本店に備置(371条1項)

株主総会のみなし決議(319条)

  • 現行法の要件は「議決権を行使できる株主全員の同意」であることを確認
  • 施行規則72条4項1号の4項目を議事録に網羅
  • 各株主の同意日を個別に記録し、最後の同意日をみなされた日として特定
  • 同意書等はみなされた日から10年間本店に備置(319条2項)、議事録は318条に従い本店10年・支店写し5年

登記関連

  • 開催型か、みなし決議(商業登記法46条3項の証する書面)かを確認
  • 定款、同意書、印鑑証明書、就任承諾書、株主リスト等の要否を登記事由ごとに確認
  • 変更前代表取締役の届出印(または対応する電子証明書)による押印・署名の有無を確認

開催時チェック

オンライン会議関連

  • 音声(映像)の即時性・双方向性が確保されていることを冒頭で確認し記録
  • 場所に存しない出席者の出席方法を議事録に記載(施行規則101条3項1号)
  • 通信障害時の一時中断・再開手順を規程化し、途中退席・再参加を記録
  • バックアップ接続手段(電話等)を準備
  • オンライン開催(会議あり)と370条のみなし決議(会議なし)の様式を混同していないか

職務執行状況報告関連

  • 代表取締役・業務執行取締役による3か月に1回以上の報告が実施されているか(363条2項)
  • 当該報告について報告省略(372条1項)を使っていないか(372条2項で不可)
  • 368条2項の招集省略を使う場合も、会議自体は開催し開催型の議事録を作成しているか

保存・開示チェック

  • 開催日(みなし決議はみなされた日)基準での10年保管スケジュールを管理
  • 別紙・添付資料・同意書・監査役確認書が議事録と紐付けて保管されているか
  • メール・チャットの同意を原本性を保てる形式でエクスポートしているか
  • 電子証明書の証明期間(商業登記電子証明書は最長27か月)と10年保存のギャップを埋める検証可能性確保策を検討
  • 閲覧・謄写請求に対応できる表示・検索方法を整備

第6部:会社法制見直しの検討状況(2026年8月26日 第17回会議まで)

留意事項:本セクションは法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会の公表資料に基づく検討状況の整理であり、改正法の成立・施行を前提とする記述ではありません。2026年10月1日時点で、要綱案の取りまとめ、法制審議会の答申、法案の国会提出はいずれも確認できず、現行法に基づく実務は本セクションの内容によって変更されません。部会資料の「本文」も「〜について、どのように考えるか」「〜で、どうか」という審議用の提案であり、確定内容ではありません。

審議の経緯(法務省公表資料に基づく)

時期できごと
2025年4月23日部会 第1回会議
2026年3月18日第12回会議で「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」を取りまとめ
2026年4月15日・5月27日第13回・第14回会議(参考人からの意見聴取等)
2026年6月24日第15回会議:要綱案の取りまとめに向けた検討(1)(部会資料13)。株式交付、現物出資、バーチャル株主総会、実質株主確認制度等。中間試案へのパブリック・コメントで寄せられた意見の概要も公表(参考資料30)
2026年7月22日第16回会議:要綱案の取りまとめに向けた検討(2)(部会資料14)。株主総会のデジタル化に関するその他の検討事項、「会議体」としての株主総会等(株主総会の書面決議制度を含む)、株主提案権等
2026年8月26日第17回会議:要綱案の取りまとめに向けた検討(3)(部会資料14・15)。会社法316条2項の調査者制度、検査役選任の申立権者、指名委員会等設置会社制度、責任限定契約制度等、事業報告等と有価証券報告書の開示の合理化
今後要綱案の取りまとめ、法制審議会総会での答申、法案提出の時期はいずれも未確定

議事録実務に関連する主な検討事項(第15回〜第17回会議資料ベース)

テーマ直近の部会資料で示されている内容議事録実務への影響(仮に制度化された場合)
バーチャルオンリー株主総会 中間試案と同様に、株主総会の場所を定めないことができる旨を定款で定めることを要件とし、インターネット利用に支障のある株主のための措置(機器貸出し、電話の併用、書面投票の採用、株主全員の同意のいずれか)と、即時・双方向の通信方法の使用を求める案。適用対象は非上場会社を含む全ての株式会社。産業競争力強化法に基づく定款の定めがある会社は、施行日に会社法上の定款変更決議をしたものとみなす想定(部会資料13)。 招集決定事項・招集通知事項に通信方法等が加わる。
議事録記載事項・通信記録等 株主総会議事録の記載事項に①議事における情報の送受信に用いた通信の方法、②場所を定めなかった旨を加える案。通信履歴・通信内容を記録した「通信記録等」を作成し、株主総会の日から2年間保存する案(中間試案では10年案と短期案が併記されていたものを具体化)。株主の閲覧謄写請求権(拒絶事由あり)も提案。ハイブリッド出席型は、招集事項・議事録記載事項(通信方法)・セーフハーバールールに限定して規律を設ける案。 議事録本体に加え、通信ログの保存・閲覧対応の体制が必要になり得る。
通信障害と決議取消しの特則 合理的に必要な範囲で法務省令で定める通信障害対策措置を用意した場合、通信障害による決議方法の法令・定款違反は、会社の故意・重過失による通信障害か、違反が決議に影響を及ぼすときに限り取消事由とするセーフハーバールール案。議長による延期・続行の決定に関する規律案も。 事前に用意した通信障害対策の記録の重要性が高まる。
株主総会の書面決議制度(319条) 上場会社でない株式会社について、提案を株主に通知し、議決権の10分の9(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上を有する株主が書面・電磁的記録により同意し、かつ同意株主が賛成したとすれば決議要件を満たす場合に、通知発出日から1週間以内に異議を述べた株主がいなければ決議があったものとみなす案。決議の成立時点は異議申述期間経過時とする考え方が前提。報告事項にも同様の規律を設ける案(部会資料14)。 非上場会社では、同意徴求に加え、通知日・異議申述期間の管理と記録が必要になり得る。現行の全員同意テンプレートは改正法施行まで変更不要。
事前の議決権行使による決議の合理化 いずれも上場会社に限定し、株主総会の開催自体は前提としたうえで、①定款の定めにより、事前の議決権行使で決議要件を満たしたときは行使期限経過時に決議があったものとみなす案、②定款の定めなく、事前行使で決議要件を満たし議長がその旨を宣言したときに決議があったものとみなす案。いずれの場合も取締役等の説明義務(314条)は残るとし、一定割合の株主の反対通知による適用排除も問題提起(部会資料14)。 議事録に「みなし成立」の旨や報告の記載が必要になり得る。
株主総会のデジタル化(その他) 電子提供制度における書面交付請求制度を移行期間(2〜3年程度)を設けて廃止する案、株主1,000人以上の会社の書面投票義務を書面投票または電子投票の選択制とする案、招集通知の電磁的方法による通知を促す規律の見直し(口座管理機関の負担を踏まえ検討継続)(部会資料14)。 招集・議決権行使関係書類の記録管理に影響し得る。
実質株主確認制度 上場会社が仲介機関である名義株主に対し、直近下位仲介機関・指図権者の情報提供を請求できる制度。過料に加え、故意・重過失の違反者に対する議決権停止通知の仕組みが問題提起されている(部会資料13)。 議決権行使の記録・集計方法に影響が生じ得る。
使用人等への株式無償交付 中間試案で示された論点。第15回会議の部会資料13では【検討中】とされている。 取締役会・株主総会の決議事項が追加・変更される可能性がある。

実務上の備え

法改正の成否・内容・時期は未確定であるため、現行法に基づく実務を確実に整備することが最優先です。そのうえで、以下の準備を進めておくことが考えられます。

検討事項具体的なアクション
バーチャル総会への対応可能性配信基盤・通信障害対策の整理、株主総会運営規程・定款変更の条文案の検討(施行前に定款変更しても現行法上の効力は別問題である点に留意)
通信記録・障害対応オンライン開催時の通信ログ・障害記録の取得可否をベンダーと確認
みなし決議フロー現行の全員同意ベースの運用を維持しつつ、非上場会社では要件変更時の通知・異議期間管理のフローを洗い出し
審議状況のモニタリング法務省の部会ページで、議事録・部会資料・要綱案の公表を定期確認

よくある質問(FAQ)

Q1. 取締役会議事録に電子署名は使えますか?
使えます。議事録を電磁的記録で作成した場合、出席した取締役および監査役は、署名・記名押印に代わる措置として会社法施行規則225条の要件(本人性・非改変性)を満たす電子署名を行います(会社法369条4項)。ただし、その電子議事録を商業登記の添付書面情報として使えるかは、印鑑証明書を要する書面かどうか等により使用できる電子証明書が異なるため、別途確認が必要です。
Q2. 取締役会のみなし決議(書面決議)の要件は?
①定款に決議省略の定めがあること、②取締役が決議の目的である事項を提案すること、③当該事項について議決に加わることができる取締役全員が書面または電磁的記録で同意すること、④監査役設置会社では監査役が異議を述べていないこと、です(会社法370条)。特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができないため(369条2項)、同意を要する取締役から除かれます。
Q3. 監査役の同意書は必要ですか?
法律上の要件は監査役が「異議を述べていないこと」であり、監査役の同意は要件ではありません。異議がない旨の確認書を取得する実務は、後日の証跡を明確にするための任意の運用です。
Q4. みなし決議の議事録には何を記載し、誰が署名しますか?
会社法施行規則101条4項1号により、①決議があったものとみなされた事項の内容、②提案をした取締役の氏名、③みなされた日、④議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載します。369条3項・4項の署名等は出席取締役・監査役に課されるもので、出席者のいないみなし決議の議事録について会社法上の署名義務はありません。記名押印は社内規程等による運用です。
Q5. メールで「了解です」と返信があれば同意になりますか?
一律には判断できません。どの提案への返信か特定できるか、可決への同意意思が明確か、本人の送信と確認できるか、10年間保存できるかを確認してください。定型の同意文言で返信を受ける運用が安全です。
Q6. 取締役会議事録の保存期間は?
取締役会の日(みなし決議では決議があったものとみなされた日)から10年間、議事録またはみなし決議に係る同意の意思表示を記載・記録した書面等を本店に備え置きます(会社法371条1項)。株主総会のみなし決議の同意書は、みなされた日から10年間本店に備え置き(319条2項)、株主総会議事録は本店10年・支店に写し5年です(318条)。
Q7. 株主総会のみなし決議は「10分の9の同意」でできるようになったのですか?
いいえ。2026年10月1日時点の現行319条1項は、議決権を行使することができる株主全員の同意を要件としています。10分の9以上の同意+異議なしによる見直しは法制審議会部会で検討中の案(直近資料では非上場会社に限定)であり、未成立・未施行です。
Q8. オンラインで開催した取締役会はみなし決議ですか?
いいえ。Web会議等で実際に即時の意思疎通をしながら審議・決議する取締役会は「開催」された取締役会です。370条のみなし決議(会議を開催しない)とは別であり、開催型の議事録を作成し、場所に存しない出席者の出席方法を記載します(施行規則101条3項1号)。

まとめ

フェーズ重要な論点
作成時電子署名は「会社法上の要件」と「商業登記で使えるか」を分けて確認する。取締役会のみなし決議(370条)は、定款・取締役の提案・議決に加わることができる取締役全員の書面等による同意・監査役の異議なしの4点を確認し、監査役の確認書は任意の証跡と位置づける。みなし決議の議事録は施行規則101条4項1号の4項目で作成し、記名押印は法定要件ではない。株主総会のみなし決議(319条)は現行法では全員同意。
開催時招集省略(368条2項)・決議省略(370条)・報告省略(372条)を区別する。オンライン開催は開催型として議事録に出席方法を記載。363条2項の報告は省略できない。
保存・開示371条により議事録または同意書等を10年間本店に備置。株主総会の同意書は319条2項(本店10年)、議事録は318条。同意書・関連資料の紐付けと電子署名の長期検証性を管理する。

法務担当者としては、「法定事項」と「実務上の運用」、そして「現行法」と「審議中の改正案」の線引きを明確に保ちながら、現行法に基づく実務を着実に整備することが最も重要です。

参考法令・一次資料

免責事項:本記事は2026年10月1日時点で公表されている法令・法務省等の一次資料に基づくものであり、法的助言を構成するものではありません。商業登記リモート署名の運用、対応システムの範囲、商業登記電子認証ソフトのサポート終了時期等は今後変更される可能性があります。法制審議会の審議状況も今後変動します。登記の添付書面は事案により異なるため、具体的な事案については弁護士・司法書士等の専門家および管轄登記所にご確認ください。

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