外国語で書かれた契約書──とくに英文契約書のレビューは、読み解くだけで疲弊するもの。
そんなときに頼りになるのが、生成AI(ChatGPTなど)の力です。
今回は、実務で役立つAI活用テクニックを厳選してご紹介します。
1. 翻訳+意図確認まで、ChatGPTで完結
まずおすすめなのが、DeepLで訳して終わりにしないこと。
ChatGPTに以下のようなプロンプトで条文の趣旨を確認するだけで、理解がグッと深まります。
▼ プロンプト例:
「以下の英文契約書の条文について、日本語に翻訳した上で、そのビジネス上の趣旨を実務家向けに簡潔に説明してください。」
(英文条文を貼り付け)
このプロンプトは、契約目的・立場・商習慣などを考慮した説明が返ってくるため、レビュー判断の助けになります。
2. 「問題点の指摘」も任せてよし
次に便利なのが、条文のリスク分析や、日本法との整合性の確認。
実際の業務では、ChatGPTに次のように依頼しています。
▼ プロンプト例:
「以下の英文契約条文は、日本法での契約実務に照らしてどのようなリスクや問題点があるか、法務部員向けに指摘してください」
(英文条文を貼り付け)
このように頼めば、形式的な翻訳では見逃しやすい懸念点(例:損害賠償責任の範囲、裁判管轄、解除条件など)を拾ってくれます。
3. ChatGPTを相棒化する3ステップ
- 英文をChatGPTに直接貼る
- 「どんな条文?」と趣旨確認
- 「問題ある?」とリスク確認
この3ステップで、誤訳・解釈ミス・見落としを大幅に防げます。
ChatGPTは「英文を読み飛ばす」のではなく、「一緒に読んでくれる相棒」として使うのがコツです。
4. AIの“それっぽい訳”にツッコミを入れるクセをつける
ChatGPTやDeepLは非常に優秀ですが、ときに「それっぽいけど微妙に間違っている」訳を返してくることがあります。
特に契約書のような緻密な文書では、1語の違いで意味が逆になることも。
例えば、「subject to the terms herein」が「本契約に従うものとする」と訳されたとしても、文脈によっては「本契約の条件が優先する」意味になり、契約上の優劣関係が逆転してしまう可能性があります。
そこで重要なのは、「一度訳されたものにも疑ってかかる」こと。ChatGPTに対しても、次のような確認を加えて精度を上げています。
▼ プロンプト例:
「以下の訳文について、“本当にその訳で正しいか”を契約実務の観点で検証してください。必要に応じて誤訳を指摘してください。」
(翻訳済みの日本語文と元の英文を貼り付け)
このようにツッコミを入れることで、AIの“うっかり間違い”を事前に防ぐことができます。
生成AIは「一発で正解を出す道具」ではなく、こちらから問い直すことで真価を発揮する相棒だと考えると、レビューがはかどります。
5. 長文もブロック単位で分けて聞く
ChatGPTは長すぎる条文だと文脈を誤ることがあります。
その場合は、1条ごと、あるいは1文ずつ分解して聞くと精度が上がります。
また、「この前後関係も考慮して」と伝えると、より正確な趣旨説明が得られます。
なお、大前提として、生成AIはあくまで補助的なツールです。
最終的な法的判断やレビュー結果に対する責任は、人間(法務担当者や弁護士)自身が負うものであることを忘れてはなりません。
まとめ:翻訳ツール+生成AIで“解釈力”を強化
外国語の契約書レビューでは、翻訳だけで終わらず、「趣旨をつかむ」「リスクを見る」「AIの誤訳を見抜く」という工程がカギになります。
生成AIを相棒として使い倒せば、法律知識の補完+時短+精度向上が実現します。
そしてもちろん、会社の予算が使えるのであれば、最終的には弁護士の確認を入れるのが最強です。
生成AIで事前検討を進めておけば、弁護士への相談も的確かつ効率的になり、ダブルで安心できます。