ルーティンこそAIに。人間は”考える仕事”に集中する時代へ

法務部AI活用1年半の実体験レポート

法務部にAIが浸透して1年半。最初は「契約書の作成が早くなった」「調査時間が短縮された」と表面的な効率化に目が向いていました。

でも最近気づいたのは、本当の価値は別のところにあったということ。AIが得意な「ルーティン業務」を任せることで、人間は本来やるべき「考える仕事」に集中できるようになった──これが一番大きな変化です。

(関連:導入手順や留意点は「法務向けAI活用ガイド(導入手順と留意点)」で体系的に整理しています。)
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ルーティン業務の”見える化”が進んだ

ChatGPTを使い始めて分かったのは、法務の仕事の中に意外なほど多くの「定型作業」があったということです。

AIに任せられるルーティン業務

  • 契約書の初期ドラフト作成
    雛形ベースの文書作成
  • 定型的な法務Q&A対応
    「印紙はいくら?」「取締役変更の手続きは?」
  • 社内説明資料の構成立案
    PowerPoint資料のアウトライン作成
  • 条項の文言調整・言い換え
    「より穏やかな表現に」「法的に正確な文言に」
  • 法令改正の概要整理
    改正内容の要点まとめ、影響範囲の整理
  • 英文契約書の初期理解
    条文の趣旨把握、日本語での要約
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人間が集中すべき「考える仕事」とは?

人間の専売特許

  • 社内政治と利害調整
    営業部「売上のためには」vs 法務部「リスクがあります」の落としどころを見つける
  • 相手方との交渉戦略
    どこで譲り、どこで踏ん張るか。相手の立場を読んだ駆け引き
  • 経営判断への助言
    リスクの重要度を経営視点で評価し、意思決定をサポート
  • 組織のあり方設計
    社内規程や業務フローを、実態に合わせてデザインし直す
  • 人間関係の潤滑油
    「この人にはこう伝えれば通じる」という人を見る力
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実体験:「考える時間」が2倍になった

Before(AI導入前)

契約書作成2時間
条項の調整1時間
社内説明資料1時間
実際の検討・判断1時間
合計5時間(考える時間は20%)

After(AI活用後)

契約書作成30分(AIでドラフト)
条項の調整20分(AIで候補生成)
社内説明資料20分(AIで構成案)
実際の検討・判断2時間
合計3.5時間(考える時間は57%)
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変わりつつある法務のスキルセット

従来の法務スキル

  • 契約書の読み書き能力
  • 法令知識の豊富さ
  • 条文作成の技術力
  • 調査・情報収集力

これからの法務スキル

  • AIを適切に使いこなす力(プロンプト設計、出力の評価)
  • 複雑な利害関係の調整力(社内外のステークホルダー対応)
  • 経営目線でのリスク判断力(優先順位付け、意思決定支援)
  • 組織デザイン・業務設計力(効率的な仕組みづくり)
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結果として「付加価値」が向上

以前の評価

  • 契約書をチェックしてくれる部署
  • 手続きを教えてくれる部署

現在の評価

  • リスクを整理して判断材料を提供してくれる部署
  • 他部署との調整をスムーズにしてくれる部署

処理部門から、戦略部門への転換が始まっています。

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注意点:AIに頼りすぎてはいけない領域

  • 最終的な法的判断: 責任を持って人間が決断
  • 機密性の高い案件: 情報セキュリティの観点で制限
  • 微妙なニュアンスの読み取り: 相手の真意や空気感の把握
  • 会社固有の事情反映: 社内の特殊事情や過去経緯
実務レベルの運用ルールやプロンプト設計例は、こちらの実践プロンプト集が参考になります:
法務向け・社内やりとり用ChatGPTプロンプト集(テンプレ)
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まとめ:法務は「思考職」へと進化する

ChatGPTの登場で、法務の仕事は根本的に変わりました。「何でも自分でやる法務」から「考えることに集中する法務」へ

ルーティンワークをAIに任せることで生まれた時間を、本当に人間にしかできない「判断」「調整」「設計」に使う。これが、AI時代の法務部門の新しい在り方だと思います。

もし今、日々のルーティンに追われて「本当にやりたい法務の仕事」ができていないと感じているなら、ChatGPTを試してみてください。きっと、新しい法務のあり方が見えてくるはずです。

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免責:本記事は一般的な実務経験の共有であり、個別の法的助言ではありません。最終的な法的判断は所属組織の責任者や外部専門家にご相談ください。