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【2026年施行】改正下請法(中小受託取引適正化法) 実務チェックリスト+契約テンプレ

【2026年施行】改正下請法(中小受託取引適正化法) 実務チェックリスト+契約テンプレ|Legal GPT

公開日: 2025年10月 | 最終更新: 2025年10月(暫定版)

【2026年施行】改正下請法(中小受託取引適正化法) 実務チェックリスト+契約テンプレ

リード(結論要約)

2026年1月1日施行予定の改正下請法(正式名:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律、通称:中小受託取引適正化法/以下「取適法」)により、主な変更点は次の通りです:

  • 用語変更(親事業者→委託事業者、下請事業者→中小受託事業者等)
  • 従業員数基準の導入(業種類型に応じた300人/100人基準)
  • 手形的支払手段に対する実質的規制(支払期日までの実現性が担保されない手段は原則問題)
  • 価格協議義務の明文化・強化(協議の形式的実施は差し止められる)
  • 運送委託の追加(物流・配送も規制対象に)

要点:契約書の用語・支払方法の見直し、価格協議フローの文書化(記録保存)、取引先の従業員数確認フローの導入が最優先の対応事項です。

免責:本稿は2025年10月時点の公開情報に基づく暫定的な実務指針です。公開前に必ず公正取引委員会・中小企業庁の最新版を確認のうえ、社内弁護士または外部弁護士による最終確認を行ってください。

目次

  1. 改正のポイントと趣旨
  2. 適用範囲・影響を受ける事業者(判定フロー)
  3. 重要ポイント早見表(改正前後)
  4. 実務フロー(取引開始〜支払)
  5. 契約条項テンプレ(修正版)
  6. 内部統制・証憑保存・監査対応
  7. 行政執行リスクと想定対応
  8. FAQ

1. 改正のポイントと趣旨(要点整理)

改正の趣旨は、物価上昇・コスト高騰の下で中小受託事業者の事業持続性を確保し、発注側の一方的な負担転嫁や不公正な取引慣行を是正することにあります。主な改正点を要約します。

  • 用語の見直し:法用語を更新し、当事者表記を「委託事業者」「中小受託事業者」へ統一。
  • 適用基準の追加:従来の資本金基準に加え、業種別の従業員数基準(例:300人/100人)を導入。
  • 支払手段の実務的制約:約束手形等、支払期日までに中小受託事業者が実質的に現金を受領できない手段は問題視される。電子記録債権等は「満額受領が担保される場合」のみ例外。
  • 価格協議義務の明文化:中小受託事業者からの改定要請に対する誠実な協議義務(開催・資料提示・議事録作成)を強化。
  • 対象取引の拡大:従来の製造・修理等に加え、運送委託が対象に含まれる。

2. 適用範囲・影響を受ける事業者(判定フロー)

判定に使う主要指標は次の通りです:

  • 資本金(従来基準)
  • 常時使用する従業員数(新基準)
  • 取引類型(製造・修理・情報成果物作成・運送等)

実務上の注意点

  • 従業員数は原則として契約当事者法人単位で判定(グループ合算ではない)
  • 境界値(例:300人等)の取引先は早期に書面で確認する運用を導入する
  • 既存契約でも、施行日以降の給付・支払に関しては新基準が適用され得る点に留意する

判定用サマリ表(簡易)

取引類型委託事業者(目安)中小受託事業者(目安)
製造委託・修理委託・運送等従業員300人超 または 資本金3億円超従業員300人以下 または 資本金3億円以下
情報成果物作成・役務提供等従業員100人超 または 資本金5,000万円超従業員100人以下 または 資本金5,000万円以下

注:上表は実務上の便宜的サマリです。最終判定は条文・施行規則・公取委の運用基準で行ってください。

3. 重要ポイント早見表(改正前後比較)

項目改正前(〜2025/12)改正後(2026/1〜)
支払期日給付を受けた日から60日以内に定める(従来通り)【維持】60日ルールは維持。検収期間等を含めて実効性を確保する必要あり。
支払方法約束手形の使用が可能【実質的制約】手形等により中小受託事業者が満額の現金を受領できないこととなる支払手段は原則問題。電子記録債権等は例外的に認められる場合がある(満額受領が担保される場合)。
書面交付事前承諾があれば電子交付可要件を満たす電子交付は中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず利用可能となる運用が見込まれる(詳細は運用指針を確認)。
価格協議買いたたき禁止が運用基準として問題協議の不履行・形式的協議は明確に問題とされる。誠実な協議の記録が重要。
対象取引製造・修理・情報成果物等運送委託を追加。

4. 実務フロー(取引開始〜支払)と注意点

フェーズ1:取引開始前(事前確認)

  • 取引先の基本情報確認(登記事項・公開情報)
  • 従業員数の確認は「法人が作成する管理資料」や代表者証明で可能(個人情報は不要)
  • 適用判定後は下請法チェックリストの適用を開始

フェーズ2:見積・価格協議

  • 協議の記録(日時、参加者、提示資料)を必ず作成・保管
  • 協議を求められた場合は誠実に対応(要請から14日以内を目安に協議日程を設定)

フェーズ3:契約締結(3条書面/発注書)

  • 3条書面は電子交付でも可。ただし保存要件・検索性を担保
  • 契約書は用語を改め、支払方法・検収基準・従業員数表明条項等を明記

フェーズ4:履行・検収

  • 受領日(給付の起算日)を明確に記録(受領証を保存)
  • 検収基準は客観的に定め、検収日を記録

フェーズ5:支払(期日の遵守)

  • 支払は60日ルールを超えないように設計
  • 振込手数料等の負担は原則委託事業者負担とする運用が妥当(契約書で明確化)
  • 手形等を使う場合は、事前に「満額受領が担保される」ことを証する資料を取得

5. 契約条項テンプレート(推奨修正版)

以下は実務でそのまま利用できる文言例(抜粋)です。公開用には Word 版を提供しています(下のダウンロード参照)。

5-1 当事者の定義(用語変更)

第1条(当事者)
株式会社○○(以下「委託事業者」という)は、△△株式会社(以下「中小受託事業者」という)に対し、以下の業務を委託する。

5-2 従業員数の表明及び通知(修正版)

第○条(従業員数の表明及び通知)
1. 中小受託事業者は、本契約締結時点における常時使用する従業員数が○○人であることを表明し、これを保証する。
2. 中小受託事業者は、前項の従業員数に増減が生じた場合、当該増減が生じた日から30日以内に書面により委託事業者へ通知するものとする。
3. 委託事業者は、合理的な理由に基づき当該従業員数の確認を求めることができる。中小受託事業者は、個人情報保護に配慮しつつ、法人作成の管理資料又は代表者証明等により合理的に協力するものとする。
4. 前項の確認の結果、重大な虚偽表示が認められた場合、委託事業者は相当の催告期間を付して是正を求め、是正されないときは本契約を解除し得る。

5-3 支払方法(手形等の取り扱い)

第○条(支払方法)
1. 委託代金は、原則として中小受託事業者の指定する銀行口座への振込により支払うものとする。
2. 手形払その他、当該中小受託事業者が支払期日までに委託代金の満額相当分の現金を受領することが困難となる支払手段は原則として用いないものとする。
   電子記録債権、ファクタリング等の手段を用いる場合には、委託事業者は当該手段により中小受託事業者が支払期日までに満額の現金を受領できることを証する書類を事前に提示し、書面で合意した場合に限り利用する。
3. 振込手数料は原則として委託事業者が負担するものとする。ただし当事者間の別段の合意がある場合はこれに従う。

5-4 支払期日(60日ルール)

第○条(支払期日)
1. 委託事業者は、中小受託事業者から給付を受けた日(以下「受領日」という)から60日以内に支払期日を定め、当該期日までに委託代金を支払うものとする。
2. 検収期間は受領日から□日以内とし、検収完了日から□日以内に支払うものとする。なお、検収期間と支払期日の合計は60日を超えないよう設定するものとする。

5-5 価格協議(手続明確化)

第○条(価格協議)
1. 中小受託事業者から委託代金の改定要請があった場合、委託事業者は要請を受けてから遅滞なく(原則として14日以内)協議の場を設定し、誠実に協議を行うものとする。
2. 協議に際して当事者は、必要な資料(労務費・原材料費・エネルギーコスト等の変動を示す資料)を相互に提示し、協議の経過及び結果を議事録として作成し、3年間保存するものとする。
3. 委託事業者が前項の協議の求めに対して正当な理由なく応じない等、本条の趣旨に反する行為を行った場合、当該行為は本契約の重大な債務不履行とみなされる。

5-6 遅延利息(法令参照型)

第○条(遅延利息)
委託事業者が本契約に基づく支払を期日までに行わない場合の遅延利息は、公正取引委員会の規則に定める率(現行の公表率を準用する旨)によるものとする。

※ テンプレ条項は標準例です。実使用前に社内弁護士または外部弁護士のレビューを必ず受けてください。

6. 内部統制・証憑保存・監査対応の実務ポイント

保存すべき主な証憑

  • 発注関係:3条書面(発注書面)、見積書、発注メール
  • 契約関係:基本契約、個別契約、議事録
  • 履行関係:納品伝票、受領証、検収議事録
  • 支払関係:振込明細、支払処理記録
  • 価格協議関係:協議議事録、提示資料、メールログ

電子保存(電子帳簿保存法との整合)

  • 真実性:タイムスタンプ、訂正・削除履歴の保持
  • 可視性:検索性と出力可能性の担保
  • システム関係書類の保存:運用マニュアル、アクセス権限ログ等

内部監査の勧め

  • 年1回以上の定期監査・サンプルチェックの実施
  • 監査結果の経営層エスカレーションと是正措置の記録
  • 通報窓口の整備と報復禁止の周知

7. 行政執行リスクと想定対応(勧告・公表等)

違反が疑われた場合の想定対応:

  • 立入調査・資料提出要求
  • 勧告・命令・公表
  • 最悪の場合、過料等の措置

事前準備(推奨)

  • 調査時に提示可能な契約書・帳簿・議事録を常に整備
  • 想定問答集を作成し、担当者の対応訓練を実施
  • 発見事項は速やかに是正し、その履歴を残す

8. FAQ(よくある誤解と正しい理解)

Q1. 従業員数基準はいつから適用されますか?
A1. 施行日(予定:2026年1月1日)から適用されます。既存契約であっても、施行日以降に発生する給付・支払関係については新基準が適用され得るため、継続取引の再確認を推奨します。
Q2. 手形払いは完全に禁止されますか?
A2. 手形自体が直ちに違法になるわけではありませんが、支払期日までに中小受託事業者が満額の現金を受領できない手法は問題とされるため、実務上は振込等への移行が求められます。電子記録債権等は「満額受領が担保される」場合に限定される見込みです。
Q3. 価格協議はどの程度の形式で行えばよいですか?
A3. 誠実な協議が必要です(例:要請から14日以内に協議日程を設定、必要資料を提示、議事録を作成・保存)。形式的な協議で済ますことは運用上問題となる可能性があります。
Q4. 振込手数料はどちらが負担すべき?
A4. 改正の趣旨から、振込手数料を中小受託事業者に負担させることは原則避けるべきであり、契約で「原則委託事業者負担」と明記することを推奨します。

9. 実務導入のおすすめステップ(優先度順)

  1. 発注先リストを従業員数・資本金でスクリーニング(閾値該当取引先を抽出)
  2. 標準契約テンプレの改定(用語・支払・価格協議の条項)
  3. 取引先への事前通知と従業員数確認フォームの送付
  4. 社内運用の整備(価格協議プロセス・検収フロー・証憑保存)
  5. 研修実施(営業、調達、法務)、調査対応シミュレーション

10. まとめ

改正下請法(取適法)は企業間取引の透明性・対等性を高めることを目的とした制度改正です。法務部門は単に「条文対応」を行うだけでなく、営業・調達との連携で実務運用(価格協議の運用・検収フロー・支払方法)を設計し、証憑保存と監査体制を整備することが重要です。公開前に公正取引委員会の運用指針を確認し、貴社での導入計画を確定してください。

参考:公正取引委員会、 中小企業庁、 e-Gov法令検索(改正法本文)

本記事は一般的な情報提供を目的とし、特定の法的助言を行うものではありません。契約書の作成・改定は弁護士の確認を受けてください。

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