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法令・制度のアップデート

景品表示法の実務チェック(マーケ・広報向け)— 法務が最低限押さえるべき項目

景品表示法の実務チェック(マーケ・広報向け)— 法務が最低限押さえるべき項目

景品表示法の実務チェック(マーケ・広報向け)— 法務が最低限押さえるべき項目

TODO

2025年9月版:令和6年改正法完全対応 — 改正の要点とマーケ・広報が今すぐ実務で使えるチェックリストをまとめた実務ガイド。

TL;DR —改正で変わった3つのポイントと当面やるべきこと
  1. 確約手続きの導入:違反調査前に自主的是正で措置命令・課徴金を回避可能
  2. 課徴金減額制度:迅速な消費者返金により課徴金軽減
  3. 直罰規定の新設:故意の不当表示に100万円以下の罰金(故意要件・検察立証)

注:直罰は故意が要件で証明負担は検察側。指定告示に係る表示は直罰対象外

プロローグ —法務勉強会での気づき

先日、同期の法務担当者との勉強会で興味深い話を聞きました。「改正法施行後、マーケ部門との関係が変わった」というのです。

「以前は『その表現はリスクがあります』と言って終わりだった。でも今は確約手続きという選択肢があるから、『この表現はリスクがありますが、万が一問題になっても確約手続きで解決できます。ただし返金措置で○百万円程度の負担は覚悟してください』という具体的な提案ができるようになった」

この変化こそが、令和6年改正景品表示法が法務実務にもたらした本質的な転換点です。法務部門は「リスクを指摘する部署」から「リスクをマネジメントしながら事業成長を支援する部署」へと進化を求められています。

I. 改正法の核心 —3つの新制度とその戦略的意義

確約手続き —「攻めのコンプライアンス」への扉

2024年10月1日から施行された確約手続きは、違反が疑われる段階で事業者が自主的に是正措置計画を申請し、認定されれば措置命令・課徴金納付命令を回避できる制度です。

確約手続きは、消費者庁の運用基準に基づき運用されます。申請すれば自動的に認定されるものではなく、消費者庁による厳格な審査を経て、計画の実現可能性・実効性が評価されます。認定後も計画の確実な実行が求められ、不履行の場合は認定取消しにより元の措置命令・課徴金手続きが復活します。

確約手続きのフロー
①調査通知前→②確約計画申請→③消費者庁審査→④認定→⑤計画実行→⑥完了確認
              ↓(不認定の場合)
              通常の措置命令・課徴金手続きへ

重要なのは、認定された確約計画は公表されるが、「景品表示法の規定に違反することを認定したものではない」旨が明記される点です。

課徴金制度の弾力化 —「迅速救済」が評価される仕組み

改正法では、事業者が自主的に返金措置を実施した場合の課徴金減額制度が拡充されました。特に注目すべきは、金銭以外にも電子マネー等による返金が可能になった点です。

要件解説
第三者型前払式支払手段発行者要件・利用可能性等の確認が必要
事前承諾消費者の同意が必要
換金性金銭と同等の価値が求められる

直罰規定の新設 —罰則体系の理解が必須

改正法で最も注意すべきは、刑事罰の正確な理解です。改正法では、優良誤認表示・有利誤認表示に対して故意がある場合に、措置命令を経ることなく刑罰を科す「直罰(百万円以下の罰金)」が新設されました(第48条)。

罰則類型対象行為要件刑罰内容立証主体
直罰(第48条)故意の優良・有利誤認表示故意100万円以下の罰金検察(故意の立証必要)
従来型罰則(第46条等)措置命令不履行等命令違反2年以下の懲役又は300万円以下の罰金等行政

II. 実務最前線 —マーケ・広報との戦略的協働

「事前チェック」から「共創型リーガルサポート」へ

改正法時代の法務実務は、広告案の後追いチェックから、企画段階での積極的関与への転換が必要です。

実践例:健康食品の機能性表示 — 従来の否定的指摘から、表現のリスクと解決策をセットで提案する ことで、マーケと法務が協働して立案できるようになります。

ステルスマーケティング規制の実務対応

令和5年10月1日からステルスマーケティングが景品表示法違反となっており、多くの企業のマーケティング手法に影響を与えています。

インフルエンサー契約の必須条項(テンプレート)
第○条(表示義務)
乙(インフルエンサー)は、本件商品に関する投稿において、以下の表示を明確に行うものとする:
1. 「#PR」「#広告」「#提供」のいずれかのハッシュタグ
2. 投稿冒頭での明確な広告表示(「○○社からの提供です」等)
3. 動画の場合、音声での広告表示説明

不実証広告規制への戦略的準備

消費者庁から表示の根拠資料提出要求があった場合、15日以内に合理的根拠を示せなければ優良誤認表示と推定されます。

根拠資料の3つの品質基準

  1. 科学的妥当性 — 業界標準に適合した試験方法、統計的有意性の確保
  2. 実用性反映 — 実際の使用環境との整合性
  3. 説明可能性 — 一般消費者への分かりやすい説明

※ 個人情報や試験データの管理に関する注意点は 個人情報保護法改正に関するガイド を参照してください。

IV. 危機管理の新実務 —確約手続きを軸とした対応戦略

健康食品・美容業界の高度化する審査

機能性表示食品制度との関係で、届出内容に基づく表示であっても表現方法によっては優良誤認表示となるリスクがあります。

実務チェック項目

  • 臨床試験データの引用における条件明示(対象者・測定方法・使用環境)
  • 「○○大学研究」等の権威付け表示の適切性
  • 個人差に関する打消し表示の視認性確保

不動産業界の利便性表示管理

不動産特定告示における徒歩所要時間等、測定ルールが厳格に定められています。実測記録や撮影記録による証跡保全が重要です。

IT・デジタル業界のアルゴリズム対応

AI技術による動的価格表示やパーソナライゼーション広告は有利誤認リスクを高めます。生成コンテンツやアルゴリズム決定の説明可能性・監査ログの保全が必須です。

生成AI・自動化ツールを用いる場合の実務チェックは 法改正を社内に伝えるテンプレ集 を参照してください。

VI. 実務チェックリスト —即活用可能なテンプレート

広告企画段階(事前準備)

□ 表示内容の客観的根拠資料準備完了
□ 比較表示における比較条件・競合特定の妥当性確認
□ 打消し表示の適切配置・視認性検証
□ 景品類該当性・限度額適合性の数値確認
□ ステマ規制対応確認
□ 関連法令整合性確認
□ 確約手続き検討対象か否かの事前評価

実施中監視段階

□ 広告配信状況の日次モニタリング
□ 消費者反応分析(問い合わせ・苦情)
□ 競合他社表示動向との定期比較
□ アフィリエイト・代理店の二次利用監視
□ SNS上での評判・批判的言及の監視
□ 不実証広告規制対応準備状況確認

事後検証・改善段階

□ 表示効果と誤認リスクの定量評価
□ 消費者庁・都道府県・業界団体からの指摘対応
□ 社内管理体制の実効性検証(年次監査)
□ 次期マーケティング戦略への知見フィードバック
□ 確約手続き活用可能性の継続評価

VII/VIII. 最新動向と実務への影響

令和6年度処分事例からの実務知見

P&Gジャパン措置命令事例(2025年8月1日)によると、除菌・消臭効果の表示について実験条件と一般使用環境の乖離が問題となりました。密閉容器での実験結果を一般的な居住空間での効果として表示していた点が優良誤認表示と認定されています。

実務への教訓:実験条件と実使用環境を一致させる、条件の明示を徹底すること。

確約手続き運用基準の実務への落とし込み

消費者庁が公表した「確約手続に関する運用基準」(令和6年4月18日決定)では、選定基準として軽微性・被害状況・改善可能性等が考慮されます。社内判断基準への翻訳例を用意しておくと意思決定が速くなります。

参考・テンプレ

本文中で触れたテンプレートやSOP、確約計画の骨子、消費者庁への提出フォーマットなどは下記の「主要参考資料」も参照してください。

本記事は令和6年改正景品表示法の運用基準等を踏まえて作成しています。個別事案は専門家にご相談ください。

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