生成AI前夜の思い出

押印後に誤字に気づいた夜

生成AIがなかった頃の話

今では当たり前のようにChatGPTに契約書レビューを頼んでいますが、ほんの数年前までは、そんな便利なものはありませんでした。
これは、そんな“AIのいない法務”時代の、小さな記憶です。

わからないことはGoogleと書店で

当時、わからないことがあれば、とにかくGoogle検索
条文の根拠も判例も、まともな解説に出会えるかは運次第。一次情報にたどり着けず、近くの書店で立ち読みして確認する、なんてことも普通にやっていました。

契約書の修正方針を考えるときも、理屈というより“経験と直感”が頼り。
なぜこう直すのか、自分でも論理的に説明しきれないまま、「いや、これはまずい気がする」と反論文を仕上げていたものです。

そして一番多かったのが、押印後に気づく誤字脱字
たしかに何度も見直したはずなのに、「これ、誰も気づかなかったのか…」と皆で肩を落とす――そんな場面が一度や二度ではありませんでした。

弁護士に丸投げできたら…でも予算がない

正直、全部弁護士に頼めたら楽だったと思います。
でも、現実には予算の限界があって、全部外注なんてできるわけもなく。社内でできるところまでは自分たちで対応せざるを得ない状況が続いていました。

特に厄介だったのが、新しいスキームや特殊な契約
「これは普通の雛形が通じないな」と思ったとき、まずは調べる。でも、調べてもすぐにはわからない。理解に時間がかかるんです。

もっと深刻なのは、「本を読んでも理解できない」という事実。
頑張って法律書や解説書を読んでみるけど、ページをめくる手が止まって、「これ、何を言ってるんだっけ?」と。言葉は読めるのに意味がつかめない――そんな歯がゆさが、いつもありました。

あの頃の不便さも、ちゃんと覚えておきたい

今は、あの頃とは比べものにならないくらい効率的に仕事ができるようになりました。
ただ、その変化がどんなもので、何が良くて、何に気をつけるべきか――それはまた、別の記事で詳しく書いていこうと思います。

今日はただ、あの「生成AIがまだなかった時代」に、ひたすらGoogleと本と自分の勘を頼りに、どうにか答えを出そうとしていた日々を思い出したくて、書きました。

あの頃の自分に、今の環境を見せてあげたら、きっと驚くと思います。
でも、手探りだったからこそ、得られた感覚もあった。
便利さのなかに、あの頃の不便さもちゃんと覚えていたい――そんな気持ちです。




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