- 約40年ぶりの労働基準法大改正に向けた報告書が公表(2025年1月)
- 14日以上の連続勤務禁止や勤務間インターバル原則11時間の義務化が提言されている
- 副業・兼業の割増賃金通算は廃止の方向で提言(健康管理の通算は維持)
- 法定休日の特定義務化が提言されており、就業規則の見直しが必要になる見込み
- 法案未成立・施行時期未確定だが、2026年通常国会で審議、2027年4月施行が有力視されている
2025年1月、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」が報告書を公表し、約40年ぶりとなる労働基準法の抜本改正の方向性が示されました。現在は労働政策審議会で審議中であり、2026年通常国会で改正法案が審議され、2027年4月以降に施行される見通しとされています。
本記事では、報告書で示された改正の方向性を整理し、企業の法務部・人事労務担当者が今から準備すべき対応事項を解説します。
本記事で解説する内容は、2025年1月公表の「労働基準関係法制研究会報告書」に基づく「提言・方向性」であり、法案も条文案も確定していません。
今後の労働政策審議会での審議を経て、内容が変更される可能性があります。施行時期も未確定です。最新情報は厚生労働省の公式発表をご確認ください。
改正の経緯とスケジュール
今回の改正議論は、コロナ禍以降の働き方の多様化と、2018年の働き方改革関連法の施行状況を踏まえたものです。研究会では「働く人を守る」「働く人を支える」という2つの視点の両立が議論されました。
出典:厚生労働省「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します(2025年1月8日)
企業が影響を受ける7つの改正項目
研究会報告書で示された改正の方向性のうち、企業実務に直接影響する主要7項目を整理します。
| No. | 改正項目 | 現行制度 | 改正の方向性 |
|---|---|---|---|
| 1 | 連続勤務の上限規制 | 4週4休(理論上最大48日連続勤務が可能) | 13日を超える連続勤務の禁止を提言 |
| 2 | 法定休日の特定義務 | 「週1日の休日」の付与義務のみ(特定不要) | 法定休日を事前に特定する義務化を提言 |
| 3 | 勤務間インターバル | 努力義務(導入率約6%) | 原則11時間の義務化を提言 |
| 4 | 有給休暇の賃金算定 | 3方式から選択可能 | 「通常の賃金」方式の原則化を提言 |
| 5 | 副業・兼業の割増賃金 | 複数事業場の労働時間を通算 | 割増賃金通算の廃止を提言(健康確保の通算は維持) |
| 6 | 週44時間特例 | 一部業種で週44時間の特例あり | 特例廃止・週40時間統一の方向 |
| 7 | つながらない権利 | 規定なし | ガイドライン策定を検討 |
改正項目の詳細と企業への影響
1. 連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止)
現行制度の問題点
現行の労働基準法では「4週間を通じて4日以上の休日」を与えれば足りるとされています。このため、理論上は最大48日間の連続勤務が可能な状態にあります。
しかし、労災保険の精神障害認定基準では「2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行ったこと」が具体的出来事の一つとして明記されており、連続勤務の長期化は労災リスクに直結します。
改正の方向性
報告書では、36協定に休日労働の条項を設けた場合を含め、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労働基準法上に設けることが提言されています。
実務上のポイント
建設業、運送業、医療・介護業界など、変則勤務・交替制・夜勤がある事業所では、シフト設計の根本的な見直しが必要になる可能性があります。人員配置・採用計画にも影響が及ぶため、早期の検討開始が重要です。
2. 法定休日の特定義務化
現行制度の曖昧さ
現行法では「毎週少なくとも1日の休日」を与えれば足り、どの曜日を法定休日とするかの特定は義務付けられていません。週休2日制を採用する企業でも、法定休日と法定外休日の区別が曖昧なケースが多く見られます。
改正の方向性
改正後は、法定休日を事前に特定することが義務化される見通しです。これにより、休日労働に対する割増賃金(35%以上)の適用関係が明確になります。
現在「週休2日のうち会社が定める日を法定休日とする」といった曖昧な規定を置いている企業は、具体的な曜日を明記する形への改訂が必要になります。
3. 勤務間インターバル制度の義務化
努力義務から義務化へ
勤務間インターバル制度は2019年4月から努力義務とされていますが、2024年時点の導入率はわずか約6%にとどまっています。報告書では、この制度を義務化し、インターバル時間を原則11時間とすることが提言されています。
EU基準との整合
EUの労働時間指令では、全ての労働者に対して24時間ごとに最低でも連続11時間の休息時間を確保することが義務付けられています。今回の改正案は、この国際基準との整合を図るものです。
例外・代替措置も検討中
報告書では、原則11時間を基本としつつ、例外や代替措置を含めた制度設計を今後検討すべきとされています。業種・職種による柔軟な運用余地も議論の俎上にあり、最終的な制度設計は今後の審議で決定されます。
| 終業時刻 | 11時間インターバル確保時の翌日始業可能時刻 |
|---|---|
| 21:00 | 翌8:00 |
| 22:00 | 翌9:00 |
| 23:00 | 翌10:00 |
| 24:00(深夜0時) | 翌11:00 |
| 1:00 | 翌12:00 |
4. 有給休暇取得時の賃金算定方式の統一
3方式の現状
現行法では、年次有給休暇取得時の賃金算定について以下の3方式から選択できます。
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 平均賃金
- 健康保険の標準報酬月額の30分の1
改正の方向性
日給制や時給制の労働者において、②③の方式では賃金が大きく減少するケースがあるため、①「通常の賃金」方式を原則化する方向で検討されています。
5. 副業・兼業者の割増賃金算定ルールの見直し
現行ルールの課題
現行法では、副業・兼業を行う労働者の労働時間は、本業先と副業先で通算して管理する必要があります。1日8時間・週40時間を超えた場合、後から労働契約を締結した副業先が割増賃金を支払う義務を負うのが原則です。
この複雑な仕組みが、企業が雇用型の副業・兼業を許可・受入れする際の障壁となっていました。
改正の方向性
| 項目 | 現行 | 改正後(見込み) |
|---|---|---|
| 健康確保のための労働時間通算 | 通算する | 通算を維持 |
| 割増賃金算定のための労働時間通算 | 通算する | 通算しない(各事業場で独立計算) |
注意点
同一の使用者の命令に基づき複数の事業場で労働する場合(出向先と出向元での兼務等)は、引き続き割増賃金算定時の労働時間通算が適用される見込みです。
6. 週44時間特例の廃止
現行法では、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業のうち常時10人未満の労働者を使用する事業場については、法定労働時間を週44時間とする特例が認められています。
改正案では、この特例を廃止し、全ての事業場で週40時間を原則化する方向で検討されています。
7. 「つながらない権利」に関するガイドライン
テレワークの普及に伴い、勤務時間外でも業務連絡が可能な状態が常態化している問題に対応するため、「つながらない権利」に関するガイドラインの策定が検討されています。
法的義務化までは至らない見通しですが、企業としては自主的なルール整備(勤務時間外のメール・チャット対応ルール等)を検討しておくことが望ましいでしょう。
企業が今から準備すべき7つのチェックポイント
法案成立前であっても、以下の項目について現状把握と検討を開始しておくことで、施行後のスムーズな対応が可能になります。
- 就業規則・労働協約の現状確認
・法定休日の特定状況
・連続勤務日数の管理状況
・勤務間インターバルの規定有無 - シフト・勤務体制の影響分析
・現状の連続勤務日数の最大値を把握
・交替制・夜勤がある場合のインターバル確保可否 - 勤怠管理システムの点検
・連続勤務日数のアラート機能の有無
・勤務間インターバルの自動チェック機能 - 副業・兼業の管理体制確認
・副業許可制度の有無と運用状況
・副業者の労働時間把握方法 - 有給休暇の賃金算定方式の確認
・現在採用している算定方式
・「通常の賃金」方式への移行影響試算 - 週44時間特例の適用有無確認
・特例を適用している事業場の有無
・週40時間への移行による影響試算 - 健康管理体制の強化検討
・長時間労働者への医師面接指導体制
・メンタルヘルスチェックの実施状況
特に影響が大きい業種・職種
| 業種・職種 | 主な影響 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 建設業 | 繁忙期の連続勤務制限、工程管理への影響 | 人員配置の見直し、工期設定の再検討 |
| 運送業 | 長距離運行時のインターバル確保、連続勤務制限 | 運行計画の見直し、ドライバー増員検討 |
| 医療・介護 | 夜勤・当直後のインターバル確保、シフト設計 | 勤務シフトの抜本的見直し、人員体制強化 |
| IT・広告業界 | 深夜残業後のインターバル、つながらない権利 | 業務プロセス見直し、時間外連絡ルール整備 |
| 小売・飲食(小規模) | 週44時間特例廃止による所定労働時間見直し | シフト調整、人件費増への対応 |
参考:報告書で示されたその他の改正論点
本記事で取り上げた7項目以外にも、報告書では以下のような論点が議論されています。これらも今後の審議次第では企業実務に影響し得るため、動向のフォローが必要です。
- 時間外・休日労働の情報開示:採用時などにおける実態の開示義務化を検討
- フレックスタイム制における「コアデイ」導入:特定の曜日を出勤必須日とする運用の制度化
- 管理監督者の健康・福祉確保措置:労働時間規制の適用除外者に対する健康管理措置の導入
- テレワーク時の新たなみなし労働時間制:在宅勤務等に適した労働時間管理制度の創設
- 労働基準法上の「労働者」の範囲:フリーランス・ギグワーカー等への保護拡大の検討
詳細は厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」の原文をご確認ください。社労士・顧問弁護士等と連携しつつ、継続的なウォッチが推奨されます。
よくある質問(FAQ)
まとめ:法案成立前から「備え」を始める
今回の労働基準法改正は、約40年ぶりの大改正として、企業の労務管理に大きな影響を与える可能性があります。
法案はまだ成立していませんが、だからこそ「今から準備を始める」ことが重要です。就業規則の現状把握、勤怠管理システムの点検、シフト設計の見直し検討など、改正の方向性を踏まえた準備を進めておくことで、施行後の混乱を最小限に抑えることができます。
特に、建設業・運送業・医療介護業界など、変則勤務が多い業種では、人員配置や採用計画にも影響が及ぶため、早期の検討開始をお勧めします。
今後のアクション
- 労働政策審議会の審議状況を定期的にウォッチ
- 厚生労働省の公式発表(法案提出時、政省令公布時)を確認
- 社労士・弁護士等の専門家と連携した対応体制を構築
参考資料(一次情報)
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します(2025年1月8日)
- 労働基準関係法制研究会報告書(PDF)
- e-Gov法令検索「労働基準法」
- 厚生労働省「勤務間インターバル制度について」
- 厚生労働省「労働時間・休日」
本記事は2025年11月時点の公開情報に基づいて作成しています。法案は未成立であり、今後の審議過程で内容が変更される可能性があります。実際の対応にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。
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