売れ筋:三点セット

通報〜初動〜ヒアリング〜認定〜通知〜再発防止まで、調査対応を“型”で標準化

ハラスメント対応は「何から作るか」で迷って時間が溶けます。最短は、必要なアウトプット一式を先に揃えることです。

  • 聞く順番(誘導質問回避)・質問票の叩き台
  • 事実認定/評価(パワハラ・セクハラ・カスハラ横断)
  • 通知文・是正・再発防止(文面とチェック)
  • 社内説明・記録化(監査/後日紛争の備え)

※機密情報の入力範囲・マスキングは社内ルールに従ってください。一般的情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。

📋 実務者向けガイド|2026年10月1日施行対応

カスハラ対応の判断基準と
対応終了のタイミング

改正労働施策総合推進法・カスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)に基づく実践ガイド

最終更新:2026年8月31日/2026年4月24日公表の厚労省Q&Aを反映

「この要求、断っていいのか?」「いつ電話を切っていいのか?」

カスタマーハラスメント(カスハラ)対応で、現場が最も困るのは「判断」です。

2026年10月1日、改正労働施策総合推進法が施行され、カスハラ対策はすべての事業主の法的義務になります。同時に、厚生労働省はカスハラ防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)と、その解釈を示すQ&A(2026年4月24日公表「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」)を公表しました。

本記事では、これらの一次資料に基づき、「どこからがカスハラか」「いつ対応を終了してよいのか」を、法令上の基準と企業が自ら定める社内ルールに分けて整理します。

👤 人事・法務・お客様相談室・店舗責任者向け
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2026年10月1日、カスハラ対策が法的義務に

2025年6月11日に公布された「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)により、カスハラ防止のための雇用管理上の措置が、事業主の義務となりました。施行日は2026年(令和8年)10月1日です。

従来、カスハラ対策はパワハラ防止指針の中で「行うことが望ましい取組」と位置づけられていましたが、今回の改正で措置義務へと格上げされました。労働者を1人でも雇用していれば事業主に該当し、企業規模による適用猶予はありません。

項目 内容
根拠法 労働施策総合推進法(改正後)第33条第1項
※改正法=令和7年法律第63号
指針 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針
(令和8年2月26日・厚生労働省告示第51号)
解釈Q&A ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について
(令和8年4月24日/原則として令和8年10月1日適用)
施行日 2026年10月1日
対象 労働者を雇用するすべての事業主(中小企業も猶予なし)
違反した場合 罰則はないが、助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合は公表されうる(改正後42条)。報告の請求(同45条)の対象にもなる

条ずれに注意

今回の改正で条番号が繰り下がります。パワハラの措置義務は旧30条の2 → 新31条、勧告に従わない場合の公表の根拠は旧33条 → 新42条です。社内規程・研修資料・マニュアルで条番号を引用している場合は、施行に合わせて差し替えが必要です。

事業主が講じなければならない措置(指針4)

✅措置義務の5本柱
  • 方針の明確化と周知・啓発:カスハラには毅然と対応し労働者を保護する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知
  • 対処の内容の策定と周知:あらかじめ定めたカスハラへの対処の内容を、管理監督者を含む労働者に周知
  • 相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
  • 事後の迅速かつ適切な対応:事実関係の迅速・正確な確認、被害者への配慮措置、再発防止措置
  • 悪質事案への抑止措置:特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定めて周知し、実行できる体制を整備

これらに加え、相談者等のプライバシー保護のための措置と、相談等を理由とする不利益取扱いを行わない旨の定め・周知が、併せて講ずべき措置とされています。

派遣労働者について

派遣先も、労働者派遣法第47条の4により、指揮命令下の派遣労働者を雇用する事業主とみなされます。派遣元だけでなく派遣先も、自社の労働者と同様に措置を講じる必要があります。

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法令・指針上の「カスハラ」3要素

カスハラ防止指針は、「職場におけるカスタマーハラスメント」を、次の①〜③の要素をすべて満たすものと定義しています。

職場におけるカスハラの3要素(指針2⑴)

① 職場において行われる顧客等の言動であって、
② その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの

ここが最も重要な出発点です。顧客等からの苦情のすべてがカスハラに該当するわけではありません。指針は、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われたものは「いわば正当な申入れ」であり、カスハラには当たらないと明示しています。

3要素の各用語の範囲

用語 範囲
職場 労働者が業務を遂行する場所。通常の勤務地に限らず、取引先の事務所、打合せのための飲食店、顧客の自宅等も含む
労働者 正社員に限らず、パート・契約社員等の非正規雇用労働者を含む、雇用するすべての労働者
顧客等 顧客(潜在的な顧客を含む)、取引の相手方(今後取引する可能性のある者を含む)、施設の利用者、取引先の担当者、契約交渉の担当者、施設・サービスの利用者およびその家族、施設の近隣住民など
手段 対面に限らず、電話やSNS等インターネット上の言動も含む

Q&Aで確認された範囲(問1〜問3)

・まだ購入しておらず契約関係が発生していない者の言動も、3要素を満たせば該当する
・今後顧客になることが想定されない近隣住民の言動も、3要素を満たせば該当する
・訪問先(取引先事務所、訪問看護・訪問介護の利用者宅等)で受ける言動も該当しうる

障害者差別解消法との関係

障害のある方が、不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスハラには当たりません。むしろ、負担が過重でないときは合理的配慮の提供義務があります。カスハラ対策を設計する際は、消費者法制上の消費者の権利や、各業法上のサービス提供義務にも留意が必要です。

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「社会通念上許容される範囲を超える」かの判断方法

旧版の本記事では「判定の主軸は手段・態様であり、要求内容ではない」と説明していました。しかし、指針とQ&Aが示す判断枠組みは、「言動の内容」と「手段や態様」の双方に着目した総合判断です。

指針2⑸/Q&A問4が示す判断枠組み

「社会通念上許容される範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、言動の内容が契約内容からして相当性を欠くもの、または手段や態様が相当でないものを指します。

「言動の内容」「手段や態様」の一方のみが社会通念上許容される範囲を超える場合でも、これに該当し得ます。

総合的に考慮すべき要素

この判断に当たっては、次の要素を総合的に考慮することが適当とされています。

⚖️考慮要素(指針2⑸/Q&A問4)
  • 当該言動の目的
  • 言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む、言動が行われた経緯や状況
  • 業種・業態
  • 業務の内容・性質
  • 当該言動の態様・頻度・継続性
  • 労働者の属性や心身の状況
  • 行為者との関係性 等

自社側の対応が原因になっている場合

指針は、事業主または労働者の側の不適切な対応が、当該言動の原因や背景となっている場合もあることにも留意する必要があると明記しています。「顧客が怒っている=カスハラ」ではありません。初動では、自社の商品・サービス・接客・説明に問題がなかったかも併せて確認してください。

社会通念上許容される範囲を超えた言動の典型例

指針は典型例を「言動の内容」と「手段や態様」に分けて示しています。限定列挙ではなく、個別事案の状況によって判断が異なる場合もあることに留意が必要です。

区分 類型 指針が挙げる例
イ
言動の内容
①要求に理由がない/商品・サービスと全く無関係な要求 性的な要求、労働者のプライバシーに関わる要求
②契約等により想定しているサービスを著しく超える要求 契約内容を著しく超えたサービスの提供を要求
③対応が著しく困難な/不可能な要求 契約金額の著しい減額の要求
④不当な損害賠償要求 商品やサービスの内容と無関係な不当な損害賠償要求
ロ
手段や態様
①身体的な攻撃(暴行、傷害等) 殴る・蹴る・叩く、物を投げつける、わざとぶつかる、つばを吐きかける
②精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等) 物を壊すことやSNSへの悪評投稿をほのめかして脅す、労働者のプライバシー情報をSNSに投稿する、人格を否定する言動(性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的言動を含む)、土下座の強要、盗撮や無断での撮影、機微な個人情報の暴露・開示強要・開示禁止
③威圧的な言動 大きな声をあげて労働者や周囲を威圧する、反社会的な言動
④継続的、執拗な言動 同様の質問を執拗に繰り返す、当初の話からのすり替え・揚げ足取り・執拗な責め立て、同様のメール等を執拗に繰り返し送りつける
⑤拘束的な言動(不退去、居座り、監禁) 長時間にわたる居座りや電話で労働者を拘束する

「無断での撮影」の意味(Q&A問5)

典型例に挙げられた「無断での撮影」は、店舗内のあらゆる撮影を直ちに禁じる趣旨ではありません。労働者が撮影をやめるよう言ったにもかかわらず撮影し続ける等の行為を意味しています。撮影行為のすべてが直ちにカスハラになるわけではなく、3要素をすべて満たす場合に該当します。

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「就業環境が害される」の判断──1回の言動でも該当しうる

3要素の③「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

判断基準は「平均的な労働者の感じ方」

同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とします(指針2⑹/Q&A問27)。

言動の頻度や継続性は考慮されますが、強い身体的または精神的苦痛を与える態様の言動の場合は、1回の言動でも就業環境を害する場合があり得ます。

「◯回以上」「◯分以上」という法的基準は存在しない

旧版の本記事では「暴言3回以上」「30分超」などを終了基準として示していましたが、これらは法令・指針上の該当性基準ではありません。逆に、1回の脅迫的言動でカスハラに該当することもあれば、30分の対話が正当な申入れにとどまることもあります。回数・時間は総合考慮の一要素(態様・頻度・継続性)にすぎません。

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いつ対応を終了してよいのか──法的基準と社内ルールの切り分け

「いつ電話を切っていいのか」「いつ対応を打ち切っていいのか」──現場が最も判断に迷うポイントです。ここは、2つの層に分けて考えると整理できます。

層 内容 性質
第1層
法令・指針
カスハラ該当性は3要素の総合判断。時間・回数による一律の基準は置かれていない 全国一律/総合判断
第2層
社内ルール
指針4⑴ロに基づき、事業主が「対処の内容」をあらかじめ定める。ここに時間・回数の運用基準を置くことは可能 各社が自ら設計/実態に応じて策定

指針が示す「対応終了」の考え方

カスハラ防止指針は、事業主が定める「対処の内容」の例として、次を挙げています。

指針4⑴ロが例示する対処の内容

・労働者から管理監督者等に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐこと
・可能な限り労働者を一人で対応させないこと。必要に応じて当該労働者に代わって管理監督者等が対応すること
・顧客等とのやり取りを録音・録画すること(個人情報保護法等を遵守)
・労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすること
・暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること
・現場対応が困難な場合においては、本社・本部等へ情報共有を行い、指示を仰ぐこと
・法的な手続が必要な場合には、法務部門等と連携し、弁護士へ相談すること

ここから読み取るべき順序は明確です。①まず必要な説明を尽くす → ②それでもなお繰り返しの要求が続く → ③一定時間の経過をもって退店要請・通話終了という二段階の構造になっています。

やってはいけない整理

「30分経ったから法律上カスハラである」「暴言が3回あったから法律上終了できる」という説明は、法令の建て付けと合致しません。時間・回数はカスハラ該当性を決める法的メルクマールではなく、社内で対応をエスカレーションするための運用上のトリガーとして設計するものです。

推奨する社内ルールの書き方

時間・回数の基準は、「法的にカスハラと認定される線」ではなく「社内で判断を上位者に引き上げる線」として設定してください。この形であれば、指針の趣旨に沿いつつ、現場の判断負荷を下げられます。

✓ 推奨される社内規定の書き方

「必要な説明を行ってもなお同趣旨の要求が繰り返される場合、担当者は概ね30分を目安に上長へエスカレーションする。上長は、説明を尽くしたと認められるときは、書面での受付に切り替えたうえで、その場のやり取りを終了することができる。」

✗ 避けるべき書き方

「対応時間が30分を超えた場合、法律上カスハラに該当するため、対応を終了してよい。」
→ 法令上そのような一律基準はなく、正当な申入れを一律に切り捨てる運用につながります。

エスカレーション基準として設定しうる指標の例

⏱️社内トリガーの設計例(各社の業種・業態に応じて調整)
  • 必要な説明を行った後、同趣旨の要求が繰り返されたとき → 上長へ報告
  • 対応時間が一定時間(例:30分)を超えたとき → 上長が交代または同席
  • 人格を否定する言動が確認されたとき → 直ちに上長へ引き継ぎ
  • 具体的な害悪の告知があったとき → 即時終了・警察通報を検討
  • 担当者が心身の不調を訴えたとき → 即時交代・産業保健スタッフへ接続
  • 金銭・土下座など法的義務のない行為を要求されたとき → 上長判断で終了

対応終了時の伝え方

対応を終了する際は、定型文を用意しておくことで、担当者の心理的負担を軽減できます。「対応終了」=「顧客との関係の全面遮断」ではありません。その場のやり取りを終え、受付チャネルを書面等に切り替える、という設計が実務的です。

📞 電話終了時の例文

「ご説明は以上のとおりでございます。これ以上お電話でのご対応は致しかねますので、今後のご連絡は書面にてお願いいたします。それでは失礼いたします。」

🏪 店頭対応終了時の例文

「お客様のご要望は承りました。ご説明したとおり、当社としてこれ以上の対応は致しかねます。恐れ入りますが、ご退店をお願いいたします。」

ポイント

終了を告げる段階で理由を詳細に説明し直さないこと。必要な説明は終了宣言の前に済ませておき、終了宣言そのものは短く行います。説明を重ねるほど反論の材料となり、対応が長引きます。

従業員が1名の店舗の場合

Q&A問15は、管理監督者が代わりに対応することや、被害者と行為者を引き離すことができない場合の考え方を示しています。この場合でも、次のような対処の内容を定めておくことが考えられるとされています。

1名店舗での対処の内容(Q&A問15)

・労働者から十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすること
・暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること
・現場対応が困難な場合においては、本社・本部等へ情報共有を行い、指示を仰ぐこと

なお、1名店舗であっても、事実が確認できた場合には、担当者の変更、配置転換、産業保健スタッフ等によるメンタルヘルス不調への相談対応等、被害者への配慮措置を講じる必要があります。

警察との連携

暴行・傷害・脅迫等は「マニュアルで完結させる領域」ではない

指針は、事業主が定める対処の内容の例としても、被害者への配慮措置の例としても、また特に悪質な事案への対処の例としても、「暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること」を一貫して挙げています。この段階では、社内対応の継続よりも、労働者の安全確保と警察・弁護士との連携を優先してください。

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記録・録音録画の実務と個人情報保護法

指針は、対処の内容の例として「顧客等とのやり取りを録音・録画すること」を挙げる一方で、その際は個人情報保護法等を遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うことを明記しています。ここは実務で見落とされやすい論点です。

録音・録画データを事実確認に使うには、利用目的の特定が必要

Q&A問10のポイント

取得する情報が個人情報に該当する場合、個人情報保護法に基づき、利用目的をできる限り特定し、本人に通知または公表する必要があります。原則として、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことはできません。

したがって、録音・録画データをカスハラ事案の事実関係の確認に使用する場合は、その旨を利用目的としてできる限り特定し、通知または公表しておく必要があります。

公表方法の例としては、プライバシーポリシー等に利用目的の記載を設け、自社ホームページのトップページから1回程度の操作で到達できる場所に掲載することが挙げられています。

「その場で録音していると伝える」必要はあるか

Q&A問11のポイント

利用目的の通知・公表義務は、録音・録画していることをその場で伝える義務まで含むものではないとされています。

ただし、個人情報保護法は偽りその他不正の手段による個人情報の取得を禁じています。少なくとも、カメラの設置状況等から、自らの個人情報が取得されていることを本人が容易に認識可能とはいえない場合には、容易に認識可能とするための措置を講じなければならない点に留意が必要です。

なお、その場で顧客等の同意を得たうえで録音・録画することも、個人情報保護法等を遵守した対応の例として挙げられています。

🔧録音・録画運用の整備チェック
  • プライバシーポリシーに「カスハラ事案の事実関係の確認」を利用目的として記載したか
  • そのポリシーがトップページから容易に到達できる場所に掲載されているか
  • 店舗・窓口のカメラ設置が、顧客から容易に認識可能な状態になっているか(掲示等)
  • 電話の自動音声アナウンスや対面時の告知文言を整備したか
  • 録音・録画データの保管期間、アクセス権者、廃棄手順を定めたか

記録に残すべき項目

録音・録画があっても、「誰が・いつ・どのような状況で」発言したかは映像・音声だけでは判別しにくい場合があります。簡易な書面記録を併用してください。

項目 記載内容
日時 年月日、開始時刻〜終了時刻
場所・チャネル 店舗名、電話、メール、SNS等
顧客情報 氏名(不明なら特徴)、会員番号等
対応者 氏名、所属
同席者・目撃者 氏名、所属(いれば)
顧客の発言(原文) 「」で括って正確に記録。特に暴言・脅迫は一字一句
要求内容 何を求められたか(内容の相当性の評価材料)
自社側の説明内容 どこまで説明したか。「十分な説明を行った」ことの裏付けになる
経緯・背景 自社の商品・サービス・接客に問題がなかったか(原因・背景の評価材料)
言動の態様・頻度・継続性 同趣旨の要求が何回繰り返されたか、継続時間
従業員の状態 心身の状況(就業環境が害されたかの評価材料)
証拠 録音、映像、メール、写真等の有無と保管場所

最重要ポイント

顧客の発言は「要約」ではなく「原文」で記録してください。「暴言を吐かれた」ではなく「『お前みたいなバカは辞めろ』と言われた」と記録することで、後の法的評価が可能になります。あわせて、自社側がどこまで説明したかを記録することが、指針の「十分な説明を行った上で」という要件を裏付けます。

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相談体制と事実確認──行為者から事情を聴けないとき

相談窓口は「上司」でもよい

パワハラ・セクハラ等については、複合的に生じることも想定されるため、相談窓口を一体的に設置し一元的に対応できる体制が望ましいとされています。一方、カスハラについては次のとおり整理されています。

Q&A問12のポイント

カスハラは他のハラスメントと異なり、事案が発生したその場ですぐに相談することや、現場の状況に精通している上司等に相談することが適切な場合もあります。そのため、他のハラスメントの相談窓口と一体的なものとする必要はなく、相談に対応する担当者として、労働者の上司に当たる管理監督者等を定めることも考えられます(一体的な設置を妨げるものでもありません)。

ただし、窓口を「定める」だけでは足りません。指針は、担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにすること、カスハラに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応することを求めています。マニュアル整備と担当者研修が実質的な要件です。

行為者から事情を聴けない場合の事実確認

顧客がすでに立ち去り、連絡先も分からないケースは珍しくありません。この場合の考え方はQ&Aで明確にされています。

Q&A問13のポイント

指針は、行為者からの聴取について「必要かつ可能な場合には」と留保しています。したがって、行為者に連絡を取ることが不可能な場合にまで、行為者から事実関係を確認する必要はありません。

その上で、正確に事実関係を確認するため、必要に応じて周囲の労働者からの聴取や録音・録画等の客観的証拠の確認を行うことが考えられます(客観的証拠の確認に当たっても個人情報保護法等の遵守が必要)。

それでも確認が困難な場合には、改正後37条に基づく調停の申請や、その他中立な第三者機関への紛争処理の委託が、指針上「事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例」に挙げられています。

事実が確認できなかった場合も、措置は必要

指針4⑶ハは、カスハラが生じた事実が確認できなかった場合においても、方針の再周知・啓発や、原因・背景となった商品・サービス・接客等の改善といった再発防止措置を講じることを求めています。「事実不明だから何もしない」は措置義務の履行として不十分です。

行為者の勤務先への協力要請(Q&A問14)

行為者が勤務先の業務と関係のない私的な場面でカスハラを行った場合、その勤務先(他社)に協力を求める必要はありません。一方、行為者の勤務先が自社の取引先であって、その業務に関連してカスハラが行われた場合等には、必要に応じて協力を求めることが考えられます。

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悪質事案への抑止措置と「出入り禁止」の位置づけ

指針4⑷は、特に悪質と考えられるものへの対処の方針をあらかじめ定め、管理監督者を含む労働者に周知するとともに、その対処を行うことができる体制を整備することを義務としています。指針が挙げる対処の例は次のとおりです。

🛑特に悪質な事案への対処の例(指針4⑷)
  • 暴行、傷害、脅迫などの犯罪に該当し得る言動については、警察へ通報すること
  • 行為者に対して警告文を発出すること
  • 法令の制限内において、行為者に対して商品の販売、サービスの提供等をしないこと
  • 行為者に対して店舗および施設等への出入りを禁止すること
  • 民事保全法に基づく仮処分命令の申立てをすること

「出禁」に関する2つの誤解

誤解①:悪質な顧客には必ず出禁にしなければならない

そうではありません。Q&A問16は、義務の内容は方針をあらかじめ定めて周知し、対処を行える体制を整備することであり、実際に悪質な事案が生じた際に必ず出入り禁止の措置を講じなければならないわけではないとしています。ただし、整備した体制の下で、方針に基づき出入り禁止を講じるか否かの判断はする必要があります。

誤解②:改正法によって出禁の法的権限が新しく与えられた

そうではありません。Q&A問18は、改正法は事業主に雇用管理上必要な措置を義務づけるものであり、事業主が何らかの措置を行う法的な権利や権限を新たに設けるものではないと明言しています。出入り禁止や取引謝絶の可否は、従来どおり契約自由の原則・施設管理権・各業法上のサービス提供義務等に照らして判断すべき民事上の問題です。

業法上のサービス提供義務に注意

指針は、各業法等によりサービス提供の義務等が定められている場合や、サービスが途絶すると顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合等があることに留意して適切に対応する必要があると明記しています。医療・介護・公共交通・電力ガス等の分野では、出禁・提供拒否の設計に一段の慎重さが必要です。

対処の方針は別文書でなくてよい(Q&A問17)

特に悪質な事案への対処の方針は、通常の「対処の内容」とは別に作成する必要はなく、指針4⑴ロの対処の内容を明確化・周知する際に併せて定めて周知することが可能です。

周知の範囲──全労働者が対象

Q&A問9および更問のポイント

指針上「労働者」とは事業主が雇用する労働者のすべてをいうため、方針の周知・啓発は、所属部署や雇用形態を問わず、すべての労働者に対して行う必要があります。

また、カスハラへの対処の内容についても、社外の人と接する機会があるか否かを問わず、すべての労働者に周知する必要があります。「顧客対応部署だけ」は不足です。

顧客等への周知は義務ではないが効果的(Q&A問8)

方針を顧客等に周知することまでは義務づけられていませんが、指針は、顧客等への周知・啓発も被害の防止に当たっては効果的と考えられる旨を記載しています。店頭掲示やウェブサイトでのカスハラ方針の公表は、実務上有効な選択肢です。

業界団体マニュアルの配布だけでは措置義務を果たしたことにならない

Q&A問21の更問は、業界団体が作成した業種別マニュアルを単に配布するだけでは措置義務を果たしたことにはならないとしています。一方、そのマニュアルを参考に自社の実情に応じた必要な調整を行い、方針の明確化と対処の内容の策定を行って周知する場合は、措置義務を果たしたことになります。

9

刑法上の犯罪に該当しうるケース(拘禁刑対応)

カスハラの中には、刑法上の犯罪に該当しうるものがあります。該当しうる場合は、警察への相談・通報を検討してください。

法定刑の表記について

2022年(令和4年)法律第67号による刑法改正により、2025年(令和7年)6月1日から「懲役」「禁錮」が「拘禁刑」に一本化されました。以下は施行後の現行条文に基づく表記です。なお、施行日前の行為については経過措置により従前の刑が適用されます。

罪名 該当しうる言動 法定刑
暴行罪
(刑法208条)
殴る、蹴る、物を投げつける、つばを吐きかける(傷害に至らない場合) 2年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
傷害罪
(刑法204条)
暴行により負傷させた場合。PTSD等の精神的機能の障害も傷害に当たりうる 15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
脅迫罪
(刑法222条)
生命・身体・自由・名誉・財産に対する害悪の告知(「殺すぞ」「家族に危害を加える」等) 2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
強要罪
(刑法223条)
脅迫または暴行を用いて、土下座等の義務のない行為を行わせる 3年以下の拘禁刑(未遂も処罰)
恐喝罪
(刑法249条)
脅して金銭や財物を交付させる、財産上不法の利益を得る 10年以下の拘禁刑
威力業務妨害罪
(刑法234条・233条)
大声で怒鳴り続ける等、威力を用いて業務を妨害する 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
侮辱罪
(刑法231条)
公然と人を侮辱する(事実の摘示を伴わない場合) 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
不退去罪
(刑法130条後段)
退去を要求されたにもかかわらず居座り続ける 3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金
器物損壊罪
(刑法261条)
店舗の什器・商品等を壊す 3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金若しくは科料

警察相談のタイミング

「被害届を出すかどうか」を決める前に、まず警察相談専用電話(#9110)に相談することをお勧めします。相談記録が残ることで、その後の対応がスムーズになります。緊急性がある場合は110番です。

重要

上記に該当しうる言動は、もはや「カスハラ対応マニュアル」で完結させるべき領域ではありません。指針も繰り返し警察への通報を挙げています。労働者の安全確保を最優先に、早い段階で警察・弁護士と連携することを前提としてください。

10

正当な苦情を切り捨てないために

カスハラ対策を進めるうえで最も注意すべきなのは、「カスハラ対策=顧客の申入れを断る仕組み」という誤解が現場に広がることです。指針は、この点についてはっきりと歯止めをかけています。

指針6⑴が示す留意点

労働者が自社の商品やサービスをよく理解し、顧客等への対応力の向上を図ることは、カスハラの被害者になることを防止する上で重要です。

また、顧客等からの社会通念上許容される範囲で行われる正当な申入れはカスハラには該当せず、労働者が、こうした正当な申入れを踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることに留意する必要があります。

指針は、カスハラの発生の原因や背景には、商品・サービス・接客等における問題や、顧客等とのコミュニケーションの不足もあると明記しています。したがって、事業主が行うことが望ましい取組として、次が挙げられています。

🤝原因・背景を解消するための取組(指針6⑴/Q&A問7)
  • 接客研修、商品・サービス研修、苦情対応研修等により、労働者の顧客等への対応力の向上を図る
  • 消費者の心理や障害特性等についての資料配布・研修により、労働者が顧客等への理解を深める
  • 過度に顧客等を優先した対応をするような接客等の慣行を見直し、職場環境・組織風土を改善する
  • 労働者や労働組合等の参画を得て、アンケート調査や意見交換により運用状況を把握し、必要な見直しを検討する(衛生委員会の活用も考えられる)

二方向の設計が必要

カスハラ対策は、①正当な苦情・クレームを適切に受け止め、原因となった商品・サービス・接客の問題を改善することと、②社会通念上許容される範囲を超えた言動から労働者を保護することの両方を含みます。どちらか一方だけの設計は、指針の求める水準を満たしません。

自社の労働者が「行為者」になる場合もある

改正法34条は、事業主・労働者双方に、他の事業主が雇用する労働者に対する言動に必要な注意を払う努力義務を定めています。取引先担当者に対する自社従業員の言動も対象です。なお、自社の労働者が取引先等に対してカスハラを行った場合、Q&A問19は、信用失墜行為や服務規律違反に関する既存の懲戒規定で対応可能なら、就業規則にカスハラ独自の規定を新設する必要は必ずしもないとしています。

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よくある質問(FAQ)

Q「30分を超えたらカスハラ」と社内マニュアルに書いてもよいですか?
法令・指針上、時間や回数による一律のカスハラ該当性基準は存在しないため、「30分を超えたら法律上カスハラ」という書き方は不正確です。一方、指針は「十分な説明を行った上で、なお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすること」を対処の内容の例として挙げています。30分等を、上長エスカレーションや対応終了判断の社内基準として設定することは可能です。「法的該当性の基準」ではなく「社内運用のトリガー」として位置づけてください。
Qカスハラかどうかを労働局が判断してくれますか?
いいえ。Q&A問6は、事実関係の確認を迅速かつ正確に行うことは事業主の義務であり、都道府県労働局は、個々の顧客等の言動がカスハラに該当するか否かの判断は行わないとしています。事業主が、指針の定義を踏まえて該当性を含めた事実関係を確認し、必要な措置を講じる必要があります。
Qカスハラを理由に「出禁」にしてもよいのでしょうか?
出入り禁止は、指針が「特に悪質と考えられるもの」への対処の例として挙げています。ただし、改正法は事業主に新たな法的権限を与えるものではなく(Q&A問18)、実際に出禁とするかは方針に基づく個別判断です(同問16)。基準があいまいだとトラブルになりやすいため、社内規程・顧客向け規約とセットで設計し、各業法上のサービス提供義務や障害者差別解消法上の合理的配慮の要請にも留意してください。
Q録音していても、従業員のメモは必要ですか?
必要です。録音・映像だけでは「誰が・いつ・どのような状況で」発言したかが分かりにくい場合があります。録音+簡単なメモの両方を残すことで、事実確認・労災申請・警察相談がスムーズになります。あわせて、録音・録画データを事実確認に用いる場合は、利用目的の特定と通知・公表が必要です(Q&A問10)。
Q相談窓口を新設する余力がありません。上司が受けるかたちでもよいですか?
問題ありません。Q&A問12は、カスハラについては、その場ですぐ相談することや現場に精通した上司に相談することが適切な場合もあるため、他のハラスメント窓口と一体である必要はなく、相談に対応する担当者として労働者の上司に当たる管理監督者等を定めることも考えられるとしています。ただし、担当者が適切に対応できるようマニュアル整備と研修は必要です。
Q顧客が立ち去ってしまい、行為者から話を聞けません。事実確認義務は果たせますか?
果たせます。指針は行為者からの聴取を「必要かつ可能な場合には」と留保しており、Q&A問13は、連絡を取ることが不可能な場合にまで行為者から確認する必要はないとしています。相談者からの聴取に加え、周囲の労働者からの聴取や録音・録画等の客観的証拠の確認で対応します。それでも確認が困難な場合は、改正後37条の調停等の活用が指針上の例として挙げられています。
Q「お客様は神様」という社風が強く、対応終了しづらいのですが…
2026年10月1日以降、カスハラ防止措置は法律上の義務です。指針は「毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針」の明確化と周知を求めており、Q&A問7も、過度に顧客等を優先した対応をするような接客等の慣行の見直しを、原因・背景を解消する取組として挙げています。加えて、労働契約法第5条の安全配慮義務は社風や慣習に優先します。方針を経営トップのメッセージとして発信することが有効です。
Q顧客対応のない管理部門にも研修が必要ですか?
必要です。「顧客等」には取引の相手方や施設の利用者等も含まれるため、顧客対応が発生しない部署でも措置の対象になります。Q&A問9および更問は、方針も対処の内容も、所属部署・雇用形態や社外の人と接する機会の有無を問わず、すべての労働者に周知する必要があるとしています。

📝まとめ:判断基準を「法令の層」と「社内ルールの層」に分ける

カスハラ対応で最も消耗するのは、「判断できない」状態です。

「これはカスハラなのか?」「断っていいのか?」「電話を切っていいのか?」──この迷いが対応を長引かせ、従業員の心を削ります。

整理の鍵は、判断を2つの層に分けることです。該当性の判断は、3要素の総合判断という法令の枠組みに従う。一方で、現場が今この瞬間どう動くかは、あらかじめ定めた社内の対処ルールに従う。指針が事業主に「対処の内容をあらかじめ定めて周知せよ」と求めているのは、まさにこの現場の判断負荷を下げるためです。

そして、その社内ルールは「顧客を切る基準」ではなく、「必要な説明を尽くしたうえで、なお繰り返される要求から労働者を守る基準」として設計してください。

📌 施行日は2026年10月1日です。まずは本記事の「対応終了の考え方」「録音・録画と個人情報保護法の整理」「記録項目」を、自社のカスハラ対応マニュアル・就業規則・プライバシーポリシー・研修資料に反映できるか、上司や法務と共有してみてください。

本記事が参照した一次資料

  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律(令和7年法律第63号/2025年6月11日公布、2026年10月1日施行)
  • 事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年2月26日・厚生労働省告示第51号)
  • 厚生労働省雇用環境・均等局雇用機会均等課「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」(令和8年4月24日/原則として令和8年10月1日適用)
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(カスハラ防止指針・リーフレット掲載ページ)
  • 刑法(明治40年法律第45号)/令和4年法律第67号による改正(拘禁刑への一本化、2025年6月1日施行)
  • 労働契約法(平成19年法律第128号)第5条
  • 厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(令和5年9月1日付け基発0901第2号)

※本記事は2026年8月31日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別事案に対する法的助言ではありません。実際の対応は、業種・業態・契約内容等を踏まえ、弁護士等の専門家にご相談ください。

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※本プロンプト集は法的助言の代替ではありません。重大な事案は弁護士にご相談ください。