契約書レビューにおいて本当に問われるのは、「文言が整っているか」ではなく、その条項が当社にとって不利になりうるか、あるいは未知のリスクを含んでいないかを見抜く力です。
今回は、法務部員がChatGPTを活用しながら、当社視点でのリスク判断にフォーカスした“裏読み”チェックの実践例を紹介します。
📌 チェック①:「合理的理由」による解除は当社が一方的に損をする?
条文例:「甲は、合理的理由がある場合、本契約を解除できる」
“合理的理由”の内容が明示されていない場合、相手方の主観で判断され、当社が一方的に契約を打ち切られるおそれがあります。納品直前や投資回収前の解除は、当社の損害につながります。
🔍 ChatGPTプロンプト例:
「この解除条項は、乙(当社)にとってどのような不利やリスクがあるか分析してください」
📌 チェック②:「協議の上、別途定める」は未決事項=リスク
条文例:「本契約の詳細は、協議の上、別途定める」
一見柔軟な表現ですが、具体的な合意がないまま契約締結すると、実務で必要な内容が未定のまま進行し、後日トラブルになるリスクがあります。協議が不調の場合の対応策がなければ当社の業務遂行が滞るおそれも。
🔍 ChatGPTプロンプト例:
「この“協議の上、別途定める”という文言が乙(当社)に不利益を与える可能性があるか、検討してください」
📌 チェック③:解除権のバランスは取れているか?
条文例:「甲は30日前の通知により、本契約を中途解除できる」
一方のみが自由に解除できる内容で、当社には解除権がない・通知期間が短い・補償がない場合は特に要注意。業務リソースや先行投資を回収できず、当社が損失を被るリスクがあります。
🔍 ChatGPTプロンプト例:
「この解除条項の構成において、当社(乙)に不利益となる点があれば教えてください」
📌 チェック④:「やむを得ない事情」の濫用で相手が免責される?
条文例:「乙は、やむを得ない事情がある場合、本契約の義務を免れることができる」
定義が曖昧な場合、相手方が広く“やむを得ない”と主張して義務履行を回避する可能性があります。
当社が期待するサービスや成果を受けられなくなるリスクがあるため、文言の明確化または限定が必要です。
🔍 ChatGPTプロンプト例:
「“やむを得ない事情”の範囲が明確でないことで、乙(当社)にどのようなリスクがあるか分析してください」
📌 チェック⑤:損害賠償責任の上限が当社の被害に届かない?
条文例:「甲の損害賠償責任は契約金額の範囲内とする」
重大な損害が発生した場合でも、契約金額以上の補償を受けられない構造になっていないか確認が必要です。特に、間接損害や特別損害が除外されている場合は要注意です。
🔍 ChatGPTプロンプト例:
「この損害賠償条項は、乙(当社)が実際に被る損害をカバーできる内容になっているか確認してください」
✅ ChatGPTで“当社視点”のレビューをルーチン化
契約書は中立的な文章に見えて、実際にはどちらか一方に有利な構造になっていることが少なくありません。
ChatGPTを使えば、“この条文で当社が損をする可能性は?”という視点でのコメントや補足解釈をスピーディに得ることができます。
おすすめプロンプト:
「この契約書を通して、乙(当社)の立場から見て不利な点やリスク要因をリストアップしてください」
⚠️ ただし、最終判断はあくまで人間
ChatGPTはリスクを洗い出すうえで非常に有用ですが、最終的な法的判断や社内影響の評価は人が行うべきです。
AIを活用することで抜け・漏れ・思い込みを補完しながら、当社にとって本当にリスクがないかをチェックする。それが“裏読みレビュー”の本質です。