法改正

【2025年版】企業法務が押さえるべき法改正カレンダー

【2025年版】企業法務が押さえるべき法改正カレンダー

施行時期・影響度・対応チェックリスト付き

法務担当者にとって、法改正のキャッチアップは避けて通れない業務です。しかし、「改正が多すぎて追いきれない」「結局うちの会社に関係あるの?」「いつまでに何を対応すればいい?」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、2024年〜2026年に施行される(または施行予定の)主要な法改正を、「施行時期」「影響を受ける企業」「対応事項」の観点で整理します。

法改正カレンダー・影響度マトリクス・対応チェックリストを用意しましたので、自社に関係する改正を素早く特定し、対応の優先順位を決めるためのリファレンスとしてご活用ください。

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1. 法改正カレンダー(2024〜2026年)

企業法務に影響する主要な法改正を、時系列で整理します。「法改正対応」と一口に言っても、その内容は多岐にわたります。まずは施行時期ベースで全体像を把握し、自社に関係するものを特定することが第一歩です。

施行時期 法律・改正内容 影響度 主な対象企業
2024年(施行済み)
2024年4月 労働条件明示ルール改正 全企業(従業員を雇用)
2024年4月 裁量労働制の見直し 裁量労働制を導入している企業
2024年11月 フリーランス保護法(フリーランス新法) フリーランスに業務委託する企業
2025年
2025年4月 育児介護休業法改正(柔軟な働き方) 全企業(従業員100人超は義務拡大)
2025年4月 高年齢者雇用安定法(65歳定年義務化の検討) 全企業
2025年(予定) 個人情報保護法改正(3年ごと見直し) 個人情報を取り扱う全企業
2026年
2026年1月 改正下請法(支払期日短縮・手形廃止) 親事業者(資本金1,000万円超)
2026年5月 改正会社法(株主総会資料の電子提供措置の完全義務化) 上場企業
2026年(予定) 労働基準法改正(労働時間規制の見直し) 全企業

※施行時期は2025年12月時点の情報に基づきます。今後変更される可能性があります。

👉 この章のポイント:まずは「いつ・何が変わるか」の全体像を把握することで、対応の優先順位付けができるようになります。

2. 影響度マトリクス:自社に関係する改正を特定

法改正は数多くありますが、すべてに同じ労力をかける必要はありません。自社への影響度と対応の緊急度から、優先順位を決めましょう。

2-1. 企業属性別・影響する法改正

企業の属性 特に注意すべき法改正
フリーランス・個人事業主に発注している フリーランス保護法、下請法改正
従業員100人超 育児介護休業法改正(義務拡大)
資本金1,000万円超(製造業3億円超等) 下請法改正(親事業者規制)
上場企業 会社法改正(電子提供)、開示規制強化
個人データを大量に扱う 個人情報保護法改正、AI規制動向
AI・生成AIを業務に活用 AI規制動向(EU AI Act の域外適用等)

2-2. 優先度判定フローチャート

【ステップ1】自社の属性を確認

  • 従業員数、資本金、上場/非上場、主要取引形態

【ステップ2】影響する法改正を特定

  • 上記マトリクスで該当する改正をピックアップ

【ステップ3】施行時期から逆算

  • 施行まで6ヶ月以内 → 最優先で対応
  • 施行まで1年以上 → 情報収集・方針決定フェーズ

👉 この章のポイント:自社の属性から「対応必須の改正」を絞り込むことで、限られたリソースを効率的に配分できるようになります。

3.【労働法】フリーランス保護法・労基法改正

3-1. フリーランス保護法(2024年11月施行)

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。フリーランスへの業務委託について、発注者側に様々な義務を課す法律です。

【主な義務】

  • 書面等による取引条件の明示:業務内容、報酬額、支払期日等を書面またはメールで明示
  • 報酬支払期日:成果物の受領から60日以内に支払い
  • 禁止行為:報酬の減額、返品、買いたたき等
  • ハラスメント対策:体制整備義務(継続的業務委託の場合)

⚠️ 対応が必要な企業:個人のフリーランス(法人成りしていない)に業務委託している場合、契約書・発注書の見直しが必須です。「今まで口頭発注だった」という場合は早急に書面化を。

3-2. 労働基準法改正(2026年予定)

約40年ぶりの大改正が検討されています。労働時間規制の見直し、労使コミュニケーションの強化などが論点です。

【検討されている主な内容】

  • 労働時間規制の柔軟化(デジタル技術を活用した労働時間管理)
  • テレワーク・副業を前提とした規制の見直し
  • 労使協定・労使委員会制度の見直し
  • 労働基準監督の強化

💡 現時点での対応:法案が確定するまでは情報収集フェーズ。ただし、既存の労働時間管理・就業規則が現行法に適合しているか、今のうちに点検しておくことをおすすめします。

3-3. 育児介護休業法改正(2025年4月施行)

仕事と育児・介護の両立支援を強化する改正です。

【主な改正内容】

  • 子の看護休暇の対象拡大(小学校3年生まで)
  • テレワーク・短時間勤務等の柔軟な働き方の義務化(従業員100人超)
  • 男性育休取得率の公表義務拡大

👉 この章のポイント:労働法改正は「就業規則・契約書・社内制度」の見直しに直結します。施行日から逆算して、規程改定のスケジュールを立てましょう。

4.【取引法】下請法・独禁法改正

4-1. 改正下請法(2026年1月施行予定)

下請取引の適正化を強化する改正です。特に支払条件の見直しが大きなインパクトを持ちます。

【主な改正内容】

  • 支払期日の短縮:受領から60日以内→できる限り短い期間(努力義務→義務化の方向)
  • 手形払いの廃止:約束手形による支払いを原則禁止
  • 価格転嫁の円滑化:労務費・原材料費の上昇分の転嫁協議義務
  • 罰則の強化:違反企業名の公表、勧告の厳格化

⚠️ 対応が必要な企業:資本金1,000万円超(製造業等は3億円超)で、下請事業者に発注している「親事業者」に該当する場合、支払いフローの見直しが必須です。

4-2. 独占禁止法の動向

デジタルプラットフォーム規制、スタートアップとの取引適正化など、独禁法の運用が強化されています。

【注目すべき動向】

  • 「優越的地位の濫用」規制の厳格化
  • スタートアップとの取引に関する指針の策定
  • デジタル広告分野への規制強化

👉 この章のポイント:取引法改正は「発注書・契約書・支払いフロー」の見直しに直結します。経理・購買部門との連携が必要です。

5.【情報法】個人情報保護法・AI規制

5-1. 個人情報保護法改正(2025年予定)

個人情報保護法は3年ごとに見直しが行われます。2025年は次の見直し時期に当たり、以下の論点が検討されています。

【検討されている主な内容】

  • 生成AI・機械学習への対応(学習データの取扱い)
  • 越境移転規制の強化
  • 課徴金制度の導入検討
  • こどもの個人情報の特別保護

💡 現時点での対応:改正内容が確定するまでは情報収集フェーズ。現行法への適合状況(プライバシーポリシー、同意取得フロー、安全管理措置等)を点検しておきましょう。

5-2. AI規制の動向

EU AI Act(AI規制法)が2024年に発効し、段階的に施行されています。日本企業にも影響があります。

【日本企業が注意すべきポイント】

  • 域外適用:EU市場向けにAIサービスを提供する場合は規制対象
  • リスク分類:AIシステムのリスクレベルに応じた規制
  • 透明性義務:AIを使用していることの開示義務

【日本国内の動向】

  • AI戦略会議による「AI事業者ガイドライン」の策定
  • 法的拘束力のある規制は現時点では未導入(ソフトロー中心)
  • 業界別の自主ガイドラインの策定が進行中

👉 この章のポイント:情報法・AI規制は「プライバシーポリシー・AI利用規程・データ管理体制」の見直しに直結します。IT部門・DX推進部門との連携が必要です。

6.【会社法・コーポレート】株主総会・開示規制

6-1. 株主総会資料の電子提供措置

2022年施行の改正会社法により、上場企業は株主総会資料の電子提供が義務化されました。経過措置期間を経て、完全義務化が進んでいます。

【対応事項】

  • 自社ウェブサイトでの資料掲載
  • EDINET・TDnetでの掲載
  • 書面交付請求への対応体制

6-2. 開示規制の強化

有価証券報告書における開示事項が拡充されています。

【近年の開示強化項目】

  • サステナビリティ情報(気候変動リスク、人的資本等)
  • コーポレートガバナンス報告書の記載充実
  • 役員報酬の個別開示

👉 この章のポイント:会社法・開示規制は「株主総会運営・IR・コーポレートガバナンス」に直結します。IR部門・経営企画部門との連携が必要です。

7. 法改正対応チェックリスト

法改正対応を漏れなく進めるためのチェックリストです。

【情報収集フェーズ】

  • ☐ 官公庁(厚労省、経産省、法務省等)のサイトを定期チェックしている
  • ☐ 法律事務所・専門メディアのニュースレターを購読している
  • ☐ 業界団体の情報を収集している
  • ☐ 法改正カレンダーを作成・更新している

【影響分析フェーズ】

  • ☐ 自社に影響する法改正を特定している
  • ☐ 影響を受ける部門・業務を洗い出している
  • ☐ 対応の優先順位を決めている
  • ☐ 経営層・関係部門に影響を報告している

【対応実施フェーズ】

  • ☐ 契約書・規程類の改定を行っている
  • ☐ 業務フロー・システムの変更を行っている
  • ☐ 従業員向け研修・周知を行っている
  • ☐ 対応完了の記録を残している

【継続モニタリングフェーズ】

  • ☐ 施行後の運用状況を確認している
  • ☐ 当局の解釈・ガイドラインをフォローしている
  • ☐ 次の法改正に備えて情報収集を継続している

8. まとめ:法改正対応の進め方

法改正対応は、以下の4ステップで進めるのが効率的です。

ステップ 内容
①情報収集 法改正の動向を定期的にキャッチアップ
②影響分析 自社への影響を特定し、優先順位を決定
③対応実施 契約書・規程・業務フローの改定、従業員研修
④継続モニタリング 施行後の運用確認、次の改正への備え

自社の法改正対応を1分でチェック

  • ☐ 今後1年以内に施行される法改正のうち、自社に影響するものを把握している
  • ☐ 法改正対応のスケジュール・担当者が決まっている
  • ☐ 法改正情報を定期的に収集・共有する仕組みがある

上記のうち、1つでも「自信がない」と感じる項目があれば、本記事で紹介した法改正カレンダーやチェックリストを参考に、自社の法改正対応体制を整えていくことをおすすめします。

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※本記事の内容は、2025年12月時点の法令・公表情報・報道等に基づくものであり、今後変更される可能性があります。また、特定の事案についての法律意見・専門的助言を提供するものではありません。個別案件については、所属企業の顧問弁護士・専門家等にご相談ください。

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