契約書の保存期間は何年?7年・10年の違いを税法・会社法・電帳法で整理
契約書の保存期間は何年?7年・10年の違いを税法・会社法・電帳法で整理
契約書の保存期間は、税務上は原則7年(一定の欠損金年度は10年)ですが、実務では会社法対応も見据えて10年保存で統一する運用が安全です。電子メール添付やクラウド経由で授受した契約書は、紙に印刷するだけでは足りず、電子データのまま法令要件を満たした保存が必要です。起算日は税法と会社法で異なるため、社内ルールとして明文化しておくことを推奨します。
保存期間の基本ルール|まず3つのポイント
契約書の保存期間は、法人税法・会社法・電子帳簿保存法の3つが交差するため、実務では混乱しやすいテーマです。まず、以下の3点を押さえてください。
① 税務上の保存義務は原則7年、一定年度は10年。
法人税法上、帳簿書類(契約書を含む)は確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存が必要です。欠損金の繰越控除を行う事業年度は10年に延長されます(国税庁 No.5930)。
② 実務上は10年保存で統一するのが安全。
会社法上、会計帳簿や計算書類に関連する重要資料は10年間の保存対象と解される実務が多く、契約書もこの枠で管理する企業が大半です。統一することで起算日管理の煩雑さも軽減できます。
③ 電子授受の契約書は、紙保存だけでは不十分。
電子メール添付やクラウド締結の契約書は「電子取引データ」に該当し、紙に印刷するだけでは要件を満たしません。電子データのまま、電子帳簿保存法の保存要件を充足する必要があります(国税庁 電帳法Q&A)。
契約書の保存期間 早見表
主な契約書の種類別に、根拠法・保存期間・起算日を一覧にまとめました。個別の業法により追加義務がある場合は備考欄に記載しています。
| 契約書の種類 | 根拠法 | 法定保存期間 | 起算日 | 実務推奨 |
|---|---|---|---|---|
| 売買契約書 | 法人税法 | 7年(欠損金年度は10年) | 確定申告書提出期限の翌日 | 10年統一 |
| 業務委託契約書 | 法人税法 | 7年(欠損金年度は10年) | 確定申告書提出期限の翌日 | 10年統一 |
| 賃貸借契約書 | 法人税法 | 7年(欠損金年度は10年) | 確定申告書提出期限の翌日 | 10年統一 |
| 秘密保持契約書(NDA) | 法人税法 | 7年(欠損金年度は10年) | 確定申告書提出期限の翌日 | 10年統一※秘密保持義務期間が長い場合はそれに合わせる |
| 雇用契約書・労働条件通知書 | 労基法109条 | 5年(当面は経過措置で3年) | 退職日等 | 10年統一※労基法上は5年(当分の間3年)だが、他の契約書管理と合わせて長めに統一管理する企業も多い |
| 建設工事請負契約書 | 法人税法 | 7年(欠損金年度は10年) | 確定申告書提出期限の翌日 | 10年統一※営業に関する図書(建設業法施行規則26条)は工事引渡しから10年 |
| 不動産売買契約書 | 法人税法 | 7年(欠損金年度は10年) | 確定申告書提出期限の翌日 | 永年保存推奨※権利関係の確認に必要 |
定款は会社法上の備置・閲覧対象(会社法31条)として別管理が必要です。株主間契約書は法定の保存期間規定はありませんが、重要文書として案件終了後も含め長期保管(永年保存推奨)が実務上の一般的対応です。
上記はあくまで代表的なケースの整理です。欠損金が生じた事業年度の帳簿書類は10年保存が必要となるため、実務上は保存期間を10年で統一し、起算日を社内ルールで明文化しておくのが最も安全な運用です。
「7年」と「10年」何がどう違うのか
法人税法の原則:7年
法人税法上、法人は帳簿書類を確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。契約書は「取引に関して作成し、又は受領した書類」として保存義務の対象に含まれます(国税庁 No.5930)。
欠損金がある年度:10年
平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生じた事業年度については、帳簿書類の保存期間が10年に延長されています。これは繰越欠損金の控除期間(10年)と整合させるための制度設計です。
実務上の問題は、「その事業年度に欠損金が生じるかどうかは期中にはわからない」ことです。後から欠損が確定してから仕分け直すのは非現実的なため、多くの法務・経理部門は全事業年度を一律10年で管理しています。
会社法の実務的視点
会社法は、会計帳簿および事業に関する重要な資料について10年間の保存を定めています(会社法432条)。契約書そのものが直接列挙されているわけではありませんが、実務上、取引の裏付けとなる契約書は「事業に関する重要な資料」に含めて管理されることが一般的です。少なくとも会社法対応も見据える場合、10年保存で統一しておくのが安全な運用といえます。
起算日の整理|いつから数えるか
保存期間を正しく管理するには、「いつから数えるか」(起算日)の理解が不可欠です。税法と会社法で起算日が異なるため、以下に整理します。
| 根拠法 | 起算日 | 保存満了日(10年管理の例) |
|---|---|---|
| 法人税法 | 確定申告書の提出期限の翌日※3月決算法人の場合、翌年6月1日 | 起算日から10年経過日 |
| 会社法ベースの実務運用 | 閉鎖時(事業年度末)等 | 起算日から10年経過日 |
| 労基法(雇用契約書等) | 退職日・契約完了日等 | 起算日から5年(経過措置3年) |
| 建設業法施行規則(営業に関する図書) | 工事目的物の引渡し日 | 引渡しから10年 |
起算日を契約書単位で個別に管理するのは非現実的です。実務では「事業年度ごとに一括管理し、当該年度分はすべて同一の保存満了日を設定する」運用が一般的です。この方法であれば、保存期間の一覧管理や廃棄判断もスムーズに行えます。
電子帳簿保存法と契約書保存
電子メール添付・クラウド締結・PDFでの授受など、電子的に取り交わした契約書は「電子取引データ」に該当します。令和6年1月1日以後、電子取引データについては出力書面による保存が認められなくなり、電子データのまま、法令要件に従って保存することが必要です(国税庁 電帳法Q&A)。
保存要件の2つの柱
電子取引データの保存にあたっては、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つの要件を満たす必要があります。
※ 検索要件には、税務署長のダウンロードの求めに応じる場合等の緩和措置があります。自社運用では最新の国税庁Q&Aを確認してください。
実務での判断軸
制度を理解したうえで、実務で確認すべきポイントは次の3つに集約されます。「どこに保存するか」よりも、これらの要件を運用として充足できるかどうかが重要です。
契約書の管理体制を整えたら、次に見直したいのがレビュー工程です。条文照合・リスク抽出・修正案生成まで、10ステップで体系化したプロンプト集を用意しています。
契約書AIレビュー10STEPプロンプト を見る保存不備があった場合のリスク
保存義務に違反した場合、直ちに一律の不利益処分が課されるとは限りません。国税庁の電子帳簿保存法Q&Aでも、電子データの一部が適正に保存されていなかったとしても、そのことのみをもって直ちに青色申告承認の取消しや経費の否認が行われるものではないとされています(国税庁 電帳法Q&A)。
ただし、保存不備がある状態は、税務調査における説明負担を大きく増加させます。具体的には以下のようなリスクが考えられます。
| リスク区分 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 損金算入の立証困難 | 証憑がなければ、経費として認められない可能性がある | 推定課税のリスクも |
| 仕入税額控除の否認 | 消費税法上、帳簿・請求書等の保存が控除要件 | インボイス制度下では特に重要 |
| 税務調査対応の長期化 | 保存体制に不備があると追加資料の提示を求められる | 事業への影響が大きい |
| 会社法上の過料 | 会社法976条に基づき、正当な理由なく帳簿書類を保存しなかった場合の過料規定あり | e-Gov 会社法 |
「直ちに処分されないから大丈夫」ではありません。保存不備は税務調査時の説明負担を増やし、証憑性の弱い取引について損金算入や仕入税額控除の立証面で不利になる可能性があります。電子取引データについては、検索性や提示可能性まで含めた保存体制が求められます。
実務での運用設計チェックリスト
保存ルールを理解したうえで、自社の運用に落とし込むために確認しておきたい項目を整理しました。
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- 保管期間一覧表 – 契約種類別の法定期間を網羅
- 保管場所・方法の設計 – 物理保管とクラウドの両対応
- 廃棄手続きフロー – リスク判断基準と承認プロセス
- 運用チェックリスト – 締結時・終了時・棚卸し時の手順
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💡 使い方のヒント: プロンプトをコピーして、ChatGPT・Claude・Geminiにペースト。 自社の情報(従業員数、業種、現在の課題など)を入力すると、即座にカスタマイズされた保管規程が生成されます。
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