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法改正ハブ|取適法シリーズ第1話|2026年8月14日更新

2026年1月1日、旧「下請法」は改正・改称され、取適法(とりてきほう)として施行されました。正式な法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称は「中小受託取引適正化法」です。適用対象の拡大、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止など、発注実務に重要な変更があります。原則として2026年1月1日以降に発注する対象取引に取適法が適用されることを前提に、法務・購買・経理が現在の運用をどう点検すべきかまで整理します。

施行日2026年1月1日(既施行)
適用開始原則、同日以降に発注する対象取引
法令番号昭和31年法律第120号(令和7年法律第41号で改正)
所管公正取引委員会・中小企業庁

取適法とは何か

取適法(とりてきほう)とは、2026年1月1日に施行された「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」の通称です。略称は「中小受託取引適正化法」。新しい法律を一から制定したのではなく、昭和31年法律第120号である旧「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」を令和7年法律第41号により改正し、題名・用語・適用範囲・規制内容を見直したものです。

法律の目的は、製造委託等に関する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護することです。取適法は独占禁止法上の優越的地位の濫用規制と関係しますが、「優越的地位にあること」自体を取適法の適用要件として個別に立証する仕組みではありません。法定の取引類型と規模要件を満たす取引について、委託事業者の義務・禁止行為を具体的に定めています。

重要
📅 2026年1月1日より前の発注まで一律に取適法へ切り替わるわけではない

公正取引委員会は、2026年1月1日以降に発注する取引について取適法の規定が適用されると明示しています。したがって、施行日前に発注した取引が、納品・役務完了・支払だけ施行日後になったという理由だけで直ちに取適法へ切り替わるわけではありません。実務では、基本契約の締結日だけでなく、個別発注がいつ行われたかを確認することが重要です。

実務メモ
📌 「取適法」という呼び方

公正取引委員会は「取適法」を通称として使用しています。本記事でもSEO上の主要キーワードである「取適法」「下請法」「2026年施行」「法務」を維持しつつ、施行後の正式な制度・用語に合わせて説明します。

なぜ下請法が見直されたのか

改正の大きな背景にあるのが、労務費・原材料費・エネルギーコストなどの上昇を取引価格へ適切に反映し、中小事業者の賃上げ原資を確保できる取引環境を整えるという政策課題です。公正取引委員会の改正説明でも、価格協議を求めても無視・先延ばしされる、一方的に価格を据え置かれる、といった問題への対応が明示されています。

公正取引委員会の一次資料で示された主な見直しの背景を整理すると、次のとおりです。

  • 資本金基準だけでは対象外となる事業者が生じ得ること:減資や受注側への増資要請などにより、実質的な事業規模に比して旧法の対象から外れる場面が問題視された
  • 価格協議を実質化する必要性:協議要請の無視・先延ばしや、十分な説明のない一方的な価格決定への対応が必要だった
  • 支払手段による資金繰り負担:手形、電子記録債権、一括決済方式等により、中小受託事業者側に現金化までの負担が生じる問題への対応が必要だった
  • 物流取引への対応:発荷主から元請運送事業者への運送委託を新たに「特定運送委託」として対象に加える必要があった
  • 執行体制の面的強化:公正取引委員会・中小企業庁だけでなく、事業所管省庁とも連携して是正を図る仕組みが必要だった

改正法は2025年5月16日に成立し、同月23日に公布され、2026年1月1日に施行されました。施行後は、単に「法改正への準備」をする段階ではなく、2026年1月1日以降の発注について、現在の取引運用が取適法に適合しているかを継続的に点検する段階に入っています。

実務メモ
⚡ 価格転嫁政策との関係

取適法だけを単独で見るのではなく、独占禁止法上の優越的地位の濫用規制、労務費転嫁指針、受託中小企業振興法に基づく振興基準などもあわせて確認することが重要です。ただし、取適法上の法定義務・禁止行為と、振興法上の望ましい取引慣行や実務推奨は区別して社内ルールへ落とし込む必要があります。

下請法から何が変わるのか

改正点は多岐にわたりますが、実務上重要な変更を4つのカテゴリに整理します。

法律名・位置づけ(用語の全面刷新)

法律の名称変更に伴い、法令上の取引当事者の呼称も変わりました。社内規程・契約書ひな形・コンプライアンスマニュアルでは新用語へ更新しておくと適用判定や教育上の混乱を防げます。もっとも、既存契約に旧用語が残っていること自体が直ちに取適法違反となるわけではありません。用語更新は、法定義務そのものというよりコンプライアンス管理上の整備として位置づけるのが正確です。

旧名称(下請法) 新名称(取適法) ポイント
下請代金支払遅延等防止法
(下請法)
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
(中小受託取引適正化法、通称:取適法)
「下請け」という上下関係を連想させる語を廃止
親事業者 委託事業者 発注側の呼称
下請事業者 中小受託事業者 受注側の呼称
下請代金 製造委託等代金 代金の呼称
POINT
📎 実務上、用語・参照条文を更新しておきたい書類
  • 発注書・注文書(旧3条書面)のひな形
  • 取引基本契約書・業務委託契約書
  • コンプライアンスマニュアル・企業行動憲章
  • 取引先向け説明資料・行動指針
  • 下請法遵守チェックリスト(部内用)
  • 帳簿・記録管理フォーム(旧5条書類)

対象事業者の拡大(従業員基準の新設)

取適法の適用は、会社が「大企業か中小企業か」だけでは決まりません。①委託内容が法定の取引類型に当たるか、②発注側と受注側の資本金の組合せ、③資本金基準が適用されない場合には従業員基準、という順で取引ごとに判定します。中小企業庁も、委託事業者・中小受託事業者は「取引の内容」と「お互いの資本金額又は従業員数」によって定まると整理しています。

注意
⚠ 「発注側=委託事業者」ではない

大企業であっても、委託内容が取適法の対象類型に当たらない、又は相手方との規模要件の組合せを満たさない取引では、取適法上の「委託事業者」にはなりません。逆に、中小企業であっても、例えば資本金1,000万円超の会社が、より小規模な事業者へ対象業務を委託するなど、法定の組合せを満たせば「委託事業者」になり得ます。

規模要件は、取引類型に応じて大きく次の2グループに分かれます。

取引類型 委託事業者 中小受託事業者
グループA
製造委託・修理委託・特定運送委託
プログラム作成
運送・倉庫保管・情報処理の役務提供委託
資本金3億円超 資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1,000万円超3億円以下 資本金1,000万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員300人超 常時使用する従業員300人以下
グループB
プログラム以外の情報成果物作成委託
運送・倉庫保管・情報処理以外の役務提供委託
資本金5,000万円超 資本金5,000万円以下(個人を含む)
資本金1,000万円超5,000万円以下 資本金1,000万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員100人超 常時使用する従業員100人以下

※従業員基準は、公正取引委員会の施行時留意事項により、資本金基準が適用されない場合に適用されるものと整理されています。したがって、単純に「資本金基準 OR 従業員基準」とだけ覚えるのではなく、まず取引類型と資本金の組合せを確認した上で、必要に応じて従業員基準へ進むのが安全です。

対象取引そのものについても、改正により次の変更があります。

追加・変更内容 旧下請法 取適法
特定運送委託 発荷主から元請運送事業者への委託は対象外 製造・販売等の目的物の引渡しに必要な運送を発荷主が委託する取引を対象に追加
金型以外の型・治具等の製造委託 金型を中心に規定 木型その他の型や治具等も対象となり得るよう対象物を拡充
4条明示の電磁的方法 電磁的方法には相手方の承諾が必要 中小受託事業者の承諾がなくても、法令上の要件を満たす電磁的方法による明示が可能
7条記録 旧5条書類として作成・保存 取引記録の作成・2年間保存を継続。一括決済方式・電子記録債権を使う場合は施行後の規則に沿った追加記録事項にも注意
従業員基準
👥 「常時使用する従業員」は誰を数えるか

公正取引委員会の施行時留意事項では、正社員、契約社員・委嘱社員、パートタイマー・アルバイト、1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者が例示されています。派遣社員は派遣元で数え、派遣先の「常時使用する従業員」には含めません。判定時点は原則として製造委託等をした時点です。相手方の従業員数を確認する法定義務まではありませんが、適用判定に必要であれば確認する運用が考えられます。

価格決定ルールの強化(協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止)

取適法の実務で特に重要なのが、中小受託事業者から代金について協議の求めがあった場合の対応です。旧下請法の「買いたたき」規制に加え、取適法では、協議に応じない、又は協議で必要な説明・情報提供を行わないまま、一方的に代金額を決定して中小受託事業者の利益を不当に害する行為が禁止されています。

法定ルール
価格協議の「結論」ではなく、実質的な協議プロセスも問われる

公正取引委員会Q&A Q134~Q137は、施行後の実務をかなり具体化しています。値上げ要求額の全部又は一部を受け入れないこと自体が直ちに違反になるわけではありませんが、受け入れられない場合には、その理由や考え方の根拠を十分に説明する必要があります。また、委託事業者が自社なりにコスト上昇を考慮して従前価格を引き上げたとしても、中小受託事業者からの申入れについて協議せず一方的に価格を決めれば、違反となるおそれがあります。

Q&A実務上のポイント
Q134 要求額を全部・一部受け入れないこと自体ではなく、実質的な協議が行われたかが重要。受入れ困難なら理由・考え方の根拠を十分に説明する。
Q135 委託事業者が独自にコスト上昇分を織り込み値上げしても、受注側の申入額を下回る価格を協議せず一方的に決定すれば問題となり得る。
Q136 入札・公募方式でも常に個別協議不要とは限らない。主要条件の事前確定、複数候補者による価格提示、必要情報の認識可能性などの条件を満たすかで判断される。
Q137 協議要請や協議経過について、書面・メール・議事録等で記録化しておくことが望ましい。これは重要な実務対応だが、Q&A上は「望ましい」とされており、価格協議記録そのものを一律に法定保存事項とする規定とは区別する。
法定義務と実務推奨を区別
「価格協議条項」を契約書に入れること自体は法定の必須要件ではない

取適法は、契約書に「価格協議条項」という名称の条項を必ず置くことを要求しているわけではありません。法務実務で優先すべきなのは、価格協議の申入れを受け付け、担当部署へつなぎ、実質的に協議し、必要な説明・情報提供を行い、一方的に代金を決定しない運用を確保することです。契約書に協議窓口や協議方法を定めることは、その運用を安定させるための有用な実務策ですが、法定要件とは区別して位置づけるべきです。

なお、取適法第5条の禁止行為に違反し、例えば減額が行われた場合には、勧告において減額分の支払に加え、第6条の遅延利息の支払を求められることがあります。価格協議対応だけでなく、合意済み代金の減額処理にも引き続き注意が必要です。

支払条件の見直し(手形払等の禁止・振込手数料)

2026年1月1日以降に発注する取適法対象取引では、手形による支払は一律に禁止されています。電子記録債権や一括決済方式についても、中小受託事業者が支払期日までに、手数料等を含む代金満額相当の現金を受け取れる状態にならない支払方法は認められません。

支払手段・費用取適法上の扱い
手形払い❌ 2026年1月1日以降に発注する対象取引では禁止。
電子記録債権(でんさい等)⚠ 支払期日に中小受託事業者が割引等の行為をしなくても、代金満額相当の現金を受領できる状態が確保されている必要がある。満期日が支払期日より後の場合は、委託事業者が割引料を負担しても通常は違反となる。
一括決済方式(ファクタリング方式等)⚠ 電子記録債権と同様、支払期日までに代金満額相当の現金を受領できることが必要。受取手数料・システム手数料等を中小受託事業者へ負担させることは、合意の有無にかかわらず問題となる。
銀行振込✅ 現金振込自体は利用可能。ただし、振込手数料を中小受託事業者に負担させて代金から差し引くことは禁止される。
Q&A Q80~Q82
💳 「手数料を発注側が補填すれば何でもよい」わけではない

電子記録債権の満期日等が支払期日より後で、中小受託事業者が支払期日に現金化するため割引等をしなければならない場合は、委託事業者が割引料相当額を負担しても通常は支払遅延となります。一方、一括決済方式等で決済手数料を中小受託事業者が一時負担する設計でも、あらかじめ書面等で合意し、支払期日までにその負担分を補填して代金満額相当の現金受領を確保し、7条記録も整備する場合には問題とならないとされています。

支払期日については、旧法と同様、原則として給付を受領した日(役務提供委託・特定運送委託では役務の提供を受けた日)から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定める必要があります。請求書の提出が遅れたことだけを理由に法定の支払期日を超えることはできません。


企業実務に与える影響

取適法は既に施行されており、法務部門だけでなく、購買・調達・営業・経理・総務など複数部門の現在運用を点検する必要があります。以下のチェックで自社の対応優先度を確認してください。

2026年6月10日公表
📊 施行後は「準備」ではなく、実際の運用・執行フェーズ

公正取引委員会が2026年6月10日に公表した令和7年度の運用状況では、勧告39件、指導8,261件、委託事業者177名から中小受託事業者5,165名に対する原状回復額は総額25億5,698万円相当とされています。なお、令和7年度は2025年4月から2026年3月までの年度集計であり、取適法施行前の期間も含むため、これらを「2026年1月以降だけの取適法違反件数」と読むのは適切ではありません。それでも、取引適正化に関する執行が継続していることは明確です。

✅ 違反リスクを優先確認
  • 2026年1月1日以降の対象発注で手形を交付している
  • 振込手数料を中小受託事業者負担として代金から差し引いている
  • 電子記録債権・一括決済方式の満期・決済日が支払期日より後になっている
  • 価格協議の申入れに回答しない、又は根拠説明なく自社価格を通知する運用がある
  • 受領等から60日を超える支払サイトの対象取引が残っている
⚠ 適用判定を再確認
  • 取引類型を「業務委託」という契約名だけで一括判定している
  • 資本金だけで対象・対象外を判定し、従業員基準を確認していない
  • 運送委託・物流委託がある(特定運送委託を含む)
  • 治具・木型等を外部に製造委託している
  • フリーランス・個人事業主への業務委託があり、フリーランス法との適用関係を確認していない

部門別の実務影響を整理すると次のとおりです。

部門主な対応事項優先度
法務 対象判定ロジックの整備、契約・発注書ひな形と社内規程の更新、価格協議対応フローの法令適合性確認、支払条件レビュー 🔴 最優先
購買・調達 4条明示事項の確認、価格協議申入れの受付・エスカレーション、手形・振込手数料等の禁止ルールの運用 🔴 最優先
経理・財務 手形使用の停止、振込手数料負担の是正、電子記録債権・一括決済方式の満期・手数料確認、60日ルールの運用 🟠 優先
営業 自社が受注側でもある場合の権利把握(価格協議要求の正当性の認識)、顧客への法改正説明 🟠 優先
総務・HR 全社向け取適法コンプライアンス教育の企画・実施、コンプライアンス通報窓口の周知 🟡 順次
経営・事業部門 グループ会社・子会社を含めた取引方針の見直し、サプライチェーン全体の価格転嫁対応 🟡 順次
重要
🚨 違反した場合のリスク:勧告・公表・行政指導
  • 公正取引委員会による勧告・公表:違反に対して勧告が行われた場合、その内容・事業者名が公表されるため、是正コストに加えてレピュテーションリスクも生じます
  • 中小企業庁・事業所管省庁による指導・助言:取適法では旧法よりも省庁間連携が強化され、主務大臣の指導・助言権限が明記されました(面的執行の強化)
  • 遅延利息:支払期日を守らなかった場合、年率で遅延利息が発生します
  • 報復措置の禁止違反:申告を理由とした取引削減・停止は独立した禁止行為として規定されています

法務担当者が施行後に点検すべき5つの対応

1
対象取引を「取引ごと」に判定する

まず、契約名や会社規模だけで判断せず、①製造委託等の法定取引類型、②発注側・受注側の資本金の組合せ、③資本金基準が適用されない場合の従業員基準の順に確認します。継続取引では、2026年1月1日以降の個別発注を抽出できるよう、発注日も判定項目に含めることを推奨します。

2
ひな形・発注書と実際の運用をそろえる

旧用語・旧条番号を使うひな形は管理上更新しておくのが有用です。ただし、専用の価格協議条項の追加自体は法定必須要件ではありません。契約条項よりも、4条明示事項、支払条件、価格協議申入れを受けた際の実務フローが法令に適合しているかを優先して確認します。必要に応じて、協議窓口・協議方法を契約に定めることは実務上の選択肢です。

3
価格協議の受付・協議・説明フローを運用する

価格協議の申入れを放置せず、担当者・決裁者へつなぎ、必要な情報を確認して実質的に協議します。要求額を受け入れない場合には理由・考え方の根拠を説明できる状態にします。Q&A Q137を踏まえ、申入れ、回答、提示資料、協議経過をメールや議事録等で記録化することを実務上推奨します。ただし、これは「望ましい」対応として示されたもので、7条記録の法定保存義務と同一ではありません。

4
支払条件を現在運用ベースで是正・検証する

2026年1月1日以降に発注した対象取引について、手形が残っていないか、振込手数料を中小受託事業者に負担させていないか、電子記録債権・一括決済方式で支払期日までに代金満額相当の現金受領が確保されているかを確認します。施行前の移行計画を作る段階ではなく、現在の支払実績を抽出して違反の有無を検証することが重要です。

5
購買・営業・経理・グループ会社への教育展開

取適法は法務部門だけでは運用できません。購買担当者には対象判定と価格協議、経理担当者には支払期日・支払手段・手数料負担、営業担当者には自社が受注側となる場面の権利を具体例で周知します。グループ会社についても、グループ内取引だから一律に対象又は対象外とせず、各取引を法定要件に沿って判定する運用が必要です。

POINT
✅ LegalOSで取適法対応を仕組み化する
  • 契約審査受付フロー:取適法対応チェック項目を組み込み、発注書・委託契約書の審査を標準化
  • 価格協議の受付・承認フロー:協議申入れ、回答・説明、協議経過を記録し、実質的協議を支える
  • 4条明示・7条記録管理:法定の取引条件明示と、7条記録の2年間保存を検索可能な形で管理
  • 権限管理・監査ログ:誰がいつ何を承認したかを記録し、規制当局調査への対応備えを整備
  • グループ統制:子会社・関係会社を含めた一元管理で、グループ全体の取適法コンプライアンスを確保

よくある質問

Q
取引先がフリーランスの場合、取適法とフリーランス法のどちらが適用されますか?
A
同一の取引・行為について取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法の双方が問題となり得ますが、公正取引委員会は、双方に違反する行為については原則としてフリーランス・事業者間取引適正化等法を優先して適用すると整理しています。したがって、「常に両法を同じ形で重畳適用する」「単純に厳しい方だけ見ればよい」とは整理せず、相手方の属性、委託内容、各条項の要件を個別に確認してください。詳細はフリーランス新法×下請法の実務対比もご参照ください。
Q
取適法とは結局何ですか?
A
取適法(とりてきほう)は、旧「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」が2026年1月1日に改正・改称された法律の通称です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法)。適用対象を広げ、価格転嫁促進・手形払い禁止・一方的代金決定の禁止などを強化した、より実効的な中小受託事業者保護の法律です。
Q
下請法とは別の法律ですか?
A
別の法律が新設されたのではなく、昭和31年法律第120号である旧下請法が改正・改称されたものです。令和7年法律第41号は、その改正を行った「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」です。旧法の基本的な枠組みを引き継ぎつつ、適用範囲・規制内容・執行体制が拡充されています。
Q
中小企業以外も関係ありますか?
A
関係はありますが、大企業だから当然に委託事業者になるわけでも、中小企業が発注すれば当然に義務を負うわけでもありません。まず委託内容が取適法の対象取引に当たるかを確認し、その上で、発注側・受注側の資本金の組合せ、資本金基準が適用されない場合の従業員基準によって、取引ごとに判定します。中小企業でも規模の組合せによって委託事業者に該当する場合があります。
Q
施行後の現在、契約書・発注フローは何を見直すべきですか?
A
まず、2026年1月1日以降に発注する対象取引へ取適法が適用されることを前提に、4条明示、支払条件、価格協議対応の運用を確認してください。旧用語の置換や専用の価格協議条項の追加自体は法定要件ではありません。もっとも、社内の誤判定防止や運用標準化のため、ひな形・社内規程を現行法の用語・条番号に更新し、必要に応じて協議窓口等を契約上明確にすることは有用です。業務委託契約書の実務ガイドもあわせてご活用ください。
Q
法務部が小規模でも対応できますか?
A
対応の優先順位を絞れば可能です。①取引類型・資本金・従業員基準による対象判定、②価格協議の受付・協議・説明フロー、③手形・振込手数料・電子記録債権等を含む支払条件の点検を先行させます。その後、ひな形・社内規程・教育資料を実際の運用に合わせて更新するのが現実的です。
Q
LegalOSはどんな場面で役立ちますか?
A
取適法対応では、①対象判定、②価格協議の受付・対応履歴、③4条明示と7条記録の管理、④支払承認フローと監査ログ、⑤グループ横断のルール標準化の場面で活用できます。なお、価格協議の議事録等はQ&A上「望ましい」記録であり、7条の法定記録とは区別して設計するのが正確です。詳細は法務OSについての解説記事をご覧ください。

まとめ

取適法は2026年1月1日に既に施行されており、現在は「施行準備」ではなく、実際の発注・価格協議・支払運用を現行法に合わせて検証する段階です。法務担当者が押さえるべきポイントは次のとおりです。

  • 原則として2026年1月1日以降に発注する対象取引に取適法が適用される
  • 適用対象は企業規模だけでは決まらず、委託内容+資本金の組合せ+必要に応じ従業員基準で取引ごとに判定する
  • 従業員基準は資本金基準が適用されない場合の補充的な判定基準として追加された
  • 特定運送委託や型・治具等が対象に加わり、4条明示の電磁的方法も見直された
  • 価格協議では、要求額を全部受け入れる義務ではなく、実質的に協議し、受入れ困難なら理由・根拠を十分に説明し、一方的に決めないことが重要
  • 専用の「価格協議条項」は法定必須ではない。協議フローと説明・記録の運用を優先して整える
  • 手形払は禁止。振込手数料の中小受託事業者負担も禁止。電子記録債権・一括決済方式は支払期日までの満額現金受領を確認する
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※本記事は2026年8月14日時点で、e-Gov法令検索の取適法(昭和31年法律第120号・令和7年法律第41号による改正)、公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」「取適法・振興法」「よくある質問コーナー(取適法)」「取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項」「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」「令和7年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組」(2026年6月10日)、中小企業庁「中小受託取引適正化法」「受託中小企業振興法」等の一次資料を確認して更新しています。
参照:e-Gov法令検索公正取引委員会・取適法関係取適法・振興法取適法Q&A施行時留意事項2026年6月10日運用状況中小企業庁・中小受託取引適正化法
個別取引への適用は、委託内容、当事者の資本金・従業員数、発注時点その他の具体的事実により異なります。
最終確認日:2026年8月14日

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