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法改正ハブ|取適法シリーズ第1話|2026年8月14日更新

2026年1月1日、旧「下請法」は改正・改称され、取適法(とりてきほう)として施行されました。正式な法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略称は「中小受託取引適正化法」です。適用対象の拡大、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止など、発注実務に重要な変更があります。原則として2026年1月1日以降に発注する対象取引に取適法が適用されることを前提に、法務・購買・経理が現在の運用をどう点検すべきかまで整理します。

施行日2026年1月1日(既施行)
適用開始原則、同日以降に発注する対象取引
法令番号昭和31年法律第120号(令和7年法律第41号で改正)
所管公正取引委員会・中小企業庁

取適法とは何か

取適法(とりてきほう)とは、2026年1月1日に施行された「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」の通称です。略称は「中小受託取引適正化法」。新しい法律を一から制定したのではなく、昭和31年法律第120号である旧「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」を令和7年法律第41号により改正し、題名・用語・適用範囲・規制内容を見直したものです。

法律の目的は、製造委託等に関する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護することです。取適法は独占禁止法上の優越的地位の濫用規制と関係しますが、「優越的地位にあること」自体を取適法の適用要件として個別に立証する仕組みではありません。法定の取引類型と規模要件によって適用対象を画し、委託事業者の義務・禁止行為を具体的に定めています。

重要
📅 2026年1月1日より前の発注まで一律に取適法へ切り替わるわけではない

公正取引委員会は、2026年1月1日以降に発注する取引について取適法の規定が適用されると明示しています。したがって、施行日前に発注した取引について、納品・役務提供・支払が施行日後になったという事情だけで、直ちに取適法の新たな規定が適用されるわけではありません。継続的な基本契約がある場合も、基本契約の締結日だけではなく、個別の製造委託等をいつ行ったかを確認することが重要です。

実務メモ
📌 「取適法」という呼び方

公正取引委員会自身が「取適法」を通称として使用しています。本記事でもSEO上の主要キーワードである「取適法」「下請法」「2026年施行」「法務」を維持しつつ、施行後の正式な制度・用語に合わせて説明します。

なぜ下請法が見直されたのか

改正の大きな背景にあるのが、労務費・原材料費・エネルギーコストなどの上昇を取引価格へ適切に反映し、中小事業者が賃上げの原資を確保できる取引環境を整えるという政策課題です。公正取引委員会の改正説明でも、価格について協議を要請しても無視・先延ばしされる、協議もなく価格を据え置かれる、必要な説明もないまま価格を一方的に決められるといった問題への対応が示されています。

公正取引委員会の一次資料で示された主な見直しの背景を整理すると、次のとおりです。

  • 資本金基準だけでは対象外となる事業者が生じ得ること:減資や受注側への増資要請などにより、実質的な事業規模に比して旧法の対象から外れる場面が問題視された
  • 価格協議を実質化する必要性:協議要請の無視・先延ばしや、十分な説明のない一方的な価格決定への対応が必要だった
  • 支払手段による資金繰り負担:手形、電子記録債権、一括決済方式等により、中小受託事業者側に現金化までの負担が生じる問題への対応が必要だった
  • 物流取引への対応:発荷主から運送事業者への一定の運送委託を「特定運送委託」として新たに対象に加える必要があった
  • 執行体制の面的強化:公正取引委員会・中小企業庁だけでなく、事業所管省庁とも連携して是正を図る仕組みが必要だった

改正法は2025年5月16日に成立し、同月23日に公布され、2026年1月1日に施行されました。施行後の現在は、単に「法改正への準備」をする段階ではなく、2026年1月1日以降の発注について、実際の取引運用が取適法に適合しているかを継続的に点検する段階に入っています。

実務メモ
⚡ 価格転嫁政策との関係

取適法だけを単独で見るのではなく、独占禁止法上の優越的地位の濫用規制、労務費転嫁指針、受託中小企業振興法に基づく振興基準などもあわせて確認することが重要です。ただし、取適法上の法定義務・禁止行為と、振興法上の望ましい取引慣行や実務推奨は区別して社内ルールへ落とし込む必要があります。

下請法から何が変わるのか

改正点は多岐にわたりますが、法務実務への影響が大きい変更を4つのカテゴリに整理します。

法律名・位置づけ(用語の全面刷新)

法律の名称変更に伴い、法令上の取引当事者の呼称も変わりました。社内規程・契約書ひな形・コンプライアンスマニュアルでは新用語へ更新しておくと、適用判定や教育上の混乱を防げます。もっとも、既存契約に旧用語が残っていること自体が直ちに取適法違反となるわけではありません。用語更新は、法定義務そのものというよりコンプライアンス管理上の整備として位置づけるのが正確です。

旧名称(下請法) 新名称(取適法) ポイント
下請代金支払遅延等防止法
(下請法)
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
(中小受託取引適正化法、通称:取適法)
法律名を変更
親事業者 委託事業者 発注側の法令上の呼称を変更
下請事業者 中小受託事業者 受注側の法令上の呼称を変更
下請代金 製造委託等代金 代金の呼称を変更
POINT
📎 実務上、用語・参照条文を更新しておきたい書類
  • 発注書・注文書(旧3条書面/現4条明示)のひな形
  • 取引基本契約書・業務委託契約書
  • コンプライアンスマニュアル・社内規程
  • 取引先向け説明資料・行動指針
  • 旧下請法遵守チェックリスト
  • 帳簿・記録管理フォーム(旧5条書類/現7条記録)

対象事業者の拡大(従業員基準の新設)

取適法の適用は、会社が「大企業か中小企業か」だけでは決まりません。①委託内容が法定の取引類型に当たるか、②発注側と受注側の資本金の組合せ、③資本金基準が適用されない場合には従業員基準という構造で、取引ごとに判定する必要があります。

注意
⚠ 「発注側=委託事業者」ではない

大企業であっても、委託内容が取適法の対象類型に当たらない場合や、相手方との規模要件の組合せを満たさない場合には、当該取引について取適法上の「委託事業者」にはなりません。逆に、中小企業であっても、法定の資本金又は従業員数の組合せと対象となる委託内容を満たせば、「委託事業者」に該当する場合があります。

規模要件は、取引類型に応じて大きく次の2グループに分かれます。

取引類型 委託事業者 中小受託事業者
グループA
製造委託・修理委託・特定運送委託
プログラム作成
運送・倉庫保管・情報処理の役務提供委託
資本金3億円超 資本金3億円以下(個人を含む)
資本金1,000万円超3億円以下 資本金1,000万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員300人超 常時使用する従業員300人以下
グループB
プログラム以外の情報成果物作成委託
運送・倉庫保管・情報処理以外の役務提供委託
資本金5,000万円超 資本金5,000万円以下(個人を含む)
資本金1,000万円超5,000万円以下 資本金1,000万円以下(個人を含む)
常時使用する従業員100人超 常時使用する従業員100人以下

※重要:従業員基準は、単純に資本金基準と並列で「どちらか一方だけを自由に選ぶ」という意味ではありません。取適法第2条の構造及び公正取引委員会の施行時留意事項上、資本金基準が適用されない場合に従業員基準が適用されます。実務では、まず取引類型と資本金の組合せを確認し、その資本金基準で適用関係が決まらない場合に従業員基準を確認する運用が安全です。

対象取引そのものについても、改正により次の変更があります。

追加・変更内容 旧下請法 取適法
特定運送委託 発荷主から元請運送事業者への運送委託は原則として対象外 事業者が販売する物品等について、取引の相手方等に対する運送を他の事業者へ委託する一定の取引を対象に追加
金型以外の型・特殊な工具 製造委託の対象となる専用工具について金型を中心に規定 木型、その他の物品の成形用の型、工作物保持具(治具)その他の専用の特殊な工具も明示的に対象へ追加
4条明示の電磁的方法 電磁的方法による提供には相手方の承諾が必要 中小受託事業者の事前承諾がなくても、法令上の要件を満たす電磁的方法による明示が可能。ただし、一定の場合を除き、書面交付を求められたときは遅滞なく書面を交付する必要がある
7条記録 旧5条書類として作成・保存 取引記録の作成・2年間保存を継続。一括決済方式・電子記録債権を利用する場合は、新たな記録事項にも注意
従業員基準
👥 「常時使用する従業員」は誰を数えるか

公正取引委員会の施行時留意事項では、正社員、契約社員・委嘱社員、パートタイマー・アルバイト、1か月を超えて引き続き使用される日雇い労働者が例示されています。派遣社員は派遣元が使用者となるため、派遣先の「常時使用する従業員」には含めません。判定時点は原則として製造委託等をした時点です。中小受託事業者側に自社の従業員数を説明する法定義務が課されているわけではありませんが、発注側から適用判定のため確認を受けた場合には適切に対応することが望ましいとされています。

価格決定ルールの強化(協議に応じない一方的な代金決定の禁止)

取適法の実務で特に重要なのが、中小受託事業者から代金額について協議を求められた場合の対応です。取適法第5条第2項第4号は、中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合に、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、委託事業者が協議に応じない、又は協議において必要な説明・情報提供をしないまま一方的に代金額を決定し、中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。

したがって、「値上げ要請があったら必ずその金額を認めなければならない」という制度ではありません。他方で、委託事業者が自社内部だけで価格を検討して通知すれば足りるという制度でもありません。協議のプロセスそのものが実質的であったかが重要になります。

法定ルール
価格協議の「結論」だけでなく、実質的な協議プロセスが問われる

公正取引委員会Q&A Q134~Q137は、施行後の実務を具体化しています。値上げ要求額の全部又は一部を受け入れないこと自体が直ちに問題となるわけではありません。ただし、要求額を受け入れられない場合には、その理由や考え方の根拠を十分に説明する必要があります。また、委託事業者が自社なりにコスト上昇を考慮して従前価格を引き上げたとしても、中小受託事業者からの協議申入れに応じず一方的に価格を決定すれば、違反となるおそれがあります。

Q&A実務上のポイント
Q134 要求額を全部・一部受け入れないこと自体ではなく、実質的な協議が行われたかが重要。受入れ困難であれば、その理由・考え方の根拠を十分に説明する。
Q135 委託事業者が独自にコスト上昇分を織り込んで従前価格を引き上げても、中小受託事業者の申入額を下回る価格を協議せず一方的に決定すれば問題となり得る。
Q136 入札・せり上げや公募方式であれば常に個別協議が不要になるわけではない。主要取引条件の事前確定、複数の受託候補者による価格提示等、公取委が示す条件を満たすかで判断される。
Q137 協議要請や協議経過について、書面・メール・議事録等で記録化しておくことが望ましい。これは重要な実務対応だが、価格協議記録そのものを一律に7条の法定保存事項とするものではない。
法定義務と実務推奨を区別
「価格協議条項」を契約書に入れること自体は法定の必須要件ではない

取適法は、契約書に「価格協議条項」という名称の条項を必ず置くことを要求しているわけではありません。法務実務で優先すべきなのは、価格協議の申入れを受け付け、担当部署へつなぎ、実質的に協議し、必要な説明・情報提供を行い、一方的に代金額を決定しない運用を確保することです。契約書に協議窓口や協議方法を定めることは、その運用を安定させるための有用な実務策ですが、法定要件とは区別して位置づけるべきです。

なお、取適法第5条の禁止行為に違反し、例えば製造委託等代金の減額が行われた場合には、勧告において減額分の返還に加え、第6条に基づく遅延利息の支払を求められることがあります。価格協議対応だけでなく、合意済み代金の減額処理にも引き続き注意が必要です。

支払条件の見直し(手形払等の禁止・振込手数料)

2026年1月1日以降に発注する取適法対象取引では、手形による代金の支払は支払遅延として禁止されています。電子記録債権や一括決済方式についても、中小受託事業者が支払期日までに、代金満額相当の現金を受領した状態となることが確保されている必要があります。

支払手段・費用取適法上の扱い
手形払い ❌ 2026年1月1日以降に発注する対象取引では禁止。手形を交付した場合は「支払遅延」に該当する。
電子記録債権(でんさい等) ⚠ 支払期日に中小受託事業者が割引等の行為をしなくても、代金満額相当の現金を受領できる状態が確保されている必要がある。満期日が支払期日より後で、支払期日の現金化に割引等を要する場合は、委託事業者が割引料相当額を負担しても通常は違反となる。
一括決済方式(ファクタリング方式等) ⚠ 支払期日までに代金満額相当の現金を受領できることが必要。受取手数料・システム手数料等を最終的に中小受託事業者へ負担させることは認められない。
銀行振込 ✅ 現金振込自体は利用可能。ただし、振込手数料を中小受託事業者に負担させ、代金から差し引くことは、合意の有無にかかわらず「減額」として違反となる。
Q&A Q80~Q82
💳 「手数料を発注側が補填すれば何でもよい」わけではない

電子記録債権の満期日等が支払期日より後で、中小受託事業者が支払期日に金銭を受領するため割引等を行う必要がある場合は、委託事業者が割引料相当額を負担しても通常は支払遅延となります。一方、一括決済方式等で決済手数料を中小受託事業者が一時的に負担する設計については、あらかじめ書面等で合意し、委託事業者が支払期日までに当該負担分を補填するなどして代金満額相当の現金受領を確保し、その内容について7条の記録を作成・保存する場合には問題とならないとされています。

支払期日については、原則として給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に定める必要があります。役務提供委託では役務の提供を受けた日を基準とします。請求書の提出が遅れたことだけを理由として法定の支払期日を超えることはできません。

遅延利息
支払遅延等には年率14.6%の遅延利息

取適法第6条及び公正取引委員会規則により、所定の場合には年率14.6%の遅延利息を支払う義務があります。支払遅延の場合は、原則として給付を受領した日から起算して60日を経過した日から実際の支払日までの期間について計算されます。遅延利息を支払えば支払遅延が許容されるという意味ではありません。


企業実務に与える影響

取適法は既に施行されており、法務部門だけでなく、購買・調達・営業・経理・総務など複数部門の現在の運用を点検する必要があります。以下のチェックで自社の対応優先度を確認してください。

2026年6月10日公表
📊 施行後は「準備」ではなく、実際の運用・執行フェーズ

公正取引委員会が2026年6月10日に公表した令和7年度の運用状況では、勧告39件、指導8,261件、委託事業者177名から中小受託事業者5,165名に対する原状回復額は総額25億5,698万円相当とされています。

ただし、令和7年度は2025年4月から2026年3月までであり、2025年12月31日までは旧下請法、2026年1月1日以降は取適法に基づく運用です。公表資料は便宜上一律に取適法上の用語を使用しているため、この39件・8,261件を「2026年1月1日以降だけに発生した取適法違反件数」と読むことはできません。その点を区別した上で、取引適正化に関する執行が高い水準で継続していることを理解する必要があります。

✅ 違反リスクを優先確認
  • 2026年1月1日以降の対象発注で手形を交付している
  • 振込手数料を中小受託事業者負担として代金から差し引いている
  • 電子記録債権・一括決済方式について、支払期日に代金満額相当の現金受領が確保されていない
  • 価格協議の申入れに回答しない、又は必要な説明・情報提供なく自社価格を一方的に通知する運用がある
  • 受領等から60日を超える支払サイトの対象取引が残っている
⚠ 適用判定を再確認
  • 取引類型を「業務委託」という契約名だけで一括判定している
  • 資本金だけで対象・対象外を判定し、必要な場合にも従業員基準を確認していない
  • 運送委託・物流委託があり、特定運送委託該当性を確認していない
  • 木型・治具等の専用工具を外部に製造委託している
  • フリーランス・個人事業主への業務委託があり、フリーランス法との適用関係を確認していない

部門別の実務影響を整理すると次のとおりです。

部門主な対応事項優先度
法務 対象判定ロジックの整備、契約・発注書ひな形と社内規程の更新、価格協議対応フローの法令適合性確認、支払条件レビュー 🔴 最優先
購買・調達 4条明示事項の確認、価格協議申入れの受付・エスカレーション、禁止される支払条件の排除 🔴 最優先
経理・財務 手形使用の停止、振込手数料負担の是正、電子記録債権・一括決済方式の満期・手数料確認、60日ルールの運用 🟠 優先
営業 自社が受注側となる場合の権利把握、価格協議申入れの方法、取引先への制度説明 🟠 優先
総務・HR 取適法コンプライアンス教育、社内相談・通報窓口の周知 🟡 順次
経営・事業部門 グループ会社を含めた取引方針の見直し、サプライチェーン全体の価格転嫁対応 🟡 順次
重要
🚨 違反した場合のリスク:勧告・公表・指導等
  • 公正取引委員会による勧告:第5条の禁止行為について、違反行為の取りやめ、原状回復、再発防止等を求める勧告の対象となり得ます。実際の勧告事案は公正取引委員会から事業者名を含め公表されています
  • 中小企業庁・事業所管省庁による執行:調査・立入検査・改善指導・公正取引委員会への措置請求や、事業所管省庁による指導・助言等の仕組みがあります
  • 遅延利息:所定の支払遅延・減額の場合には、年率14.6%の遅延利息が問題となります
  • 報復措置の禁止:中小受託事業者が公正取引委員会等に違反事実を知らせたことを理由として取引数量の削減・取引停止その他の不利益な取扱いを行うことは禁止されています

法務担当者が施行後に点検すべき5つの対応

1
対象取引を「取引ごと」に判定する

契約名や会社規模だけで判断せず、①製造委託等の法定取引類型、②発注側・受注側の資本金の組合せ、③資本金基準が適用されない場合の従業員基準を確認します。継続取引では、2026年1月1日以降の個別発注を抽出できるよう、発注日も判定項目に含めることを推奨します。

2
ひな形・発注書と実際の運用をそろえる

旧用語・旧条番号を使うひな形は管理上更新しておくのが有用です。ただし、専用の価格協議条項の追加自体は法定必須要件ではありません。契約条項よりも、4条明示事項、支払条件、価格協議申入れを受けた際の実務フローが法令に適合しているかを優先して確認します。必要に応じて協議窓口・協議方法を契約に定めることは実務上の選択肢です。

3
価格協議の受付・協議・説明フローを運用する

価格協議の申入れを放置せず、担当者・決裁者へつなぎ、必要な情報を確認して実質的に協議します。要求額を受け入れない場合には、理由・考え方の根拠を十分に説明できる状態にします。Q&A Q137を踏まえ、申入れ、回答、提示資料、協議経過をメールや議事録等で記録化することを実務上推奨します。ただし、この記録化はQ&A上「望ましい」とされる対応であり、7条記録の法定保存義務そのものとは区別してください。

4
支払条件を現在の運用ベースで是正・検証する

2026年1月1日以降に発注した対象取引について、手形が残っていないか、振込手数料を中小受託事業者に負担させていないか、電子記録債権・一括決済方式で支払期日に代金満額相当の現金受領が確保されているかを確認します。施行前の移行計画を作る段階ではなく、現在の支払実績を抽出して違反の有無を検証することが重要です。

5
購買・営業・経理・グループ会社への教育展開

取適法は法務部門だけでは運用できません。購買担当者には対象判定と価格協議、経理担当者には支払期日・支払手段・手数料負担、営業担当者には自社が受注側となる場面の権利を具体例で周知します。グループ会社についても、グループ内取引だから一律に対象又は対象外とせず、各取引を法定要件に沿って判定する必要があります。なお、親子会社間等の取引については、公正取引委員会が一定の場合を実質的に同一会社内の取引として運用上問題としていない例も示しているため、具体的な資本関係と取引実態を確認します。

POINT
✅ LegalOSで取適法対応を仕組み化する
  • 契約審査受付フロー:取適法対応チェック項目を組み込み、発注書・委託契約書の審査を標準化
  • 価格協議の受付・承認フロー:協議申入れ、回答・説明、協議経過を記録し、実質的協議を支える
  • 4条明示・7条記録管理:法定の取引条件明示と、7条記録の2年間保存を検索可能な形で管理
  • 権限管理・監査ログ:誰がいつ何を承認したかを記録し、規制当局の調査にも対応しやすい状態を整備
  • グループ統制:子会社・関係会社を含めたルール管理を標準化

よくある質問

Q
取引先がフリーランスの場合、取適法とフリーランス法のどちらが適用されますか?
A
同一の取引・行為について取適法とフリーランス・事業者間取引適正化等法の双方の要件を満たす場合があります。公正取引委員会は、両法のいずれにも違反する行為については、原則としてフリーランス・事業者間取引適正化等法を優先して適用するとの考え方を示しています。ただし、各法律の適用対象になるかどうか自体はそれぞれの要件に基づき判断されるため、相手方の属性、委託内容、取引期間その他の要件を個別に確認してください。詳細はフリーランス新法×下請法の実務対比もご参照ください。
Q
取適法とは結局何ですか?
A
取適法(とりてきほう)は、旧「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」が2026年1月1日に改正・改称された法律の通称です。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法)です。従業員基準、特定運送委託、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止などが新たに盛り込まれました。
Q
下請法とは別の法律ですか?
A
別の法律が新設されたのではなく、昭和31年法律第120号である旧下請法が改正・改称されたものです。令和7年法律第41号は、その改正を行った「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」です。旧法の基本的な枠組みを引き継ぎつつ、適用範囲・規制内容・執行体制が拡充されています。
Q
中小企業以外も関係ありますか?
A
関係はありますが、大企業だから当然に委託事業者になるわけでも、中小企業が発注すれば当然に義務を負うわけでもありません。まず委託内容が取適法の対象取引に当たるかを確認し、その上で発注側・受注側の資本金の組合せ、資本金基準が適用されない場合の従業員基準によって、取引ごとに判定します。
Q
施行後の現在、契約書・発注フローは何を見直すべきですか?
A
まず、2026年1月1日以降に発注する対象取引へ取適法が適用されることを前提に、対象判定、4条明示、支払条件、価格協議対応の実運用を確認してください。旧用語の置換や専用の価格協議条項の追加自体は法定要件ではありません。もっとも、社内の誤判定防止や運用標準化のため、ひな形・社内規程を現行法の用語・条番号に更新し、必要に応じて協議窓口等を契約上明確にすることは有用です。業務委託契約書の実務ガイドもあわせてご活用ください。
Q
法務部が小規模でも対応できますか?
A
対応の優先順位を絞れば可能です。①取引類型・資本金・従業員基準による対象判定、②価格協議の受付・協議・説明フロー、③手形・振込手数料・電子記録債権等を含む支払条件の点検を先行させます。その後、ひな形・社内規程・教育資料を実際の運用に合わせて更新するのが現実的です。
Q
LegalOSはどんな場面で役立ちますか?
A
取適法対応では、①対象判定、②価格協議の受付・対応履歴、③4条明示と7条記録の管理、④支払承認フローと監査ログ、⑤グループ横断のルール標準化の場面で活用できます。なお、価格協議の議事録等はQ&A上「望ましい」記録であり、7条の法定記録とは区別して設計するのが正確です。詳細は法務OSについての解説記事をご覧ください。

まとめ

取適法は2026年1月1日に既に施行されており、現在は「施行準備」ではなく、実際の発注・価格協議・支払運用を現行法に合わせて検証する段階です。法務担当者が押さえるべきポイントは次のとおりです。

  • 原則として2026年1月1日以降に発注する対象取引に取適法が適用される
  • 適用対象は企業規模だけでは決まらず、委託内容+資本金の組合せ+必要に応じた従業員基準で取引ごとに判定する
  • 従業員基準は、資本金基準が適用されない場合に適用される追加的な規模基準である
  • 特定運送委託や金型以外の型・特殊な工具等が対象に加わり、4条明示の電磁的方法も見直された
  • 価格協議では、要求額を全部受け入れる義務ではなく、実質的に協議し、受入れ困難なら理由・根拠を十分に説明し、一方的に決めないことが重要
  • 専用の「価格協議条項」は法定必須ではない。協議フローと説明・記録の運用を優先して整える
  • 手形払は禁止。振込手数料を中小受託事業者に負担させて代金から差し引くことも禁止。電子記録債権・一括決済方式は支払期日における満額現金受領を確認する
  • 支払遅延・減額については、所定の場合に年率14.6%の遅延利息も問題となる
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※本記事は2026年8月14日時点で、e-Gov法令検索の取適法(昭和31年法律第120号・令和7年法律第41号による改正)、公正取引委員会「取適法」「取適法・振興法」「よくある質問コーナー(取適法)」「取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項」「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」「令和7年度における取適法の運用状況及び中小事業者等の取引適正化に向けた取組」(2026年6月10日)、中小企業庁「中小受託取引適正化法」「受託中小企業振興法」等の一次資料を確認して更新しています。
参照: e-Gov法令検索公正取引委員会・取適法取適法・振興法取適法Q&A施行時留意事項取適法運用基準2026年6月10日運用状況中小企業庁・取引適正化関連
個別取引への適用は、委託内容、当事者の資本金・従業員数、発注時点その他の具体的事実により異なります。
最終確認日:2026年8月14日

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