取適法の対象確認チェックリスト|自社が委託事業者に該当するか3分で判定
取適法の対象確認チェックリスト
自社が委託事業者に該当するか
3分で判定する
取適法の対象判定で最も重要なのは、「会社全体が対象か」ではなく、取引ごとに、発注側・受注側・取引類型を分けて確認することです。
2026年1月1日、旧・下請法は「中小受託取引適正化法」(通称:取適法)として全面施行されました。 法律名と用語が変わるだけでなく、適用対象の判定基準に「従業員基準」が新設され、これまで「うちは資本金が小さいから対象外」と考えていた会社が新たに規制対象となるケースが急増しています。
取適法シリーズ第1話では制度の全体像を解説しました。この第2話では「自社は本当に対象なのか」という実務者の疑問に答えます。3分の自己診断チェックリストから、判定ロジック・ケーススタディ・実務対応まで、その場で判断できるよう体系的に整理しています。
まずは3分診断|あなたの会社は取適法の対象か
以下の6項目を確認してください。YESが多いほど取適法の適用可能性が高まります。
📋 取適法・対象可能性 3分チェックリスト
製造委託・修理委託・デザイン・システム開発・物流・保管・印刷など、外部の事業者に業務を継続的または単発で委託している
常時使用する従業員(パート・契約社員を含む、1か月超継続)が100名または300名を超える可能性がある
製造委託等は従業員300人以下、情報成果物・役務提供委託等は100人以下の事業者へ発注している(または個人事業主)
口頭発注ではなく書面・メール・システム等で発注内容を指定している(または指定すべき取引形態)
親会社・子会社・関連会社を経由して最終的な受注者に業務を委託する構造がある
支払サイト・代金額・支払手段(現金・電子記録債権等)を自社側が主導的に設定している
✅ 3項目以上YES:取適法の対象となる可能性が高い → 以下の詳細基準で確認を
⚠️ 1〜2項目YES:一部取引が対象となる可能性あり → 取引類型別に個別確認が必要
✔️ 0項目:現時点では対象外の可能性が高いが、事業変化時に再確認
取適法の対象判定ルール
取適法の適用可否は、① 取引の類型と② 発注側・受注側それぞれの規模の組み合わせで決まります。 2026年1月施行の改正で、従来の資本金基準に加えて従業員基準が新設されたことが最大のポイントです。
製造委託 / 修理委託 / 情報成果物作成委託 / 役務提供委託 / 特定運送委託(2026年1月〜新設)
発注側(委託事業者)の判定基準
委託事業者に該当するかは、「資本金基準」または「従業員基準」のいずれか一方でも満たせば適用されます。 両方を同時に満たす必要はなく、資本金基準を満たす場合は資本金基準が優先して適用されます(取適法2条8項)。
| 取引類型 | 資本金基準(委託事業者側) | 従業員基準(委託事業者側)★新設 |
|---|---|---|
| 製造委託 修理委託 特定運送委託★ |
3億円超 (または1,000万円超3億円以下) |
300人超 |
| 情報成果物作成委託 (プログラム) 役務提供委託 (運送・倉庫保管・情報処理) |
3億円超 (または1,000万円超3億円以下) |
300人超 |
| 情報成果物作成委託 (プログラム以外:デザイン・映像・広告等) 役務提供委託 (上記以外:清掃・警備・一般役務等) |
5,000万円超 (または1,000万円超5,000万円以下) |
100人超 |
受注側(中小受託事業者)の判定基準
委託先(受注者)が「中小受託事業者」に該当するかも同様に、資本金基準または従業員基準で判定します。 個人事業主は資本金がゼロのため、常に中小受託事業者の要件を自動的に充足します。
| 取引類型 | 資本金基準(中小受託事業者側) | 従業員基準(中小受託事業者側)★新設 |
|---|---|---|
| 製造委託・修理委託・特定運送委託 プログラム作成・運送・倉庫・情報処理 |
3億円以下(または個人) | 300人以下(または個人) |
| 情報成果物作成委託(プログラム以外) 役務提供委託(一般役務) |
5,000万円以下(または個人) | 100人以下(または個人) |
資本金基準と従業員基準の関係
両基準の関係は以下のとおりです。資本金基準が優先的に適用され、資本金基準を満たす場合は従業員基準による確認は不要です。
| 自社の資本金 | 自社の従業員数 | 製造委託等での委託事業者該当性 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 3億円超 | 任意 | 資本金基準が該当(従業員数不問) | 対象 |
| 1,000万円超〜3億円以下 | 任意 | 資本金基準の一部区分に該当(取引先の資本金による) | 条件次第 |
| 1,000万円以下(または個人) | 300人超 | 資本金基準不該当 → 従業員基準が適用されて対象 | 対象★ |
| 1,000万円以下(または個人) | 300人以下 | 両基準ともに不該当 | 対象外 |
「常時使用する従業員」の定義:賃金台帳の調製対象となる労働者のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く)以外の者をいいます(労基法108条・109条準用)。実務上はパートタイム・契約社員も1か月超継続雇用であれば含まれます。派遣社員は派遣元でカウントされます。判定基準時点は原則として発注時です。なお、急成長中のスタートアップやM&A後の企業では「発注時は非該当だが更新時に該当」するケースが起こりえます。長期・複数年契約は更新時に従業員数を再確認するフローを社内規程に明記することが重要です。
取引類型別の対象基準
取適法は取引の内容によって適用される資本金・従業員の基準が異なります。IT企業・広告会社・物流会社・メーカーなど、業種ごとに主に関係する類型を以下で確認できます。
| 取引類型 | 主な業種・取引例 | 委託事業者 資本金基準 |
委託事業者 従業員基準 |
中小受託事業者 資本金基準 |
|---|---|---|---|---|
| ①製造委託 | メーカー・部品発注・OEM・金型 | 3億円超 | 300人超 | 3億円以下 |
| ②修理委託 | 機械修理・保守・オーバーホール | 3億円超 | 300人超 | 3億円以下 |
| ③情報成果物 作成委託 (プログラム) |
システム開発・アプリ開発・クラウド構築・組込みソフト | 3億円超 | 300人超 | 3億円以下 |
| ③情報成果物 作成委託 (プログラム以外) |
デザイン・映像・広告・コンテンツ・設計図・マニュアル | 5,000万円超 | 100人超 | 5,000万円以下 |
| ④役務提供委託 (運送・倉庫・情報処理) |
3PL・倉庫保管・データ処理・BPO | 3億円超 | 300人超 | 3億円以下 |
| ④役務提供委託 (一般役務) |
清掃・警備・ビルメン・コールセンター・翻訳・研修 | 5,000万円超 | 100人超 | 5,000万円以下 |
| ⑤特定運送委託 ★2026年1月新設 |
荷主が運送会社へ物品の運送を委託(物流2024年問題対応) | 3億円超 | 300人超 | 3億円以下 |
📌 「自家利用役務」は対象外:取適法の役務提供委託の対象は「事業として提供する役務」の委託に限られます。例えば製品の輸送委託は対象ですが、自社オフィスの引越しや社員旅行のバス手配など、自ら消費する役務は対象外です。全発注を一律に管理しようとすると現場がパンクするため、「事業用途か社内消費か」の分類軸を整備してください。
よくあるケーススタディ
実務でよく相談される典型事例を5つ確認します。
制作会社へデザイン・動画を外注
従業員:150名
委託内容:WEBデザイン・動画制作(プログラム以外の情報成果物作成委託)
委託先:従業員20名の制作会社
物流会社へ運送委託
従業員:220名
委託内容:製品の配送・輸送委託(特定運送委託 or 役務提供委託)
委託先:資本金2億円・従業員250名の物流会社
スタートアップが委託内容によって結論が変わる
従業員:130名(正社員・契約社員含む)
委託内容A:システム開発(プログラム作成委託)
委託内容B:デザイン・動画制作(プログラム以外の情報成果物作成委託)
委託先:フリーランスエンジニア / 従業員30名の制作会社
子会社経由で製造委託
B社はA社が役員任免・業務執行を支配
Cへの製造委託は本来A社の発注案件
フリーランスデザイナーへ委託
従業員:80名
委託内容:広告デザイン(プログラム以外の情報成果物作成委託)
委託先:個人事業主フリーランス
同一の会社が委託する業務内容によって基準が変わります。システム開発(プログラム)は300人超基準、デザイン・映像(プログラム以外)は100人超基準。従業員130名の場合、プログラム開発外注は対象外・デザイン外注は対象という分断が生じます。業務委託先リストを類型別に整理することが必須です。
⚠️ Case 3の補足 ②:混合契約(SOW)の場合は厳しい方の基準が優先
1つの契約書・SOWにプログラム開発とデザインが混在する場合、公正取引委員会のガイドラインでは「主たる目的」で判断されますが、主従関係が不明確な場合は安全側の厳しい基準(100人超基準)が適用されるリスクがあります。混合委託は類型を明示的に分離するか、100人基準で統一管理するのが実務上の安全策です。
対象だった場合にやるべき5つの対応
自社が委託事業者と判明したら、以下の5ステップで実務対応を進めます。
委託先リストの類型分類と適用判定の記録化
すべての業務委託先について取引類型(製造・修理・情報成果物・役務提供・特定運送)を分類し、委託先の資本金・従業員数を確認して適用可否を記録します。適用判定の記録は公正取引委員会の調査に備えて2年以上保存が推奨されます。LegalOSの「委託先台帳管理」機能が活用できます。
4条書面(旧・3条書面)の見直しと電磁的交付への対応
取適法では「4条書面」として記載事項が整理されました。2026年1月以降、委託先の承諾なしに電子メール等の電磁的方法での交付が可能になっています。現状の発注書フォーマットが4条書面の要件を満たすか確認し、電子化フローを整備します。詳細は実務チェックリスト記事を参照してください。
支払条件の見直し(手形払い禁止・60日以内支払の徹底)
取適法施行により、手形払いが原則禁止され現金払いが義務化されました。電子記録債権(でんさい)等も支払期日までに代金相当額が受領できない形式のものは禁止されます。支払サイトは受領から60日以内の設定を徹底してください。既存の取引基本契約書の支払条件条項の改訂が急務です。
価格協議プロセスの整備(一方的な代金決定の禁止への対応)
2026年1月から、協議に応じない一方的な代金決定が禁止されました。コスト上昇局面での価格据え置きは「買いたたき」と認定されるリスクがあります。定期的な価格協議の実施記録、見積書の保管、変更合意書面の整備が必要です。価格据え置き対応の詳細はこちら。
グループ会社統制とトンネル規制の点検
親会社・子会社間の発注構造を見直し、トンネル会社規制(取適法2条10項)への該当可能性を点検します。グループ会社全体で取適法の対象取引リストを整備し、法人単位での従業員数・資本金管理体制を構築します。LegalOSのグループ会社統制機能を活用することで、横断的な証跡管理が可能になります。
【見落としがちな盲点】海外法人への委託も取適法は適用される:国内の委託事業者が海外の制作会社・開発会社(従業員100人以下等)に委託する場合も、取引が日本の経済活動に影響を及ぼす限り取適法は適用されます。相手が外国法人であっても中小受託事業者の要件を満たせば、4条書面の交付義務が生じます。オフショア開発やグローバル調達を多用するテック企業・商社にとって最大の盲点の一つです。
よくある質問
まとめ
📌 この記事のまとめ
- 取適法(中小受託取引適正化法)は2026年1月1日に施行済み。旧・下請法から用語・内容が大幅に変わった。
- 最大の変更点は従業員基準の新設。製造委託等は300人超、情報成果物・役務提供委託等は100人超の委託事業者が新たに対象に加わった。
- 資本金基準・従業員基準のいずれか一方に該当すれば適用される。資本金が小さくても従業員が多ければ対象になる。
- 同一企業でも委託内容(取引類型)によって適用基準が異なる。プログラム開発は300人超基準、デザイン外注は100人超基準。
- 個人事業主・フリーランスへの発注も委託事業者の規模要件を満たせば適用対象。フリーランス保護法との重複にも注意。
- グループ会社はトンネル会社規制(2条10項)に注意。子会社経由の発注でも実質的な支配関係があれば親会社・最終受注者間に適用される。
- 対応の優先順位:①委託先リストの類型分類 → ②4条書面の整備 → ③支払条件の見直し(手形禁止・60日以内)→ ④価格協議プロセスの整備 → ⑤グループ会社統制。
次の第3話では、「発注書・4条書面の見直し実務」を取り上げます。取適法施行後に必要な記載事項の変更点、電磁的交付フローの整備方法、既存の取引基本契約書の改訂ポイントを解説します。
⚡ 取適法対応を仕組み化する
取適法対応は「自社が対象か」を正確に把握することから始まります。
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