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ハラスメント相談対応をAIで整理する方法

ハラスメント相談は、初動対応を誤ると二次被害・当事者間の紛争化・会社への法的責任へと発展しやすい、企業法務・人事労務のなかでも特に慎重な対応が求められる分野です。感情的・属人的に対応するのではなく、事実関係の整理、関係者の確認、証拠の確保、ヒアリング項目の設計、記録化、二次被害防止策の検討といったプロセスを、冷静かつ組織的に進める必要があります。

しかし、相談を受けたその日から「時系列整理」「ヒアリング項目の洗い出し」「初動対応メモの作成」「弁護士・社労士への相談前整理」まで、担当者が一人でこなすのは大きな負担です。こうした局面で、ChatGPTをはじめとする生成AIは「整理と準備」の補助として有効に機能します。

⚠️ 重要な前提:AIはハラスメント該当性の判断・事実認定・処分決定を行うものではありません。本記事では、AIを「初動整理・確認事項の洗い出し・ヒアリング項目・記録化補助・専門家相談前メモ」の用途に限定して解説しています。最終的な判断は人事・法務・責任者、必要に応じて弁護士・社労士・産業医が行ってください。

ハラスメント相談対応では、時系列整理・ヒアリング項目・初動対応メモ・専門家相談前メモなど、最初に整理すべき事項が多くあります。初動整理の型を持っておきたい方は、以下のプロンプト集もご確認ください。

まず結論:ハラスメント対応ではAIを「整理」と「準備」に使う

ハラスメント相談対応でChatGPTが有効な場面は、主に以下の「整理と準備」の作業です。

  • 相談内容を時系列で整理する
  • 関係者・証拠・未確認事項を洗い出す
  • 相談者・申告者へのヒアリング項目を作る
  • 被申告者・行為者へのヒアリング項目を作る
  • 初動対応メモのたたき台を作る
  • 二次被害防止策の候補を整理する
  • 弁護士・社労士相談前メモを作る
  • 再発防止策・研修案の候補を整理する

一方、以下の判断は人間が行うものであり、AIに最終判断を任せてはいけません。

  • ハラスメント認定・事実認定
  • 証拠評価・処分内容の決定
  • 配置転換・出勤停止・懲戒処分
  • 申告者・被申告者への正式通知
  • 医学的判断・メンタルヘルス判断

AIは補助者であり、判断者ではありません。ハラスメント対応の文書であっても、AI出力は必ず人事・法務が内容を確認・修正したうえで使用してください。

図解1:ハラスメント相談対応にAIを使う流れ

▶ ハラスメント相談対応フロー(AI活用の位置づけ)
1
相談・申告受付
AI:相談内容の初期整理
人間:受付・相談者保護判断
2
相談者保護・二次被害防止
AI:防止策候補の整理
人間:措置の実行・判断
3
事実関係の時系列整理
AI:時系列表・未確認事項
人間:事実の確認・評価
4
ヒアリング項目作成
AI:質問項目候補の作成
人間:質問の実施・評価
5
関係者確認・証拠確認
AI:確認事項リスト
人間:証拠収集・評価
6
人事・法務による評価
AI:整理メモの補助
人間:事実認定・ハラスメント該当性判断
7
必要に応じて専門家確認
AI:相談前メモ作成
人間:弁護士・社労士・産業医への相談
8
対応方針決定・記録化・フォロー
AI:記録メモたたき台
人間:方針決定・当事者対応
⚠️ AIは各ステップの「事実整理と準備の補助」であり、ハラスメント認定・処分判断・配置転換等の最終判断を代替するものではありません。

ハラスメント相談対応でChatGPTが得意なこと

ハラスメント相談対応でAI(ChatGPT等)が有効に機能する場面を整理します。

相談内容の時系列整理

申告者から受け取った相談内容を「いつ・どこで・誰が・何をしたか」という時系列の表形式に整理するのは、ChatGPTが得意とする作業です。相談内容が断片的・感情的に記述されていても、事実に関する記述を抽出して時系列に並べることができます。ただし、不明点・矛盾点は「要確認」として残す指示を必ずプロンプトに含めてください。

関係者・証拠・未確認事項の整理

相談内容から「誰が関係者か」「どのような証拠が存在しうるか」「まだ確認できていない事項は何か」を洗い出すのにChatGPTは有効です。申告者が明示していない証拠(メール・チャット履歴・社内記録・人事評価)の存在可能性を指摘させることもできます。

相談者・被申告者・目撃者へのヒアリング項目作成

ハラスメント相談では、相談者、被申告者(行為者)、目撃者・関係者への聴き取りが必要です。それぞれに確認すべき事項は異なりますが、ChatGPTに「相談者向けのヒアリング項目」「被申告者向けのヒアリング項目」「目撃者向けのヒアリング項目」を分けて作成させることができます。誘導的・威圧的な質問を避け、客観的な事実確認ができる質問設計の指示も含めてください。

初動対応メモのたたき台作成

相談受付直後に整理すべき「相談概要・関係者・現時点の事実・未確認事項・守秘の範囲・二次被害防止上の注意点・専門家確認が必要な事項」をまとめた初動対応メモのたたき台を、ChatGPTで作成できます。

二次被害防止策の候補整理

配置上の配慮・接触制限・情報共有範囲の限定・調査中の連絡ルールなど、二次被害防止策の候補をChatGPTで整理させることができます。具体的な措置の実施は人事・法務が判断します。

弁護士・社労士相談前メモの作成

専門家への相談前に「事実経過・関係者・証拠・会社の初動対応・相談したい事項」を整理したメモをChatGPTで作成できます。相談時間の効率化・相談漏れ防止に有効です。

再発防止策・研修案のたたき台作成

ハラスメント対応の終結後に検討する「個別対応・職場環境改善・管理職研修・相談窓口周知・記録管理・フォローアップ」の候補整理にもChatGPTを活用できます。

ハラスメント相談対応でChatGPTに任せてはいけないこと

ハラスメント相談対応では、以下の事項についてAIに最終判断を任せることは適切ではありません。担当者・責任者・専門家が判断・実行してください。

  • ハラスメント該当性の最終判断:パワハラ・セクハラ・マタハラ等への該当性は、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法等の法律・指針・就業規則・個別の事実に基づき人間が判断するものです。AIの出力はあくまで参考情報に過ぎません。
  • 事実認定・証拠評価の最終判断:何が事実であるかの認定、どの証拠をどの程度信用するかの評価は、ヒアリング・証拠確認・関係者の陳述を踏まえた人間の判断が必要です。
  • 処分内容の決定:懲戒処分・口頭注意・配置転換・出勤停止等の処分は、就業規則・過去事例・相当性の観点から人事・法務・責任者が決定します。
  • 申告者・被申告者への正式通知文の最終確定:当事者への通知は、法的効果・プライバシー・心理的影響を考慮した人間の判断が必要です。
  • 医学的判断・メンタルヘルス判断:精神的被害の程度・就労可否・産業医対応の必要性は、医療・産業保健の専門家が判断します。
  • 相談者・関係者の個人情報・健康情報を無加工でAIに入力すること:氏名・部署・役職・診断名・健康情報・内部通報情報を無加工で外部AIに入力することは、個人情報保護法上のリスクがあります(後述「マスキング」参照)。

図解2:AIでできる整理・人間が判断すべきこと

🤖 AIでできる整理
👤 人間が判断すべきこと
申告内容の時系列整理(日時・場所・言動・証拠候補)
確認事項・未確認事項の洗い出し
相談者・被申告者・目撃者へのヒアリング項目候補の作成
初動対応メモ・記録メモのたたき台作成
二次被害防止策・報復防止策の候補整理
専門家相談前メモ(事実経過・相談事項整理)
再発防止策・研修案の候補リスト作成
事実認定(何が起きたかの最終判断)
ハラスメント該当性の判断(法的評価)
証拠評価(何をどの程度信用するか)
処分内容の決定(懲戒・口頭注意・配転等)
配置転換等の人事措置の実行
当事者への正式通知・説明
医学的・メンタルヘルス判断(産業医等)

ハラスメント対応でAIに任せやすい作業・人間が判断すべき作業

作業 AIに向いていること 人間が判断すべきこと 注意点
相談内容の整理 時系列表・事実の抽出・未確認事項の洗い出し 内容の信ぴょう性・事実認定 不明点は「要確認」として残す
ヒアリング項目 相談者・被申告者・目撃者別の質問項目候補 質問の実施・評価・誘導性の確認 誘導的・威圧的な質問は排除する
初動対応メモ 相談概要・関係者・守秘・二次被害防止の候補整理 措置の実行・情報共有の判断 実際の対応は人事・法務が決定
二次被害防止策 接触制限・配置配慮・情報共有範囲の候補整理 措置の実施・当事者への説明 具体的な措置は人事が実行
ハラスメント該当性 関連する法的観点・確認事項の列挙(参考) 最終判断は人間が行う AIの出力を最終判断に使わない
処分検討 確認すべき事項・就業規則照合点の整理(参考) 懲戒・処分内容の決定は人事・法務 弁護士・社労士への確認推奨
記録化 記録すべき事項・記録メモの構成案 事実に基づく正確な記録の作成・保管 AI作成の記録は必ず人間が確認・修正
専門家相談前メモ 事実経過・相談事項・証拠の整理メモ 専門家への相談実施・方針決定 個人情報はマスキングしてから入力

ハラスメント対応プロンプトに入れるべき前提条件

ChatGPTへのプロンプトに前提条件を明示することで、出力の精度・実務への適合性が大きく向上します。以下の情報を整理してからプロンプトを入力してください。

項目 内容の例 プロンプトへの含め方
相談類型 パワハラ・セクハラ・マタハラ・カスハラ・その他 「相談類型:パワハラ(上司から部下への言動)」
相談者・申告者 本人・上長・同僚・内部通報窓口・人事 「相談者:被害者本人(30代・営業職)」※氏名はマスク
主な関係者 申告者・被申告者・上長・同僚・目撃者 「関係者:申告者A、被申告者(上司B)、目撃者C」※氏名マスク
事実関係 日時・場所・言動・頻度・証拠・過去経緯 「申告内容:〇月〇日〜〇月〇日、会議室での発言…」
相談者の希望 調査希望・匿名希望・配置転換希望・注意のみ希望 「相談者の希望:調査・注意希望、匿名で進めたい」
確認したい事項 事実確認・証拠・ヒアリング・二次被害防止・記録化 「整理したいこと:時系列、ヒアリング項目、初動対応」
出力形式 時系列表・ヒアリング項目・初動対応メモ・専門家相談メモ 「出力形式:時系列表(日時/場所/言動/証拠/要確認)」
注意事項 個人情報マスキング・人間判断・専門家確認・二次被害防止 「個人名は仮称A/Bで入力。結論は断定しないこと」
💡 プロンプトに前提条件を入れるほど、出力が実務に即したものになります。ただし、実際の個人名・部署名・健康情報・内部通報情報はプロンプトに無加工で入力しないよう注意してください(後述「マスキング」参照)。

初動対応で整理すべき事項とAIの活用方法

ハラスメント相談を受けた直後の初動対応では、以下の事項を速やかに整理する必要があります。ChatGPTを使って初動対応メモのたたき台を作成する際の参考にしてください。

  • 申告内容:いつ・どこで・誰が・何をしたかの概要
  • 相談者の安全・心理的負担:緊急性の有無、現在の精神状態、就業への影響
  • 緊急対応の必要性:即時の安全確保・接触制限が必要かどうか
  • 二次被害・報復の可能性:被申告者との接触機会・業務上の関係
  • 証拠保全の必要性:メール・チャット・録音・人事記録等の保全が必要かどうか
  • 守秘の範囲:誰に、何を、どの範囲で共有するか
  • 関係者への接触制限:調査期間中の配置・業務上の配慮
  • 調査担当者・対応体制:誰が調査を担当するか(中立性の確保)

ChatGPTに初動対応メモのたたき台を作らせる際は、上記の各項目を含む構成を指定し、「結論は断定しない、不明点は要確認として残す」という指示を必ず入れてください。

相談者・申告者へのヒアリング項目

相談者・申告者へのヒアリングでは、事実関係を丁寧に確認しながら、二次被害防止・守秘の観点も踏まえた対応が必要です。ChatGPTでヒアリング項目を作成する際は、以下の観点を含む指示を入れてください。

  • いつ・どこで・誰が・何をしたかの具体的な確認
  • 言動の具体的な内容・表現・文脈
  • 発生の頻度・期間
  • 目撃者・関係者の有無
  • 証拠(メール・チャット・録音・メモ等)の有無
  • 相談者の希望(調査範囲・匿名希望・配置転換希望等)
  • 現在の不安・業務への影響・身体的・精神的な状態
  • 二次被害防止に関する希望(接触禁止・配置配慮等)
⚠️ 誘導的・決めつけの質問は避ける:「〇〇されたのですね?」「それはパワハラですよね?」のような誘導的・断定的な質問は、相談者の記憶や陳述に影響を与えます。「具体的に何があったか教えてもらえますか」「そのとき誰かそばにいましたか」のように、事実を開かれた形で確認する質問設計にしてください。

被申告者・行為者へのヒアリング項目

被申告者(行為者)へのヒアリングでは、防御機会を確保しつつ、公平な事実確認を行うことが重要です。以下の観点を含む質問項目をChatGPTで準備できます。

  • 申告内容(申告の概要)に関する認識・見解
  • 当日・当時の状況(場所・時刻・在席者)
  • 言動の意図・背景
  • 申告内容との事実関係の相違点
  • 関係者・証拠の有無
  • 過去の関係性・経緯
  • 今後の対応意向(謝罪・改善意思等)
⚠️ 公平性・防御機会の確保:被申告者には、申告内容の概要を適切に開示し(ただし申告者の特定は慎重に判断)、自身の立場から事実を説明する機会を与えてください。一方的な聴取・断定的な言い方は避けてください。労働施策総合推進法に基づくパワハラ防止指針も参照してください。

目撃者・関係者へのヒアリング項目

目撃者・関係者へのヒアリングでは、中立性を保ちながら事実を確認することが重要です。ChatGPTで以下の観点を含む質問項目を準備できます。

  • 直接見聞きした内容(伝聞か直接経験かを区別する)
  • いつ・どこで・どのような状況だったか
  • 他の関係者・目撃者の有無
  • 記録・メッセージ・メール等の存在
  • 相談者・被申告者との関係性・利害関係
⚠️ 誘導しない質問設計:目撃者への質問で「〇〇が△△したのを見ましたか?」という聞き方は誘導になりえます。「その場で何かありましたか」「気になったことはありましたか」という形で、先に相手から語らせる質問が原則です。

図解3:ハラスメント対応で注意すべきリスクマップ

▶ ハラスメント対応 ✕ AI活用 リスク注意マップ
⚠ 最優先
二次被害
AI:防止策の候補整理 人間:措置の実行・相談者への説明
⚠ 最優先
報復・不利益取扱い
AI:報復リスク項目の整理 人間:接触制限・配置の判断・監視
📋 重要
守秘義務
AI:情報共有範囲の候補整理 人間:共有範囲・タイミングの決定
📋 重要
公平性
AI:確認事項の網羅的整理 人間:双方への公平なヒアリング実施
🔍 確認
証拠保全
AI:証拠候補・保全事項のリスト化 人間:証拠の収集・保管・評価
🔍 確認
記録化
AI:記録項目・構成のたたき台 人間:正確な記録の作成・保管
📞 専門家
専門家確認
AI:相談前メモの作成 人間:弁護士・社労士・産業医への相談
📞 専門家
メンタルヘルス配慮
AI:フォロー項目の候補整理 人間:産業医・EAPへの連携判断

記録化で注意すべきこと

ハラスメント対応の記録は、後日の紛争時・監督官庁への説明・社内審査において重要な資料となります。記録化の際には以下の事項に注意してください。

  • 相談受付日時:相談を受け付けた日時を正確に記録する
  • 相談者・対応者:誰から相談を受け、誰が対応したかを記録する
  • 相談内容:申告された事実の概要(氏名はルールに従って扱う)
  • 事実と評価の区別:「〇〇という言動があった(事実)」と「これがハラスメントに該当するか否か(評価)」は明確に分けて記録する
  • 相談者の希望:調査希望・匿名希望・配置転換希望等
  • 実施した対応:誰が、いつ、何をしたか
  • 未確認事項:まだ確認できていない事実・証拠
  • 今後の対応予定:次のステップ・期限

ChatGPTを使って記録メモのたたき台を作ることはできますが、実際の記録は必ず担当者が事実に基づいて作成・修正してください。AIが出力した記録をそのまま正式記録として使用することは避けてください。記録はいつでも証拠資料として機能しうるという前提で管理してください。

二次被害防止・報復防止の整理にAIを使う方法

ハラスメント相談対応において、申告者が調査期間中に報復・嫌がらせ・不利益取扱いを受けないよう、会社として具体的な措置を検討する必要があります。ChatGPTを活用して措置の候補を整理できます。

  • 相談者への接触制限:被申告者との業務上の接触をどの程度制限するか
  • 配置・業務上の配慮:被申告者との物理的距離・業務ラインの変更
  • 情報共有範囲の限定:調査中に知っている人を最小限にする
  • 調査中のコミュニケーションルール:関係者間の不要な接触の抑制
  • 相談者・被申告者双方への説明:調査期間中の行動に関するルールの説明

ChatGPTで上記の候補を整理させることはできますが、実際の措置の実施・判断は人事・法務が行います。また、相談者への不利益取扱いの禁止は、労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法等に基づく使用者の義務です。AIが整理した候補を踏まえたうえで、組織として実行可能な措置を選択・実施してください。

ハラスメント対応の専門家相談前メモ

ハラスメント対応では、事案の重大性・複雑性によっては弁護士・社労士・産業医への相談が必要になります。相談の効率化・漏れ防止のために、ChatGPTで相談前メモを作成できます。以下の項目を含む構成にするとよいでしょう。

  • 事実経過(いつ・どこで・誰が・何をした)
  • 主な関係者(申告者・被申告者・目撃者・関係者)
  • 証拠・資料の有無(メール・録音・人事記録等)
  • ヒアリング状況(実施済み・未実施・予定)
  • 会社として実施した暫定対応
  • 専門家に確認したい事項(ハラスメント該当性・処分相当性・手続き・リスク等)
  • 懲戒・配置転換・再発防止策の現時点での検討状況

専門家相談前メモをAIで作成する際も、個人名・部署名・診断名等の個人情報は仮称・マスキング処理を施したうえで入力してください。プロンプトに「相談準備用のメモとして出力し、ハラスメント認定や処分の結論は出さないこと」と明示するのが重要です。

ハラスメント対応の場面別AI活用例

対応場面 AIで作れるもの 人間が確認すべきこと 専門家確認が必要になりやすい場面
相談受付 相談内容整理メモ・受付票の構成 相談者保護の即時判断・守秘の範囲 緊急性が高い場合・自傷他害リスク
初動対応 初動対応メモ・確認事項リスト 接触制限・配置配慮の実施 被申告者が上位管理職・役員の場合
申告者ヒアリング ヒアリング項目・事実確認シート 質問の実施・記録・誘導性の排除 精神的被害が深刻な場合(産業医)
被申告者ヒアリング 被申告者向けヒアリング項目 防御機会の確保・公平な聴取 処分を検討する場合(弁護士・社労士)
目撃者ヒアリング 目撃者・関係者向け確認項目 誘導のない聴取・中立性の維持 証言が大きく矛盾する場合
証拠整理 証拠リスト・保全候補の整理 証拠の実際の収集・保管・評価 証拠の有効性・法的評価に迷う場合
記録化 記録メモのたたき台・記録項目整理 事実に基づく正確な記録の作成 紛争化・労働審判の可能性がある場合
二次被害防止 措置候補リスト・対応フロー 措置の実施・当事者への説明 報復行為が実際に発生した場合
処分検討 確認事項・就業規則照合点の整理(参考) 処分内容の決定は人事・法務・責任者 懲戒処分・解雇を検討する場合(弁護士)
再発防止策 再発防止策候補・研修案のたたき台 実施する施策の選定・実行 職場環境改善が組織的課題の場合

ハラスメント対応で使えるプロンプト例

プロンプト例1:申告内容の時系列整理

申告内容をもとに、事実関係を時系列で整理するプロンプトです。

PROMPT EXAMPLE 1 — 申告内容の時系列整理
あなたは企業の人事労務担当者を支援する立場です。
以下のハラスメント相談内容について、事実関係を時系列で整理してください。

【出力形式】
以下の列を含む表形式で出力してください。
- 発生時期・日時(不明な場合は「不明」)
- 場所
- 関係者(仮称A、B等で記載)
- 申告された言動・行為の概要
- 証拠の有無(ある場合はその種類)
- 未確認事項・追加確認が必要な点(【要確認】と明示)

【注意事項】
- ハラスメント該当性や処分判断は行わないこと
- 事実として確認できていない事項は「【要確認】」として明示すること
- 申告者の希望(調査方法・匿名希望等)があれば最後に別途まとめること

【ハラスメント相談内容】
(ここに、個人情報をマスキングした相談内容を入力してください)

プロンプト例2:ヒアリング項目の作成

相談者・被申告者・目撃者それぞれへのヒアリング項目を作成するプロンプトです。

PROMPT EXAMPLE 2 — ヒアリング項目作成
以下のハラスメント相談(【相談類型:〇〇】)について、
相談者・被申告者・目撃者に確認すべきヒアリング項目を作成してください。

【出力形式】
以下の3つに分けて整理してください。
1. 相談者へのヒアリング項目
2. 被申告者へのヒアリング項目
3. 目撃者・関係者へのヒアリング項目

各項目は以下の観点で整理してください。
- 事実確認(日時・場所・具体的言動)
- 証拠・記録の有無
- 目撃者・関係者の有無
- 相談者の希望・現在の状況(相談者ヒアリングのみ)
- 二次被害防止に関する確認事項

【注意事項】
- 誘導的・威圧的・断定的な表現は避けること
- 事実を開かれた形で確認できる質問にすること
- 被申告者には防御機会を確保する観点から公平な質問を設計すること

【相談の概要】
(ここに相談概要をマスキングして入力してください)

プロンプト例3:初動対応メモの作成

PROMPT EXAMPLE 3 — 初動対応メモ作成
以下のハラスメント相談について、初動対応メモを作成してください。

【出力の構成】
1. 相談概要(類型・受付日時・相談者の状況)
2. 現時点で確認できている事実の整理
3. 未確認事項(【要確認】として明示)
4. 主な関係者(仮称を使用)
5. 証拠・資料の存在可能性
6. 二次被害防止上の注意点(接触制限・情報共有範囲)
7. 守秘・情報共有範囲の整理
8. 記録化すべき事項
9. 専門家確認が必要と考えられる事項
10. 今後の対応ステップ(案)

【注意事項】
- 結論・評価は断定しないこと
- 不明点は【要確認】として残すこと
- ハラスメント認定・処分内容の判断は行わないこと
- 個人情報は仮称(A・B等)で記載すること

【相談内容】
(ここにマスキングした相談内容を入力してください)

プロンプト例4:専門家相談前メモの作成

PROMPT EXAMPLE 4 — 専門家相談前メモ作成
以下のハラスメント相談について、弁護士・社労士相談前のメモを作成してください。

【出力の構成】
1. 相談背景・経緯の概要
2. 事実経過(時系列)
3. 主な関係者(仮称)
4. 証拠・資料の状況(有・無・不明)
5. ヒアリング状況(実施済み・未実施・予定)
6. 会社として検討している初動対応
7. 専門家に確認したい質問(具体的に列挙)
   例:ハラスメント該当性の観点で確認すべき事項
   例:処分を検討する前に確認すべき手続き
   例:記録化・証拠保全で注意すべき点

【注意事項】
- ハラスメント認定・処分の結論は出さないこと
- 相談準備用のメモとして出力すること
- 個人情報は仮称(A・B等)で記載すること

【相談内容・対応状況】
(ここにマスキングした内容を入力してください)

プロンプト例5:再発防止策の候補整理

PROMPT EXAMPLE 5 — 再発防止策の候補整理
以下のハラスメント相談を踏まえ、再発防止策の候補を整理してください。

【出力の構成】
再発防止策を以下に分けて候補を挙げてください。
1. 当事者・部署への個別対応(行為者への指導・フォロー等)
2. 職場環境改善(コミュニケーション・業務体制)
3. 管理職研修(ハラスメント防止・対応手順)
4. 社内相談窓口の周知・整備
5. 記録管理・対応記録の標準化
6. フォローアップ(相談者・被申告者・職場全体)

【注意事項】
- 実施要否は人事・法務・責任者が判断する前提で、選択肢として整理すること
- 社外の専門機関(産業医・EAP・弁護士・社労士)への連携が必要な事項は明示すること
- コスト・実施主体・時期の目安があれば各項目に付記すること

【相談・対応の概要(個人情報はマスキング)】
(ここに入力してください)

AI出力をハラスメント対応で使う前のチェックポイント

ChatGPTが出力した内容をハラスメント対応の実務で使用する前に、以下の点を確認してください。

  • 事実と評価・意見が明確に分かれているか(事実は確認、評価はAIが断定していないか)
  • 不明点・未確認事項が「【要確認】」として明示されているか
  • 相談者の希望(調査方法・匿名・配置転換等)を確認・反映しているか
  • 二次被害防止策の観点が含まれているか
  • 被申告者の防御機会・公平性への配慮がヒアリング設計に反映されているか
  • ヒアリング項目が誘導的・断定的な表現になっていないか
  • 守秘義務・情報共有範囲の整理がなされているか
  • 証拠・記録の有無・保全の必要性が確認されているか
  • 個人情報・健康情報・相談内容をマスキングせずに入力していないか
  • 処分・配置転換・公表等の重大対応では、必要に応じて弁護士・社労士・産業医に確認する予定があるか

ハラスメント相談対応とマスキングの関係

ハラスメント相談には、申告者氏名・被申告者氏名・部署名・役職・具体的な言動・健康情報・診断名・内部通報情報・人事評価情報など、極めて機微な個人情報が含まれます。これらを外部のAIサービスに無加工で入力することは、個人情報保護法(個人情報の適正管理義務)や社内のAI利用規程に抵触する可能性があります。

外部AIにハラスメント相談内容を入力する前に、以下の対応を行ってください。

  • 個人名・部署名・役職の仮称化・マスキング:「Aさん(30代・営業部所属)」→「仮称A(30代・営業職)」等
  • 診断名・健康情報の除去:「〇〇病と診断された」等の情報は入力しない
  • 社内固有情報の除去:特定の製品名・プロジェクト名・顧客名など
  • 内部通報情報の取扱い:内部通報経由の相談は特に慎重に扱い、通報者の保護を最優先に確認する

ハラスメント相談内容には申告者氏名・部署名・健康情報・内部通報情報など、機微な個人情報が含まれることがあります。AI入力前に伏せるべき情報を効率よく整理したい場合は、LegalOS マスキングのような前処理ツールを使う方法もあります。

LegalOS マスキングの詳細を見る

ハラスメント対応プロンプト集を使うメリット

ハラスメント相談対応専用のプロンプト集を活用することで、以下のメリットが得られます。

  • 毎回ゼロからプロンプトを考えなくてよい(初動整理の型が確立されている)
  • 相談受付・時系列整理・ヒアリング項目・専門家相談前メモの出力形式を統一しやすい
  • 二次被害防止・守秘・公平性の観点がプロンプトに組み込まれている
  • 一人法務・少人数法務でも、ハラスメント相談対応の初動整理を組織的に行いやすい
  • パワハラ・セクハラ・カスハラ等の種別ごとに整理された質問設計が利用できる

法務DXの文脈でハラスメント対応を標準化したい場合、プロンプト集はその入口として有効です。有料プロンプト集は「正解を出す魔法」ではなく、「初動整理・確認事項整理の型と再現性を提供するツール」として位置づけてください。

ハラスメント対応セット(相談受付・初動・ヒアリング・事実整理)プロンプト集
パワハラ対応プロンプト集|相談受付・ヒアリング・事実整理・社内報告
セクハラ対応プロンプト集|相談受付・二次被害防止・ヒアリング・事実整理
ハラスメント商品一覧ハブ

ハラスメント対応プロンプト集が向いている人・向いていない人

✓ 向いている人

  • ハラスメント相談対応を担当している
  • 相談内容の時系列整理に時間がかかる
  • ヒアリング項目を客観的・網羅的に整理したい
  • 二次被害防止や守秘の観点を漏らしたくない
  • 弁護士・社労士相談前に事実関係を整理したい
  • 一人法務・少人数法務で初動対応の型がほしい

✕ 向いていない人

  • AIをほとんど使わない(使う予定もない)
  • ハラスメント認定や処分判断をAIに任せたい
  • 事実確認・証拠確認をするつもりがない
  • 申告者・被申告者への公平な対応を省略したい
  • 個人情報・健康情報を無加工でAIに入力する運用を想定している
  • 紛争性のある案件も専門家確認なしで済ませたい

注意点:ハラスメント対応では「二次被害防止」と「公平性」を両立する

ハラスメント対応では、申告者保護と被申告者の防御機会の確保という、ともに重要な要請を両立する必要があります。

  • 申告者保護:申告者が調査期間中に不利益取扱い・報復・二次被害を受けないよう、会社は適切な措置を講じる義務があります(労働施策総合推進法第30条の2等参照)。
  • 被申告者の防御機会:一方で、被申告者には事実を説明する機会(弁明機会)が保障される必要があります。一方的な申告だけで判断・処分することは、懲戒処分の有効性を損なうリスクがあります。
  • 調査担当者の中立性:調査担当者は申告者・被申告者のいずれかに肩入れしない立場であることが重要です。利害関係のある担当者は調査から外すことを検討してください。
  • 記録の正確性:AIが作成した文書であっても、社内記録・紛争時資料として残る可能性があります。記録は事実と評価を分けて、正確に作成・保管してください。
  • 重大案件では専門家確認:懲戒処分・配置転換・解雇・労働審判等が想定される案件では、弁護士・社労士・産業医への確認を検討してください。

図解4:ハラスメント対応のプロンプト活用フロー

▶ どの場面でどのプロンプトを使うか
申告整理
プロンプト
相談内容の時系列整理・関係者・証拠候補の洗い出し
ヒアリング
項目プロンプト
相談者・被申告者・目撃者別のヒアリング項目作成
初動対応
メモプロンプト
相談概要・守秘・二次被害防止・未確認事項の整理
専門家相談
前メモプロンプト
弁護士・社労士への相談事項・事実経過の整理
再発防止策
プロンプト
個別対応・職場環境改善・研修・記録管理の候補整理

まとめ

ハラスメント相談対応は、初動対応から事実確認・ヒアリング・記録化・二次被害防止・専門家相談まで、多くの整理が必要な実務です。ChatGPTを中心とした生成AIは、これらの「整理と準備」の場面で担当者を補助するツールとして有効に機能します。

  • 相談内容の時系列整理・ヒアリング項目作成・初動対応メモ・専門家相談前メモにChatGPTを活用できる
  • ただし、ハラスメント該当性・事実認定・処分判断は人間(人事・法務・責任者)が行う
  • 相談者保護・被申告者の防御機会・二次被害防止・守秘・公平性を常に意識する
  • ハラスメント相談内容をAIに入力する場合は、個人情報・健康情報・内部通報情報のマスキングを徹底する
  • ハラスメント対応プロンプト集を活用することで、初動整理・ヒアリング・記録化の型をそろえやすくなる
  • 重大案件では、弁護士・社労士・産業医への確認を検討する

次回(第20話)では、「懲戒処分の検討にAIを使う方法|事実整理・弁明機会・処分相当性のチェック」を解説します。

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