業務委託契約書の雛形作成完全ガイド
ChatGPTプロンプト付き|2025年最新法改正対応版
2024年から2025年にかけて、業務委託契約を取り巻く法的環境は大きく変化しています。
特に2024年11月1日に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)により、従来の下請法や独占禁止法に加えて、より包括的な規制が導入されました。
さらに、2020年の民法改正により、これまでの「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更され、業務委託契約書の作成においても新たな対応が必要となっています。
本記事では、これらの最新の法改正を踏まえた上で、実務で使える業務委託契約書の雛形と、ChatGPTを活用した効率的な契約書作成方法を解説します。
第1章:業務委託契約の基礎知識
1-1. 業務委託契約の法的性質
業務委託契約は、自己(自社)の業務を外部に委託するための契約で、企業が行う経済活動において広く様々な目的に使う契約形態です。
業務委託契約は、その法的性質により以下の2つに大別されます:
📝 請負契約型
- 仕事の完成を目的とする
- 成果物の納品が前提
- 契約不適合責任が適用される
🤝 準委任契約型
- 業務の遂行そのものを目的とする
- 善管注意義務を負う
- 契約不適合責任は原則適用されない
1-2. 2024年11月施行フリーランス保護新法の影響
⚖️ フリーランス保護新法の概要
フリーランス保護新法は、従業員を使用せず業務を遂行するフリーランスや個人事業主を保護し、業務委託の仕事に安定して従事できる環境を整備することを目的としています。
主な規制内容:
- 書面等による取引条件の明示義務
- 報酬支払期日の設定(60日以内)
- 禁止行為の明確化(不当な減額、受領拒否等)
- ハラスメント対策の義務化
- 育児・介護への配慮義務
第2章:業務委託契約書作成のチェックポイント
2-1. 必須記載事項
業務委託契約書には、以下の事項を必ず記載する必要があります:
✅ 基本事項チェックリスト
- 契約当事者の特定 – 委託者・受託者の正式名称、住所・代表者名
- 委託業務の内容 – 具体的な業務範囲の明記、成果物がある場合はその仕様、業務遂行の場所・方法
- 報酬に関する事項 – 報酬額(税込/税抜の明記)、支払時期・方法、経費負担の取り決め
- 契約期間 – 開始日・終了日、更新に関する条項
2-2. 契約不適合責任への対応(請負契約の場合)
民法改正により、2020年4月1日以降の契約では「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」へと変更されました。
🔍 契約不適合責任の要点
- 追完請求権(修補・代替物引渡し・不足分引渡し)
- 代金減額請求権
- 損害賠償請求権
- 契約解除権
実務上の対応例:
第○条(契約不適合責任)
1. 受託者は、成果物が契約内容に適合しない場合、委託者の請求により、相当の期間内に追完(修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し)を行うものとする。
2. 前項の追完請求にもかかわらず、相当期間内に追完がなされない場合、委託者は報酬の減額を請求することができる。
3. 契約不適合責任の期間は、成果物の引渡しから1年間とする。
2-3. 知的財産権の取扱い
業務委託で作成される成果物の知的財産権については、明確な取り決めが必要です:
第○条(知的財産権)
1. 本業務により生じた著作権その他の知的財産権は、委託者に帰属するものとする。
2. 受託者は、成果物について著作者人格権を行使しないものとする。
3. 受託者が従前から保有していた知的財産権については、受託者に留保される。
第3章:ChatGPTを活用した契約書作成
3-1. ChatGPT活用のメリットと注意点
✅ メリット
- 契約書の雛形を迅速に作成可能
- 条項の抜け漏れを防げる
- 複数のパターンを比較検討できる
⚠️ 注意点
- 最新の法改正への対応は要確認
- 業界特有の慣習は反映されない場合がある
- 必ず法務専門家のレビューが必要
3-2. 効果的なプロンプト設計
ChatGPTに契約書を作成させる際、具体的な指示を含むプロンプトが不可欠です。以下に、実務で使えるプロンプトのテンプレートを紹介します。
🤖 基本プロンプトテンプレート
3-3. 業務内容別プロンプト例
システム開発業務委託の場合
デザイン制作業務委託の場合
3-4. ChatGPTでの契約書チェックプロンプト
作成した契約書のレビューにもChatGPTを活用できます:
第4章:実務で使える契約書雛形集
4-1. 汎用型業務委託契約書(2025年最終版)
業務委託契約書
委託者 ○○○○(以下「甲」という。)と受託者 △△△△(以下「乙」という。)は、以下のとおり業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
なお、本契約書における「書面」には、電子署名法に基づく電子署名又はタイムスタンプを付与した電磁的記録を含むものとする。
第1条(目的)
甲は乙に対し、次条に定める業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
第2条(委託業務の内容)
1. 本業務の内容は、別紙1「業務仕様書」に定めるとおりとする。
2. 業務仕様書に定めのない事項又は解釈に疑義が生じた事項については、甲乙協議の上、決定する。
第3条(契約期間)
1. 本契約の有効期間は、契約締結日から1年間とする。
2. 期間満了の1ヶ月前までに甲乙いずれからも書面による契約終了の意思表示がない場合は、同一条件で1年間更新されるものとする。
第4条(報酬及び支払条件)
1. 甲は乙に対し、本業務の対価として月額○○円(消費税等別途)を支払う。
2. 乙は、毎月末日締めにて請求書を発行し、甲は請求書受領月の翌月末日までに、乙が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。ただし、支払期日は乙の給付を受領した日から起算して60日を超えないものとする。
3. 振込手数料は甲の負担とする。
第5条(業務の実施)
1. 乙は、善良なる管理者の注意をもって本業務を遂行する。
2. 乙は、法令を遵守し、甲の正当な指示に従い、誠実に本業務を遂行する。
3. 乙は、本業務の進捗状況について、甲の求めに応じて適時報告する。
第6条(再委託)
1. 乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合に限り、本業務の一部を第三者に再委託することができる。
2. 前項の承諾を求める場合、乙は別紙2「再委託申請書」に以下を記載し提出する。
(1) 再委託先の名称、所在地、連絡先
(2) 再委託する業務の範囲と仕様
(3) 再委託の必要性と選定理由
3. 甲の承諾は、申請書への承認印又は電子署名をもって効力を生じる。
4. 乙は再委託先に対し、本契約における乙の義務と同等の義務を課すものとし、再委託先の行為について一切の責任を負う。
第7条(秘密保持)
1. 甲及び乙は、本契約に関連して知り得た相手方の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならない。
2. 前項の「秘密情報」とは、以下の情報をいう。
(1) 技術上又は営業上の情報
(2) 顧客情報、取引先情報、財務情報、人事情報
(3) 個人情報保護法上の個人情報
(4) その他、開示時に秘密である旨を明示した情報
3. 以下の情報は秘密情報から除外する。
(1) 開示時に既に公知であった情報
(2) 開示後、受領者の責によらず公知となった情報
(3) 開示時に受領者が既に適法に保有していた情報
(4) 正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負わず適法に取得した情報
(5) 法令又は裁判所の命令により開示を要請された情報(ただし、事前通知要)
4. 個人情報の取扱いについては、以下を遵守する。
(1) 個人情報保護法及び関連法令の遵守
(2) 本業務目的以外での使用禁止
(3) 第三者提供時の本人同意取得
(4) 匿名加工情報作成時の適切な加工と安全管理
5. 甲及び乙は、本契約終了後、相手方の要求により、秘密情報を記録した媒体及びその複製物を返還又は復元不可能な方法で廃棄し、その証明書を提出する。
6. 本条の義務は、本契約終了後3年間継続する。
第8条(情報セキュリティ)
1. 乙は、本業務で取り扱う情報について、以下の技術的安全管理措置を講じる。
(1) アクセス制御(ID・パスワード管理、多要素認証)
(2) データの暗号化(保管時・通信時)
(3) マルウェア対策ソフトの導入と定期更新
(4) セキュリティパッチの適時適用
(5) アクセスログの記録と定期監査
2. 乙は、情報セキュリティインシデントが発生した場合、直ちに甲に報告し、被害の拡大防止、原因究明及び再発防止策を講じる。
3. 甲は、必要に応じて乙の情報セキュリティ管理状況を監査できる。
第9条(知的財産権)
1. 本業務の遂行により生じた成果物に係る著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)、その他一切の知的財産権は、乙から甲への成果物引渡し時に、乙から甲に譲渡される。
2. 乙は、成果物を基にした二次的著作物の作成権及び利用権も甲に譲渡する。
3. 甲は、成果物を以下の範囲で自由に利用できる。
(1) 複製、改変、翻案
(2) 第三者への提供、再許諾
(3) 商業利用を含むあらゆる利用
4. 乙は、甲及び甲が指定する第三者に対し、著作者人格権を行使しない。
5. 乙が従前から保有し、又は本業務と無関係に取得した知的財産権は、乙に留保される。
6. 成果物に第三者の知的財産権が含まれる場合、乙は事前に甲に通知し、必要な権利処理を行う。
第10条(契約不適合責任)※請負契約の場合に適用
1. 甲は、成果物に契約内容との不適合を発見した場合、不適合を知った時から1年以内に乙に通知するものとする。
2. 前項の通知があった場合、乙は通知受領後30日以内に追完(修補)を行う。ただし、成果物の規模・複雑性により、甲乙協議の上60日まで延長できる。
3. 追完が不能又は追完に過分の費用を要する場合、甲乙協議の上、不適合の程度に応じた報酬の減額で対応することができる。
第11条(契約変更手続)
1. 本契約の内容を変更する必要が生じた場合、甲乙は別紙4「変更管理票」により変更内容及びその影響を書面化し、双方合意の上で変更契約書又は覚書を締結する。
2. 業務仕様の変更については、以下の手順による。
(1) 変更要求の提出(変更管理票使用)
(2) 影響分析(費用、納期、品質への影響)
(3) 見積提示と承認
(4) 変更契約の締結
第12条(損害賠償)
1. 甲又は乙が本契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、その損害を賠償する。
2. 前項の損害賠償は、直接かつ通常生ずべき損害に限るものとし、逸失利益、間接損害、特別損害、派生的損害及び懲罰的損害は賠償の対象外とする。ただし、秘密情報の漏洩による信用毀損損害はこの限りでない。
3. 損害賠償額は、債務不履行の場合は本契約の年間報酬額を上限とする。ただし、故意又は重過失による場合はこの限りでない。
第13条(契約の解除)
1. 甲又は乙は、相手方が以下のいずれかに該当する場合、催告なく直ちに本契約を解除できる。
(1) 本契約の重大な違反があり、相当期間を定めた催告後も是正されない場合
(2) 支払停止、破産、民事再生、会社更生、特別清算の申立てがあった場合
(3) 個人情報保護法、下請法等の重大な法令違反があった場合
(4) 第14条(反社会的勢力の排除)に違反した場合
2. 甲及び乙は、30日前までに書面で通知することにより、理由を問わず本契約を解除できる。この場合、解除を申し出た当事者は、相手方に対し、解除時点までの業務に対する合理的な対価を支払う。
第14条(反社会的勢力の排除)
1. 甲及び乙は、自己、自己の役員、実質的支配者、重要な使用人その他の関係者が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)でないことを表明し、保証する。
2. 甲及び乙は、毎年4月1日時点で前項の事項を再確認し、書面で相手方に通知する。
3. 甲又は乙は、相手方が第1項に違反した場合、何らの催告なく本契約を解除できる。
第15条(不可抗力)
1. 天災地変、戦争、暴動、疫病の流行(COVID-19等の指定感染症を含む)、法令の改廃、公権力による命令処分その他当事者の合理的な支配を超える予見不可能な事由により本契約の履行が困難となった場合、甲乙はその責を負わない。
2. 前項の事由が生じた場合、影響を受けた当事者は速やかに相手方に通知し、代替手段の検討を含め対応を協議する。
第16条(準拠法及び管轄裁判所)
1. 本契約の準拠法は日本法とする。
2. 本契約に関する紛争については、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
3. 国際取引の場合は、国際商業会議所(ICC)の仲裁規則に従い、東京において仲裁により解決することもできる。
第17条(契約終了後の措置)
1. 本契約が終了した場合、乙は甲の要請に応じ、業務の引継ぎに必要な協力を30日間を限度として行う。
2. 前項の協力に要する費用は、甲の都合による解除の場合は甲が、その他の場合は乙が負担する。
第18条(協議事項)
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈に疑義が生じた場合は、甲乙誠意をもって協議の上、解決を図る。
以上、本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
なお、電子契約の場合は、電子署名により締結し、各自電子ファイルを保管する。
令和○年○月○日
甲:[本店所在地]
[商号]
[代表者肩書] [氏名] 印
乙:[住所/本店所在地]
[氏名/商号]
[代表者肩書・氏名] 印
4-2. フリーランス保護法対応チェックリスト
✅ 必須記載事項の確認
- 書面交付要件 – 給付の内容(業務範囲)を5W1Hで具体化
- 報酬の額 – 税込/税抜、追加費用の有無を明記
- 支払期日 – 60日ルール遵守、起算日を明確に
- 電磁的方法の承諾 – メール承諾の記録保存
- 適格請求書発行事業者番号 – 登録番号の確認と記載
- 源泉徴収の取扱い – 個人事業主の場合は必須
⚠️ 禁止行為のコンプライアンスチェック
問題となる条項例:
- ✗「甲の判断で受領拒否可」→ ○「仕様書適合を条件に受領」
- ✗「甲の都合で減額可」→ ○「双方合意による変更」
- ✗「市場価格の50%以下」→ ○「市場価格を参考に協議決定」
- ✗「無条件で返品可」→ ○「契約不適合の場合に限定」
4-3. 業務別契約書テンプレート
システム開発業務委託契約書のポイント
- 開発工程の明確化 – 要件定義から納品まで各段階を詳細に規定
- 成果物の定義 – ソースコード、設計書、マニュアル等を具体的に列挙
- テスト責任 – 単体テスト、結合テスト、総合テストの分担を明記
- 保守対応 – 瑕疵対応期間と有償保守の区分を明確化
- セキュリティ要件 – 個人情報保護、インシデント対応を規定
デザイン制作業務委託契約書のポイント
- デザイン仕様 – ページ数、対応デバイス、ファイル形式を明記
- 修正回数 – 無償修正の回数制限と追加費用を規定
- 素材の権利 – 使用素材の著作権、肖像権の処理を明確化
- ブランドガイドライン – CI/VI準拠の要件を具体的に記載
- ポートフォリオ利用 – 制作物の二次利用に関する取り決め
4-4. 推奨オプション条項集
ESG・サステナビリティ条項
第○条(ESG・サステナビリティ)
1. 乙は、以下のESG基準を遵守する。
(1) 環境:温室効果ガス削減、廃棄物適正処理
(2) 社会:人権尊重、労働安全衛生、ダイバーシティ推進
(3) ガバナンス:コンプライアンス体制、内部統制
2. 乙は、サプライチェーンにおいて児童労働、強制労働がないことを保証する。
SLA(サービスレベル契約)条項
第○条(サービスレベル)
1. 乙は、以下のサービスレベルを保証する。
【システム運用の場合】
(1) 稼働率:月間99.9%以上
(2) 平均復旧時間:4時間以内
(3) 応答時間:3秒以内(95パーセンタイル)
2. SLA未達成時のペナルティ
(1) 稼働率99.5%未満:当月報酬の5%減額
(2) 稼働率99.0%未満:当月報酬の10%減額
データ保護・GDPR対応条項
第○条(データ保護)
1. EU一般データ保護規則(GDPR)対応
(1) 乙は、データ処理者として、GDPRを遵守する。
(2) EU域内の個人データを処理する場合、適切な保護措置を講じる。
(3) データ侵害発生時は、72時間以内に甲に通知する。
2. データ主体の権利
(1) アクセス権、訂正権、削除権への対応
(2) データポータビリティの確保
4-5. 別紙・添付書類フォーマット集
業務仕様書テンプレート
業務仕様書
1. 業務名称:[具体的な業務名]
2. 業務期間:令和○年○月○日~令和○年○月○日
3. 業務内容詳細:
3.1 [業務項目1]
– 作業内容:
– 成果物:
– 完了基準:
4. 成果物一覧:
□ [成果物1](形式: 納期: )
□ [成果物2](形式: 納期: )
5. 作業場所:[自社/甲指定場所/リモート]
6. 検収条件:
– 検収期間:納品後○営業日以内
– 検収方法:[書面/システムテスト/その他]
変更管理票フォーマット
変更管理票
管理番号:CHG-○○○○
起票日:令和○年○月○日
起票者:[甲/乙の担当者名]
1. 変更要求内容
1.1 変更箇所:□ 仕様 □ 納期 □ 費用 □ その他
1.2 変更内容詳細:
[現状]
[変更後]
2. 影響分析
2.1 スケジュール影響:□ なし □ あり(納期: → )
2.2 費用影響:□ なし □ 増加(+○○円) □ 減少(-○○円)
3. 承認
甲承認者: 印 日付:
乙承認者: 印 日付:



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