【2026年対応】偽装請負チェックリスト完全版|SES・一人常駐・業務委託の適法判断と実務対策
【2026年対応】偽装請負チェックリスト完全版|SES・一人常駐・業務委託の適法判断と実務対策
偽装請負は、契約名ではなく運用実態で判断されます。法務が見るべきポイントは、契約書の文言だけではなく、指揮命令の所在、労働時間等の管理、配置の決定、会議・チャットの運用、そしてそれらを説明できる記録まで含めた「説明可能な運用設計」です。
厚生労働省は2026年(令和8年)5月25日に、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集(第3集)にQ8を追加しました。Q8は、Q1〜Q7の考え方がアジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合にも当てはまることを明示するものです。
これを踏まえ、本記事では「発注者が受注者側労働者と直接コミュニケーションを取ること」と「発注者が受注者側労働者を直接指揮命令すること」を明確に区別して整理し直しました。あわせて、旧版で記載していた監督実務に関する断定的な記述(重点監督項目、電子証拠が必ず監督対象になる等)は、一次資料で確認できないため削除しています。
結論|まず押さえるべき5点
- 判断は契約形式ではなく実態です。「業務委託契約」と書いてあっても、実態として発注者が受注者の労働者に直接指揮命令していれば、37号告示に基づき労働者派遣事業と評価され得ます。これは請負契約だけでなく、委任・準委任契約でも同じです(疑義応答集第3集A1)。
- 37号告示は2つの独立性をどちらも要求します。①自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用していること(業務遂行の指示・評価、労働時間等、服務規律・配置)と、②請け負った業務を自己の業務として独立して処理していること(資金、法律上の責任、機械設備又は企画・専門的技術経験)の両方が必要です。
- 密な連携・情報共有・助言・提案それ自体は、直ちに偽装請負ではありません。第3集は、対等な関係の下で協働し、受注者側の担当者が自律的に判断して業務を行っていると認められる場合であれば偽装請負と判断されるものではない、と整理しています。逆に、業務の遂行方法や労働時間等に関する直接の指示があれば偽装請負と判断されます。
- 2026年5月25日追加のQ8により、射程がシステム開発全般に及ぶことが明示されました。Q1〜Q7の考え方は、アジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合にも当てはまります。ウォーターフォール型、保守運用、SES的な常駐案件の点検にも同じ視点が使えます。
- 一人常駐は法律上当然に禁止されているわけではありません。人数そのものではなく、指揮命令の所在、労働時間等の管理、配置の決定、評価、管理責任者の実際の機能という実態で判断されます。問題は「禁止か否か」ではなく「説明できるか否か」です。
1. 偽装請負とは何か|請負・委任・準委任のいずれでも問題になる
労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいいます(労働者派遣法2条1号)。これに対し請負は、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法632条)であり、労働者派遣との違いは、請負には発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係を生じないという点にあります。
厚生労働省は疑義応答集(第3集)A1で、この点は委任(民法643条)・準委任(民法656条)も同様であり、準委任契約を締結して行われる場合でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があるときは、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法の適用を受けるとしています。
発注者と受注者との間で請負契約等の形式をとりながら、実態として発注者が受注者の雇用する労働者に対して直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合をいい、労働者派遣法に違反するものとなります(疑義応答集第3集A1・注記)。
ありがちな誤解
「契約書に“発注者は直接指示しない”と書いてあるから大丈夫」「準委任にしておけば派遣法の話にはならない」という理解です。いずれも一次資料の整理と整合しません。
実務上の正解
契約文言は出発点にすぎません。実際に誰が業務の遂行方法を指示し、誰が労働時間等を管理し、誰が配置を決めているかという実態で判断されます。契約類型(請負/委任/準委任)を変えても、この判断枠組みは変わりません。
- 発注者のPMが、受注者の技術者へ日次でタスクの割付け・順序・締切を直接指示している
- 休暇・時間外労働・出退勤を発注者側のシステム又は上長が実質的に承認している
- 受注者の管理責任者が名目だけで、指示・相談・調整がすべて発注者側で完結している
- 発注者が特定の個人を指名して従事させ、又は特定の者の就業を拒否している
2. 判断基準|37号告示の条文構造を正確に読む
労働者派遣と請負等のいずれに該当するかは、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号。最終改正・平成24年厚生労働省告示第518号)に基づき、実態に即して判断されます。
2-1. 第2条は「2つの独立性」を要求する
告示第2条は、請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させる事業主であっても、次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする、という構造をとっています。つまり①と②の両方を満たして初めて、適正な請負等と評価されます。
| 告示の要件 | 具体的な内容 | 実務上の確認質問 |
|---|---|---|
| ① 労働力を自ら直接利用 (管理の独立性) 第2条1号 |
イ 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うこと(業務の遂行方法に関する指示等/業務の遂行に関する評価等に係る指示等) ロ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うこと(始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等/時間外・休日労働。いずれも単なる把握を除く) ハ 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うこと(服務上の規律/労働者の配置等の決定及び変更) |
誰が日々の業務の進め方を指示し、誰が始業終業・休暇・時間外を決め、誰が誰を配置しているか |
| ② 自己の業務として独立して処理 (事業処理の独立性) 第2条2号 |
イ 業務の処理に要する資金をすべて自らの責任で調達・支弁すること ロ 業務の処理について、民法・商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと ハ 自己の責任と負担で準備・調達する機械、設備、器材(業務上必要な簡易な工具を除く)又は材料・資材により処理するか、自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術・経験に基づいて処理するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと |
受注者は単なる労働力提供ではなく、自己の業務として処理しているか。設備・費用・責任はどう分担されているか |
2-2. 第3条|形式を整えても「故意の偽装」は救われない
2-3.「実態に即して個別に判断」が原則
厚生労働省は、疑義応答集に掲載している事例と異なる事例については、各都道府県労働局において実態に即して個別に判断するとしています。したがって、本記事を含め、行政解釈に明示されていない具体例について「適法」「違法」と断定することはできません。以下では「原則問題になりにくい」「要注意」「指揮命令と評価されるリスクが高い」といった目安の形で整理します。
3. 図解|請負等か労働者派遣かの実務判断フロー
日次のタスク割付け、作業順序、優先順位、緩急の調整が、受注者側の指揮命令系統を経ずに行われていないかを確認します。
発注者側で承認・差戻し・時間外指示をしていると、告示2条1号ロの要件が崩れます。単なる把握(入退館記録等)と、指示・承認は区別して設計します。
発注者が特定の者を指名し、又は特定の者の就業を拒否していないかを確認します(告示2条1号ハ、疑義応答集第3集A7)。
資金、事業主としての法律上の責任、機械設備等の調達、又は自ら行う企画・専門的技術経験に基づく処理かを確認します(告示2条2号)。
疑義応答集第3集が繰り返し重視する視点です。会議やチャットの「参加の有無」ではなく、そこで行われているコミュニケーションの実質を見ます。
偽装請負対応は、法務単独では完結しません。法務・人事・現場マネージャー・内部監査が同じフローを見て判断できる状態にすることが、最も事故を減らします。
4. 疑義応答集(第3集)Q1〜Q8の要点|2026年5月25日にQ8を追加
37号告示に関する疑義応答集(第3集)は、もともとアジャイル型開発を素材として整理されたものですが、2026年5月25日にQ8が追加され、Q1〜Q7の考え方がアジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合にも当てはまることが明示されました。したがって、ウォーターフォール型開発、保守運用、常駐型の開発支援など、システム開発全般の点検に用いることができます。
| 設問 | 厚生労働省の整理(要旨) | 実務への落とし込み |
|---|---|---|
| Q1 アジャイル型開発と契約方式 |
アジャイル型開発のようなシステム開発でも37号告示は適用される。準委任契約で行われる場合でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば、契約形式を問わず労働者派遣事業に該当する。委任・準委任も請負と同様。 | 契約類型を準委任に変えても論点は消えない。契約書の名目調整ではなく、指揮命令系統そのものを設計する。 |
| Q2 基本的考え方(密な連携) |
適正な請負等と判断されるには、受注者が自己の雇用する労働者に対する業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行い、かつ請け負った業務を自己の業務として独立して処理することが必要。相互に密に連携し、随時、情報共有や技術的な助言・提案を行っていたとしても、対等な関係の下で協働し、受注者側の担当者が自律的に判断して業務を行っていると認められる場合であれば、偽装請負と判断されるものではない。他方、発注者側が受注者側の担当者に対し直接、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示を行うなど指揮命令があると認められる場合は偽装請負と判断される。 | 発注者側と受注者側の役割・権限・業務の進め方を予め明確にし、双方で合意しておくこと、担当者への事前研修等で「自律的に業務を進めるものである」という認識を共有しておくことが重要と示されている。 |
| Q3 管理責任者の選任 |
対等な関係の下で協働し、受注者側の担当者が自律的に業務を進めている限り、管理責任者がすべての会議や打合せに同席していないことだけをもって直ちに偽装請負と判断されるわけではない。他方、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示が必要な場合、進捗の遅れ等で仕事の割付け、順序、緩急の調整等の指示が必要な場合には、受注者が管理責任者を選任するなどして受注者自ら指揮命令を行う必要があり、発注者側が直接これを行えば、管理責任者を選任していても偽装請負と判断される。 | 管理責任者は「置いてあること」ではなく「実際に機能していること」が問われる。同席率を上げることより、指示が必要になった局面のルートを設計する。 |
| Q4 要件・情報提供 |
発注者側の開発責任者が、受注者側の担当者に対し、業務の前提となるプロダクトバックログの内容の詳細説明や、業務に必要な要件を明確にするための情報提供を行ったからといって、それだけをもって直ちに偽装請負と判断されるわけではない。ただし、その説明や情報提供が実態として業務の遂行方法や労働時間等に関する指示などの指揮命令と認められる場合には偽装請負と判断される。 | 「何を作るか(What)」を伝えることと、「どう作業するか(How)・いつ働くか」を指示することを分ける。要件説明の場でタスク割付けや残業指示に踏み込まない。 |
| Q5 技術的な議論・助言・提案 |
対等な関係の下で技術的な議論や助言・提案が行われ、受注者側の担当者が自律的に業務を進めているのであれば、偽装請負と判断されるものではない。他方、助言・提案や技術的議論における言動が実態として業務の遂行方法や労働時間等に関する指示などの指揮命令と認められる場合には偽装請負と判断される。 | 技術的議論という形式をとっていても、実質が指示であれば結論は変わる。「提案」と「事実上の命令」の境目を現場に教育する。 |
| Q6 会議・メール・チャット・PJ管理ツール |
会議や打合せ、電子メールやチャットツール、プロジェクト管理ツール等の利用において、発注者側と受注者側の双方の関係者が全員参加している場合であっても、実態として対等な関係の下で情報共有や助言・提案が行われ、受注者側の担当者が自律的に業務を進めているのであれば、偽装請負と判断されるものではない。これらの全ての機会に管理責任者の同席が求められるものではない。他方、これらの場で発注者側から受注者側の担当者に対し直接、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示などの指揮命令が行われていると認められる場合には偽装請負と判断される。 | Slack、Teams、Jira、Redmine等のツールの利用自体で適法・違法が決まるものではない。見られるのは、そこで行われているコミュニケーションの実質。指示が必要になった場合には、受注者側が管理責任者を選任するなどして自ら指揮命令を行う体制を確立しておく必要がある。 |
| Q7 スキルシート |
適正な請負等と判断されるためには、受注者の労働者の配置等の決定及び変更を受注者自らが行うことが求められる。したがって、発注者が特定の者を指名して業務に従事させたり、特定の者について就業を拒否したりする場合は、発注者が配置等の決定及び変更に関与していると判断され、適正な請負等とは認められない。他方、技術力を判断する一環として、技術・技能レベルと経験年数等を記載したスキルシートの提出を求めたとしても、それが個人を特定できるものではなく、発注者がそれによって個々の労働者を指名したり特定の者の就業を拒否したりできるものでなければ、提出を求めたことだけをもって直ちに偽装請負と判断されるわけではない。 | スキルシートは「求めること」ではなく「個人の特定・選別に使えるか」が分かれ目。氏名・写真・個人識別可能な経歴の記載や、発注者による合否判断は避ける。 |
| Q8 (2026年5月25日追加) アジャイル型以外への適用 |
Q1〜Q7の考え方は、アジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合についても当てはまる。 | アジャイル案件に限定した社内ルールになっていないかを点検する。ウォーターフォール型、保守運用、常駐支援も同じ枠組みで棚卸しする。 |
Q2からQ6まで、厚生労働省は同じ判断軸を繰り返しています。すなわち、「対等な関係の下で協働し、受注者側の担当者が自律的に判断して業務を行っていると認められるか」と、「発注者側から受注者側労働者に対し、直接、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示が行われていないか」の2点です。社内研修はこの2軸に絞ると伝わります。
5.「直接コミュニケーション」と「直接指揮命令」の区別|場面別の実務整理
第3集の整理を踏まえると、発注者と受注者側労働者が直接コミュニケーションを取ること自体を一律に禁止する必要はありません。禁止すべきなのは、業務の遂行方法や労働時間等に関する直接の指示です。過剰に「一切話すな」というルールを敷くと、かえって情報提供が滞り、成果物の品質と安全性の両方を損ないます。
以下は、現場で頻出する場面を一次資料に反しない範囲で整理したものです。個別の事案は具体的事実関係により判断が変わります。表の「目安」は行政解釈による適法・違法の断定ではなく、実務上の注意度を示すものです。
| 場面 | 一次資料上の考え方 | 指揮命令と評価されるリスクが高まる例 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 要件説明・要求事項の詳細説明 | 業務の前提となる要求事項の内容の詳細説明や、要件を明確にするための情報提供は、それだけをもって直ちに偽装請負とはならない(A4)。 | 要件説明の場で、担当者ごとの作業分担・着手順序・当日の作業指示まで踏み込む。 | 原則問題になりにくい |
| 仕様確認・レビュー | 成果物が仕様を満たすかの確認は、発注者としての検収・受入れの一環。情報共有・助言の範囲であれば直ちに問題とはならない(A2・A4)。 | レビューを口実に、実装方法や作業手順を都度細かく指定し、受注者側の裁量が事実上なくなっている。 | 原則問題になりにくい(範囲に注意) |
| 技術的な議論・助言・提案 | 対等な関係の下での技術的議論・助言・提案は、直ちに偽装請負とはならない(A5)。 | 助言という形式だが、実質的に従わざるを得ない指示になっている。反論・代替案の余地がない。 | 原則問題になりにくい(実質で判断) |
| Slack・Teams等のチャット | 双方の関係者が全員参加していること自体では直ちに偽装請負とはならない。全ての機会に管理責任者の同席が求められるものでもない(A6)。 | 発注者側から受注者側担当者へ、チャットで日次のタスク割付け・作業順序・締切・残業を直接指示している。 | 参加自体は原則問題になりにくい/直接指示はリスクが高い |
| Jira・Redmine等のタスク管理ツール | プロジェクト管理ツールの利用自体で適法・違法が決まるものではない。見られるのはそこで行われるコミュニケーションの実質(A6)。 | 発注者が個々の担当者にチケットをアサインし、優先度・期限を直接変更して作業を管理している。 | 要注意(アサイン主体の設計が鍵) |
| 定例会議・打合せ | 会議への双方参加、管理責任者の非同席それ自体では直ちに偽装請負とはならない(A3・A6)。 | 会議が実質的に朝礼化し、個人単位の当日作業指示と進捗督促の場になっている。 | 原則問題になりにくい(運営方法に注意) |
| 出社時間・始業終業時刻 | 労働者の始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(単なる把握を除く)は受注者が自ら行う必要がある(告示2条1号ロ(1))。 | 発注者が受注者側労働者の出社時刻・退社時刻を指定し、遅刻等を直接注意している。 | 指揮命令と評価されるリスクが高い |
| 時間外労働(残業) | 労働時間を延長する場合・休日に労働させる場合の指示その他の管理(単なる把握を除く)は受注者が自ら行う必要がある(告示2条1号ロ(2))。第3集も「労働時間等に関する指示」を偽装請負の典型として繰り返し挙げている。 | 発注者が受注者側労働者に直接「今日は残ってほしい」と指示する。発注者のシステムで時間外を承認している。 | 指揮命令と評価されるリスクが高い |
| 休暇 | 休日・休暇等に関する指示その他の管理は受注者が自ら行う必要がある(告示2条1号ロ(1))。 | 発注者が受注者側労働者の休暇申請を承認・却下している。休暇取得の可否を発注者が判断している。 | 指揮命令と評価されるリスクが高い |
| 担当者の指名 | 発注者が特定の者を指名して業務に従事させる場合は、受注者の労働者の配置等の決定及び変更に関与していると判断され、適正な請負等とは認められない(A7、告示2条1号ハ(2))。 | 顔合わせが実質的な選考になっており、発注者が個人単位で合否を決めている。 | 適正な請負等と認められない方向(回避すべき) |
| 担当者の交代・就業拒否 | 特定の者について就業を拒否する場合も、配置等の決定及び変更への関与として適正な請負等とは認められない(A7)。 | 発注者が「この人は外してほしい」と個人を指定して交代を求める。 | 適正な請負等と認められない方向(回避すべき) |
| スキルシート | 個人を特定できるものではなく、発注者が個々の労働者を指名したり特定の者の就業を拒否したりできるものでなければ、提出を求めたことだけをもって直ちに偽装請負とはならない(A7)。 | 氏名・写真・個人が識別できる詳細経歴を記載させ、発注者が個人単位で採否を判断している。 | 要注意(記載事項と使われ方で分かれる) |
「話してはいけない」ではなく、「何を作るかは伝えてよい。どう作業するか・いつ働くかは、受注者側の指揮命令系統を通す」です。指示が必要になった局面では、受注者側が管理責任者を選任するなどして自ら指揮命令を行う体制を確立しておくことが必要とされています(A3・A6)。
6. SES・一人常駐で問題化しやすい論点
6-1. 一人常駐は法律上当然に禁止されているわけではない
37号告示にも疑義応答集にも、「常駐する労働者が1名であること」自体を違法とする定めはありません。判断されるのは、指揮命令の所在、労働時間等の管理、配置の決定、評価、管理責任者の実際の機能といった実態です。もっとも、常駐者が1名の場合、受注者側の指揮命令系統が現場で見えにくくなりやすく、実態を説明するための材料が乏しくなりやすいという構造的な難しさがあります。
説明が難しくなりやすい状態
- 管理責任者が形式上いるだけで、実際の指示・相談・調整が行われていない
- 現場での相談相手が発注者側の上長のみ
- 日報・週報の宛先が発注者だけ
- 継続・交代の判断が発注者側で行われている
最低限そろえたい状態
- 管理責任者が実在し、指示・調整を行った記録が残る
- 受注者側の面談・評価・教育の記録がある
- 業務の遂行方法・労働時間等の指示が必要な場面では、受注者側のルートを通る
- 労働時間等(始業終業・休暇・時間外)の指示と承認が受注者側で完結している
6-2. SESで頻出するグレー論点
| 論点 | 問題になり得る理由 | 実務上の見直し |
|---|---|---|
| スキルシート提出・顔合わせ | 発注者による個人の指名・就業拒否につながると、配置等の決定及び変更への関与と判断され、適正な請負等と認められない(A7) | スキルシートは個人を特定できない体裁に。顔合わせは業務説明の範囲に限定し、個人単位の合否判断を行わない |
| 発注者チャットへの参加 | 参加自体は直ちに問題ではないが(A6)、直接の作業指示が行われやすい場になる | 業務の遂行方法・労働時間等に関する指示が必要な場合の依頼ルートを管理責任者経由に定め、周知する |
| 発注者システムでの勤怠入力 | 入退館等の単なる把握と、労働時間等の指示・承認が混在すると、告示2条1号ロの要件の説明が難しくなる | 施設利用・入退館の記録と、労働時間等の承認機能を分離する |
| 長期・固定的な常駐 | 年数の経過自体が違法要素ではないが、運用が惰性化し実態と契約が乖離しやすい | 契約更改時に実態点検を行い、点検結果と是正履歴を残す |
| 準委任への契約類型の切替え | 準委任でも、実態として指揮命令関係があれば労働者派遣事業に該当する(A1) | 契約類型の変更ではなく、指揮命令系統・労働時間等の管理・配置の決定の実態を変更する |
7. 契約設計で入れるべき条項と、条項だけでは防げない運用リスク
7-1. 契約書に最低限入れたい設計
- 業務の遂行方法、進捗管理、人員管理は受注者が自ら行うこと
- 発注者は受注者の労働者へ直接指揮命令を行わないこと
- 受注者側の管理責任者と連絡窓口を特定すること
- 業務範囲、成果物、検収基準、責任分界を明確にすること
- 労働時間等(始業終業・休憩・休日・休暇・時間外)の指示・管理の主体を明記すること
- 人員の選定・交代の決定主体とルールを整理すること(発注者による個人の指名・就業拒否を行わない旨を含む)
- 機械・設備・器材・材料・アカウント等の負担区分と、必要な場合の双務契約の要否を整理すること
- 発注者側と受注者側の役割・権限・業務の進め方を事前に明確化し、合意しておくこと(第3集A2)
7-2. しかし、条項があっても運用で崩れます
| 契約書では整っている | でも運用で崩れる例 | 評価の方向 |
|---|---|---|
| 「業務の依頼は管理責任者経由」と記載 | 実際はチャットで発注者PMが個人へ日次の作業指示を出している | 指揮命令と評価されるリスクが高い |
| 「労働時間等の管理は乙が行う」と記載 | 実際は甲のシステムで時間外・休暇を承認している | 指揮命令と評価されるリスクが高い |
| 「人員の選定は乙が行う」と記載 | 実際は顔合わせで甲が個人の合否を決めている | 適正な請負等と認められない方向 |
| 「成果物ベースの委託」と記載 | 実際は成果物の定義がなく、日々の作業指示と人月管理だけが回っている | 事業処理の独立性の説明が困難 |
| 「直接指揮命令を行わない」と記載 | 技術的議論の形式で、実質的に従わざるを得ない指示が反復されている | 実質で判断されるためリスクが残る(A5) |
AIで業務委託契約の雛形を作ること自体は有用ですが、雛形だけでは37号告示対応になりません。偽装請負の論点は、契約書の名目調整ではなく、指揮命令系統、労働時間等の管理、配置の決定、記録の設計を伴って初めて実効性が出ます。
8. 記録・証跡の整備と社内点検
37号告示に基づく判断は実態に即して行われます。実態を説明する材料は、契約書だけではなく、体制図、管理責任者の選任記録、業務依頼の記録、労働時間等の承認記録、面談・評価記録、成果物と検収の記録など多岐にわたります。契約と運用と記録の3つが同じ方向を向いているかを、定期的に点検してください。
「電子データが必ず労働局の監督対象になる」といった監督実務に関する断定は、一次資料からは確認できません。ここでの整理は、あくまで自社が実態を説明できるようにするための社内的な準備という位置づけです。
指揮命令の所在
管理責任者の選任と役割、業務依頼のルート、会議体の運営ルール、タスクのアサイン主体
労働時間等の管理
始業終業・休憩・休日・休暇の承認者、時間外の指示・承認者、入退館記録との切り分け
独立性の裏づけ
業務範囲と成果物、検収の基準と結果、資金・設備・責任の分担、受注者による教育・評価・面談
| 資料 | 何を説明できるか | 整備のコツ |
|---|---|---|
| 管理責任者の選任通知 | 受注者側の指揮命令ルートの存在 | 氏名だけでなく、役割・権限・連絡方法まで明記する |
| 役割・権限・進め方の合意文書 | 発注者側と受注者側の役割分担(第3集A2が重要と指摘) | プロジェクト開始時に作成し、体制変更時に更新する |
| チャット・チケット・メールの記録 | 誰から誰へ、何を依頼したか | 業務の遂行方法・労働時間等に関する指示が必要な場面のルートを可視化する |
| 労働時間等の承認記録 | 始業終業・休暇・時間外の指示・管理の主体 | 承認者と日時が残る仕組みにし、単なる入退館把握と分離する |
| 面談・評価・教育の記録 | 受注者による労働者管理の実態 | 四半期単位でもよいので継続的に保管する |
| 業務範囲・成果物・検収の記録 | 自己の業務としての独立処理 | 業務範囲、成果物、検収の合否基準を分けて記載する |
| 研修・周知の記録 | 直接指示の防止に向けた社内統制 | 第3集A2が挙げる事前研修等の実施を記録として残す |
9. 安全衛生上の指示等と、業務遂行上の指揮命令の区別
現場では、「偽装請負を恐れて安全上必要な指示をためらう」という逆方向のリスクも生じます。厚生労働省は令和7年3月31日付け通達(基監発0331第1号、基安計発0331第1号、職需発0331第1号)「注文者・事業者等が安全衛生上の指示等を行う場合における留意事項(労働基準法上の労働者性、いわゆる偽装請負との関係)について」を発出し、この点を整理しています。
- 注文者・事業者等が労働安全衛生法令に基づき、危険箇所への立入禁止等の措置を講じたり、業務上の災害を防止するために必要な措置の実施を指導・指示したりすることは、注文者・事業者等に課された法律上の義務であり、基本的に、その履行をもって直ちに偽装請負と判断されることはないと考えられる。
- 安衛法29条に基づく元方事業者の指導・指示、およびこれと同趣旨の指導・指示も、基本的に、直ちに偽装請負と判断されることはないと考えられる。
- 疑義応答集(第2集)では、発注者が請負労働者に対し、災害時など緊急時に健康や安全を確保するための指示や、安衛法29条に基づく必要な指導・指示を直接行ったとしても、そのことをもって直ちに労働者派遣事業と判断されるものではない旨が示されている。
- ただし、安衛法令違反の防止・是正に必要な範囲を超えて、作業の内容や遂行方法について具体的な指示を行う場合は、この限りでない。
同通達は、偽装請負と判断される要素となり得る例として、体調不良を申し出た関係作業者の作業を、関係請負人の了解を得ることなく他の労働者に指示して従事させる場合、安全衛生上の観点で行わせなかった作業を関係請負人の了解なく他の労働者に行わせる場合、ミーティング等が所定労働時間外に実施され、注文者等により請負事業主の了解なく業務時間が延長されている場合などを挙げています。
10. 是正フロー|見つかったときに何を止め、何を残すか
発注者から受注者側労働者への業務の遂行方法・労働時間等に関する直接の指示、労働時間等の直接承認、個人の指名・就業拒否につながる運用を止めます。
指示が必要になる局面を洗い出し、受注者側が管理責任者を選任するなどして自ら指揮命令を行う体制を確立します(第3集A3・A6)。
契約書、業務範囲・成果物の定義、役割と権限の合意文書、会議体、チャットルール、労働時間等の管理ルールを揃えます。
是正前後の運用変更、社内周知、研修、承認フローの変更を記録します。第3集A2が挙げる事前研修等もここに含まれます。
問題案件だけでなく同種案件を洗います。Q8により、アジャイル型に限らずシステム開発全般が同じ枠組みの対象であることが明示された点に留意してください。
偽装請負は、1本の契約を直せば終わるテーマではありません。再発防止の説明可能性まで含めて、現場ルール、監査項目、教育資料に落とし込む必要があります。判断に迷う事案は実態に即した個別判断となるため、所轄の都道府県労働局や、労務・派遣法務に詳しい専門家への相談を検討してください。
11. 労働者派遣法40条の6|労働契約申込みみなし制度の正確な理解
偽装請負に関連して必ず言及される制度が、労働者派遣法40条の6の労働契約申込みみなし制度です。もっとも、「偽装請負と判断されたら自動的に直接雇用になる」という理解は正確ではありません。条文の構造を確認します。
11-1. 制度の骨格
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる違法派遣 | 40条の6第1項各号。禁止業務への従事(1号)、無許可事業主からの受入れ(2号)、期間制限違反(3号・4号)、そしていわゆる偽装請負等(5号)。 |
| 5号の要件 | 「この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること」。主観的な目的(いわゆる偽装請負等の目的)が要件とされている点が、他の類型と異なります。 |
| 効果 | 労働者派遣の役務の提供を受ける者が、派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。 |
| 例外(善意無過失) | 役務の提供を受ける者が、その行為が同項各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかったときは、みなし制度は適用されません。 |
| 撤回の制限(2項) | 申込みをしたものとみなされた者は、当該申込みに係る行為が終了した日から1年を経過する日までの間は、その申込みを撤回することができません。 |
| 申込みの失効(3項) | その期間内に、承諾する旨又は承諾しない旨の意思表示を受けなかったときは、当該申込みはその効力を失います。 |
| 契約の成立 | みなされた申込みに対して労働者が承諾の意思表示をすることにより、労働契約が成立する構造です。行政処分によって自動的に雇用関係が創設される制度ではありません。 |
11-2. よくある誤解の是正
- 誤解①「偽装請負と判断されれば全事案で当然に直接雇用が成立する」——5号の適用には「適用を免れる目的」という要件があり、また善意無過失の抗弁が認められる場合があります。さらに、成立には労働者の承諾が必要です。
- 誤解②「指揮命令をしていた事実があれば目的が推定される」——厚生労働省の通達(平成27年9月30日付け職発0930第13号「労働契約申込みみなし制度について」)は、偽装請負等の目的の有無は個別具体的に判断されるとしたうえで、指揮命令等を行い偽装請負等の状態となったことのみをもって「偽装請負等の目的」を推定するものではないとしています。
- 誤解③「行政が直接雇用を命じる制度である」——同通達は、40条の6は民事的効力を有する規定であり、その効力が争われた場合については個別具体的に司法判断されるべきものである、と整理しています。
「みなし制度が適用されにくいから安心」という発想は誤りです。要件充足の有無にかかわらず、偽装請負の状態は労働者派遣法に違反するものであり、是正の対象となり得ます。目指すべきは契約書で回避することではなく、違法評価を受ける運用自体を避けることです。
12. 2026年の周辺論点|取適法・フリーランス法・派遣法関係の改正
12-1. 偽装請負の中心法令はあくまで労働者派遣法と37号告示
偽装請負該当性の判断枠組みは、労働者派遣法と37号告示、およびその行政解釈(疑義応答集、関係通達)で構成されます。以下の各制度は、契約類型の切替えや条件見直しの局面で並行して確認すべき周辺論点であり、偽装請負該当性を直接左右するものではありません。
12-2. 取適法(中小受託取引適正化法)
従来の下請法は改正され、2026年(令和8年)1月1日から「中小受託取引適正化法」(取適法)として施行されています。偽装請負の是正に伴って委託条件を見直す場合、取引条件の適正化の観点から次の点に留意してください。
- 偽装請負の解消を名目として、単価や取引条件を一方的に切り下げない
- 契約類型の切替えや条件変更の際は、協議・説明・記録を残す
- フリーランスとの取引では、フリーランス保護法上の取引条件の明示、支払期日、禁止行為も別途確認する
12-3. 2026年10月1日施行の派遣法関係の改正(同一労働同一賃金)
厚生労働省・都道府県労働局の案内によれば、令和8年4月28日に労働者派遣法施行規則の一部、派遣元指針・派遣先指針等を改正する省令・告示が公布・告示され、令和8年10月1日から施行されます。内容は、雇入れ時・派遣時の明示事項に「待遇の相違の内容及び理由等について説明を求めることができる旨」を追加すること、同一労働同一賃金ガイドラインの明確化等です。
12-4. リモート・ハイブリッド環境の注意点
常駐でなくても、Web会議、チケット、チャット、日次のスタンドアップを通じて、発注者が受注者側の担当者に業務の遂行方法や労働時間等を直接指示する構図ができれば、実態判断上の問題は変わりません。対面かオンラインかではなく、指揮命令が誰に属するかが問われます。第3集A6が示すとおり、ツールの利用自体で適法・違法が決まるものではありません。
13. 30項目チェックリスト
以下は自社点検用の項目です。該当しない項目がある場合、直ちに違法という意味ではなく、実態を説明する材料が不足している可能性があることを示します。
契約・SOW(8項目)
現場運用(10項目)
体制・記録(8項目)
是正・教育(4項目)
形式面が整っていても、運用面と記録面が弱いと実態を説明できません。法務レビューでは、契約8:運用10:記録・体制8:是正教育4という配分を意識すると、契約書と現場のズレを見つけやすくなります。
14. 関連記事・有料プロンプト
偽装請負対応は、業務委託契約、フリーランス法、契約レビュー、業務範囲の設計、現場への依頼文の整備までつながります。周辺論点まで一緒に押さえたい方は、下記も併せて確認しておくと実務に落とし込みやすくなります。
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15. 参考法令・一次資料
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)[PDF]
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集(厚生労働省)
- 37号告示に関する疑義応答集(第1集)[PDF]
- 37号告示に関する疑義応答集(第2集)[PDF]
- 37号告示に関する疑義応答集(第3集)[PDF](2026年5月25日にQ8を追加)
- システム開発を請負業務とする場合の疑義応答集の取扱いについて(令和3年5月13日付け都道府県労働局宛て事務連絡)[PDF]
- 「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」について(厚生労働省)
- 労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド[PDF]
- 注文者・事業者等が安全衛生上の指示等を行う場合における留意事項(労働基準法上の労働者性、いわゆる偽装請負との関係)について(令和7年3月31日付け基監発0331第1号ほか)[PDF]
- 労働契約申込みみなし制度について(平成27年9月30日付け職発0930第13号)[PDF]
- 令和8年10月1日より派遣労働者の同一労働同一賃金が改正されます(鹿児島労働局)
- 中小受託取引適正化法(取適法)関係(公正取引委員会)
- 2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!(公正取引委員会リーフレット)[PDF]
16. よくある質問(FAQ)
Q. 一人常駐は直ちに違法ですか?
いいえ。37号告示にも疑義応答集にも、常駐者が1名であること自体を違法とする定めはありません。判断されるのは、業務の遂行方法の指示、労働時間等の管理、配置の決定、評価、管理責任者の実際の機能といった実態です。ただし一人常駐は実態を説明する材料が乏しくなりやすいため、記録の整備が重要になります。
Q. 準委任契約なら労働者派遣法の問題にはなりませんか?
なります。疑義応答集(第3集)A1は、委任・準委任も請負と同様であり、準委任契約を締結して行われる場合でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があるときは、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法の適用を受けるとしています。
Q. 発注者と受注者側の担当者が直接やり取りすると偽装請負になりますか?
直接やり取りをすること自体で偽装請負となるものではありません。疑義応答集(第3集)A2は、相互に密に連携し、随時、情報共有や技術的な助言・提案を行っていたとしても、対等な関係の下で協働し、受注者側の担当者が自律的に判断して業務を行っていると認められる場合であれば偽装請負と判断されるものではないとしています。他方、業務の遂行方法や労働時間等に関する直接の指示があれば偽装請負と判断されます。
Q. Slack、Teams、Jiraなどのツールに双方が参加していると問題ですか?
参加していること自体では直ちに偽装請負とはなりません。疑義応答集(第3集)A6は、会議や打合せ、電子メール、チャットツール、プロジェクト管理ツール等に双方の関係者が全員参加している場合でも、実態として対等な関係の下で情報共有や助言・提案が行われ、受注者側の担当者が自律的に業務を進めているのであれば偽装請負と判断されるものではないとしています。判断されるのは、そこで行われているコミュニケーションの実質です。
Q. 受注者側の管理責任者は、すべての会議に同席しなければなりませんか?
必要ではありません。疑義応答集(第3集)A3・A6は、対等な関係の下で協働し受注者側の担当者が自律的に業務を進めている限り、管理責任者が会議や打合せに同席していない場合があることだけをもって直ちに偽装請負と判断されるわけではないとしています。ただし、業務の遂行方法や労働時間等に関する指示や、仕事の割付け・順序・緩急の調整等の指示が必要な場合には、受注者が管理責任者を選任するなどして受注者自ら指揮命令を行う必要があります。
Q. スキルシートの提出を求めると偽装請負になりますか?
疑義応答集(第3集)A7は、技術力を判断する一環として技術・技能レベルや経験年数等を記載したスキルシートの提出を求めたとしても、それが個人を特定できるものではなく、発注者がそれによって個々の労働者を指名したり特定の者の就業を拒否したりできるものでなければ、提出を求めたことだけをもって直ちに偽装請負と判断されるわけではないとしています。一方、発注者が特定の者を指名して従事させたり、特定の者について就業を拒否したりする場合は、受注者の労働者の配置等の決定及び変更に関与していると判断され、適正な請負等とは認められません。
Q. 第3集はアジャイル型開発だけの話ですか?
いいえ。2026年5月25日に追加されたQ8により、Q1〜Q7の考え方は、アジャイル型開発以外のシステム開発を請負業務とする場合についても当てはまることが明示されました。
Q. 偽装請負と判断されたら、必ず直接雇用が成立するのですか?
そうとは限りません。労働者派遣法40条の6第1項5号の適用には「この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的」という要件があり、また、その行為が同項各号のいずれかに該当することを知らず、知らなかったことにつき過失がなかった場合には適用されません。さらに、労働契約が成立するには、みなされた申込みに対して労働者が承諾の意思表示をする必要があります。厚生労働省の通達も、指揮命令等を行い偽装請負等の状態となったことのみをもって「偽装請負等の目的」を推定するものではないとしています。
Q. 安全のために必要な指示も控えるべきですか?
控える必要はありません。令和7年3月31日付け厚生労働省通達は、労働安全衛生法令に基づく措置の実施や、安衛法29条に基づく指導・指示およびこれと同趣旨の指導・指示は、基本的に、それをもって直ちに偽装請負と判断されることはないと考えられるとしています。ただし、安衛法令違反の防止・是正に必要な範囲を超えて、作業の内容や遂行方法について具体的な指示を行う場合はこの限りではありません。
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