法改正

【2026年施行予定】就活セクハラ防止が”義務”に変わる日~採用担当者・法務が今すぐ始めるべき実務対応チェックリスト

売れ筋:三点セット

通報〜初動〜ヒアリング〜認定〜通知〜再発防止まで、調査対応を“型”で標準化

ハラスメント対応は「何から作るか」で迷って時間が溶けます。最短は、必要なアウトプット一式を先に揃えることです。

  • 聞く順番(誘導質問回避)・質問票の叩き台
  • 事実認定/評価(パワハラ・セクハラ・カスハラ横断)
  • 通知文・是正・再発防止(文面とチェック)
  • 社内説明・記録化(監査/後日紛争の備え)

※機密情報の入力範囲・マスキングは社内ルールに従ってください。一般的情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。

【2026年施行予定】就活セクハラ防止措置が義務化|改正均等法13条と企業の実務対応

(2025年12月時点/施行期日は政令で最終確定。パブコメ資料では2026年10月1日施行予定)

📌 この記事でわかること
✅ 2025年6月公布・改正均等法のポイント(第13条新設)
✅ 就活生の約3人に1人が被害経験というデータの読み方
✅ 法務・人事が今すぐ始める実務対応チェックリスト
✅ 民事責任・行政対応・レピュテーションリスクの整理

はじめに:なぜ今、「就活セクハラ」が法改正のターゲットになったのか

2025年6月11日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)が公布されました。この改正により、就職活動中の学生やインターンシップ生に対するセクハラ防止措置が、事業主の法的義務として明確化されました。

施行日は政令で定められますが、パブリックコメント資料では2026年10月1日施行(予定)として制度設計が進んでいます。
したがって、2027年卒の採用活動(2026年以降)に向け、施行日前でも同等水準の運用を先行導入するのが実務上合理的です。

図0|改正の全体像(Before → After)
改正前(現行)
  • 就活生・インターンは「労働者」ではなく、明示的保護が弱い
  • 指針上は「望ましい取組」にとどまる
改正後(施行後)
  • 均等法13条(新設):求職者等へのセクハラ防止措置が法的義務
  • 相談体制・迅速対応・プライバシー保護等が「措置」として要請
図0:就活セクハラ対策が「努力」から「義務」へ。

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1. 法改正の概要:何がどう変わるのか

1-1. 改正前(現行法)の状況

現行の男女雇用機会均等法第11条は、「職場における」セクハラ防止措置義務を定めています。しかし、ここでいう「労働者」には就活生・インターンシップ生は含まれておらず、直接の保護対象として明示されていません。

就活生に対するセクハラについては、指針(平成18年厚生労働省告示第615号)で「望ましい取組」として触れられるにとどまっていました。

1-2. 改正後の義務内容:均等法第13条の新設

今回の改正により、均等法に「第13条」が新設され、求職活動等における性的な言動に関する措置義務が明文化されます。

⚠️ 条文番号に関する注意
本記事の条文番号は「改正法施行後(改正後法)」を前提としています。参照時は施行日と条文溶け込み(改め文)をe-Gov法令検索等でご確認ください。

【改正均等法第13条第1項(条文要旨)】

事業主は、求職者等…の求職活動等において行われる当該事業主が雇用する労働者による性的な言動により当該求職者等の求職活動等が阻害されることのないよう、当該求職者等からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
項目内容
対象者 求職者等(就活生、インターンシップ生等)※詳細は省令で規定
対象行為 事業主が雇用する労働者による性的な言動
保護法益 求職活動等が阻害されないこと
義務内容 相談体制の整備その他雇用管理上必要な措置

1-3. 措置義務の具体的内容(指針で示される)

具体的な措置の詳細は、厚生労働省の指針等で具体化されます。実務的には、職場セクハラ(均等法11条)の枠組みに近い項目が「求職者向け」に拡張される整理が想定されます。

義務項目 具体例(企業内ルール化の方向)
方針の明確化・周知 就活セクハラ禁止方針、違反時の対応(懲戒含む)を明示・研修
相談体制の整備・周知 求職者も利用できる窓口(フォーム・メール等)の設置+周知
事後の迅速・適切な対応 事実確認、被害者配慮、再発防止、行為者への措置
プライバシー保護 相談者・関係者情報の取扱い、アクセス権限、記録管理
不利益取扱い防止 相談対応・調査協力した従業員への不利益取扱い禁止(制度設計で明確化)
💡 実務担当者への注意喚起
「採用担当の独立性」「OB/OG・リクルーター統制」「公式チャネル化(ログ確保)」は、指針の文言が出る前でも先行して整備しやすい“勝ち筋”です。

1-4. 注意点:パワハラは今回対象外(法的強度の「ねじれ」)

今回の改正で措置義務化されるのはセクハラ防止措置のみです。就活パワハラは努力義務にとどまり得るため、同じハラスメントでも法的強度が異なるという「ねじれ」に注意が必要です。

2. 衝撃の実態データ:就活生の約3人に1人が被害経験

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、就活セクハラの深刻な実態が示されています。

図1|数字で見る「就活セクハラ」
インターン中の被害経験率
30.1%
約3人に1人
就職活動中の被害経験率
31.9%
インターン以外
企業の「取組なし」
47.5%
対策未整備が多い
図1:被害経験率は高止まり。義務化で“未整備”が最も危険な状態に。

2-1. 被害経験率

場面 被害経験率
インターンシップ中 30.1%
インターンシップ以外の就職活動中 31.9%

2-2. 加害者の属性(“事故が多い場面”)

場面 最多の行為者
インターンシップ中 インターン先で知り合った従業員(47.4%
就職活動中 OB・OG訪問を通して知り合った従業員(38.3%

2-3. 被害内容の内訳(例)

  • 性的な冗談やからかい:38.2%
  • 食事やデートへの執拗な誘い:35.1%
  • 不必要な身体への接触:27.2%

2-4. 男性被害者への注目

男女別では男性の被害経験率が女性より高いという結果も示されています。固定観念(「男性なら大丈夫」)は、対応遅れ=企業リスクに直結します。

3. 企業の対応状況:半数近くが「対策なし」

同調査では、就活生等に対するセクハラについて「取組を実施していない」企業が47.5%にのぼります。改正法は企業規模を問わず全事業主に適用されるため、未整備の企業ほど早急な体制整備が必要です。

4. 実務対応チェックリスト:今から始める準備

4-1. 方針策定・規程整備

□ 就活セクハラ禁止方針の明文化

  • 既存のハラスメント防止方針に「求職者等に対するセクハラ」を明記
  • 就業規則への懲戒事由としての追記を検討

□ 採用活動における行動指針・マニュアルの策定

【行動指針の記載例】
第○条(面談・連絡に関するルール)
1. 求職者との面談は、原則として複数名で対応する。
2. 面談場所は、会社が指定した場所(会議室、オープンスペース等)とし、
   個室での1対1の面談は原則禁止とする。
3. 面談時間は業務時間内を原則とし、夜間・深夜帯は禁止とする。
4. 酒席を伴う面談・懇親は原則禁止とする。やむを得ない場合は複数名の同席を必須とする。
5. 求職者との個人的な連絡先(私用携帯番号、SNSアカウント等)の交換は禁止する。
   連絡は会社の公式チャネルを通じて行う。

□ 採用代行会社(RPO)との契約見直し

委託先スタッフ等も応募者と接触するため、契約・運用で同等水準の統制(禁止行為、教育、報告、調査協力、再委託制限等)を及ぼしておくことが望ましいです。

4-2. 相談体制の整備(“独立性”が肝)

  • 既存の社内ハラスメント相談窓口の対象を求職者にも拡大
  • 外部相談窓口(社労士・弁護士等)の活用も有効
  • 採用サイト・募集要項への相談窓口情報の掲載
図2|求職者相談の“安心設計”(独立性の確保)
① 相談受付(求職者)
フォーム/専用メール/外部窓口。匿名可否・返信SLA(例:48h)を明記。
② 独立窓口で一次評価
採用選考担当と切り分け。受付記録・証拠保全・二次被害防止を優先。
③ 事実確認(必要最小限)
聴取順序の設計、同席者確認、ログ回収(公式チャネル・録画等)。
④ 対応決定・再発防止
行為者措置/謝罪・配慮/面談ルール改定/研修。記録保全と報告ライン整備。
図2:相談窓口は「採用プロセスからの独立性」が信頼の核心。

4-3. 研修・教育

対象 研修内容
全従業員 就活セクハラの定義、会社方針、相談窓口
採用担当者 面談ルール、グレーゾーン事例、公正採用選考の基本
リクルーター/OB・OG 行動指針の徹底、SNS対応、個人的接触の禁止(任命・研修・違反時措置までセット)
管理職 部下への周知義務、発生時の対応

4-4. 個人情報管理・記録設計(“ログが命”)

  • 応募者情報のアクセス制限(最小権限・私用端末保存禁止)
  • 公式チャネル化(会社メール/公式SNS/面談ツール)
  • 録音・録画・チャット履歴の保存、保存期間の設定

4-5. 発生時対応フローの整備

【発生時対応フロー(例)】
① 相談受付:傾聴、記録、二次被害防止
② 事実確認:証拠保全を優先し、適切な順序で聴取
③ 対応決定:懲戒処分、配置転換等の検討
④ 被害者対応:謝罪、選考プロセスへの配慮説明
⑤ 再発防止:原因分析、研修実施、規程見直し

4-6. 対象範囲の明確化(事故が多い接点)

  • インターンシップ
  • OB/OG訪問
  • SNS・就活マッチングアプリ経由の接触
  • 会社説明会・セミナー
  • オンライン面談

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5. 法的リスクと企業が負う責任

5-1. 行政上の措置

  • 報告徴収
  • 助言・指導・勧告
  • 勧告に従わない場合の企業名公表
  • 報告徴収に対し「報告をせず、又は虚偽の報告」をした場合の過料(上限が定められる)

5-2. 民事上の責任

責任類型 根拠 内容
使用者責任 民法715条 従業員が求職者に行った不法行為について、使用者として賠償責任を負う可能性
不法行為責任 民法709条 企業の管理不備(体制未整備・再発防止不備等)が過失として評価される可能性
契約締結上の過失 判例理論(信義則) 採用・面談等の交渉過程で、相手方の人格権等に配慮すべき義務違反が問題化し得る
※求職者は雇用関係にないため、雇用契約上の「安全配慮義務」を直接根拠とする整理は一般に難しいです。実務では民法709条・715条を中心に、必要に応じて契約締結上の過失が論点となり得ます。

5-3. レピュテーションリスク

  • 採用活動への直接的悪影響(応募者減少)
  • ESG評価・サステナビリティ評価への影響
  • 取引先からの信用低下
  • 従業員のモラル・エンゲージメント低下

6. 施行までのロードマップ(推奨)

2025/06
公布
改正法成立。就活セクハラ対策が「義務化」へ。
2025/12〜
政省令・指針の具体化
制度の細目(対象者・運用)を確定。企業は先行整備が有利。
2026/10(予定)
施行
採用シーズンと重なる可能性。運用開始を前倒し推奨。
施行後
PDCAで継続改善
相談状況・教育・ルールを更新し続ける。
図3:施行を“ゴール”にせず、運用の安定化(PDCA)が勝負。

7. 好事例企業に学ぶ3つのポイント

① 公正採用選考の徹底

応募者の基本的人権の尊重、適性・能力に基づく選考を徹底することが、就活セクハラ防止の土台となります。

② リクルーターの行動指針・マニュアル策定

若手社員がリクルーターとして活動する場合、明確なガイドラインがないと「良かれと思って」の行動がセクハラにつながるリスクがあります。任命・研修・禁止行為・違反時の措置までをワンセットで整備することが重要です。

③ 応募者の個人情報の限定利用

アクセス制限や接触機会の管理(公式チャネル化・ログ確保)は、「発生後対応」だけでなく「そもそも起こさない」設計として非常に有効です。

おわりに:採用は「企業の顔」である

就活セクハラ防止対策は、単なるコンプライアンス対応ではありません。採用活動は企業が社会と接する最前線であり、そこでの対応は企業の価値観そのものを映し出します。

「学生・求職者から信頼される企業であるか」——この問いに対する答えが、採用競争における企業の命運を分けることになるでしょう。

法改正を待たず、今日から対策に着手することを強くお勧めします。

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参考条文・資料


本記事は2025年12月時点の情報に基づいています。施行期日・指針の内容は今後確定します。最新情報は厚生労働省・e-Gov等をご確認ください。

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