売れ筋:三点セット

通報〜初動〜ヒアリング〜認定〜通知〜再発防止まで、調査対応を“型”で標準化

ハラスメント対応は「何から作るか」で迷って時間が溶けます。最短は、必要なアウトプット一式を先に揃えることです。

  • 聞く順番(誘導質問回避)・質問票の叩き台
  • 事実認定/評価(パワハラ・セクハラ・カスハラ横断)
  • 通知文・是正・再発防止(文面とチェック)
  • 社内説明・記録化(監査/後日紛争の備え)

※機密情報の入力範囲・マスキングは社内ルールに従ってください。一般的情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。

【2026年10月1日施行】就活セクハラ防止が“義務”に変わる日|採用担当者・法務が今すぐ始めるべき実務対応チェックリスト

(2026年9月3日時点/施行日確定・求職者等セクシュアルハラスメント防止指針、通達・Q&A公表済み)

この記事でわかること
— 2026年10月1日に義務化される「求職者等セクシュアルハラスメント」対策の法的枠組み
— 一般の求職者、説明会、インターンシップ、教育実習・看護実習、OB・OG訪問の対象範囲
— 面談時間・場所・実施体制・SNS等について10月1日までに整えるべき具体的ルール
— 「1対1面談禁止」「個人LINE禁止」等の自主ルールと法定義務の違い
— 相談窓口、事実確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止までの実務対応

はじめに:2026年10月1日の義務化まで、企業が見直すべき「採用接点」

2025年6月11日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)が公布されました。この改正により、男女雇用機会均等法に新たな第13条が設けられ、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)を防止するための雇用管理上の措置が事業主の法的義務となります。

施行日はすでに2026年(令和8年)10月1日に確定しています。また、2026年2月26日には「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第52号)が公布され、同年4月24日には改正法の施行通達や厚生労働省の解釈Q&Aも公表されています。

したがって、2026年9月時点で企業がすべきことは、制度の詳細が出るのを待つことではありません。採用面接、会社説明会、インターンシップ、OB・OG訪問、教育実習・看護実習、オンライン面談、SNSでの連絡など、自社と求職者等が接触する場面を棚卸しし、10月1日までに実際に機能するルールと相談体制を実装することが重要です。

図0|2026年10月1日に何が変わるか
2026年9月30日まで
  • 労働者に対する職場セクハラは均等法上の措置義務の対象
  • 就活生等に対するセクハラ対策は、従来の指針上「望ましい取組」として位置付け
→
2026年10月1日から
  • 改正均等法13条により求職者等セクシュアルハラスメント対策が義務化
  • 告示52号に基づき、方針・具体的ルール、相談体制、事後対応、プライバシー保護等を実装
図0:施行日は確定済み。2026年9月は「制度待ち」ではなく、施行直前の実装期間です。

ハラスメント対策の実務ツールをお探しですか?

研修資料・規程テンプレート・AIプロンプト集など、すぐに使える実務ツールを公開中

ハラスメント商品ハブ|Legal GPT →

1. 法改正の概要:求職者等セクシュアルハラスメント対策はどう義務化されるのか

1-1. 施行日は2026年10月1日で確定

改正法の施行期日は、施行期日政令(令和8年政令第17号)により2026年10月1日と定められています。「2026年施行予定」「10月1日施行予定」「施行日は今後政令で確定」といった説明は、2026年9月時点では正確ではありません。

また、厚生労働省は2026年2月26日に求職者等セクシュアルハラスメント防止指針(令和8年厚生労働省告示第52号)を公布し、4月24日には施行通達及び「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」等を公表しています。企業が講ずべき措置の骨格はすでに確定しています。

2026年9月時点の実務上の前提
施行日・指針・主要な行政解釈はいずれも確定・公表済みです。法務・人事は「何が決まるか」を待つ段階ではなく、10月1日に実際の運用が開始できるかを点検する段階に入っています。

1-2. 改正均等法13条の制度構造

2026年10月1日施行後の男女雇用機会均等法第13条第1項は、事業主に対し、求職活動等において、当該事業主が雇用する労働者による性的な言動によって求職者等の求職活動等が阻害されないよう、相談体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることを求めています。

制度のポイント
「就活セクハラをしてはいけない」という禁止規定だけを置く制度ではなく、事業主に対して、予防ルール、相談体制、発生後対応、プライバシー保護等をあらかじめ整備することを求める「措置義務」の制度です。
項目 2026年10月1日以降の整理
保護対象 「求職者等」。一般の応募者だけでなく、一定の採用関連活動参加者、インターンシップ参加者、教育実習・看護実習等の実習生を含む
対象となる行為者 当該事業主が雇用する労働者による性的な言動
対象となる場面 採用面接、説明会、インターンシップ、OB・OG訪問等の求職活動等。オンラインやSNS、通常の事業場外で行われる場合も含み得る
事業主の義務 方針・ルールの明確化、相談体制、迅速・適切な事後対応、プライバシー保護等の雇用管理上必要な措置
行為者の範囲を広げすぎないこと
改正均等法13条1項の直接の制度構造は、「当該事業主が雇用する労働者」による性的な言動を対象としています。役員、取引先、顧客、外部委託先の従業員等による行為をすべて同条1項の対象行為と断定するのは正確ではありません。他方、告示52号は、これら第三者による類似の性的言動について相談があった場合にも、同条の措置を参考として適切に対応することを望ましい取組としています。

1-3. 「求職者等」には誰が含まれるのか

今回の改正では、一般的な意味での「就活生」だけが対象ではありません。省令・通達・Q&Aを踏まえると、企業は以下の範囲を前提として採用・受入れプロセスを点検する必要があります。

場面・対象者 取扱い 実務上のポイント
一般の求職者・応募者 対象 求人への応募、採用面接その他、その事業主への就職意思を示して求職活動を行う者
就職説明会・会社説明会参加者 対象となり得る 事業主が行う労働者募集に資する活動への参加者として対象となる
インターンシップ参加者 対象 採用担当だけでなく、実際に受け入れる現場社員との接触を管理する必要がある
OB・OG訪問 対象となり得る 事業主が雇用する労働者を訪問するものなど、採用に資する活動として位置付けられる場合が典型
教育実習・看護実習その他の実習 対象 採用活動そのものではなくても、省令上「求職者等」に含められる範囲がある
オンライン面談・SNS等 対象となり得る 対面であることは要件ではない。オンラインやSNS上のやり取りでも求職活動等との関連性により対象となる
専ら教育目的の社会科見学・企業講話等 原則として対象外 授業の一環として専ら教育目的で実施され、労働者募集に資する活動とはいえないものは区別される
教育実習と社会科見学を同じ扱いにしない
教育実習・看護実習等は省令上明示的に保護対象となる一方、授業の一環として専ら教育目的で行われる社会科見学や企業講話等は、採用に資する活動でなければ同じ整理にはなりません。「学生が会社に来る活動はすべて対象」と単純化しないことが重要です。

内定者はどう考えるか

内定者については、「内定」という名称だけで機械的に判断するのではなく、すでに労働契約が成立しているかが重要です。労働契約が成立している場合には労働者に対する職場セクハラの規律が問題となり、まだ労働契約が成立しておらず求職活動等の段階にある場合には、求職者等として今回の制度の適用関係を検討することになります。

1-4. OB・OG訪問や会食は「会社の外だから対象外」ではない

求職活動等は、会社の会議室や採用面接の時間内だけに限定されません。OB・OG訪問で利用する飲食店、説明会のために借りた会場、大学構内、オンライン会議、SNS等も、実質的に求職活動等の一環であれば対象になり得ます。

懇親会や会食についても、単に「飲食店で行われた」「勤務時間外だった」という理由だけで対象外になるわけではありません。厚生労働省の解釈では、当該労働者の職務との関連性、求職活動等との関連性、労働者と求職者等との関係、参加者、参加・対応の任意性などを踏まえ、実質的に採用活動や実習の延長と評価されるかを判断することになります。

1-5. 告示52号で確定した「4つの措置」の骨格

2026年2月26日に公布された求職者等セクシュアルハラスメント防止指針では、事業主が講ずべき措置の内容が具体化されています。

措置 主な内容
① 方針・具体的ルールの明確化と周知・啓発 求職活動等におけるセクハラを許さない方針を明確化し、行為者への厳正な対処方針を就業規則等に定めて労働者へ周知する。さらに、面談時間・場所・実施体制・SNS等の種類など、求職活動等に関する具体的ルールを定め、労働者及び求職者等へ周知する。
② 相談体制の整備 あらかじめ相談窓口を定め、求職者等に周知し、相談に実質的に対応できる体制を整える。実際に発生したケースだけでなく、発生のおそれがある場合や判断が微妙な場合にも広く相談に対応できる体制が求められる。
③ 発生後の迅速・適切な対応 事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実が確認できた場合には被害者への配慮、行為者への適切な措置、再発防止を行う。事実が確認できなかった場合にも、必要な再発防止措置を講ずる。
④ プライバシー保護等 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者及び求職者等に周知する。また、相談対応への協力や行政上の手続に関して、労働者に対する法定の不利益取扱い禁止に対応した社内ルールを整備する。

1-6. 「相談した求職者への不利益取扱い禁止」の説明には注意

ここは実務上、誤解しやすいポイントです。改正均等法13条2項が明文で禁止しているのは、求職者等からの相談に対応するための措置に協力して事実を述べた「労働者」に対し、解雇その他の不利益取扱いをすることです。

したがって、「求職者本人が相談したことを理由に不採用とすることまで、均等法13条2項が直接一律に禁止している」と説明するのは条文上正確ではありません。

ただし、実務上は採用評価との切分けが重要
相談窓口を整備しても、求職者が「相談したら落とされる」と考えるような運用では制度が実質的に機能しません。相談内容と採用評価を必要以上に結び付けず、相談の申出それ自体を採否の不利益材料として扱わないこと、相談情報へのアクセスを必要最小限に限定することは、相談窓口の実効性、被害者への配慮、公正な採用ガバナンスの観点から重要な自主ルールです。

1-7. 就活パワハラ等は今回の第13条1項の直接の義務対象ではない

今回、改正均等法13条1項の措置義務として新たに法定化されたのは、求職活動等における性的な言動に起因する問題です。

他方、求職活動等におけるパワーハラスメントに類する言動や、妊娠・出産等に関するハラスメントについても、告示52号では事業主が必要な対応を行うことが望ましい旨が示されています。企業の採用ガバナンスとしては、制度ごとに窓口を分断するより、就活ハラスメント全般を受け付けられる仕組みとした方が実務上運用しやすいでしょう。

2. 実態データ:就活セクハラはインターン・OB・OG訪問で特に注意

厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、就職活動等におけるセクシュアルハラスメントの実態が示されています。

図1|数字で見る「就活セクハラ」
インターン中の被害経験率
30.1%
約3人に1人
就職活動中の被害経験率
31.9%
インターン以外
企業の「取組なし」
47.5%
調査時点
図1:被害経験率は約3割。特にインターン受入部署やOB・OG等、採用担当者以外の社員との接点が重要です。

2-1. 被害経験率

場面 被害経験率
インターンシップ中 30.1%
インターンシップ以外の就職活動中 31.9%

2-2. 行為者の属性:「採用担当者だけ研修」では不十分

場面 主な行為者
インターンシップ中 インターン先で知り合った従業員(47.4%)
インターンシップ以外の就職活動中 OB・OG訪問を通して知り合った従業員(38.3%)

この結果からも、対策の対象を人事・採用担当者だけに限定するのは適切ではありません。インターンを受け入れる各部署、OB・OG訪問に対応する若手社員、リクルーター、実習指導担当者など、求職者等と接触する可能性のある現場社員を含めて周知・教育することが重要です。

2-3. 被害内容の例

インターンシップ以外の就職活動中に経験したセクシュアルハラスメントの内容としては、厚生労働省資料で次のような行為が挙げられています。

  • 食事やデートへの執拗な誘い:33.2%
  • 性的な冗談やからかい:28.9%
  • 性的な事実関係に関する質問:26.0%
  • 不必要な身体への接触:25.1%

2-4. 男性被害者も想定した制度設計が必要

同調査では、被害経験率が女性だけに偏っているわけではありません。インターンシップ中では男性32.4%・女性27.5%、インターンシップ以外の就職活動中では男性34.3%・女性28.8%とされています。

「就活セクハラは女性応募者の問題」という前提で相談窓口や研修事例を設計すると、相談しにくい層を生みかねません。性別を問わず利用できる相談体制とする必要があります。

3. 企業の対応状況:47.5%が「取組なし」だった意味

厚生労働省の同調査では、就活生等に対するセクシュアルハラスメントについて、取組を実施していない企業が47.5%でした。

2026年10月1日以降は、単に「当社はセクハラを禁止している」という一般的な方針を掲げているだけでは足りません。求職者等セクシュアルハラスメントについて、指針に沿った措置が実際に講じられているかが問題となります。

採用が常時ない企業も油断できない
通年採用をしていない企業について、常時すべての採用対応を稼働させ続ける必要があるとは限りません。しかし、実際に募集を開始し、説明会や面接等を行う時点では、必要な措置が機能する状態にしておく必要があります。「採用は年に数回だから未整備でもよい」という整理にはなりません。

4. 実務対応チェックリスト:10月1日までに何を整えるか

4-1. 最初に区別する:「法定義務」と「会社独自のリスク管理策」

告示52号は、求職活動等について、面談時間、面談場所、実施体制、やり取りに用いるSNS等の種類などについて具体的なルールをあらかじめ定め、労働者及び求職者等に周知することを求めています。

一方で、「1対1面談は禁止」「個人LINEは全面禁止」「夜間面談は禁止」「会食・飲酒は禁止」といった具体的な禁止ラインまで法令が全国一律に定めているわけではありません。これらは、各社が自社の採用形態やリスクに応じて設定する自主的な統制ルールとして位置付ける必要があります。

項目 法令・指針上の位置付け 実務上の設計例
面談時間のルール 具体的ルールの設定・周知が必要 原則として一定時間帯内。時間外は事前承認制
面談場所のルール 具体的ルールの設定・周知が必要 会社施設、オンライン会議、指定店舗等に限定
実施体制 具体的ルールの設定・周知が必要。複数名対応は指針上の例示 原則2名対応、1対1の場合は事前登録・記録を残す等
SNS等の種類 利用するSNS等について具体的ルールの設定・周知が必要 会社メール・採用管理システム等を公式チャネルとし、私用LINEを禁止する
1対1面談の全面禁止 法令上一律の禁止ではない 会社独自のリスク管理策として採用可能
個人LINE・私用SNSの全面禁止 法令上一律の禁止ではない 証跡確保・私的接触防止のため会社ルールとして禁止することは有力
夜間面談の全面禁止 法令上一律の禁止ではない 時間帯制限や例外承認制を設けることが考えられる
会食・飲酒の全面禁止 法令上一律の禁止ではない 1対1飲酒禁止、飲酒を伴う採用接触禁止等を自主ルール化することが考えられる
重要:禁止事項を増やすこと自体が法令対応ではない
企業がどのルールを選択するか以上に重要なのは、実際の採用活動に即した具体的なルールを定め、従業員と求職者等の双方が認識できる状態にし、違反時に対応できる運用を整えることです。

4-2. 方針策定・規程整備

□ 求職者等セクシュアルハラスメント禁止方針を明文化する

  • 既存のハラスメント防止方針に「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」を明記する
  • 性的な言動を許さないことを、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する
  • 行為者への厳正な対処方針と、その内容を就業規則・服務規律等に位置付ける

□ 求職活動等に関する具体的な行動ルールを策定する

次のようなルールは実務上有効ですが、以下は会社が自主的なリスク管理策として採用する場合の一例であり、法令が一律に同じ内容を義務付けているものではありません。

【求職者等との面談・連絡ルール例】

第○条(面談・連絡に関するルール)

1. 求職者等との面談は、会社が指定又は承認した場所・オンライン会議環境で実施する。

2. 面談は原則として複数名で対応する。
   1対1で実施する場合は、担当者・日時・目的を事前に登録する。

3. 面談は会社が定める時間帯内を原則とする。
   時間外に実施する必要がある場合は、所属長又は採用責任者の事前承認を得る。

4. 求職者等との連絡は、会社メール、採用管理システムその他会社が指定した手段を使用する。
   私用LINE・私用SNS等による個人的な連絡は行わない。

5. 求職者等との私的な会食、飲酒その他採用目的を逸脱する接触を行わない。
   業務上必要な懇親機会を設ける場合は、会社が定める実施要件に従う。

6. 求職者等との連絡・面談について、会社の定める方法により必要な記録を残す。

□ ルールを求職者等にも周知する

社内規程を作っただけでは不十分です。指針は、求職活動等について定めた具体的ルールを労働者だけでなく求職者等にも周知することを求めています。採用サイト、募集ページ、インターン案内、説明会資料、OB・OG訪問の案内メール等で、求職者側からも確認できる状態にしておくことが重要です。

4-3. OB・OG/リクルーター管理

OB・OG訪問は実態調査でもリスクが顕在化している接点です。「社員が個人的に頼まれて会っているだけ」として採用部門の管理外に置くのは危険です。

□ OB・OG/リクルーターの活動ルールを定める

  • 会社公認のOB・OG訪問と私的な接触の区別を明確にする
  • 求職者への連絡方法、面談場所、時間帯、会食・飲酒の取扱いを定める
  • 誰がどの求職者と接触しているか把握できる仕組みを設ける
  • 任命時研修だけでなく、年度ごとの更新研修を行う
  • 違反を把握した場合の報告・活動停止・懲戒等のルールを明確にする

4-4. インターンシップ・実習受入部署への教育

インターンシップでは、人事担当者よりも受入部署の現場社員が長時間参加者と接することがあります。教育実習・看護実習等についても同様です。

□ 採用担当以外の現場社員を教育対象に含める

対象 重点事項
全従業員 求職者等セクシュアルハラスメントを許さない方針、相談窓口、違反時の対応
採用担当者 対象範囲、面談ルール、相談を受けた場合のエスカレーション、公正な採用評価
OB・OG/リクルーター SNS・私的連絡、1対1接触、会食、採用権限を示唆する言動等のリスク
インターン受入部署 日常的な接触、懇親会、勤務外の連絡、指導場面での言動
教育・看護等の実習指導担当者 実習生も制度上の保護対象となること、評価権限と私的関係を混同しないこと
管理職 部下が求職者等と接触している場合の管理、相談発生時の初動
「全員に集合研修」が唯一の法定手段という意味ではありません
法令・指針上重要なのは、方針や対処内容が管理監督者を含む労働者に実効的に周知・啓発されていることです。eラーニング、社内通知、研修、マニュアル等を組み合わせ、自社の規模や接触リスクに応じた方法を採ることができます。

4-5. 求職者等が使える相談窓口を整備・周知する

相談窓口は、社員向け内部通報制度が存在するだけでは足りません。求職者等が実際にアクセスでき、相談できる窓口であることが必要です。

□ 求職者等から見える場所に窓口を掲載する

  • 採用サイト
  • 求人・インターン募集ページ
  • 会社説明会資料
  • 実習受入案内
  • OB・OG訪問の案内
  • 応募者向けメール等

□ 名目だけではなく実質的に対応可能な窓口にする

担当者を定め、受付後の記録、事実確認、関係部署への連携、緊急時対応まで処理できる体制が必要です。また、明確なセクハラと断定できるケースだけではなく、発生のおそれがある場合や、セクハラに当たるか判断が微妙な場合にも広く相談を受けられる状態にしておくことが重要です。

□ 採用担当から独立した窓口にするか検討する

相談窓口を人事・採用部門から独立させること自体が法律上の一律要件ではなく、採用担当者が窓口を担当することも可能です。ただし、求職者にとっては「採用担当に相談すると選考に影響するのではないか」という心理的障壁が生じやすいため、法務・コンプライアンス部門や外部窓口を併用することは有力な実務設計です。

図2|相談対応と採用評価を切り分ける
① 求職者等から相談
専用メール、フォーム、電話、外部窓口等。相談者がアクセスできることが前提。
→
② 受付・一次評価
緊急性、二次被害リスク、証拠保全の必要性を確認。相談記録は採用評価資料と分離。
③ 迅速・正確な事実確認
求職者、行為者、必要な第三者から聴取し、メール・チャット等の客観資料を確認。
→
④ 措置・再発防止
被害者への配慮、行為者への措置、必要なルール改定・研修。確認できない場合も再発防止を検討。
図2:採用部門と相談対応部門の分離は法定の一律要件ではありませんが、相談の実効性を高めるガバナンス策として有効です。

4-6. 発生時対応フローを整備する

【求職者等セクシュアルハラスメント発生時の対応フロー】

① 相談受付
 ・相談者の安全・心理状態を確認
 ・相談内容を記録
 ・緊急の接触停止等が必要か判断

② 証拠保全
 ・会社メール、採用管理システム、チャット等の記録を保存
 ・関係者による削除・改変を防止

③ 事実確認
 ・相談者、行為者、必要な第三者から迅速に聴取
 ・先入観を避け、客観資料と供述を突合

④ 被害者への配慮
 ・行為者との接触回避
 ・面談担当者の変更等を検討
 ・相談内容と採用評価を必要以上に結び付けない

⑤ 行為者への措置
 ・事実認定に応じ、就業規則等に基づく措置を検討
 ・採用活動、OB・OG活動、インターン受入業務等から外すことも検討

⑥ 再発防止
 ・ルール、研修、管理体制を見直す
 ・事実を確認できなかった場合でも必要な再発防止策を検討

⑦ 記録・報告
 ・必要な範囲で法務・コンプライアンス等へ報告
 ・相談記録・調査記録の保存ルールに従って管理

4-7. 採用活動のログ・証跡をどう残すか

法令がすべての面談について録音・録画を義務付けているわけではありません。しかし、OB・OG訪問やSNS連絡を個人任せにすると、事実確認が必要になったときに証拠が残っていないという問題が起こります。

□ 公式チャネルを定める

  • 会社メール
  • 採用管理システム
  • 会社指定のオンライン会議システム
  • 会社管理のSNSアカウント等

□ 接触記録の管理方法を決める

  • OB・OG訪問の日付・担当者・参加者
  • インターン受入担当者
  • 面談・懇談の日時・場所
  • 会社が保存すべき連絡履歴
  • 保存期間、閲覧権限、削除手続
録音・録画を一律に義務としない
面談の録音・録画自体は、求職者等セクシュアルハラスメント防止措置として法令が一律に義務付けているものではありません。実施する場合は、目的、対象となる面談、保存期間、アクセス権、求職者への説明等を整理した上で運用する必要があります。

4-8. 求職者の個人情報管理を採用ガバナンスと一体で見直す

OB・OGや現場社員が、採用担当者から受け取った応募者の携帯番号・メールアドレス等を私用端末に保存し、採用終了後も利用できる状態は避けるべきです。

□ 次の点を確認する

  • 応募者情報へのアクセス権を必要な担当者に限定しているか
  • 私用端末への保存・転送ルールが定められているか
  • 採用目的を離れた私的利用を禁止しているか
  • OB・OG/リクルーターの活動終了後に不要なアクセス権を停止しているか
  • 相談記録へのアクセスを採用評価担当者に無制限に与えていないか

4-9. 採用代行会社・外部委託先も契約で統制する

採用代行会社(RPO)等の従業員は、自社の「雇用する労働者」とは限らないため、改正均等法13条1項の行為者範囲と外部委託先の管理を同一視するべきではありません。

しかし、委託先スタッフが応募者と直接接触する以上、セクハラ、個人情報漏えい、証跡喪失、レピュテーションリスクは自社の採用活動にも波及します。契約・運用上、禁止行為、研修、使用可能な連絡手段、事故報告、調査協力、記録保存、再委託等を定めておくことが有効です。

4-10. 施行直前・最終チェックリスト

確認 2026年10月1日までのチェック項目
□求職者等セクシュアルハラスメントを許さない方針を明文化した
□行為者への厳正な対処方針を就業規則・服務規律等に位置付けた
□面談時間について具体的ルールを定めた
□面談場所について具体的ルールを定めた
□面談・接触の実施体制について具体的ルールを定めた
□使用可能なSNS・連絡手段について具体的ルールを定めた
□これらの具体的ルールを労働者と求職者等の双方に周知できる状態にした
□求職者等が利用できる相談窓口を指定した
□採用サイト等で相談窓口を求職者等に周知した
□相談受付後の迅速・正確な事実確認手順を整備した
□被害者への配慮・行為者への措置・再発防止の手順を定めた
□相談者・行為者等のプライバシー保護ルールを整備・周知した
□調査協力等をした労働者への不利益取扱い禁止を社内ルールに反映した
□相談情報と採用評価情報を適切に切り分ける運用を定めた
□採用担当者だけでなく、OB・OG、リクルーター、インターン・実習受入部署にも周知・教育した
□採用活動の連絡履歴・接触記録・個人情報の管理方法を確認した
□RPO等の委託先に必要な契約上・運用上の統制を及ぼした

就活セクハラ防止の実務ツール

研修資料テンプレート、相談窓口運用マニュアル、行動指針サンプルなど、今すぐ使える実務ツールを公開しています。

ハラスメント商品ハブを見る →

5. 法的リスク:行政上の措置と民事責任を分けて考える

5-1. 行政上の措置

2026年10月1日施行後の改正男女雇用機会均等法では、求職者等セクシュアルハラスメント防止措置義務に違反した場合、直ちに一定額の「罰金」が科されるという制度ではありません。行政上の履行確保措置として、報告徴収、助言・指導・勧告、公表等の仕組みが置かれています。

措置 概要
報告徴収 厚生労働大臣は、法施行のため必要があると認める場合、事業主に報告を求めることができる
助言・指導・勧告 法施行に関して必要があると認める場合、事業主に対して助言、指導又は勧告を行うことができる
公表 改正法13条1項・2項等に違反し、勧告を受けたにもかかわらず従わなかった場合、厚生労働大臣がその旨を公表できる
過料 法に基づく報告をしなかった場合、又は虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料の対象となる
「就活セクハラが1件発生したら直ちに企業名公表」ではありません
公表は、法令上の義務違反、行政による勧告、その勧告に従わないことという制度構造を踏まえて説明する必要があります。また、20万円以下の過料は、セクハラ行為そのものに直接科されるものではなく、法に基づく報告をしない、又は虚偽報告をする場合について定められています。

5-2. 民事上の責任

行政上の措置とは別に、具体的な行為によって求職者等に損害が生じた場合には、民法上の責任が問題となる可能性があります。ただし、責任の成立は行為内容、職務との関連性、会社の対応、損害、因果関係等によって個別に判断されるため、「就活セクハラがあれば常に会社が賠償責任を負う」と断定することはできません。

責任類型 主な根拠 実務上の整理
行為者本人の不法行為責任 民法709条 性的な言動が違法な権利・利益侵害と評価され、故意・過失、損害、因果関係等の要件を満たす場合に成立し得る
使用者責任 民法715条 従業員の不法行為が「事業の執行について」行われたと評価される場合など、同条の要件を満たせば使用者責任が成立し得る
企業自身の不法行為責任 民法709条 予見可能な危険を放置した、相談後に必要な対応を怠った等、企業自身の過失と損害との因果関係が認められる場合に問題となり得る
採用過程における信義則上の責任 事案ごとの法的評価 採用・契約締結過程での具体的関係によって信義則上の義務が問題となる場合はあるが、一律に成立する責任類型として扱うべきではない
求職者に「雇用契約上の安全配慮義務」が当然に直接適用されるわけではない
一般の求職者は、まだ事業主との労働契約関係にないのが通常です。そのため、雇用契約上の安全配慮義務を当然の直接根拠とする説明は適切ではありません。民事責任については、民法709条・715条等を中心に、個別事案の契約関係や採用過程の事情を踏まえて検討する必要があります。すでに労働契約が成立した内定者等については別途検討が必要です。

5-3. レピュテーション・採用リスク

  • 応募者・内定候補者の離脱
  • SNS等を通じた採用ブランドへの影響
  • 大学・学校との採用関係への悪影響
  • ESG・人権対応に対する評価低下
  • 既存従業員のエンゲージメント・コンプライアンス意識の低下

法的責任の有無が最終的に確定する前であっても、不十分な初動や相談者への不適切な対応が企業の信用を大きく損なうことがあります。法務・人事にとっては、法令対応と危機管理を分けずに設計することが重要です。

6. 2026年9月時点の施行直前ロードマップ

2025/06/11
改正法公布
令和7年法律第63号公布。求職者等セクハラ対策の義務化が決定。
2026/02/26
指針公布
令和8年厚生労働省告示第52号で、企業が講ずべき具体的措置を明確化。
2026/04/24
通達・Q&A
対象者、対象場面、具体的ルール、相談体制等の行政解釈が公表。
2026/09/03
施行直前点検
規程だけでなく、採用サイト、窓口、研修、OB・OG、インターン運用まで実装確認。
2026/10/01
施行
求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が法的義務に。
施行後
継続点検
相談事例、接触ログ、研修効果、ルール違反を踏まえて運用を更新。
図3:2026年9月は制度設計の時期ではなく「本番運用できるか」を確認する時期です。

施行後も最低限確認したい項目

  • 新任採用担当者・新任リクルーターへの研修が漏れていないか
  • インターン受入部署が変わった場合に事前説明を行っているか
  • 相談窓口の連絡先が古くなっていないか
  • 求職者向け周知ページが採用サイトから実際に到達できるか
  • 私用SNS等によるルール外の接触が起きていないか
  • 相談事案から得られた原因分析をルールや研修に反映しているか
  • 採用活動終了後の応募者情報・アクセス権が適切に整理されているか

7. 実務上の重要ポイント:採用ガバナンスとして設計する

① 公正採用選考と相談対応を両立させる

求職者等から相談があった場合、相談内容がそのまま採用評価担当者に流れ込み、採否判断に影響するような構造は避けるべきです。相談対応者と採用評価担当者の情報アクセスを整理し、必要最小限の共有にとどめることが、求職者の安心と調査の公正性の双方につながります。

② リクルーター・OB・OGを「採用担当外」として放置しない

採用部門が統制すべき対象は、正式な面接官だけではありません。特にOB・OG訪問やインターンシップでは、現場社員の言動が企業の採用活動そのものとして受け止められます。

任命、周知・教育、接触ルール、公式連絡手段、記録、違反時の措置までを一つの運用として整えることが重要です。

③ 個人情報管理と証跡管理をセットで考える

証跡を残すために情報を無制限に保存するのも、個人情報保護の観点から適切ではありません。一方、何も残さなければ相談発生時に事実確認が困難になります。

「誰が、何を、どの目的で、どの期間保存し、誰が閲覧できるか」を決めることが重要です。採用管理システム等に情報を集約し、個人端末・個人SNSへの分散を防ぐことは、セクハラ防止と個人情報管理の双方に有効です。

おわりに:10月1日までに「規程」ではなく「採用現場」を変える

2026年10月1日から、求職者等セクシュアルハラスメント防止措置は事業主の法的義務になります。

しかし、法務部が規程を改定し、人事部が研修資料を配布しただけでは、実際のリスクは十分に下がりません。問題が起こりやすいのは、OB・OG訪問、インターンシップ、実習、懇親会、個人的なSNS連絡など、採用担当者の視界から外れやすい接点です。

2026年9月の施行直前段階で確認すべきなのは、少なくとも次の5点です。

  • 求職者との面談・連絡ルールが具体化されているか
  • そのルールを従業員と求職者の双方が知ることができるか
  • 求職者が実際に使える相談窓口が稼働しているか
  • OB・OGやインターン受入部署まで教育・統制が及んでいるか
  • 相談が起きたとき、採用評価から切り分けて迅速に調査・対応できるか

就活セクハラ対策を「採用担当者のマナー教育」にとどめず、採用活動全体のガバナンス、相談体制、証跡管理、個人情報管理まで含めた仕組みとして整備することが、2026年10月1日の義務化対応の核心です。

ハラスメント対策の実務ツールを探す

就活セクハラ・カスハラ・パワハラなど、研修資料・規程テンプレート・AIプロンプト集を公開中

ハラスメント商品ハブ|Legal GPT →

参考法令・一次資料


本記事は2026年9月3日時点の法令、厚生労働省告示・通達・Q&Aその他の公的資料に基づいています。求職者等セクシュアルハラスメント防止措置義務は2026年10月1日に施行されます。具体的な事案については、行為者の地位、求職活動等との関連性、労働契約の成立状況その他の個別事情により法的評価が異なる場合があります。