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通報〜初動〜ヒアリング〜認定〜通知〜再発防止まで、調査対応を“型”で標準化

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※機密情報の入力範囲・マスキングは社内ルールに従ってください。一般的情報提供であり、個別案件の法的助言ではありません。

就活セクハラ対策|OB・OG訪問・リクルーター・SNSの禁止ルールと統制設計【法務・人事向け】

(2026年2月時点/改正均等法の施行日は2026年10月1日の方向で制度設計中)

本記事は、就活セクハラ対策を「OB・OG訪問」「リクルーター面談」「SNS接触」の3つの事故接点に絞って、法務・人事向けに統制設計を解説する続編です。禁止行為一覧と代替ルール、リクルーター任命制、公式チャネル化、違反時措置、RPO統制、就業規則への落とし込みまで一気通貫で整理します。

📌 この記事でわかること
✅ 就活セクハラの「事故接点」はOB・OG訪問・リクルーター・SNSに集中している
✅ リクルーター任命制の作り方(任命条件・研修・誓約書)
✅ OB・OG訪問の社内ルール設計(会社関与の有無を問わない統制)
✅ SNS・マッチングアプリ経由接触の禁止ルールと例外管理
✅ 禁止行為一覧 × 代替ルール(現場配布用チェックリスト)
✅ 面談記録テンプレート・就業規則への落とし込み例
✅ 違反時の措置メニューと導入ロードマップ
📖 本記事の位置づけ
本記事は、法改正の全体像を解説した前編(改正均等法13条と企業の実務対応)続編(実務設計編)です。改正により、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主に雇用管理上の措置が求められる制度が整備されました(男女雇用機会均等法第13条第3項に基づく指針で具体的内容が示される予定)。法的義務の概要は前編をご参照ください。本記事では「事故が起きやすい接点をどう封じ込めるか」に焦点を絞ります。

はじめに:採用担当だけを見ていても、就活セクハラは防げない

改正男女雇用機会均等法により、求職活動等におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主が雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されます。具体的な措置の内容は、同法第13条第3項に基づく指針(厚生労働省告示)で示される予定であり、指針骨子案では「面談等を行う際のルールをあらかじめ定めること」等が明記されています(2026年10月1日施行予定)。措置義務の概要は前編で解説しました。

しかし、ここで見落とされがちなのが「事故が起きる場所」です。厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」が示すのは、行為者の多くが面接官ではなくOB・OG訪問で知り合った従業員やインターン先の一般社員だという事実です。

つまり、採用部門だけにルールを設けても、統制が及ばない「ブラックボックス」が大量に残ります。本記事では、このブラックボックスをどう封じ込めるか——OB・OG訪問、リクルーター、SNS接触という3つの事故接点に絞って、法務・人事がすぐ着手できる統制設計を解説します。

1. なぜOB訪問・リクルーター・SNSが危ないのか(事故接点マップ)

図1|行為者の属性(厚労省R5実態調査) 就活セクハラ行為者の属性別割合 0% 25% 50% 75% 100% インターン先従業員 47.4% OB・OG訪問先従業員 38.3% 採用面接担当者 19.0% 企業説明会担当者 15.4% ← 上位2つで 計85.7% ※ 複数回答のため合計は100%を超える場合があります

※ 数値は厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」(求職活動等におけるセクハラ被害に関する集計)に基づく。

図1:最多の行為者は「採用担当者」ではなく「現場の従業員」。上位2属性の回答割合は合計85.7%(複数回答)。

このデータが示す構造は明快です。就活セクハラの多くは「採用担当の面接室の中」ではなく、選考外の”半公式”接点で起きています。

図2|事故接点マップ:リスク × 視認性マトリクス 事故接点マップ:発生リスク × 人事の視認性 発生リスク(高 →) 人事の視認性(高 →) 🔴 最重点対策ゾーン(本記事の対象) 🟡 監視強化ゾーン 🔵 要ルール化 🟢 統制済(継続監視) OB・OG 訪問 38.3% SNS DM リクルーター 面談 インターン シップ 47.4%(最多) 説明会後 懇親 公式面接 (統制済が多い)
図2:左上の「赤ゾーン」=リスクが高いのに人事から見えない。本記事はこのゾーンに集中して統制設計を解説。

指針骨子案(2025年10月27日・第85回雇用環境・均等分科会資料)でも、事業主が講ずべき措置として「面談等を行う際のルールをあらかじめ定めること」が明示されています。これは、まさに本記事が扱う「接点ごとの運用ルール設計」を指しています。

💡 インターンシップのリスクについて
インターンは行為者発生率47.4%と数値上は最大ですが、社内で実施されることが多く、人事・管理職の目が届きやすい構造です。一方、OB・OG訪問やSNS接触は人事からの「視認性」が極端に低いため、統制の設計難易度が高くなります。本記事ではこの「見えにくい事故接点」に焦点を絞り、インターン中のハラスメント対策は別途整理します。

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2. リクルーター任命制の作り方(任命条件・研修・誓約書)

2-1. なぜ「任命制」が必要なのか

「誰でも求職者と接触してよい」状態では統制が効きません。任命・教育・違反時措置までをワンセットにして初めて、指針が求める「面談ルールの事前整備」が実効化します。

図3|リクルーター任命制フロー 1 候補者選定 部門推薦+人事審査 懲戒・注意歴なし 2 研修受講 セクハラ定義・禁止行為 理解度テスト合格が条件 3 誓約書提出 禁止行為・公式チャネル義務 違反時の任命解除を明記 4 任命・ID付与 管理台帳に登録 公式メール等チャネル付与 5 活動・モニタリング 面談記録・活動報告の定期提出 異常検知時はヒアリング 6 更新/解除 年度更新制 違反時は即時解除+懲戒 年度更新 →①に戻る
図3:「任命→研修→誓約→活動→監督→更新」の一気通貫が実効性の鍵。年度更新で質を維持。

2-2. 誓約書に入れるべき条項

条項内容(例)
禁止行為の確認 性的な言動、私的連絡先交換、酒席への誘い、1対1密室面談等の禁止を列挙
公式チャネル利用義務 会社付与のメール・ツールのみを使用し、ログを残すこと
記録保全協力義務 面談記録の提出、有事の調査協力
守秘義務 応募者の個人情報を採用目的以外に使用しないこと
違反時の任命解除 違反が確認された場合、任命を即時解除し、就業規則に基づく懲戒対象となり得ること
💡 実務ポイント
誓約書は「抑止力」としても機能します。署名プロセスそのものが「会社は本気で管理している」というメッセージになるため、対外的な説明責任(指針の「方針の明確化・周知」)にも資します。

3. OB・OG訪問の社内ルール設計

3-1. OB・OG訪問で事故が起きやすい理由

OB・OG訪問は「選考外」の位置づけであるがゆえに、場所・時間・連絡手段が本人に委ねられがちです。その結果、1対1・業務時間外・私的連絡→プライベートへの発展というエスカレーションが容易に起こります。

図4|OB・OG訪問のBefore → After ❌ 統制なし(Before) 個人LINEで連絡を取る 居酒屋で1対1の面談 深夜のDMで「個人的に会おう」 面談記録なし 選考優遇を匂わせる発言 → 事実確認不能・水掛け論に ✅ 統制後(After) 会社メール/採用システムで連絡 社内会議室またはオンライン 業務時間内・ログ付き 面談後に所感記録を提出 複数名対応+事前承認制 → 証拠保全・抑止・迅速対応が可能に
図4:ルール未整備のOB訪問は就活セクハラの最大の温床。「見える化」で抑止と証拠保全を同時に実現。

3-2. OB・OG訪問ルールの最低ライン

ルール項目具体的な運用
事前申請制会社(人事・採用)経由で申請。勝手に引き受けない
場所の指定原則オンラインまたは社内会議室。外部の場合は人事承認
時間の制限業務時間内。夜間・深夜帯は禁止
酒席の禁止酒席を伴う面談・懇親は原則禁止。やむを得ない場合は複数名同席必須
1対1密室の禁止原則複数名対応。例外時は事前承認制
私用連絡先交換の禁止私用携帯番号・個人SNS・LINEの交換禁止。公式チャネルのみ
面談後の記録提出所感テンプレートに記入し、人事へ提出(保管期間を設定)

3-3. 会社主催でないOB訪問にも適用できるか

「学生が個人的に連絡してきた場合はどうするのか」という論点があります。法的には「会社の関与がない場面」では使用者責任(民法715条)の成否が争点となり得ます。

しかし、実務上は「従業員の行為規律」として統制する設計が合理的です。判例理論である「契約締結上の過失(信義則上の配慮義務)」の観点からも、採用選考という交渉過程において、会社は応募者の人格権を適切に保護すべき義務を負っていると整理されます。非公式な接点であっても、従業員がその身分を利用して接触する以上、会社が統制を放棄することは法的リスク(民法709条・715条)を放置することと同義です。

具体的には、就業規則の服務規律・ハラスメント防止方針に「求職者等との接触ルール」を組み込み、会社主催であるか否かを問わず適用する構成にします。これにより、「会社が知らなかった」という言い訳が通用しない体制が作れます。

4. SNS・マッチングアプリ経由接触の禁止ルールと例外管理

多くの記事がSNSリスクを一言で済ませていますが、実際にはここが最も「見えない事故」が起きやすい接点です。ログが残りにくく、深夜帯の接触も容易なため、独立した章として設計する価値があります。指針骨子案でも、求職活動等の対象として「事業主が雇用する労働者が通常就業している場所で行われるものに限らない」ことが明記されており、SNS等のオンライン接触も当然に射程に入ります。

4-1. 禁止対象を明確にする

チャネル判定理由
Instagram / X 個人アカウント禁止ログが会社に残らない、プライベート化しやすい
LINE 個人アカウント禁止最も私的接触に発展しやすいツール
就活マッチングアプリ(私的利用)禁止会社関与なしの接触は統制不能
DM全般(私用ツール)禁止深夜接触・証拠散逸のリスク大
会社公式SNSアカウント(広報)許可公式チャネルとしてログ管理可能
採用イベント告知(公式のみ)許可一方向の情報発信であれば低リスク

4-2. SNS接触のエスカレーション構造

図5|SNS接触のエスカレーションパス(典型パターン) 低リスク 高リスク 📱 採用イベントで 名刺交換 (ここまでは正常) 💬 「LINEの方が 楽だよ」 (私的チャネルへ移行) 🌙 深夜帯のDM 個人的な話題 (業務関係が希薄に) ⚠️ 食事・飲酒 身体的接触 (セクハラ事案化) 被害 発生 訴訟リスク 🛡️ 統制の介入ポイント:「私的チャネルへの移行」を禁止すれば、エスカレーション自体が起きない 公式チャネル義務化+例外の3条件(承認・ログ・報告)で初期段階で遮断
図5:SNS接触は「名刺交換→私的チャネル→深夜DM→身体的接触」とエスカレートする。介入は「Step 2の前」が最も効果的。

この図が示すとおり、エスカレーションの起点は常に「私的チャネルへの移行」です。ここを遮断すれば、以降のステップはそもそも起きません。

4-3. 例外管理の設計(ゼロか100かにしない)

完全禁止は現実的でない場面もあります。例外を認める場合は、以下の3条件をセットにします。

  • 事前承認:上長または人事の書面承認
  • ログ保存:やり取りのスクリーンショットまたはエクスポートを共有フォルダに保管
  • 事後報告:接触内容を面談記録テンプレートに準じて報告

4-4. SNS禁止ルールの社内周知文(短文例)

【社内通知文(例)】
件名:求職者等とのSNS接触に関するルールについて

従業員各位

求職者等(就活生・インターンシップ生等)との接触について、
以下のとおりルールを定めます。

1. 私用のSNS(LINE、Instagram、X等)での求職者等との
   連絡・やり取りは禁止します。
2. 求職者等との連絡は、会社が指定する公式チャネル
   (採用メール、採用システム等)を使用してください。
3. 例外的に私用ツールの使用が必要な場合は、
   事前に人事部の承認を得てください。
4. 本ルールに違反した場合、就業規則に基づく
   懲戒の対象となり得ます。

人事部 ○○

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5. 禁止行為一覧(採用現場向けチェックリスト)

「やってはいけないこと」だけを並べても現場は動きません。「では、どうすればいいのか(代替ルール)」をセットにすることで、配布資料としてそのまま使えます。

禁止行為 なぜ危険か 代替ルール
私的連絡先の交換 私的接触→エスカレーションの起点 会社メール/採用システムで連絡
夜間・深夜帯の面談 密室・酒席への発展リスク 業務時間内+社内またはオンライン
酒席を伴う懇親 判断力低下、身体的接触の温床 昼間のカフェ/会議室/オンラインに置換
1対1の密室面談 目撃者なし、水掛け論リスク 複数名対応 or オープンスペース
容姿・恋愛に関する言及 性的な言動の典型例 職務適性に関する質問に限定
選考優遇の示唆 優越的立場の利用=パワハラにもなり得る 選考プロセスは人事に集約
面談後の個別DM継続 業務上の必要性なし、私的関係化 フォローは公式チャネルで一括対応
候補者情報の私的保存 個人情報漏洩+目的外利用リスク 採用システム内のみ保存。私用端末禁止
非公式ツールでの面談 ログが残らず、事実確認が困難 会社指定のWeb会議ツールのみ使用
⚠️ 「禁止だけ」で終わらないことが差別化のポイント
現場の不満は「じゃあどうすればいいの?」に集中します。禁止行為と代替ルールの両方を提示することで、運用が回ります。研修資料としてもそのまま活用可能です。

6. 公式チャネル化の設計(ログが残る採用運用)

6-1. 公式チャネル化の対象

「ログが命」は、有事の事実確認(指針の「迅速・正確な事実確認」)において決定的です。以下の4つの接点を公式チャネルに集約します。

接点公式チャネル(例)ログの種類
日程調整採用メール/採用管理システムメール履歴、システムログ
面談実施会社指定Web会議ツール/社内会議室録画・録音(実施する場合は事前告知・同意取得)、入退室記録
フィードバック採用システム経由の一括連絡送信ログ
相談受付専用フォーム/外部窓口受付記録、対応ログ
⚠️ 個人情報保護法への配慮(プライバシーポリシーの改定を忘れずに)
ログの保存や面談記録の作成を行う場合、採用候補者向けのプライバシーポリシーに「ハラスメント防止および事実確認のため、面談内容の記録(録音・録画・ログ等を含む)を取得・利用する場合がある」旨を明記する必要があります。録音・録画、SNSログ、面談記録には、通常、応募者を識別し得る情報が含まれるため、個人情報(又は個人関連情報)としての取扱いが問題となります。実装前に必ず自社のプライバシーポリシーを確認・改定してください。

6-2. 採用システムがない会社向けの最低構成

中小企業で専用システムがなくても、以下の最低4点セットでログ体制は構築できます。

  • 共通メールアドレス(例:saiyo@example.co.jp):全やり取りをCCで共有
  • Googleフォーム等の相談受付フォーム:匿名受付対応も可
  • 共有フォルダ:面談記録・誓約書を一元管理
  • 面談記録テンプレート:日時・場所・参加者・内容を定型化(→ 次節参照)

6-3. 面談記録テンプレート(簡易版)

「ルール」だけでなく「運用証跡の型」まで整備することで、有事の事実確認が格段に楽になります。以下は最低限の記録項目です。

項目記載例
面談IDOB-2026-001(連番管理)
実施日・時間2026/XX/XX 14:00〜14:45
実施方法オンライン(Zoom)/社内会議室A
参加者(社員)○○部 △△(リクルーターID: R-012)
参加者(求職者)□□大学 ××氏
面談目的OB・OG訪問/リクルーター面談/インターン事前説明
話題概要業務内容の説明、配属部門の雰囲気、キャリアパス等
禁止事項該当の有無なし / あり(→ 詳細を特記事項に記載)
特記事項(自由記入)
記録者・提出日△△ 2026/XX/XX提出

7. 違反時の措置(任命解除・懲戒・再研修)

7-1. 違反のレベル分け

図6|違反レベルと措置の対応関係 1 軽微 該当行為 • 私用連絡先を教えた • 報告遅延 措置メニュー 注意指導 再研修 始末書 任命は継続 2 中度 該当行為 • 時間外の私的接触 • 不適切な言動(性的冗談等) 措置メニュー 任命解除 厳重注意 減給検討 3 重大 該当行為 • 身体的接触・性的言動 • 選考優遇の示唆・脅迫 措置メニュー 即時解除 懲戒処分 被害者対応+再発防止 措置の重さ →
図6:違反レベルに応じて措置を段階的に設計。「軽微」でも放置せず再研修等を行うことで、エスカレーション自体を防ぐ。
レベル該当行為(例)措置メニュー
軽微 ルール逸脱(私用連絡先を教えた等)、報告遅延 注意指導、再研修、始末書
中度 時間外の私的接触、不適切な言動(性的冗談等) リクルーター任命解除、厳重注意、減給等の検討
重大 身体的接触、性的言動、選考優遇の示唆、脅迫的言動 即時任命解除、懲戒処分(出勤停止・降格・諭旨解雇等)、被害者対応

7-2. 被害者(求職者)へのフォロー

違反が確認された場合、行為者への措置だけでは不十分です。被害者への対応も指針が求める義務の一部です。

  • 会社としての謝罪(責任者名義)
  • 選考プロセスへの影響がないことの説明
  • 相談窓口の再案内、外部支援リソースの情報提供
  • 再発防止策の概要説明(詳細は守秘の範囲で)

7-3. 相談窓口の独立性と報復防止

相談・通報窓口は、採用実務ラインとは別の受付経路(人事本部、コンプライアンス窓口、外部窓口等)を設け、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を明記して周知します。採用担当部門が窓口を兼ねると、求職者から見て「加害側に相談する」構造になり、通報のハードルが著しく上がるためです。

⚠️ 実務上の注意
指針骨子案でも「相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること」が措置内容に含まれています。求職者向けにも同趣旨の記載を採用サイト・募集要項等に掲載し、「相談しても選考に不利にならない」ことを明示してください。
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8. 委託先(RPO・エージェント)の統制

採用代行(RPO)やエージェントのスタッフも応募者と直接接触します。「外部スタッフが起こした事故の法的責任は、最終的に委託元企業にも及び得る」という点を忘れてはなりません(民法715条の使用者責任類推、委託先選定・監督上の過失)。

8-1. RPO契約に盛り込むべき条項

条項カテゴリ具体的な内容
禁止行為の明示自社のハラスメント防止方針と同等の禁止行為を契約に明記
教育義務委託先スタッフへのハラスメント防止教育の実施を義務付け
報告義務事案発生時の即時報告フロー(委託先→委託元人事)
調査協力義務事実確認・証拠保全への全面的協力
再委託制限再委託先にも同等水準の統制を及ぼすことの確認
契約解除条項重大違反時の即時解除権

9. 就業規則・服務規律への落とし込み

本記事で解説したルールを実効化するには、就業規則・ハラスメント防止規程・懲戒規程への組み込みが不可欠です。社内通知だけでは「運用ルール」にとどまり、違反時の懲戒処分の根拠として弱くなります。

9-1. 改定が必要な規程と追記ポイント

規程追記ポイント
服務規律 「求職者等との接触に関する遵守事項」を追加。私的連絡先交換禁止、公式チャネル利用義務等を明記
ハラスメント防止規程 対象範囲に「求職者等(就活生・インターンシップ生等)」を明記。「職場」に限定しない表現への修正
懲戒規程 違反行為の例示に「求職者等への私的連絡先交換」「深夜面談」「性的言動」等を追加
個人情報取扱規程 採用候補者情報のアクセス権限、保管場所、保存期間、目的外利用禁止を明確化

9-2. 服務規律の条文例

【服務規律 追記例】
第○条(求職者等との接触に関する遵守事項)
従業員は、求職者等(採用選考、インターンシップ、OB・OG訪問等の
場面で接触する学生その他の者をいう。)との接触にあたり、
次の各号に掲げる事項を遵守しなければならない。
(1) 求職者等との連絡は、会社が指定する公式チャネルを使用すること。
(2) 求職者等との面談は、会社が指定した場所及び時間帯で行うこと。
(3) 求職者等との間で、個人的な連絡先の交換を行わないこと。
(4) 求職者等に対し、性的な言動その他人格を害する行為を行わないこと。
(5) 前各号のほか、会社が別途定めるハラスメント防止方針を遵守すること。

10. すぐ使える導入ロードマップ(30日/60日/90日)

図7|90日導入ロードマップ Day 1 Day 30 Day 60 Day 90 📢 周知・暫定運用 ☐ 禁止ルール策定 ☐ 全社通知の発出 ☐ 相談窓口の対象拡大 (求職者等を含む) ☐ 採用サイトに窓口情報掲載 ☐ SNS接触禁止の暫定通知 🎯 最低限の抑止力を即日確保 📋 任命制・研修 ☐ リクルーター任命制導入 ☐ 研修コンテンツ作成 ☐ 研修の実施 ☐ 誓約書の取得 ☐ 面談記録テンプレ運用 🎯 統制の仕組みを構築 🔄 定着・規程整備 ☐ 就業規則・ハラスメント規程改定 ☐ RPO契約の見直し ☐ プライバシーポリシー改定 ☐ モニタリング開始 ☐ 初回PDCAレビュー 🎯 制度として定着・法的基盤
図7:施行を待たず、90日で運用の骨格を固める。Phase 1は「即日着手」が鉄則。
⚠️ 施行日(2026年10月1日予定)との関係
第87回労働政策審議会雇用環境・均等分科会(2025年11月17日)の資料では、施行日を2026年10月1日とすることが示されており、この日付での施行が有力です。2027年卒の採用活動(2026年以降)と施行時期が重なる可能性が高いため、施行前の先行整備が実務上合理的です。施行日は政令で最終確定されるため、最新情報はe-Gov・厚生労働省サイトで確認してください。

まとめ:「採用部門のルール」ではなく「従業員全体の行為規律」として設計する

就活セクハラ対策の統制設計で最も重要なのは、統制の射程を「採用担当」だけでなく「求職者と接触し得るすべての従業員」に広げることです。

本記事で解説した設計項目を改めて整理します。

設計項目核心
リクルーター任命制任命→研修→誓約→監督→更新のワンセット
OB・OG訪問ルール会社関与の有無を問わず、従業員の服務規律として統制
SNS統制私用チャネル禁止+例外管理(承認・ログ・報告の3条件)
禁止行為一覧「禁止」と「代替ルール」をセットで提示
公式チャネル化ログが命。最低4点セット+プライバシーポリシー改定で対応可
面談記録テンプレート有事の事実確認を支える「運用証跡の型」
違反時措置レベル分け+被害者フォローまで設計
RPO統制契約で自社同等水準の統制を及ぼす
就業規則の落とし込み服務規律・ハラスメント規程・懲戒規程への組み込み

法改正の全体像は前編(改正均等法13条と企業の実務対応)を、法改正カレンダーは2025年版法改正カレンダーをご参照ください。

よくある質問(FAQ)

OB訪問のルールは全社員に適用すべきですか?それともリクルーター限定?
全社員に適用するのが安全です。OB訪問は「リクルーター」として正式に任命されていない社員に対しても学生から依頼が来ることがあります。服務規律として「求職者等との接触ルール」を全社員に適用し、実際に面談を行う場合はリクルーター任命制(研修・誓約書含む)を経る構成にするのが最も合理的です。
SNSの完全禁止は現実的ですか?広報活動にも支障が出ませんか?
本記事で推奨しているのは「私用アカウントでの求職者との個別接触の禁止」です。会社公式アカウントを通じた採用広報・イベント告知は許可対象です。例外管理の仕組み(事前承認・ログ保存・事後報告)を設けることで、必要な場面には対応しつつリスクを管理できます。
中小企業で採用管理システムがない場合、最低限何を揃えればいいですか?
最低4点セットで対応可能です。①共通メールアドレス(全やり取りをCC共有)、②相談受付フォーム(Googleフォーム等で匿名対応も可)、③共有フォルダ(面談記録・誓約書の一元管理)、④面談記録テンプレート(日時・場所・参加者・内容を定型化)。システム投資なしでも「ログが残る体制」は構築できます。

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参考条文・資料


本記事は2026年2月時点の情報に基づいています。施行期日は政令で最終確定されます。指針の詳細は確定版の告示をご確認ください。最新情報は厚生労働省・e-Gov等をご参照ください。