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第10話 / ChatGPTを法務実務で使う方法シリーズ

契約書のレビューでは、「この条項はリスクがあります」と伝えるだけでは仕事は終わりません。実務では、どの条項をどのように直すか、すなわち修正文案の作成が必要になります。しかし、修正文案を一から書き起こす作業は、法務担当者にとって時間と経験を要する負担の大きい工程です。

近年、この修正文案の作成にChatGPT等の生成AIを活用する法務担当者が増えています。AIは複数の修正パターンを素早く提示できるため、修正文案の「たたき台」を作るうえで有効な手段です。

ただし、AIが作った修正文案をそのまま契約書に貼り付けることは避けなければなりません。条文の法的効果は、契約全体・当事者の立場・取引背景・最新の法令や裁判例によって変わります。AIが出した文案は出発点であり、最終的な採否と整合性確認は必ず人間が行う必要があります。

本記事では、契約書の修正文案をChatGPTで作り、実務で使える形に整えるための具体的な方法を解説します。強めの修正案・妥協案・最低限案の作り分け方、社内コメントと相手方コメントの使い分け、AI出力を整えるチェックポイントまでを順に説明します。

契約書の修正文案は、リスクを見つけた後に必ず必要になる作業です。強めの案・妥協案・最低限案を毎回ゼロから考えるのが手間だと感じる方には、契約書AIレビュー専用プロンプト集もあわせてご確認ください。修正文案の観点と出力形式をあらかじめ整えた型を用意しています。

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まず結論:修正文案は「そのまま使う」のではなく「たたき台として整える」

AIを使った修正文案作成の基本的な立場を最初に明確にしておきます。

  • AIは修正文案の複数の表現案を素早く作ることが得意です。
  • ただし、契約全体との整合性、自社の交渉方針、商務判断との調整は人間が確認します。
  • 修正文案は、強めの案・妥協案・最低限案の3段階に分けると実務で使いやすくなります。
  • 相手方に提示する前には、表現・法的効果・交渉方針を必ず人間が確認します。

AIは判断者ではなく補助者です。修正文案の最終的な採否と責任は、法務担当者・担当役員が負います。高額案件・重要案件・紛争性のある案件では、弁護士への確認も検討してください。


図解:ChatGPTで修正文案を作る流れ

▼ 修正文案作成の全体フロー
① 問題条項を特定する
② 修正目的を整理する
(リスク軽減 / 責任明確化 / 実務運用可能性 / 権利確保)
③ 自社の立場・交渉方針を指定する
(発注者 / 受託者 / 強く主張 / 妥協可能)
④ ChatGPTで複数の修正文案を作成する
(強めの案 / 妥協案 / 最低限案)
⑤ 条文表現・契約全体との整合性を確認する
(定義条項・関連条項・別紙・自社標準契約との整合)
⑥ 社内コメント・相手方コメントに展開する
⑦ 法務担当者が最終調整・採否を決定する
AIは修正文案の候補を作る④の工程に向いています。採否と最終調整(⑤〜⑦)は必ず人間が行います。

契約書の修正文案作成でAIが得意なこと

ChatGPTや生成AIは、修正文案作成の以下の場面で有効に機能します。

  • 問題条項に対する修正方向の整理:「この条項のどこが問題か」「どういう方向で修正できるか」を複数の角度から提示します。
  • 複数の修正文案の作成:同じ修正目的でも表現を変えた複数の文案を短時間で用意できます。
  • 強めの案・妥協案・最低限案の比較:3段階の修正案を並べることで、交渉シナリオを検討しやすくなります。
  • 条文表現の言い換え:長い文を分割する、条件を明示する、不明確な表現を具体化するなど、文言の整理に使えます。
  • 社内向け説明文案の作成:事業部門・上長向けに、法務リスクと事業影響を分かりやすく伝える説明案を作れます。
  • 相手方向けコメント案の作成:修正要請を柔らかい交渉表現に変換する作業を補助します。
  • リスクと修正理由の整理:修正が必要な理由を、法的観点と実務運用上の観点から整理します。
  • 修正文案の表形式整理:現行条文・修正案・修正理由・重要度をまとめた比較表を作成できます。
  • 契約類型別のよくある修正パターンの整理:業務委託契約、売買契約、NDAなど、契約種別ごとのよくある修正観点を提示します。

契約書の修正文案作成でAIに任せてはいけないこと

以下の判断は、AIに任せず必ず人間が行ってください。

  • 修正文案の最終採否:どの修正案を採用するかは、自社の立場と交渉方針に基づいて人間が決定します。
  • 契約全体との整合性確認:1条項だけを修正すると、他の条項との間に矛盾や抜け漏れが生じることがあります。
  • 定義条項・関連条項・別紙との整合性確認:定義の変更が複数条項に波及していないか、別紙・注文書・仕様書と矛盾しないかを確認します。
  • 自社標準契約・社内ポリシーとの整合性確認:自社雛形と乖離していないか、社内承認が必要かを確認します。
  • 交渉上どこまで主張するかの判断:強く主張するか、妥協できるか、最低限何を確保するかは経営・事業判断と連動します。
  • 取引条件・価格・納期など商務判断との調整:法務修正が事業条件に影響する場合は、担当部門と連携する必要があります。
  • 重要契約の最終レビュー:高額案件、M&A関連、長期継続契約などは弁護士確認を検討してください。
  • 紛争性のある条項の結論:既に争いがある条項や将来の紛争リスクが高い条項は、法律専門家と連携します。
  • 最新法令・裁判例・行政指針の正確な確認:AIの学習データには時点的な限界があります。法改正・最新裁判例は必ず一次資料を確認してください。

表:修正文案作成でAIに任せやすい作業・人間が判断すべき作業

作業 AIに向いていること 人間が判断すべきこと 注意点
修正文案の作成 複数表現の候補提示、強め・妥協・最低限案の整理 最終採否、交渉上の優先順位の決定 条文の法的効果は人間が確認
修正理由の整理 法的・実務的観点からの修正理由の列挙 自社方針・取引背景との整合 最新法令・裁判例は一次資料確認必須
社内コメント案 リスクと事業影響を説明する文章案の作成 部門の状況・経営方針に合わせた調整 法務の主観が入り過ぎないか確認
相手方コメント案 修正要請を交渉しやすい表現に変換 相手方との関係・交渉状況に応じた調整 社内コメントをそのまま流用しない
整合性確認 条項内の論理的一貫性の確認補助 契約全体・別紙・標準契約との整合確認 AIは全文を一度に把握できないことがある
比較表の作成 現行条文・修正案・修正理由の表形式化 表に表示すべき優先情報の取捨選択 表が正しいかは人間が読み合わせ確認

修正文案を作る前に整理すべき前提条件

ChatGPTに修正文案を作らせる前に、以下の前提条件を整理します。前提が曖昧なまま指示を出すと、自社の立場に合わない文案が出てきます。

確認項目 例・選択肢 整理のポイント
自社の立場 発注者、受託者、売主、買主、開示者、受領者など 同じ条項でも立場によって修正方向が逆になる
契約類型 NDA、業務委託、売買、請負、ライセンスなど 契約類型によって典型的なリスクと修正ポイントが異なる
問題条項 責任制限、解除、再委託、知的財産権、検収、秘密保持など 条項を特定して指示することでAI出力の精度が上がる
修正目的 リスク軽減、責任範囲明確化、実務運用可能性確保、権利確保など 目的が明確だと修正方向を指定しやすい
交渉強度 強く主張する、妥協可能、最低限確保する 3段階の修正案を出してもらう際に明示する
出力形式 修正文案のみ、比較表、社内コメント付き、相手方コメント付きなど 出力形式を指定すると後工程が楽になる
注意事項 契約全体との整合性、マスキング済み、人間確認前提など 入力時点での機密情報処理状況を確認する

修正文案の種類:強めの案・妥協案・最低限案

1つの問題条項に対して1種類の修正文案だけを作ると、交渉の場で柔軟に対応できません。実務では、以下の3段階を想定した修正案を準備すると役立ちます。

案①
強めの修正案
自社の希望を最大限反映した案。相手方が難色を示す可能性があるが、交渉の出発点として提示する。
案②
妥協案
双方が受け入れやすい落としどころ。実務上の取引関係を維持しながらリスクを一定程度抑える。
案③
最低限案
これだけは確保したい防衛ライン。ここまで確保できれば合意できるという最終的な判断基準。
修正文案を複数案で持っておくと、事業部門や上長と交渉方針を相談しやすくなります。また、相手方との交渉の中で「案①が通らなければ案②を提示」という対話ができます。

使い方1:責任制限条項の修正文案を作る

損害賠償・責任制限条項は、業務委託契約・売買契約・SaaS契約など多くの類型で交渉になりやすい条項です。以下の観点を整理したうえでAIに指示します。

  • 損害賠償の対象範囲:直接損害のみか、特別損害・逸失利益を含むか
  • 賠償上限の設定:委託料相当額、年間委託料、無制限など
  • 例外条項:秘密保持義務違反・個人情報漏えい・知的財産権侵害は上限適用外とするか
  • 委託者側・受託者側で修正方向が逆になる点に注意する
▼ サンプルプロンプト:責任制限条項の修正文案
あなたは企業法務担当者を支援する立場です。
以下の損害賠償条項について、当社が【委託者側】である前提で、
当社のリスクを軽減する修正文案を作成してください。

①強めの修正案(自社の希望を最大限反映)
②交渉上受け入れられやすい妥協案(双方が受け入れやすい落としどころ)
③最低限確保したい修正案(これだけは必要な防衛ライン)

の3段階で整理してください。

出力は、以下の表形式にしてください。
| 区分 | 修正方針 | 修正文案 | 相手方への説明理由 | 社内確認事項 |

【対象条項】
(ここに現行条文を貼り付ける)

【前提条件】
・当社の立場:委託者側
・契約類型:業務委託契約
・修正目的:賠償上限の設定、秘密保持違反等の例外規定の追加
・交渉上の優先度:秘密保持違反と個人情報漏えいの例外は必須
注意:責任制限条項の修正は、関連する定義条項(「損害」「特別損害」「直接損害」の定義)、秘密保持条項、個人情報保護条項との整合性を必ず確認してください。また、最新の裁判例では責任制限条項の有効性について一定の要件が示されているため、重要案件では弁護士に確認することを推奨します。

使い方2:再委託条項の修正文案を作る

再委託条項は、業務委託・請負・IT開発契約などで頻出します。立場によって修正方向が逆になります。

  • 委託者側:無制限の再委託を禁止し、事前承諾制または通知制を設けたい。グループ会社や特定専門業者への再委託に限定する規定も検討します。
  • 受託者側:実務上必要な外注・グループ会社への再委託の余地を確保したい。一方で、委託者への通知義務を受け入れることで合意を図る。
  • 個人情報・秘密情報が絡む場合は、再委託先への義務承継を明記します。
▼ サンプルプロンプト:再委託条項の修正文案
以下の再委託条項について、当社が【委託者側】である前提で、
再委託に関するリスクを管理するための修正文案を3段階で作成してください。

①強めの修正案(事前書面承諾制、再委託先の限定)
②妥協案(事前通知制、再委託先への義務承継の明記)
③最低限案(個人情報・秘密情報が絡む場合のみ事前承諾制)

各案について、修正文案と相手方に伝える修正理由を整理してください。

【対象条項】
(ここに現行条文を貼り付ける)

【前提条件】
・当社の立場:委託者側
・本業務において個人情報・秘密情報の取扱いが含まれる
・現状は「相手方の判断で再委託可」という規定になっている

使い方3:知的財産権条項の修正文案を作る

知的財産権条項は、成果物の権利帰属が交渉のポイントになります。AIで修正文案の候補を作ることはできますが、実際の権利関係(著作権・特許権・ノウハウ等)については慎重な確認が必要です。

  • 成果物の権利帰属:完成品の著作権・所有権が委託者に帰属するか、受託者に留まるかを明確にします。
  • 既存知財・汎用ノウハウの扱い:受託者が元々保有するノウハウ・ライブラリが成果物に組み込まれる場合、利用許諾の範囲を明確にします。
  • 著作者人格権不行使:委託者側から要求されることが多い条項です。受託者側はその範囲に注意します。
  • 利用許諾で足りるか、権利移転が必要か:委託者の事業目的に応じて判断します。権利移転が難しい場合は独占的利用許諾で代替することも検討します。
注意:知的財産権条項は、特許法・著作権法・不正競争防止法などの法的背景が複雑です。AIが出す修正文案はあくまで検討の糸口として活用し、権利帰属の最終判断は法律専門家と連携することを強く推奨します。

使い方4:解除条項の修正文案を作る

解除条項は、契約関係の終了に直結する重要条項です。以下の観点をAIに整理させることができます。

  • 催告解除・無催告解除の区別:重大違反以外は催告後解除、重大違反・信用不安は無催告解除とすることが一般的です。
  • 無催告解除事由の範囲:支払停止、破産・民事再生申立、反社会的勢力への該当、情報漏えい、法令違反などを列挙します。
  • 中途解約の可否:委託者からの便宜的な中途解約を認めるか、その場合の費用精算・違約金の有無を明確にします。
  • 終了時措置:返還・廃棄・データ削除・業務引継ぎなど、契約終了後の対応を整理します。
▼ サンプルプロンプト:解除条項の修正文案
以下の解除条項について、当社が【委託者側】である前提で、
当社がリスクを管理しやすい形に修正する文案を3段階で作成してください。

特に以下の点を考慮してください。
・無催告解除事由に反社会的勢力への該当・情報漏えい・重大な法令違反を追加したい
・相手方からの中途解約には一定の制限を設けたい
・解除後のデータ返還・廃棄義務を明確にしたい

【対象条項】
(ここに現行条文を貼り付ける)

【前提条件】
・当社の立場:委託者側
・契約期間:1年(自動更新あり)
・本業務は個人情報・秘密情報の取扱いを含む

使い方5:秘密保持条項の修正文案を作る

秘密保持条項は、NDA(秘密保持契約)の主要条項でもあり、業務委託契約にも組み込まれます。以下の観点を整理します。

  • 秘密情報の定義の範囲(秘密指定の有無、口頭情報の扱いなど)
  • 目的外利用禁止の範囲
  • 例外情報(公知情報、独自開発、正当な第三者からの入手など)
  • 第三者開示の可否(再委託先・弁護士・会計士など)
  • 情報の返還・廃棄義務と確認方法
  • 秘密保持期間(契約終了後何年か)
  • 別途NDAを締結している場合との重複・優先関係

なお、契約書をAIに入力する際、秘密情報・個人情報・営業秘密が含まれる場合は、AI入力前にマスキング・匿名化が必要になります。詳細は後述の「契約書修正文案とマスキングの関係」をご参照ください。


表:よくある条項別・修正文案作成の観点

条項 よくあるリスク 修正方向 AIに指示するポイント 人間が確認すべき点
損害賠償・責任制限 賠償上限なし、特別損害含む、例外なし 上限設定、例外列挙、直接損害限定 立場・上限額・例外条項(秘密保持違反・個人情報漏えい)を指定 定義条項・秘密保持条項との整合、裁判例上の有効性
再委託 無制限再委託、義務承継なし 承諾制・通知制、義務承継の明記 委託者か受託者かの立場、承諾制か通知制かの優先順を指定 個人情報取扱いとの整合、委託業務の実態との整合
知的財産権 権利帰属が不明確、汎用ノウハウの扱いが不明 帰属明確化、利用許諾範囲・ノウハウ除外の規定 成果物の種別、既存知財の有無、著作者人格権の扱いを指定 著作権法・特許法上の扱い、権利移転の可否
検収 検収完了条件が不明、みなし合格規定あり 検収基準・期間の明確化、みなし合格の制限 業務の種類、成果物の基準、みなし合格期間を指定 仕様書・要件定義との整合、実務運用可能性
解除 解除事由が限定的、終了時措置が不明 無催告解除事由の追加、終了時措置の明確化 解除事由の列挙・終了後のデータ処理・引継ぎを指定 解除権行使の要件、終了後義務の実行可能性
秘密保持 秘密情報の範囲が広すぎる・狭すぎる、保持期間不明 定義の適正化、例外列挙、保持期間の明確化 秘密情報の定義・例外・保持期間・返還廃棄義務を指定 NDAとの重複・優先関係、実務的な運用可能性
個人情報 委託先への義務承継、安全管理措置、漏えい時対応が不明 個人情報保護法に基づく義務の明確化 個人情報保護法の委託規定・安全管理措置・報告義務を指定 個人情報保護法・ガイドラインとの整合
支払条件 支払期限・遅延損害金・相殺の扱いが不明 期限明確化、遅延損害金率の設定、相殺禁止の明記 支払期限・遅延損害金率・相殺条件を指定 下請法・取引適正化法の適用可否
反社・法令遵守 反社確認の方法・違反時の解除が不明確 表明保証、違反時の無催告解除、損害賠償の明記 反社確認の対象・時点・解除事由・損害賠償を指定 自社ポリシー・取引先審査との整合

修正文案を社内コメントに変換する方法

法務が作った修正文案を事業部門・担当役員に共有する際には、社内向けのコメントに変換する必要があります。社内コメントでは、以下の情報を含めることが重要です。

  • 何が問題なのかを率直に説明する
  • 法務リスクだけでなく、事業上の影響(売上・費用・操業停止リスクなど)を説明する
  • 修正の重要度(必須対応・できれば対応・確認事項)を示す
  • 事業部門が判断すべき事項(商務上の譲歩の可否など)を明示する
▼ サンプルプロンプト:社内コメントの作成
上記の修正文案について、事業部門向けに分かりやすく説明する
社内コメント案を作成してください。

各修正について、以下の項目を整理してください。
①何が問題か(現行条文の問題点)
②放置した場合の実務上のリスク(具体的な影響を含む)
③なぜ修正を依頼したいか(修正することの意味)
④交渉上どこまで譲れるか(必須 / 可能な限り / 確認事項)

出力は以下の表形式にしてください。
| 対象条項 | 問題点 | 放置リスク | 修正の理由 | 重要度 | 事業部門に確認したい事項 |

修正文案を相手方コメントに変換する方法

相手方に送付する審査コメントは、社内コメントをそのまま流用しないことが鉄則です。相手方コメントでは以下の点を意識します。

  • 断定的・攻撃的な表現を避ける
  • 「実務運用上」「責任範囲の明確化のため」「双方の認識齟齬を避けるため」といった表現を使う
  • 相手方の利益も考慮した双方向の提案として提示する
  • 修正理由を交渉しやすい形に整え、合意形成を促す
▼ サンプルプロンプト:相手方コメントの作成
上記の修正文案について、相手方に送付する契約審査コメント案を作成してください。

以下の方針で作成してください。
・相手方を責める表現は避ける
・実務運用上の必要性、責任範囲の明確化、双方の認識齟齬防止の観点から記載する
・交渉しやすいよう、柔らかく提案する形の表現にする
・双方にとって合理的な提案として提示する

出力は以下の表形式にしてください。
| 対象条項 | 相手方へのコメント案 | 表現上の注意点 | 代替提案(妥協案)|

図解:社内コメントと相手方コメントに変換する流れ

問題条項 現行条文のどこが問題かを特定
修正文案(強め / 妥協 / 最低限) AIで3段階の修正案を作成する
社内コメント リスク・事業影響・推奨対応・重要度を率直に整理
相手方コメント 柔らかい交渉表現・修正理由・合意形成の観点で整理
同じ修正文案でも、社内向けと相手方向けでは目的と表現を変える必要があります。社内コメントはリスクを率直に伝え、相手方コメントは合意形成を促す表現にします。

AI修正文案を実務で使う前のチェックポイント

AIが作った修正文案を実務で使う前に、以下のチェックリストを確認してください。

  • 定義条項と整合しているか(修正した用語が定義条項に反映されているか)
  • 関連条項と矛盾していないか(修正条項と連動する他の条項を確認)
  • 別紙・仕様書・注文書と矛盾していないか
  • 自社標準契約・社内ポリシーと整合しているか
  • 法律用語が不自然でないか(不明確・曖昧な表現がないか)
  • 相手方に出してよい表現か(社内コメントをそのまま使っていないか)
  • 強めの修正案を出してよいタイミングか(交渉状況と合っているか)
  • 交渉上の優先順位と整合しているか(必須・任意を区別できているか)
  • 事業部門の意向と合っているか(商務条件との整合)
  • 重要案件では上長・専門家・弁護士の確認が必要か

契約書修正文案とマスキングの関係

修正文案を作るために契約書をAIに入力する場合、以下の情報が含まれることがあります。

  • 取引先名・担当者名(個人情報・営業秘密)
  • 取引金額・数量・報酬などの商務情報
  • 技術情報・ノウハウ・システム仕様
  • NDAで保護されている秘密情報
  • 個人情報(氏名、住所、連絡先など)

外部AIに入力する前に、必ず自社のAI利用ルール・情報セキュリティポリシー・取引先との秘密保持義務を確認してください。入力が必要な場合は、取引先名・担当者名・金額・個人情報などを匿名化・仮名化する前処理(マスキング)を行うことが実務上の対応として推奨されます。

前処理ツールのご案内

契約書をAIに入力して修正文案を作成する前に、取引先名・担当者名・金額・技術情報・個人情報などを整理したい場合は、LegalOS マスキングのような前処理ツールを使う方法もあります。マスキングを行ってからAIに入力することで、情報漏えいリスクを低減できます。

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契約書修正文案プロンプト集を使うメリット

毎回の契約審査でゼロから修正文案の指示を考えるのは、時間とノウハウを要します。契約書AIレビュー専用プロンプト集は、修正文案作成の観点と出力形式をあらかじめ整えた「型」として機能します。

  • 毎回ゼロから修正文案の指示を考えなくてよくなります。
  • 強めの案・妥協案・最低限案を一貫した形式で出しやすくなります。
  • 社内コメントと相手方コメントを分けやすくなります。
  • 契約類型・条項別に確認観点をそろえやすくなります。
  • 一人法務・少人数法務でも初動の論点整理がしやすくなります。
  • 担当者が変わっても修正文案の品質を一定に保ちやすくなります。
有料プロンプト集についての注意事項:プロンプト集は、修正文案の観点と出力形式を整えるための「型」です。「正解の条文を自動生成する魔法」ではありません。AIが出力した修正文案の最終採否・法的確認・整合性確認は、必ず法務担当者が行ってください。

契約書修正文案プロンプト集が向いている人・向いていない人

区分 こんな方に向いています こんな方には向いていません
業務状況 契約書の修正文案作成に時間がかかっている AIをほとんど使わない・使う予定がない
修正文案の作成 修正文案の言い回しや表現選びに迷う 修正文案をAIに完全自動化してほしい
交渉準備 強めの案と妥協案を比較しながら交渉方針を検討したい 契約全体との整合性確認をするつもりがない
コメント作成 社内コメントと相手方コメントを使い分けたい 自社方針や交渉方針を確認するつもりがない
品質管理 契約審査の品質を担当者間でそろえたい 重要契約も専門家確認なしで完結させたい
体制 一人法務・少人数法務で初動整理の型がほしい 機密情報を無加工で外部AIに入力する運用を考えている

注意点:修正文案の責任は人間に残る

重要:以下の点を必ず理解したうえでAIを活用してください。
  • AIが作る修正文案はあくまで候補(たたき台)です。最終採否は人間が行います。
  • 条文の法的効果は、契約全体・取引背景・裁判例・実務慣行によって変わり得ます。
  • AIの文案は、用語が不自然だったり、関連条項と矛盾したりすることがあります。
  • 最新の法改正・裁判例・行政指針への対応は、AIの学習データに含まれていない可能性があります。必ず一次資料を確認してください。
  • 最終的な採否は、法務担当者・担当役員が判断します。
  • 高額案件・重要案件・紛争性のある案件では、弁護士への確認を検討してください。

契約書の修正文案作成を効率化したい方へ

契約書の修正文案、社内コメント、相手方コメントを効率よく作りたい法務担当者の方は、契約書AIレビュー専用プロンプト集をご活用ください。修正文案の観点と出力形式をあらかじめ整えた型を収録しています。

契約審査以外の法務業務(人事労務・コーポレート・取適法対応等)にもAIを活用したい場合は、法務AIプロンプト100選もあわせてご確認ください。

まとめ

  • ChatGPTは契約書の修正文案作成に有効なツールです。複数の修正パターンを素早く用意し、修正文案の「たたき台」を作る工程で活用できます。
  • ただし、AIの文案をそのまま契約書に貼り付けることは禁物です。定義条項・関連条項・別紙・標準契約との整合性を人間が確認します。
  • 修正文案は強めの案・妥協案・最低限案の3段階で用意すると、事業部門との交渉方針の相談がしやすくなります。
  • 社内コメントと相手方コメントは表現を分けます。社内向けはリスクを率直に、相手方向けは合意形成を促す表現で整えます。
  • AI入力前には、秘密情報・個人情報のマスキングが必要な場合があります。自社のAI利用ルールを確認してください。
  • 最終的な採否・交渉方針・契約全体との整合性確認は、法務担当者が責任を持って行います。

次回(第11話)は、「契約審査コメントをAIで作る方法|社内向け・相手方向けで表現を変える」を解説します。


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