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コーポレート法務 実務FAQシリーズ 第27話

役員任期管理をなぜ毎年ミスするのか|取締役・監査役・重任登記の基本整理

「また登記を忘れていた」「重任も登記が要るとは知らなかった」「代表取締役には任期がないと思っていた」——。
役員任期管理の失敗は、毎年どこかの会社で繰り返されています。しかも多くの場合、「司法書士に任せていたから大丈夫だと思っていた」という声で締めくくられます。

役員任期管理は、登記手続だけの問題ではありません。株主総会・取締役会・代表権・内部統制・契約締結権限に連動する、機関運営の根幹です。
第27話では、取締役の任期(会社法332条)と監査役の任期(会社法336条)を機関設計ごとに整理したうえで、毎年ミスが繰り返される5つのポイントと、法務がひとりでも回せる管理の仕組みを紹介します。

なぜ役員任期管理は毎年ミスされるのか

役員任期管理のミスは、「担当者が知らなかった」だけで起きるわけではありません。構造的な原因があります。

① 「登記は司法書士がやること」という思い込み

多くの会社では、役員変更登記を司法書士に依頼しています。しかし、司法書士が動けるのは、会社から「いつ・誰が・どうなったか」という情報が正確に届いた後です。 任期満了予定者の把握、株主総会での選任決議、代表取締役の選定——これらのスケジュールは法務(または管理部門)が管理しなければなりません。 司法書士は登記申請の代理人であり、機関運営の管理者ではありません。

② 任期満了が「定時株主総会シーズン」に集中する

取締役の任期は原則として「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」会社法332条1項、監査役は同じく「4年以内」会社法336条1項です。 任期の終わりが定時株主総会に結びついているため、複数の役員の任期が同じ総会で一斉に到来します。 この集中処理の中で、「誰の任期が来ているか」「代表取締役の地位はどうなるか」の把握が漏れやすくなります。

③ 重任・退任・辞任の区別が曖昧になる

「同じ人が続けるから何も変わらない」は誤解です。法務省も、任期満了後に間を置かず同じ人が再任された場合であっても、任期満了により退任した役員が再び就任することになるため役員変更登記が必要であり、これを登記上「重任」と呼ぶと説明しています。 「面倒だから次の改選とまとめてやろう」と先延ばしにすると、2週間の登記期間を簡単に超えてしまいます。

④ 定款と機関設計を確認していない

取締役・監査役の任期は、会社の機関設計と定款によって変わります。 たとえば公開会社でない株式会社は、定款で取締役の任期を最長10年まで伸長できます(会社法332条2項。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)。監査役を置く非公開会社では、監査役の任期も定款で最長10年まで伸長できます(会社法336条2項)。一方、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社の取締役には1年任期の特則があります。 「ウチの取締役は2年でしょ」と決めてかかると、実は定款で10年に伸長されていた、あるいは定款で1年に短縮されていた——というミスが起きます。役員任期管理の第一歩は、現行定款と機関設計の確認です。

⑤ 退任後の権限停止を忘れる

退任した役員が、社内システムのアクセス権・電子契約アカウント・稟議承認権限を持ったままになるケースがあります。 これは内部統制上の問題であり、不正利用のリスクにもつながります。役員任期管理は、登記の後工程まで続きます。

役員任期管理でミスしやすい5つのポイント

①任期満了日の
把握漏れ
②重任と退任の
混同
③代表取締役の
重任見落とし
④登記期限
超過
⑤議事録・書類の
連携不備

以下、各ポイントを実務目線で解説します。

① 任期満了日を正しく把握していない

POINT 01

取締役の任期・監査役の任期の基本(会社法332条・336条)

取締役の任期(原則)
選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。定款または株主総会の決議で短縮できる会社法332条1項
監査役の任期(原則)
選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで会社法336条1項。取締役と異なり、定款等による任期短縮の規定はない(補欠監査役の特則は336条3項)
公開会社でない会社の伸長
定款で定めれば、取締役・監査役とも選任後10年以内に終了する事業年度の定時総会終結時まで伸長できる会社法332条2項・336条2項。ただし取締役の伸長は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では不可
1年任期となる取締役
監査等委員会設置会社の監査等委員でない取締役会社法332条3項、指名委員会等設置会社の取締役会社法332条6項
「公開会社=上場会社」ではありません

会社法上の公開会社とは、発行する株式の全部または一部について、譲渡に会社の承認を要する旨の定款の定め(譲渡制限)がない株式会社をいいます。法務省も、株式を市場に公開しているかどうかは関係ないと明記しています。

したがって、「上場会社だから取締役は1年」「非上場だから10年」「中小企業だから10年」という理解はいずれも不正確です。公開会社であることだけを理由に取締役の任期が一律1年になるわけではなく、監査役会設置会社などの取締役は原則どおり2年(短縮は可能)です。上場会社で取締役任期1年の例が多いのは、機関設計上の特則や、定款による任期短縮(剰余金配当の取締役会決定の要件等との関係を含む)によるものであり、個別の定款確認が必要です。

機関設計別|取締役・監査役の任期整理表

会社の類型・機関設計 取締役の任期 監査役等の任期 根拠
公開会社でない株式会社
(全株式に譲渡制限。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)
原則2年。定款で最長10年まで伸長可。定款・総会決議で短縮も可 監査役:原則4年。定款で最長10年まで伸長可 332条1項・2項
336条1項・2項
公開会社(監査役設置会社・監査役会設置会社) 原則2年(伸長不可。定款・総会決議で短縮は可) 監査役:4年(伸長・短縮とも不可。補欠の特則のみ) 332条1項
336条1項・3項
監査等委員会設置会社 監査等委員でない取締役:1年(短縮可)
監査等委員である取締役:2年(短縮不可)
監査役は置かない 332条3項・4項・5項
指名委員会等設置会社 取締役:1年(短縮可) 監査役は置かない(執行役の任期は別途規定) 332条6項

なお、会計参与も会社法上の「役員」であり(会社法329条1項)、その任期には取締役の任期の規定が準用されます(会社法334条)。会計参与を置いている会社は、任期表の対象に含めてください。

なぜミスが起きるか

「取締役は2年」という原則は知っていても、任期の終期が「定時株主総会の終結の時」であることを正確に理解していない場合があります。「選任から丸2年」ではなく、「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」に関する定時総会の終結時です。 また、補欠・増員で選任された役員は、就任時期によって満了時期がバラバラになりがちです。取締役については、定款で「補欠または増員により選任された取締役の任期は、他の在任取締役の任期の満了する時までとする」と定めて任期を揃える例が一般的ですが、これは会社法332条1項ただし書の短縮を定款で行うものです。監査役について任期を揃えられるのは、補欠として選任された監査役を前任者の任期満了時までとする定款の定めがある場合です(会社法336条3項)。

⚠ 実務上の落とし穴:事業年度の変更・定款変更による任期の変動

任期は「事業年度」と「定時株主総会」に結びついているため、事業年度を変更すると任期満了の時期が前後にずれることがあります。

また、次の定款変更をした場合、取締役・監査役の任期は定款変更の効力発生時に満了します。

  • 取締役:監査等委員会または指名委員会等を置く(または廃止する)定款変更、株式の譲渡制限の定めを廃止する定款変更(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社がするものを除く)会社法332条7項
  • 監査役:監査役を置く旨の定めの廃止、監査等委員会または指名委員会等を置く定款変更、監査の範囲を会計に限定する旨の定めの廃止、株式の譲渡制限の定めの廃止会社法336条4項

非公開会社が譲渡制限を廃止して公開会社になる場合、10年に伸長していた任期もその時点で満了します。機関設計の変更を伴う場合は、改選・登記を必ずセットで計画してください。

ミスすると何が起きるか

  • 任期満了に気づかず、後任の選任手続そのものを行わない状態になる。法律または定款で定めた員数を欠くこととなった場合に選任手続を怠ると、それ自体が100万円以下の過料の対象となりうる会社法976条22号
  • 員数を欠く場合には、任期満了で退任した役員が権利義務役員として残る(会社法346条1項。要件は③の解説参照)一方、員数を欠かない場合にはその役員は退任しており、権限のない者が会社の意思決定や契約締結に関与するおそれがある
  • 登記が実態と乖離したまま放置され、登記懈怠として過料の対象となりうる

法務が確認すべきこと

  • 現行定款の「役員の任期」条項と、株式の譲渡制限の有無・機関設計を毎年確認する
  • 各役員の就任年月日(登記記録・選任議事録)を起点に、任期満了となる定時株主総会を特定する
  • 補欠・増員選任の役員、事業年度変更・機関設計変更があった会社は、満了時期を個別に検算する
✓ 小さく防ぐ方法
役員任期表を作成し、役員名・役職・就任日・適用される任期・任期満了となる定時総会・登記状況を一覧で管理する。定款と機関設計の確認を年1回の定例タスクに組み込む。

② 重任と退任を混同する

POINT 02

重任・任期満了退任・辞任・解任の違い

重任(じゅうにん)
任期満了後、間を置かずに同じ人が再任されること。任期満了による退任と再度の就任が生じるため、重任でも役員変更登記が必要。登記上は「重任」と表示される。
任期満了退任
再任されずに任期満了で退任すること。退任の登記が必要。員数を欠く場合は会社法346条1項の権利義務役員となりうる。
辞任
任期中に本人の意思表示により退任すること。辞任を証する書面(辞任届等)が登記の添付書面となる。
解任
株主総会の決議により、いつでも解任できる(会社法339条1項)。決議要件は役員の類型で異なる(下記参照)。正当な理由がない場合、解任された者は損害賠償を請求できる(同条2項)。
解任の決議要件(参考)
  • 取締役(原則):普通決議。ただし定足数は定款によっても議決権の3分の1未満にはできない会社法341条
  • 監査役、監査等委員である取締役、累積投票により選任された取締役:特別決議会社法309条2項7号

解任は本記事の中心テーマではないため、実際に検討する場面では定款の定めを含め個別に確認してください。

なぜミスが起きるか

「同じ人が続くから何も変わらない」と思い込み、重任登記を失念するケースが最も多いです。 役員が再任されても、登記の対象となる事実(任期満了による退任と就任)は生じています。登記をしないまま放置すると、登記記録上はその役員の任期が確認できない状態が続きます。

また、就任承諾を証する書面の扱いも誤解されやすい点です。被選任者が株主総会に出席してその場で就任を承諾し、その旨が議事録に記載されている場合には、議事録を就任承諾を証する書面として援用する取扱いがあります。欠席者については別途、就任承諾書が必要です。 さらに、本人確認証明書(住民票記載事項証明書、原本証明をした運転免許証やマイナンバーカードのコピー等)や印鑑証明書は、原則として新任(再任を除く就任)の場合に求められるものです(商業登記規則61条4項・5項・7項)。新任・重任・役職・取締役会設置の有無で要否が変わるため、場合分けして把握することが重要です。

ミスすると何が起きるか

  • 重任の登記を怠ることで、登記懈怠として過料の対象となりうる
  • 辞任と任期満了退任の混同により、辞任届の有無・日付・保管が不明確になる
  • 就任承諾の証明が不備だと、登記申請の補正ややり直しが必要になる

法務が確認すべきこと

  • 株主総会の選任決議後、各人が「重任」か「新任」かを正確に確認する
  • 辞任の場合は辞任届を書面で受け取り、日付・署名等を確認して保管する
  • 就任承諾の記録(議事録記載か別途書面か)を統一して管理する
⚠ 注意
「重任は登記しなくてよい」「重任は就任登記だけ別に出せばよい」という理解は誤りです。任期満了後に同じ人が再任された場合も、任期満了から2週間以内に役員変更登記を申請してください。登記原因の書き方や添付書面は、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」の記載例で確認できます。

③ 代表取締役の重任・再選定を見落とす

POINT 03

代表取締役の地位と取締役の任期の関係

代表取締役の地位
代表取締役の地位は取締役の地位に基づくもの。取締役の任期が満了すれば、代表取締役としても退任する(法務省の説明)。
取締役会設置会社
取締役会が取締役の中から代表取締役を選定する会社法362条2項3号・3項。監査等委員会設置会社では監査等委員でない取締役から選定会社法399条の13第3項。
取締役会非設置会社
取締役は原則として各自が会社を代表する会社法349条1項・2項。代表取締役を定める場合は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選、または株主総会の決議による同条3項。
指名委員会等設置会社
代表取締役は置かず、取締役会が代表執行役を選定する会社法420条1項。執行役の任期・選任も別途管理が必要。

機関設計別|取締役の重任時に確認すべき代表者の手続

機関設計・定め方 取締役の任期満了時に起きること 確認すべき手続
取締役会設置会社 取締役の任期満了により代表取締役としても退任 総会で取締役を選任した後、取締役会で代表取締役を選定し、代表取締役の変更(重任等)の登記を申請
取締役会非設置会社:定款で代表取締役を定めていない(各自代表) 取締役ごとに代表権を有する地位も任期満了により終了 取締役の重任登記とあわせて、登記される代表取締役(各取締役)の変更登記を確認
取締役会非設置会社:互選・株主総会決議・定款で代表取締役を定める 取締役の任期満了により代表取締役としても退任 定款の定めに従い、互選書・株主総会議事録等で改めて代表取締役を定め、登記を申請。定款で氏名を直接定めている場合は定款の記載も確認
指名委員会等設置会社 取締役(1年任期)と執行役の任期をそれぞれ管理 取締役会での執行役・代表執行役の選定と登記を確認

なぜミスが起きるか

「代表取締役は特別な地位だから任期は別」と誤解されることがあります。しかし代表取締役の地位は取締役の地位を前提とするため、取締役の任期が満了すれば代表取締役としても退任します。 取締役として重任しても、選定を要する代表取締役の地位が自動的に続くわけではありません。取締役会設置会社や互選・株主総会選定型の会社では、代表取締役の再選定と、それに基づく変更登記が漏れやすいのです(取締役会非設置会社で各取締役が代表する場合は別途の選定手続はありませんが、代表者に関する変更登記の内容は確認が必要です)。

⚠ 最重要:総会終結後の代表取締役選定のタイミング

実務で多いミスは、株主総会の終結後に代表取締役を選定する取締役会(または互選)を開き忘れること、議事録の日付・時刻の順序が論理的に矛盾していることです。

代表取締役の選定は「取締役の選任後」に行うものです。総会終結後、速やかに(通常は同日中に)取締役会等を開催し、実際の開催日時どおりに議事録を作成してください。総会と選定の日がずれた場合の登記原因の表記や、代表取締役不在期間の扱いは、事前に司法書士・管轄法務局に確認しておくと安全です。

✓ 代表取締役が重任する場合の印鑑証明書の考え方

商業登記規則61条では、就任承諾書の印鑑に係る市町村長作成の印鑑証明書は「就任(再任を除く。)」の場合に求められます(同条4項・5項)。したがって、取締役会設置会社の代表取締役や、取締役会非設置会社の取締役が再任される場合、就任承諾書について個人の印鑑証明書は原則不要です。

また、代表取締役の就任による変更登記では、選定を証する議事録等に押印した印鑑の印鑑証明書が原則必要ですが、その印鑑が変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑と同一である場合は不要とされています(同条6項ただし書)。重任の場面で書類収集の手間を減らせるかどうか、司法書士と事前に確認しておきましょう。

POINT:取締役会非設置会社の書類に注意
中小企業に多い取締役会非設置会社で、代表取締役を「取締役の互選」で定める場合は互選書が必要になり、互選書に押印した取締役の印鑑証明書が求められることがあります(商業登記規則61条6項2号。ただし書の例外あり)。「小さい会社だから書類は少ないはず」という思い込みは禁物です。選定方法(互選・定款・株主総会)に応じた書類を、司法書士と事前に確認してください。

ミスすると何が起きるか

  • 代表取締役の変更登記が漏れ、登記上の代表者と実態が一致しない状態が続く
  • 対外的な契約について、代表権の有無に疑義が生じるおそれがある
  • 金融機関・行政手続で登記事項証明書との不一致が露見し、手続に支障が出る

法務が確認すべきこと

  • 取締役選任後、定款・機関設計に沿った方法で代表取締役の選定が行われているか
  • 取締役会議事録・互選書・株主総会議事録に、代表取締役の選定と就任承諾が正確に記録されているか
  • 代表取締役の変更登記(重任を含む)の申請が取締役の重任登記と一緒に準備されているか
⚠ 権利義務役員(会社法346条1項)の要件と実務リスク

会社法346条1項は、役員が欠けた場合、または法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合に、任期の満了または辞任により退任した役員が、新たに選任された役員(一時役員の職務を行うべき者を含む)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する制度です。

つまり、任期満了や辞任があれば当然に権利義務役員になるわけではありません。たとえば定款で「取締役3名以上」と定める会社で取締役が4名いる場合、1名が辞任しても員数を欠かないため、その取締役は辞任により退任します。また、解任など任期満了・辞任以外の事由による退任は、同項の対象外です。代表取締役についても、代表取締役が欠けた場合等には同様の規定があります(会社法351条1項)。

権利義務役員となった者は、後任が就任するまで役員としての権利義務を負い続けます。会社としては、員数を欠くことがわかった時点で速やかに後任の選任手続を行う必要があり、これを怠ると選任懈怠として過料の対象となりえます(会社法976条22号)。「後任が決まらないから放置でいい」は通用しません。必要に応じて、裁判所に一時役員の職務を行うべき者の選任を申し立てる制度もあります(会社法346条2項)。

④ 登記期限を過ぎる

POINT 04

役員変更登記の申請期限と過料

申請期限
登記事項に変更が生じたときから2週間以内に、本店所在地で変更登記会社法915条1項
起算点
重任の場合は任期満了(通常は定時株主総会の終結時)から。辞任は辞任の効力発生時、代表取締役の選定は就任(選定と就任承諾)の時が目安
懈怠した場合の制裁
登記を怠った代表者等は、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性会社法976条1号
対象となる変更の例
役員の就任・退任・重任、代表取締役の変更、代表取締役の住所変更など

なぜミスが起きるか

定時株主総会の後、司法書士への依頼が遅れるケースが典型です。「総会が終わって落ち着いてから連絡しよう」という感覚で2週間が過ぎてしまいます。 また、必要書類の準備に時間がかかることも遅延の原因です。新任役員の就任承諾書・本人確認証明書・印鑑証明書の収集が遅れると、それだけで期限を超えます。 代表取締役が交代した場合は、新代表者による印鑑の提出も必要になり、準備が増えます。

ミスすると何が起きるか

  • 期限経過後に登記申請をしても、期間内の申請を怠った代表者等が100万円以下の過料に処される可能性がある(法務省の説明)。過料は刑事罰ではなく秩序罰で、裁判所が決定する
  • 登記が遅れている期間中、登記記録と実態が乖離した状態が続く
  • 金融機関・取引先・行政手続で、最新の登記事項証明書を提出できない
  • 役員変更等の登記をしないまま最後の登記から12年を経過すると、休眠会社の整理作業の対象となる(詳細は非上場会社・オーナー会社の論点参照)

法務が確認すべきこと

  • 株主総会の開催日が決まった段階で、司法書士へ事前連絡とスケジュール調整を行う
  • 総会終了後、速やかに(目安として翌営業日中に)議事録等を司法書士へ送付する体制を作る
  • 新任役員の就任承諾書・本人確認書類を総会前に準備しておく
✓ 小さく防ぐ方法
「総会後、原則として数営業日以内に登記書類一式を司法書士へ送付する」という社内ルールを設ける。2週間は暦日で進むため、土日祝日や押印・郵送の日数を差し引いて逆算する。書類チェックリストを事前に司法書士とすり合わせておき、補正による遅延を防ぐ。
⚠ 見落とし注意:代表取締役の住所変更
代表取締役の氏名・住所は登記事項です(会社法911条3項14号)。重任登記の準備段階で、代表取締役の現住所が登記記録と一致しているかを必ず確認してください。住所が変わっていた場合は、住所変更の登記もあわせて申請する必要があり、その変更自体にも2週間の登記期間があります。任期管理は「氏名・役職」だけでなく、代表者の現住所の把握も含むことを意識してください。

⑤ 議事録・登記書類がつながっていない

POINT 05

役員変更に必要な書類の連鎖

株主総会議事録・株主リスト
選任決議の内容(誰を何の役職で選任したか)を正確に記録。株主総会の決議を要する登記では株主リストも添付する。
取締役会議事録・互選書等
代表取締役の選定を記録。取締役会設置会社では取締役会議事録、非設置会社では定款所定の方法に応じた書面。
就任承諾を証する書面
新任・重任とも必要。被選任者が席上で承諾し議事録に記載がある場合は、議事録を援用できる取扱いがある。
本人確認証明書・印鑑証明書
取締役・監査役等の就任(再任を除く)では、印鑑証明書を添付する場合を除き本人確認証明書が必要(商業登記規則61条7項)。運転免許証等のコピーを使う場合は、本人が原本と相違ない旨を記載し記名する。

なぜミスが起きるか

議事録の記載が不正確であったり、書類間に矛盾があったりすると、登記申請の補正を求められます。 たとえば、就任承諾書の日付が選任決議より前になっているケース、議事録の記名押印等が不足しているケース、代表取締役の選定が議事録に記載されていないケースなどが起きやすいです。 また、辞任届の日付と退任日が一致していないと、登記申請の際に齟齬が生じます。

ミスすると何が起きるか

  • 登記申請の補正・取下げにより登記完了が遅れ、2週間の期限を超えるリスクが高まる
  • 議事録・書類の保管が不備だと、事後の紛争・監査で証拠として使えない
  • 意思決定の記録と登記の整合性が取れず、内部統制上の説明が難しくなる

法務が確認すべきこと

  • 株主総会議事録・取締役会議事録のドラフトを事前に司法書士に確認してもらう
  • 辞任届の日付・署名等を受け取り時に確認し、その場で保管する
  • 就任承諾書・本人確認書類は役員ごとにファイリングして管理する
LegalOS との接続
LegalOSでは、株主総会議事録・取締役会議事録・就任承諾書・辞任届を一元管理し、登記申請の添付書類チェックリストと連動させることを目指しています。書類の抜け漏れを防ぎ、毎年の更新作業を省力化します。

ミスしやすい5ポイント比較表

ミスしやすい点 なぜ起きるか 起きる問題 防止策
① 任期満了日の把握漏れ 定款・機関設計を確認しない、「上場=1年」「非上場=10年」という誤解、補欠・増員の個別管理不足 選任懈怠、権限のない者の関与、登記の乖離 役員任期表の作成、定款・機関設計確認の年次タスク化
② 重任と退任の混同 「同じ人が続くから変化なし」という思い込み 重任登記の漏れ、過料リスク 「重任でも登記が必要」を社内ルールに明記、就任承諾の記録を統一管理
③ 代表取締役の重任見落とし 取締役と代表取締役の地位を別物と誤解、機関設計ごとの選定方法を未確認 代表者の登記漏れ、対外取引への影響 取締役選任後の代表取締役選定を必ずセットで確認
④ 登記期限超過 司法書士への連絡遅れ、書類収集の遅延 代表者等に100万円以下の過料の可能性 総会後すぐの送付ルール、新任書類の事前準備
⑤ 議事録・登記書類の連携不備 議事録の記載不正確、書類間の日付不一致 補正による遅延、記録の証拠力低下 議事録ドラフトの事前確認、書類ファイリングの統一

役員任期管理スケジュール表

時期 やること 主担当 注意点
年1回(期初)
棚卸し
定款・機関設計の確認、役員任期表の更新、当期の任期満了予定者リストアップ 法務 譲渡制限の有無、10年伸長・任期短縮の定め、監査等委員会・指名委員会等の有無を確認。補欠・増員役員も個別に計算
総会60日前 任期満了予定者の確認、後任候補の確認、司法書士への事前連絡 法務 司法書士 代表取締役の変更の有無、員数を欠くおそれの有無を確認。退任役員の権限停止準備を開始
総会30日前 新任役員の就任承諾書・本人確認書類の収集開始、議事録ドラフト作成 法務 招集通知と連動して議案・候補者情報を確定。代表取締役選定の手続(取締役会・互選等)も議事録ドラフトに反映
総会当日 選任決議、就任承諾の確認、総会終結後の代表取締役選定、議事録の作成 法務 【最重要】代表取締役の選定は取締役選任後に行い、実際の開催日時どおりに記録。「重任」「新任」「退任」を正確に整理。辞任届は受領時に日付を確認して保管
総会後
数営業日以内
議事録・株主リスト・就任承諾書・辞任届等を司法書士へ送付 法務 司法書士 2週間の法定期間から逆算して余裕を持って送付。書類不備は補正で遅延する
任期満了(変更発生)から
2週間以内
役員変更登記の申請 司法書士 法定期間(会社法915条1項)。怠ると過料の可能性(会社法976条1号)
登記完了後
速やかに
登記事項証明書の取得、役員任期表の更新、退任役員の権限停止 法務 電子契約アカウント・稟議システム・社内承認権限を停止。対応記録を証跡として保存

役員任期表を作るべき理由

「役員任期表」とは、在任役員全員の役職・就任日・適用される任期・任期満了となる定時株主総会・登記状況を一覧にした管理表です。 これを作ることで、毎年の役員改選作業が「総会準備が始まってから慌てて確認する」ものから、「計画的に動く」ものに変わります。

役員任期表に記載すべき項目

項目 記載内容 更新タイミング
氏名・役職 取締役(監査等委員か否か)・代表取締役・監査役・会計参与・執行役等 就任・退任のたびに更新
会社類型・機関設計 公開会社か否か、取締役会・監査役(会)・監査等委員会・指名委員会等の有無 定款変更のたびに確認
就任日 登記記録上の就任(重任)年月日 登記完了後に確認
適用される任期 1年・2年・4年、定款による短縮・10年伸長の有無、補欠規定の適用 定款変更のたびに確認
任期満了となる定時総会 選任後○年以内に終了する最終事業年度に関する定時総会(○年○月予定) 就任のたびに計算
前回選任決議日 株主総会の選任決議日、代表取締役の選定日 総会後に更新
定款上の員数 取締役○名以上など。退任時に員数を欠くかの判定に使う 定款変更のたびに確認
登記申請日・完了日 変更登記の申請・完了の年月日(最後の登記日の把握にも使う) 登記完了後に記録
✓ 活用のポイント
役員任期表はExcelやスプレッドシートで管理し、毎年の定時株主総会の日程が決まった時点で全員分の満了時期を照合する習慣をつけましょう。 LegalOSでは、この役員任期表を電子的に管理し、満了時期のアラート・承認履歴・証跡保存まで一元化することを目指しています。

非上場会社・オーナー会社こそ注意したい論点

① 取締役の任期10年への伸長をしているかを確認する

「取締役 任期 10年」は、公開会社でない株式会社(株式の全部に譲渡制限がある会社)が、定款で定めた場合にだけ使える仕組みです(取締役は会社法332条2項、監査役は336条2項)。 非上場会社や中小企業であっても、株式の一部に譲渡制限のない会社は公開会社なので伸長できず、また監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の取締役も伸長できません。 伸長の有無は、①登記事項証明書で株式の譲渡制限に関する規定を確認し、②定款の任期条項を確認する、の2段階で判断してください。

10年に伸長している会社では、「10年に一度しか役員改選しない」運用になりがちです。10年ぶりの任期満了に誰も気づかなかった——という事態を防ぐため、任期表で満了時期を管理してください。

⚠ 10年伸長の落とし穴:登記意識の希薄化
任期を10年に伸長すると改選の手間は減りますが、「役員の登記は10年後でいい」という誤った感覚が社内に広がるリスクがあります。任期中でも、役員の辞任・増員、代表取締役の住所変更、商号・目的・本店の変更などがあれば、その都度2週間以内の登記申請が必要です。伸長は改選の頻度を減らす仕組みであり、登記義務そのものがなくなるわけではありません。

② 休眠会社・みなし解散(最後の登記から12年)に注意する

法務省によれば、最後の登記から12年を経過している株式会社は休眠会社(会社法472条)として整理作業の対象となります(特例有限会社は含まれません)。最後の登記以降に登記事項証明書や印鑑証明書の交付を請求していても関係ありません。

全国の法務局では毎年この整理作業を行っており、毎年10月頃に法務大臣による官報公告が行われ、対象会社には登記所から通知書が送付されます。公告から2か月以内に役員変更等の必要な登記の申請、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないと、実際には事業を継続していても、2か月の期間満了時に解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記がされます。登記所からの通知が届かなかった場合でも手続は進みます。

直近の令和7年度は、令和7年10月10日に公告が行われ、同年12月10日までに登記申請または届出がなければ12月11日付けで解散したものとみなされる運用でした。令和8年度の日程は、法務省・法務局の最新の公表を確認してください。

POINT:10年伸長 × 登記の空白は休眠会社リスクに直結する

任期を10年に伸長し、役員の重任登記以外に登記事項の変更がない会社では、改選時期に重任登記を忘れると「最後の登記から12年」に近づきます。

  • 「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしても、必要な登記をしない限り翌年も整理作業の対象になる
  • 届出や登記をしても、それ以前の登記懈怠について過料に処される可能性は残る
  • みなし解散の登記後でも、3年以内に限り株主総会の特別決議で会社を継続でき、その場合は決議から2週間以内に継続の登記が必要

③ オーナー社長一人が唯一の取締役という会社

取締役会を置かない会社では、取締役が1名だけというケースも珍しくありません。 この場合、定款で定めた員数(通常1名以上)を欠くため、任期満了で退任した取締役は後任が就任するまで権利義務を有しますが(会社法346条1項)、選任手続を怠っている状態であることに変わりはなく、登記も放置されがちです。 オーナー社長が自社の役員任期を把握していないことはよくあります。法務・管理部門が先回りしてリマインドする体制が必要です。

④ 子会社・関係会社の役員任期管理

親会社の法務が子会社の役員任期まで管理していないケースは少なくありません。しかし、子会社の役員登記懈怠はグループ全体の内部統制上の問題として露見することがあります。 子会社ごとに機関設計・定款の任期規定・最後の登記日が異なるため、役員任期表をグループ横断で整備しておくことが望ましいです。

⑤ 退任役員の電子契約アカウント・承認権限の停止

退任した役員が電子契約サービスの管理者アカウントを持ったままになるケースがあります。 また、稟議システムや社内承認フローに「役員承認」として設定されたアカウントが残り続けることもあります。 役員任期管理は登記が完了したら終わりではなく、権限停止・アクセス制御の更新まで含めて完結します。

⑥ 重任時の欠格事由チェック

重任の場合も、就任の適格性の確認は必要です。取締役の欠格事由は会社法331条1項各号に定められており、法人、会社法や一定の法律に定める罪により刑に処せられて一定期間を経過しない者などが該当します(監査役にも準用。会社法335条1項)。 なお、破産手続開始の決定を受けて復権していないことは、会社法上の欠格事由ではありません。ただし、会社と役員の関係は委任に関する規定に従うため(会社法330条)、在任中に破産手続開始の決定を受けると委任の終了事由(民法653条2号)により退任となる点には注意が必要です。 反社会的勢力の確認とあわせて「欠格事由に該当しないことの確認」を重任フローに組み込んでおくと、内部統制上の記録にもなります。

POINT:海外居住役員・外国籍役員がいる場合は早めに動く
役員に外国籍の方や海外居住者がいる場合、印鑑証明書や本人確認証明書に代えて、本国官憲や在外公館等が作成する署名(サイン)証明書などが必要になることがあります。取得には現地での手続が必要で、数週間以上かかることもあります。どの書面で代替できるかは役員の国籍・居住地・役職によって異なるため、総会の数か月前から司法書士と必要書類を確認し、収集を始めるスケジュールを組んでください。

実務チェックリスト

以下のチェックリストを、毎年の定時株主総会前後の管理ツールとして活用してください。

  • 会社類型(公開会社か否か)と機関設計を確認しているか
    公開会社か否かは株式の譲渡制限の有無で決まり、上場の有無とは関係ない。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は取締役の任期が1年の特則あり(会社法332条3項・6項)。
  • 定款で役員任期を確認しているか
    任期短縮の定め、公開会社でない会社の10年伸長の定め(会社法332条2項・336条2項)、補欠・増員の定めを毎年確認する。
  • 役員任期表を作成・更新しているか
    就任日・適用任期・任期満了となる定時総会・定款上の員数・最後の登記日を全役員分一覧化する。
  • 任期満了予定者を総会前に確認しているか
    定時株主総会の60日前には満了予定者をリストアップし、後任候補と員数への影響を確認する。
  • 重任でも登記が必要と認識しているか
    任期満了後に間を置かず同じ人が再任された場合も役員変更登記が必要。登記上は「重任」と呼ばれる。
  • 代表取締役の再選定の要否と変更登記を確認しているか
    取締役の任期満了で代表取締役としても退任する。取締役会設置会社・互選型・株主総会選定型では改めて選定されているか、取締役会非設置会社で各取締役が代表する場合は代表者の変更登記の内容を、機関設計に応じて確認する。
  • 登記期限(2週間)を管理しているか
    任期満了等の変更から2週間以内(会社法915条1項)。怠ると代表者等に100万円以下の過料の可能性(会社法976条1号)。
  • 辞任届・就任承諾書・本人確認証明書を整理しているか
    新任(再任を除く就任)か重任かで、本人確認証明書・印鑑証明書の要否が変わる(商業登記規則61条)。
  • 員数を欠く退任がないか確認しているか
    任期満了・辞任で法律・定款の員数を欠く場合は権利義務役員が生じる(会社法346条1項)。速やかに後任を選任する。
  • 最後の登記から12年が近づいていないか
    休眠会社の整理作業の対象になると、公告から2か月以内に登記または届出をしない限りみなし解散となる。
  • 退任役員の権限停止をしているか
    電子契約アカウント・稟議承認権限・社内システムのアクセス権を速やかに停止・変更し、記録を残す。
  • 代表取締役の住所に変更がないか確認しているか
    代表取締役の住所は登記事項。変更があれば2週間以内に変更登記が必要。重任登記の準備段階で現住所を確認し、変更があれば住所変更の登記もあわせて申請する。

よくある誤解・FAQ

Q同じ人が取締役を続ける場合も、登記が必要ですか?
はい、必要です。任期が満了した後、間を置かずに同じ人が再任された場合でも、任期満了により退任した役員が再び就任することになり、役員の登記事項に変更が生じます。法務省はこれを登記上「重任」と呼ぶと説明しています。株式会社では、役員の任期満了から2週間以内に役員変更登記を申請する必要があります(会社法915条1項)。
Q取締役と監査役の任期は何年ですか?
取締役の任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(会社法332条1項)、監査役の任期は選任後4年以内の同様の時点までです(会社法336条1項)。取締役の任期は定款や株主総会の決議で短縮できますが、監査役の任期には短縮の規定がありません(補欠監査役の特則を除く)。また、監査等委員会設置会社の監査等委員でない取締役と、指名委員会等設置会社の取締役は1年です(会社法332条3項・6項)。
Q上場会社や公開会社の取締役は必ず任期1年ですか?
いいえ。そもそも「上場会社」と会社法上の「公開会社」は同義ではありません。そのうえで、上場会社であること、あるいは公開会社であることだけを理由に、取締役の任期が一律1年になるわけではありません。会社法上の1年任期は、監査等委員会設置会社の監査等委員でない取締役(332条3項)と指名委員会等設置会社の取締役(332条6項)の特則です。監査役会設置会社などの取締役は原則2年で、1年任期となっている場合は定款による短縮によるものです。会社法上の「公開会社」は株式の譲渡制限の有無で決まり、上場しているかどうかとは関係ありません。
Q非公開会社は取締役の任期を10年にできますか?
定款で定めれば可能です。公開会社でない株式会社(株式の全部に譲渡制限がある会社)は、定款によって取締役の任期を選任後10年以内(会社法332条2項。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)、監査役の任期を選任後10年以内(会社法336条2項)に終了する事業年度の定時総会終結時まで伸長できます。「中小企業だから」「非上場だから」自動的に10年になるわけではないので、株式の譲渡制限と定款の任期条項を確認してください。伸長していても、辞任・増員・代表者の住所変更などがあればその都度登記が必要です。
Q代表取締役の重任も登記が必要ですか?
はい、必要です。代表取締役の地位は取締役の地位に基づくものであるため、取締役の任期が満了すれば代表取締役としても退任します。取締役会設置会社では取締役の選任後に取締役会で代表取締役を選定し、取締役会非設置会社では定款所定の方法(定款、互選、株主総会決議。定めがなければ各取締役が代表)に従います。これに基づく代表取締役の変更登記も、取締役の重任登記とあわせて申請します。
Q任期満了や辞任をすると、必ず権利義務役員として残るのですか?
いいえ。会社法346条1項の権利義務役員は、役員が欠けた場合、または法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合に、任期満了または辞任により退任した役員が後任の就任まで権利義務を有する制度です。員数を欠かない場合は、任期満了・辞任によりそのまま退任します。員数を欠く場合には、後任の選任手続を速やかに行う必要があり、怠ると過料の対象となりえます(会社法976条22号)。
Q登記を忘れるとどうなりますか?
登記すべき期間の経過後に登記申請をしても、期間内の申請を怠った代表者等は、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法976条1号)。過料は刑事罰ではありません。また、役員変更等の登記をしないまま最後の登記から12年を経過すると休眠会社の整理作業の対象となり、公告から2か月以内に必要な登記または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしなければ、解散したものとみなされます(会社法472条)。
Q司法書士に任せれば、社内での管理は不要ですか?
いいえ、社内管理は不可欠です。司法書士は登記申請の代理人であり、「いつ誰の任期が来るか」「総会の議事録が正確に作られているか」「代表取締役の選定が行われているか」という機関運営の管理は、会社(法務・管理部門)が担うべきことです。司法書士への情報提供が遅れれば登記期限を過ぎ、議事録に不備があれば補正が必要になります。「丸投げ」ではなく、法務が司法書士と連携して管理する体制を作ることが重要です。

まとめ

この記事のポイント

  • 役員任期管理は「登記だけの話」ではなく、株主総会・取締役会・代表権・内部統制に連動する機関運営の基本
  • 取締役の任期は原則2年(会社法332条1項)、監査役は原則4年(会社法336条1項)。いずれも「選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」
  • 1年任期は監査等委員会設置会社の監査等委員でない取締役・指名委員会等設置会社の取締役の特則。「公開会社だから1年」ではない
  • 公開会社でない株式会社では、定款により取締役の任期を最長10年まで伸長できる。ただし、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の取締役にはこの伸長規定は適用されない。監査役を置く非公開会社では、監査役についても定款で最長10年まで伸長できる。「非上場だから10年」ではなく、譲渡制限と定款を確認する
  • 任期満了後に同じ人が再任されても役員変更登記が必要で、登記上は「重任」と呼ばれる
  • 代表取締役の地位も取締役の任期満了に伴って終了するため、機関設計に応じて代表者の再選定の要否と変更登記を確認する(取締役会非設置会社で各取締役が代表する場合は、別途の選定手続はない)
  • 権利義務役員(会社法346条1項)は、任期満了・辞任により員数を欠く場合に限られる
  • 登記は変更から2週間以内。怠ると代表者等に100万円以下の過料の可能性。最後の登記から12年で休眠会社の整理作業の対象
  • 役員任期表を作成し、定款・機関設計の確認を年1回の棚卸しタスクとして組み込むことが最も効果的な予防策

役員任期管理は、一度仕組みを作れば毎年の作業を大幅に省力化できます。 「今年もまた気づいたら直前だった」を繰り返さないために、まず役員任期表を作るところから始めてみてください。

確認した主な一次資料・公的資料(2026年9月17日時点)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の会社の任期計算・登記手続は、定款・登記記録を確認のうえ、司法書士・弁護士・管轄法務局にご確認ください。

次のステップ
このシリーズでは、第25話「株主総会で法務が本当に準備するべきこと5選」で総会準備の全体フローを、第24話「取締役会は何を決める場所か」で取締役会の決議事項と議事録管理を解説しています。本記事とあわせて読むことで、機関運営実務の全体像が整理できます。

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