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「電子取引データ、PDFで保存してるから大丈夫です」

――この一言を、あなたの組織で耳にしたことはありませんか。

残念ながら、この認識は致命的な誤解です。電子帳簿保存法(電帳法)が問うているのは「保存しているかどうか」ではなく、「検索できるか」「改ざんを防止できるか」「その運用が実効的に回っているか」です。

2024年1月の完全義務化から2年。旧来の宥恕措置は終了し、いわば「実力行使期間」に入りました。なお、対応が間に合わない場合に備えた「新たな猶予措置(相当の理由がある場合の要件免除)」も制度上は存在しますが、実務上は二重管理になりやすく、監査・調査対応の観点では早期の平常運用化が安全です(国税庁パンフレット参照)。

そして令和7年度税制改正では重加算税の加重措置に関する新たな規定も整備されました。

この記事では、法務・IT実務の視点から、単なる制度解説ではなく、「監査・税務調査で何を聞かれるか」という出口から逆算した実務対応を解説します。

1. いま起きている3つの”危険な誤解”

誤解① 「PDFで保存しているからOK」

電帳法が要求しているのは保存形式ではありません。保存した電子データについて、取引年月日・取引金額・取引先名の3項目で検索可能な状態を維持すること、そして改ざん防止措置が実効的に機能していることが求められます(電子帳簿保存法第7条、同施行規則第4条)。

PDFをフォルダに格納しているだけでは、検索要件を満たしているとは言えません。

誤解② 「システムを導入したから対応完了」

ツールを入れただけでは「対応完了」にはなりません。税務調査や監査で問われるのは、「そのシステムが要件通りに運用されているか」です。具体的には、事務処理規程の整備状況、検索機能の実効性テスト、訂正削除履歴の確認体制が審査対象になります。

誤解③ 「うちは中小企業だから関係ない」

電子取引データの保存義務は企業規模を問わず発生します。

ただし、一定の中小事業者(基準期間=前々事業年度の売上高が5,000万円以下等)については、税務職員のダウンロードの求めに応じられる体制を整えることを条件に、検索要件の全部が不要となる取扱いがあります(国税庁パンフレット)。

⚠️ 注意:「5,000万円以下=何もしなくてよい」ではありません。検索要件が免除される余地があるだけで、データの保存義務自体は残ります。また、フォルダ名やファイル名に規則性を持たせていないと、税務調査時にダウンロードに時間がかかり実地調査が長引くリスクがあります。

※検索要件の全部免除は、一般に「基準期間の売上高が5,000万円以下」等の要件に加え、調査時にダウンロードの求めに応じられる体制を前提とする整理です(国税庁 一問一答参照)。
よくある誤解実際の要件リスク
「PDFで保存してればOK」 検索可能性(3項目)+改ざん防止措置が必要 経費否認 追徴課税
「システム導入済み=対応完了」 運用の実効性(検索テスト・規程遵守・ログ)が問われる 保存要件不備 統制不備
「中小だから関係ない」 保存義務は全事業者。検索免除はDL体制が前提 重加算税 調査長期化

2. 電帳法の2階建て構造を理解する ― 真実性と可視性

電帳法の保存要件は、大きく「真実性の確保」「可視性の確保」の2階建て構造になっています。自社がどちらの「階」で躓いているかを整理することが、対応の第一歩です。

【2階】可視性の確保(検索・表示)
保存した電子データを速やかに検索・表示できる状態にしておくこと
📌 取引年月日(範囲指定)|取引金額(範囲指定)|取引先名
【1階】真実性の確保(改ざん防止)
保存データが事後的に改ざんされていないことを担保する仕組み
📌 タイムスタンプ | 訂正削除履歴 | 訂正削除不可のシステム | 事務処理規程

▲ 電帳法の保存要件:2階建て構造(いずれかの階が欠けると要件不備)

【1階】真実性の確保 ― 4つの選択肢

措置概要コスト感実務負荷
① タイムスタンプ 受領後速やかにタイムスタンプを付与 (自動付与可能なシステムあり)
② 訂正削除履歴 訂正・削除の事実と内容が確認できるシステム (JIIMA認証クラウド等)
③ 訂正削除不可 そもそも訂正・削除ができないシステム (WORMストレージ等)
④ 事務処理規程 規程を整備し、それに従った運用を実施 (形骸化リスク大)
⚠️ 実務で最も多いパターン:「保存はしているが検索ができない」――つまり真実性は確保できているが可視性が漏れている状態です。特に④の事務処理規程で対応している企業は、規程の形骸化にも要注意です。

3. 担当者のリアル ― 発生する具体的業務

① 電子取引の棚卸しと保存要件の遵守

まず必要なのは、自社でどのような電子取引が発生しているかの全量把握です。

取引経路対象書類の例見落としリスク
メール請求書PDF、見積書、注文書個人フォルダ保存
クラウドサービス電子契約書、SaaS利用規約同意書退職者アカウント
ECサイト領収書(Amazon・楽天等)ダウンロード期限切れ
経費精算交通費IC明細、カード利用明細紙との混在
EDI取引受発注データ、納品書システム仕様確認漏れ
SaaSサブスク請求、ライセンス証書移行時のデータ消失

これらについて、現在の保存場所、保存形式、改ざん防止措置の有無を一覧化します。特に、現場担当者が個人のメールフォルダやデスクトップに証憑を保存しているケースは、統制上の重大なリスクです。

② 検索機能の整備と実効性テスト

法定の3要素(取引年月日、取引金額、取引先名)で検索可能な体制を整えた上で、実際に検索が機能するかどうかのテストを実施してください。

税務調査で実際に聞かれる質問の例です:

「検索画面を見せてください」
「2024年7月のA社との取引を抽出してください」
「金額10万円以上20万円以下で範囲指定検索できますか?」
「部分一致検索はできますか?」
「CSVでエクスポートできますか?」
🔴 ここで詰まる企業が非常に多い。システム上は検索機能があっても、実際にやってみると抽出に時間がかかる、部分一致ができない、CSV出力が動かない、といった事態が頻発します。年に1回は模擬テストを実施すべきです。

③ 事務処理規程の整備と”形骸化”の防止

タイムスタンプや訂正削除履歴管理システムを導入していない場合、事務処理規程の整備・運用が改ざん防止措置の柱になります。

しかし、実務上最も多いリスクは「規程は作ったが、現場がその通りに運用していない」という形骸化です。

例えば、規程では「毎月10日にチェックする」と定めているのに、実際には半年前から誰も確認していない。こうしたケースは、税務調査で「規程違反=保存要件不備」と指摘される最大の弱点です。

規程を作って終わりではなく、運用記録(ログ)を残す仕組みまで設計してください。

📋 残すべき証跡(監査で強いエビデンス)

  • 年1回以上の検索テスト記録(日付/検索条件/結果/是正措置)
  • 権限棚卸し記録(誰が閲覧・編集できるか、退職者アカウントの処理状況)
  • バックアップ実施ログ(いつ/どこへ/復元テストの有無)
  • 規程に基づく点検チェック表(実施者サイン付き、実施日明記)

④ 見落とされがちな運用上の穴

  • 退職者アカウントの管理:クラウドサービスで証憑を管理している場合、退職者のアカウント削除によりデータアクセス不能になるリスク
  • クラウド移行時のデータ移管:システムリプレイス時に過去データが適切に移管されているか
  • 委託先の保存状況:業務委託先の保存方法が要件を満たしているか確認する責任は委託元にある

4. 【2026年最新】令和7年度税制改正のインパクト

重加算税10%加重措置の適用除外

電帳法では、電子取引データに関する隠蔽・仮装行為があった場合、通常の重加算税(35%)にさらに10%が加重され、合計45%が課されます(電帳法第8条第5項)。

令和7年度税制改正により、国税庁長官が定める基準に適合するシステム(特定電子計算機処理システム)を使用し、一定の要件を満たして電子取引データの授受・保存を行っている場合には、この10%加重措置の適用対象から除外されることになりました(財務省:令和7年度税制改正大綱)。

従来(現行)改正後(令和9年1月1日〜)
隠蔽・仮装行為の場合 重加算税 35% + 10%加重 = 45% 特定システム利用+届出で10%加重を除外
→ 重加算税 35%止まり
青色申告65万円控除 ①優良電子帳簿 or ②e-Tax申告 ①②に加え、③特定システム利用も追加

適用除外のために必要な要件

  • 訂正・削除の事実および内容を確認できるシステム(訂正・削除ができないシステムを含む)を使用して電子データの授受・保存を行うこと
  • 金額に係る記録事項を訂正・削除した上で帳簿に記録した場合、その事実・内容が確認できること
  • あらかじめ所轄税務署長に届出書を提出していること

対象となる「特定電磁的記録」(例)

  • デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(Invoice JP PINT / JP Self-Billing)
  • 預貯金口座における銀行取引明細等の決済データ

※上記は主な例であり、詳細は国税庁の通達・一問一答等で今後明確化されます(国税庁資料参照)。

📅 適用時期:この適用除外は「令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税」から適用されます。たとえば3月決算法人なら、2026年4月1日開始→2027年3月31日終了の事業年度(申告期限は通常2027年5月頃)以降が射程に入ります。今のうちから対応を進めておくことで、将来のリスク軽減につながります。

青色申告特別控除65万円の適用要件拡大

上記の特定電子計算機処理システムを利用して適切に電子データを保存している場合、青色申告特別控除65万円の適用要件を満たすものとして認められるようになりました。従来は優良な電子帳簿の保存またはe-Taxによる申告が要件でしたが、選択肢が広がった形です(令和9年分以後の所得税に適用)。

5. 担当者に刺さる「本当のリスク」

🔴

経費否認のリスク

電子取引データの保存要件を満たしていない場合、当該取引に係る経費の否認リスクが高まります。保存不備は税務調査で指摘対象となり、追徴課税につながる可能性があります(否認の判断は個別事案ごとの評価)。

🔴

重加算税リスク(最大45%)

保存義務違反が悪質と判断された場合、重加算税の対象に。電子データに関する隠蔽・仮装行為には10%の加重措置があるため(令和9年以降は要件次第で除外)、ペナルティは極めて重い。

🔴

内部統制不備 → 監査報告書への影響(上場企業)

J-SOX評価において、IT全般統制(ITGC)、業務処理統制、グループ横断統制の不備と判断されれば、監査報告書への影響、改善勧告、さらにはレピュテーションリスクに発展。

🟡

税務調査の長期化リスク

検索機能が実効的に動かない場合、調査官のダウンロード要請への対応が遅れ、実地調査が長期化。業務への影響は無視できない。

リスク種別発生条件影響度対象
経費否認・追徴 保存要件不備 全企業
重加算税(10%加重) 隠蔽・仮装行為 全企業
J-SOX統制不備 IT統制・証跡の欠如 上場企業
調査長期化 検索機能不全 全企業
レピュテーション 統制不備の開示 上場企業

6. 上場企業が直面する追加論点

電帳法は”税務対応”であると同時に、上場企業ではAP/購買プロセスの統制証跡としてJ-SOXの評価線上に載ります。問われるのは「要件充足」ではなく、統制の設計妥当性・運用有効性・証跡の残し方です。

監査法人が実際に聞く質問

「電子取引の保存対象の網羅性はどう担保していますか?」
「海外子会社の電子取引データはどのように管理していますか?」
「訂正削除履歴のレビューは誰が、いつ実施していますか?」
「検索テストの実施記録はありますか?」
「退職者アカウントの統制はどうなっていますか?」
論点中小企業上場企業(追加要件)
保存義務 電子取引データの保存 +グループ横断の統一ルール
検索要件 3要素の検索+DL対応 +検索ログ保存+抜き打ちテスト
改ざん防止 4措置のいずれか +アクセス権限管理(ITGC連動)
監査対応 税務調査対応 +監査法人レビュー+取締役会報告
規程・証跡 事務処理規程 +運用テスト記録+年次内部監査

上場企業向けロードマップ

【0〜3か月】基盤整備

電子取引の全社棚卸し(本社・子会社・経理/調達/販売/経費精算/SaaS)を実施し、電子取引マッピング図、保存フロー図、リスクマトリクスを作成。並行して、Gap分析と監査法人との事前協議を進めます。

【3〜6か月】体制構築

Gap分析の結果に基づくシステム改修、事務処理規程の改定、子会社への展開。改ざん防止措置の高度化(タイムスタンプ付与、WORMストレージ、ログ監視体制)もこのフェーズで検討。

【6〜12か月】運用検証

運用テスト、抜き打ち検索テスト、ITGC連携確認。年次の内部監査サイクルに組み込み、監査法人レビューを経て取締役会への報告まで完了。

7. いつまでに何をやるべきか ― 実務タイムライン

時期やるべきこと担当成果物
即時〜3か月 電子取引の棚卸し(全量把握) 経理+情シス 電子取引マッピング図
即時〜3か月 保存方法の現状分析(真実性・可視性) 法務+経理 Gap分析レポート
即時〜3か月 検索要件の実効性テスト 情シス+経理 検索テスト記録
即時〜3か月 事務処理規程の整備/見直し 法務 規程(改訂版)
6か月以内 システム改修(検索強化、ログ保存) 情シス 要件定義書+改修完了報告
6か月以内 運用マニュアル整備+社内教育 法務+経理+情シス マニュアル+研修記録
通年(税務調査前) 模擬検索テスト+証憑抜き打ち確認 経理+内部監査 テスト記録+是正報告
通年(税務調査前) 規程運用記録の蓄積+外部監査 法務+経理 点検チェック表+監査報告

8. 担当者タイプ別 ― 今日からやるべき1つのアクション

経理担当者の方へ

「検索テストを今すぐやってください。」
法定3要素(取引年月日、取引金額、取引先名)で、実際にデータを抽出できるか試してみてください。範囲指定検索と部分一致検索も忘れずに。5分でできるテストが、将来の追徴課税リスクを回避します。

法務担当者の方へ

「事務処理規程は、監査証拠になります。」
規程が「作っただけ」になっていないか確認してください。運用記録(誰が、いつ、何を確認したか)が残る仕組みになっているか。残っていなければ、規程があっても保存要件を満たしていると主張できない可能性があります。

情報システム部門の方へ

「バックアップの証跡はありますか?」
電子取引データのバックアップ体制は整っていますか。退職者アカウントの管理、クラウドサービスの契約終了時のデータ移管手順は明確ですか。これらはIT統制の観点から、監査法人のレビュー対象です。

9. 実務チェックリスト

📁 保存設計

  • 電子取引の保存先を把握している(全量を一覧化済み)
  • 改ざん防止措置を講じている(タイムスタンプ/システム/規程のいずれか)
  • 訂正削除の履歴が確認できる状態にある

🔍 検索機能

  • 取引年月日、取引金額、取引先名で検索可能
  • 範囲指定検索が可能(日付・金額)
  • 実際に検索テストを実施済み
  • CSVエクスポートが可能

📝 事務処理規程

  • 事務処理規程を制定済み
  • 現場が規程に従って運用している(形骸化していない)
  • 運用記録(ログ)が残る仕組みがある

🏢 統制・監査対応(上場企業)

  • 電子取引マッピング(全社横断)が完成している
  • グループ統一ルールを制定している
  • IT全般統制(ITGC)と連動している
  • 年1回以上の内部監査を実施している
  • 監査法人のレビューを受けている

🎯 税務調査対応

  • 模擬検索テストを実施している
  • 証憑の抜き打ち確認を実施している
  • 税務調査対応シミュレーション(ロールプレイ)を実施したことがある

10. まとめ ― 電帳法は”制度対応”ではなく”内部統制設計”の問題である

電帳法対応を「経理の仕事」「ITの問題」として矮小化している企業は、いずれ痛い目に遭います。

電帳法が本質的に問うているのは、「組織として、電子取引データの信頼性をどう担保し、それを第三者に説明できるか」という統制の問題です。

令和7年度税制改正で重加算税の加重措置除外という「飴」が用意された一方で、対応が不十分な企業に対する税務調査はますます厳格化しています。

「対応しました」で終わらせず、「運用が回っている証拠」を積み上げてください。監査で問われるのは、制度への適合ではなく、運用の実効性です。

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