📋 印紙税シリーズ|第3話

最終更新:2026年4月 / 適用税額:令和6年4月1日以降適用分(国税庁公表)

「この契約書にいくらの印紙を貼ればいいか、毎回調べている」「請負と委任で税額が違うと聞いたが、基準がよくわからない」——こうした声は、契約実務の現場で繰り返し聞かれます。

印紙税額は文書の号区分記載金額の組み合わせで決まります。ただし号区分の判断だけでなく、「税込か税抜か」「金額不記載の場合はどうなるか」「変更契約書の記載金額をどう読むか」といった実務の落とし穴も多くあります。

本記事では、主要文書別の印紙税額早見表から、第1・2・7・17号文書の詳細税額表、記載金額の読み方、消費税の扱い、変更契約書まで、企業法務・総務・経理担当者が一次確認できる保存版として整理します。

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まず結論|印紙税額は「号区分」と「記載金額」で決まる

🔑 印紙税額を確認する3ステップ

  • ① 号区分を確認する——その文書が印紙税法別表第一のどの号に該当するかを判断する
  • ② 記載金額を確認する——税込・税抜の扱い、金額不記載の場合の判断を行う
  • ③ 税額表を参照する——号区分と記載金額の交差点が印紙税額になる

最終的な印紙税額は個別の契約内容により異なります。判断が分かれる場合は、税理士または所轄税務署への確認をお勧めします。

文書の号区分を確認——請負か委任か、継続取引の基本か個別発注書かによって号が変わる

記載金額を確認——税抜金額か税込金額か、消費税が区分記載されているかを確認する

軽減措置の対象か確認——不動産譲渡・建設工事請負は令和9年3月31日まで軽減税率あり

税額表と照合——号区分×記載金額で印紙税額が決まる

電子契約か紙契約かを確認——電子契約は原則として課税文書を「作成」しないため印紙税不要

印紙税額の決まり方

印紙税は、印紙税法(昭和42年法律第23号)別表第一(課税物件表)に掲げられた課税文書を作成した者が、その文書に印紙を貼付・消印することで納税する税です。

課税物件表は第1号から第20号まで設けられており、各号に対応する文書の種類と税額が定められています。企業法務の実務でよく登場するのは次の4つです。

号区分 主な対象文書 税額の特徴
第1号 不動産の譲渡・地上権設定・土地賃借権・消費貸借・運送 記載金額に応じて変動。不動産譲渡は軽減措置あり
第2号 請負(システム開発・制作・工事・一般請負) 記載金額に応じて変動。建設工事は軽減措置あり
第7号 継続的取引の基本となる契約書(取引基本契約・業務委託基本契約等) 一律4,000円(記載金額に関わらず)
第17号 売上代金の受取書・領収書・受取書 記載金額に応じて変動。5万円未満は非課税

📌 根拠法令:印紙税法(昭和42年法律第23号)別表第一(課税物件表)。軽減措置は租税特別措置法第91条。現行税額は「印紙税額一覧表(令和6年4月1日以降適用分)」(国税庁公表)に基づきます。

主要文書別|印紙税額早見表

実務で頻出する主要文書について、号区分・税額の考え方・注意点を一覧にまとめます。

文書の種類 主な号区分 税額の考え方 実務上の注意点
不動産売買契約書 第1号の1 記載金額に応じて変動
軽減措置対象
令和9年3月31日まで軽減税率。10万円以下は軽減対象外
建設工事請負契約書 第2号 記載金額に応じて変動
軽減措置対象
令和9年3月31日まで軽減税率。100万円以下は軽減対象外
一般の請負契約書(建設以外) 第2号 記載金額に応じて変動 軽減措置なし(本則税率)。1万円未満は非課税
システム開発契約書 第2号 記載金額に応じて変動 準委任型の場合は課税されないケースもあるが、成果物があれば通常第2号
制作委託契約書 第2号 記載金額に応じて変動 成果物の納品が伴う請負型か、業務の遂行のみの委任型かで号区分が変わる
取引基本契約書
(売買取引基本含む)
第7号 一律4,000円 継続的取引の基本となる契約書。記載金額は関係しない
業務委託基本契約書 第7号 または 不課税 第7号なら一律4,000円 継続的な取引の基本を定めるものは第7号。単発・準委任のみなら課税されないことも
注文請書 第2号(請負型) 記載金額に応じて変動 注文書は通常不課税だが、注文請書は相手の承諾証書として課税文書になりうる
覚書・合意書 内容による 内容次第 タイトルでなく内容で判断。契約金額の変更を定めるものは課税文書になりうる
変更契約書 原契約の号区分 変更後の金額・増減額による 増額変更の場合は増額分が記載金額に。減額変更は記載金額なしとして200円
領収書・受取書 第17号 記載金額に応じて変動 5万円未満は非課税。営業に関しないものも非課税
電子契約 原則、印紙税なし 電子的に作成した文書は印紙税法上の「課税文書」に該当しない(書面の作成なし)

第1号文書|不動産譲渡等に関する契約書の印紙税額

第1号文書には、不動産の譲渡・地上権の設定・土地の賃借権の設定・消費貸借・運送に関する契約書が含まれます。これらは細分類(第1号の1〜第1号の4)があり、それぞれ記載金額に応じた税額が異なります。

第1号文書(本則税率)——消費貸借・運送等(軽減措置の対象外)

以下は消費貸借契約書(金銭消費貸借)・運送契約書・営業権譲渡契約書など、軽減措置の対象外となる第1号文書の本則税率です。不動産譲渡契約書については後掲の軽減税率表を参照してください。

記載金額 印紙税額(本則)
1万円未満非課税
10万円以下200円
10万円超 50万円以下400円
50万円超 100万円以下1,000円
100万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下10,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円
5,000万円超 1億円以下60,000円
1億円超 5億円以下100,000円
5億円超 10億円以下200,000円
10億円超 50億円以下400,000円
50億円超600,000円
記載金額なし200円
※ 印紙税法別表第一 第1号文書(本則)

不動産譲渡契約書の軽減税率(令和9年3月31日まで)

⚠️ 軽減措置の対象と条件:不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものが対象です(租税特別措置法第91条)。10万円以下は本則の200円。変更契約書・補充契約書も対象となります。令和9年4月以降の延長可否は未定です。

記載金額 本則税率 軽減後税率
1万円未満非課税非課税
10万円以下200円200円(対象外)
10万円超 50万円以下400円200円
50万円超 100万円以下1,000円500円
100万円超 500万円以下2,000円1,000円
500万円超 1,000万円以下10,000円5,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万円超 1億円以下60,000円30,000円
1億円超 5億円以下100,000円60,000円
5億円超 10億円以下200,000円160,000円
10億円超 50億円以下400,000円320,000円
50億円超600,000円480,000円
※ 租税特別措置法第91条。軽減期間:平成26年4月1日〜令和9年3月31日。出典:国税庁「印紙税額一覧表(令和6年4月1日以降適用分)」

第2号文書|請負契約書の印紙税額

第2号文書は請負に関する契約書です。システム開発、制作委託、建設工事など、業務の成果物(仕事の完成)を引き渡す請負型の契約書が該当します。

なお、業務の遂行のみを委託する準委任・委任型の業務委託契約書は、第2号文書に該当しない場合があります(詳細は第4話「業務委託契約書に印紙税はかかる?」参照)。

第2号文書(本則税率)——建設工事以外の請負契約書

記載金額 印紙税額(本則)
1万円未満非課税
100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下1,000円
300万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下10,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円
5,000万円超 1億円以下60,000円
1億円超 5億円以下100,000円
5億円超 10億円以下200,000円
10億円超 50億円以下400,000円
50億円超600,000円
記載金額なし200円
※ 印紙税法別表第一 第2号文書(本則)。1万円未満は非課税。

建設工事請負契約書の軽減税率(令和9年3月31日まで)

⚠️ 軽減措置の対象と条件:「建設工事の請負に係る契約」に基づき作成される請負契約書のうち、記載金額が100万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものが対象です(租税特別措置法第91条)。100万円以下は本則の200円。設計委託や工事監理契約は「建設工事の請負」に含まれない場合があり、軽減対象外となることがある点に注意が必要です。

記載金額 本則税率 軽減後税率
1万円未満非課税非課税
100万円以下200円200円(対象外)
100万円超 200万円以下400円200円
200万円超 300万円以下1,000円500円
300万円超 500万円以下2,000円1,000円
500万円超 1,000万円以下10,000円5,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万円超 1億円以下60,000円30,000円
1億円超 5億円以下100,000円60,000円
5億円超 10億円以下200,000円160,000円
10億円超 50億円以下400,000円320,000円
50億円超600,000円480,000円
※ 租税特別措置法第91条。軽減期間:平成26年4月1日〜令和9年3月31日。出典:国税庁「印紙税額一覧表(令和6年4月1日以降適用分)」

第7号文書|継続的取引の基本となる契約書は一律4,000円

第7号文書は「継続的取引の基本となる契約書」です。税額は記載金額に関わらず一律4,000円という点が、第1号・第2号文書と大きく異なります。

第7号文書の概要

項目 内容
税額 一律4,000円(記載金額の大小に関わらず一定)
要件 ①営業者間で継続して行われる取引の基本を定めるもの、②複数の取引に共通して適用される条件(目的物・数量・単価・対価・支払い方法・債務不履行・解除等)のいずれかが含まれる
対象外となる場合 契約期間が3か月以内であり、かつ更新の定めがないもの

第7号文書の対象となる主な契約書

文書の種類 第7号該当 注意点
売買取引基本契約書(取引基本契約書) 該当 継続的な商品売買の基本条件を定めるもの
業務委託基本契約書(継続的・複数回の取引) 該当 継続的・複数の発注を前提とする基本契約
代理店契約書・販売店契約書 該当 継続的取引関係の基本を定めるもの
継続的請負の基本となる契約書 該当する場合あり 個別発注書が別途発行される構造のもの
NDA(秘密保持契約書)単体 通常、非該当 単独では「取引の基本」を定めていない
単発の業務委託契約書(1回限り) 非該当 継続性がなければ第7号に該当しない
3か月以内の期間限定・更新なしの基本契約 非該当 印紙税法上の除外規定による

📌 第2号文書と第7号文書の混同に注意:「業務委託基本契約書」という名称の文書でも、内容によって第2号(請負型)に該当する場合と第7号文書に該当する場合があります。個別の発注書に金額が記載され、基本契約自体は総額を定めていない場合は、基本契約書は第7号として4,000円になる一方、個別の注文請書が第2号文書として記載金額に応じた印紙税の対象となりえます。

号区分の所属決定ルール——第1号・第2号と第7号が重複する場合

一つの契約書が「第2号(請負)」と「第7号(継続的取引の基本)」の両方の性質を持つ場合、どちらの号として扱うかは記載金額の有無で決まります(印紙税法基本通達 第17条関係)。

状況 適用される号区分 実務例
第1号・第2号第7号の両方に該当し、記載金額がある 第1号・第2号が優先(記載金額に応じた税額) 基本契約書に個別発注の総額や上限金額を記載してしまった場合など
第1号・第2号第7号の両方に該当し、記載金額がない 第7号が優先(一律4,000円) 継続的請負基本契約書に総額を記載せず、個別発注書に金額を委ねている場合など
※ 印紙税法基本通達(第17条関係)に基づく所属決定ルール。基本契約書への金額記載の有無が号区分と税額を大きく左右するため、契約書設計の段階から意識することが重要です。

⚠️ 実務上のリスク:基本契約書に金額を書くと号区分が変わる:たとえば「継続的業務委託基本契約書(請負型)」に「総発注予定額:上限1,000万円」と記載すると、第7号ではなく第2号文書として扱われ、印紙税額が4,000円から20,000円に変わる可能性があります。個別発注金額は発注書に記載し、基本契約書は総額を定めない設計が実務上の原則です。

第17号文書|領収書・受取書の印紙税額

第17号文書は売上代金の受取書(領収書・受取書・レシートなど)です。受取金額が5万円未満のものは非課税です。また、営業に関しない個人間のもの、クレジットカード払いの領収書(クレジット払い旨の記載があるもの)なども課税対象外となる場合があります。

受取金額(記載金額) 印紙税額
5万円未満非課税
5万円以上 100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下600円
300万円超 500万円以下1,000円
500万円超 1,000万円以下2,000円
1,000万円超 2,000万円以下4,000円
2,000万円超 3,000万円以下6,000円
3,000万円超 5,000万円以下10,000円
5,000万円超 1億円以下20,000円
1億円超 2億円以下40,000円
2億円超 3億円以下60,000円
3億円超 5億円以下100,000円
5億円超 10億円以下150,000円
10億円超200,000円
受取金額の記載なし200円
※ 印紙税法別表第一 第17号文書。出典:国税庁タックスアンサーNo.7141

✅ 5万円の判断基準とインボイス制度:消費税額等が区分記載されている場合は、税抜金額で5万円未満かどうかを判断します。「本体価格45,000円+消費税4,500円(合計49,500円)」と明記されていれば、本体価格45,000円が5万円未満となるため非課税です。消費税額が区分されず「49,500円」とだけ記載されていれば、課税対象(200円)となります。なお、適格請求書(インボイス)の形式で消費税額が明示されている場合も、区分記載として認められます(国税庁タックスアンサーNo.7124)。令和5年10月以降のインボイス対応済み領収書は、この観点でも整合しています。

記載金額の読み方

印紙税の「記載金額」は、文書に記載された金額をそのまま使うのではなく、印紙税法の定める読み方に従います。以下の判断表で主なケースを整理します。

記載のパターン 記載金額の扱い 実務上の注意
契約金額が明記されている その金額 最も単純なケース
税抜金額と消費税額等が区分記載されている 税抜金額(本体価格) 「100万円+消費税10万円」→記載金額は100万円
税込金額のみ記載されている 税込金額全体 「110万円(税込)」→記載金額は110万円。消費税が区分されていないため
単価だけ記載・数量未定 記載金額なし扱い 単価のみでは総額が確定しないため。ただし税務当局の判断によるケースもあり
単価と数量から総額が算出できる 算出された総額 「単価100万円×3件=合計300万円」と計算できる場合は300万円
上限金額だけ記載されている 上限金額 「上限500万円」と記載されていれば500万円。慎重に判断を
月額報酬と契約期間が記載されている 月額×期間=総額 「月額50万円×12か月」→600万円が記載金額になりうる
自動更新条項がある場合 原則、当初期間の総額 自動更新後の金額は通常含めない。ただし個別判断が必要
契約金額が未定・後日決定 記載金額なし扱い(200円) 第2号・第1号文書の「記載金額なし」として200円
複数の請負金額が記載されている 合計金額 工事A500万円+工事B300万円→800万円。第2号文書なら20,000円

税込・税抜・消費税額等の扱い

消費税の扱いは印紙税の実務で最も誤りが多い論点のひとつです。ポイントは「消費税額等が明確に区分記載されているかどうか」で判断が分かれることです(国税庁タックスアンサーNo.7124)。

記載パターン 記載金額(印紙税の判断基準) 具体例
「報酬100万円+消費税10万円」と区分記載 税抜金額(100万円) 第2号文書なら200円
「報酬110万円(税込)」とのみ記載 税込金額(110万円) 第2号文書なら400円
「消費税別途」とのみ記載し消費税額の記載なし 本体価格のみを記載金額として扱う(明確な区分記載とみなされる余地あり) 「100万円(消費税別途)」→100万円で判断
消費税額が計算できるが区分記載されていない 税込金額 区分記載されていなければ税込金額全体が記載金額
消費税率変更時の条項がある場合 作成時点の税率で計算した税込または税抜金額 個別判断が必要。不明確な場合は税務署に確認を
免税事業者との契約の場合 契約書に記載された金額(消費税に相当する額が含まれていても変わらない) 免税事業者かどうかは印紙税の扱いには直接影響しない

⚠️ 実務上のポイント:「消費税別途」とだけ記載した場合の扱いは、文書の記載内容によって判断が分かれることがあります。「本体価格○○円(消費税は別途請求します)」のように本体価格と消費税が明確に区分できる形で記載されていれば、本体価格が記載金額とみなされやすくなります。判断が難しい場合は、所轄税務署への照会をお勧めします。

金額不記載・単価契約・複数年契約の扱い

パターン 記載金額の判断 実務上の注意
契約金額の記載がない 記載金額なし→第1号・第2号文書は200円 号区分が課税文書であれば印紙は必要
単価のみ記載・数量未定 記載金額なし扱いになる場合が多い 単価だけでは総額が確定しないため200円が基本。個別判断が必要
単価と最低数量が記載されている 単価×最低数量で算出される最低保証額 最低発注数量が明記されていれば、その範囲で記載金額を算定
月額報酬と契約期間がある 月額×期間=総額として扱われることが多い 「月額50万円、期間12か月」→600万円が記載金額になりうる
月額報酬のみ・期間の定めなし 記載金額なし扱いになる場合が多い 期間が特定できなければ総額が算定できないため
1年契約で自動更新あり 原則として当初1年間の総額 自動更新後を含めた累計は通常含めない
上限金額がある 上限金額が記載金額となる場合が多い 「上限1,000万円」と記載されていれば1,000万円で判断
成果報酬型契約 成果報酬の支払条件・上限が明記されていれば、その金額 成果条件が達成されない可能性があるものでも、記載金額があれば課税
基本契約のみ・個別発注書に金額 基本契約書は第7号文書として4,000円になる場合が多い 個別発注書(注文請書)が第2号文書として別途課税されうる

変更契約書・覚書の記載金額

変更契約書・覚書の印紙税判断は「内容がどの課税文書に該当するか」で決まります。タイトルが「覚書」でも、原契約の増額変更を定める内容であれば課税文書として扱われます。

変更・覚書の内容 記載金額の判断 印紙税の扱い
原契約の金額を増額する変更 増額分が記載金額 増額分について第1号・第2号文書の税額を適用
原契約の金額を減額する変更 記載金額なし扱い(200円) 減額変更は記載金額の算定から除外される
契約期間のみを変更する覚書 金額の変動なし 原則として課税文書に該当しない場合が多い(個別判断)
支払条件のみを変更する覚書 金額の変動なし 金額に関する条件のみの変更は非課税文書になる場合が多い
仕様変更+追加代金を定める覚書 追加代金が記載金額 追加代金について原契約と同号の課税文書として扱われる
原契約が電子・変更契約書が紙 変更内容が課税文書なら印紙必要 紙の変更契約書が課税文書に該当すれば印紙が必要
原契約が紙・変更契約書が電子 電子の変更契約書には印紙税不要(書面の作成なし)
変更前契約書を引用している 変更内容(増額分等)で判断 引用の有無は判断に直接影響しない。変更内容が重要
変更前契約書を引用していない 文書単独の記載内容で判断 単独で課税文書の要件を満たすかを確認する

📌 変更契約書・覚書の実務原則:(1)タイトルではなく内容で判断する、(2)増額変更は増額分が記載金額、(3)減額変更・期間変更のみは通常課税されない、(4)電子契約で変更すれば紙の課税文書が作成されないため印紙税不要——これらを抑えておくと判断がスムーズになります。詳細は第8話「覚書・変更契約書・合意書の印紙税」で解説します。

✅ 電子契約が印紙税不要となる法的根拠:印紙税法上の「作成」とは、課税文書となる書面を相手方に交付することを指します。電子データは物理的な書面(紙)ではないため、電子契約システムを通じて締結した契約は課税文書の「作成」に該当しないという法解釈が定着しています(内閣府・法務省・経済産業省の事務連絡に基づく整理)。この解釈はクラウドサイン・DocuSign等の主要電子契約サービスでも同様に適用されます。ただし、電子契約でやり取りした内容を別途紙に出力して署名・捺印するなど、実質的に書面を作成している場合は印紙税が必要です。

⚠️ 写し(コピー)への課税リスク:コスト削減のために「1通のみ作成・相手方はコピー保管」という方法をとる場合でも、そのコピーに「原本と相違ない」旨の証明文言や原本の印影が転写されているなど、独立した課税文書とみなされうる体裁があれば、コピー自体が課税文書として扱われるリスクがあります。写しを保有させる際の文書形式については、税理士または所轄税務署に確認することをお勧めします。

📌 契約解除合意書の扱い:契約を終了させる「合意解除書」「解約合意書」は、原則として不課税文書です。ただし、残債務の支払額・精算金額・違約金を定めた場合は、その内容によって第17号文書(売上代金受取書)や第1号文書(債務弁済証書)に該当し課税されることがあります。「解除するだけ」の文書か「金銭の授受を定める」文書かを区別することが重要です。

契約締結前チェックリスト

印紙税の処理ミスは過怠税(本来の印紙税額の3倍相当)につながります。以下のチェックリストを契約締結フローに組み込むことで、漏れを防ぎましょう。

  • 文書の号区分を確認したか(第1・2・7・17号のどれか、または非課税か)
  • 記載金額(税込・税抜の区分)を確認したか
  • 消費税額等が区分記載されているかを確認したか
  • 第7号文書(一律4,000円)と第2号文書(記載金額による)を混同していないか
  • 軽減措置の対象文書(不動産譲渡・建設工事請負)かどうかを確認したか
  • 軽減措置の適用期間内か(令和9年3月31日まで)を確認したか
  • 紙の原本通数を確認したか(2通なら2枚、各通に印紙が必要)
  • 電子契約で締結できないかを検討したか(電子契約なら印紙不要)
  • 印紙の負担者(甲乙いずれか、折半か)を確認したか
  • 消印担当者と消印方法(社名スタンプ・自筆等)を確認したか
  • 契約台帳に号区分・税額判断の根拠を記録したか
  • 判断が分かれる場合は税理士または所轄税務署に確認を予定しているか

よくある質問

契約書にはいくらの印紙を貼ればよいですか?

文書の「号区分」と「記載金額」によって異なります。まず文書が第1号・第2号・第7号・第17号のどれに該当するかを確認し、次に記載金額(税抜か税込かも確認)に応じた税額を本ページの税額表で確認してください。電子契約の場合は原則として印紙税不要です。

請負契約書(建設以外)の印紙税額はいくらですか?

第2号文書(本則税率)が適用されます。記載金額が1万円未満は非課税、100万円以下は200円、1,000万円超5,000万円以下は20,000円など、記載金額に応じて変動します。詳細は本ページの「第2号文書の印紙税額」表をご確認ください。なお建設工事請負契約書のみ軽減措置(令和9年3月31日まで)が適用されます。

取引基本契約書・業務委託基本契約書はいくらですか?

継続的取引の基本となる契約書として第7号文書に該当する場合は、記載金額の多寡に関わらず一律4,000円です。ただし、契約期間が3か月以内かつ更新なし、または単発の委任型業務委託など継続性のない契約は第7号に該当しないことがあります。

業務委託契約書は第2号ですか?第7号ですか?

契約の性質によって異なります。成果物の納品が伴う「請負型」なら第2号文書、継続的取引の基本条件を定める「基本契約型」なら第7号文書になる場合が多いです。単純な業務の遂行のみを委託する「準委任型」で単発の場合は課税文書に該当しないことがあります。詳細は第4話「業務委託契約書に印紙税はかかる?」で解説しています。

契約金額が書いていない場合はいくらですか?

課税文書に該当するにもかかわらず記載金額がない場合は、第1号・第2号文書はいずれも200円の印紙が必要です。記載金額がなくても、課税文書であれば印紙の貼付義務はなくなりません。第7号文書は記載金額に関係なく一律4,000円です。

税込金額と税抜金額のどちらで判断しますか?

消費税額等が文書上で明確に区分記載されている場合は税抜金額、区分記載されていない場合は税込金額が記載金額となります。「100万円+消費税10万円」と区分記載されていれば100万円で判断し、「110万円(税込)」のみなら110万円で判断します(国税庁タックスアンサーNo.7124)。

消費税額が区分されていない場合はどうなりますか?

消費税額が区分記載されていない場合は、税込金額全体が記載金額になります。たとえば「110万円」とだけ記載されていれば110万円が記載金額です。消費税込みの金額を税抜換算して判断することは認められていないため、注意が必要です。

領収書は何円から印紙が必要ですか?

売上代金に係る領収書(第17号文書)は、受取金額が5万円未満の場合は非課税です。5万円以上100万円以下なら200円の印紙が必要です。ただし消費税額が区分記載されている場合は本体価格で5万円未満かどうかを判断します。

電子契約なら税額表を見る必要はありませんか?

電子契約は原則として印紙税法上の「課税文書」を作成したことにならないため、印紙税は課税されません。ただし、電子契約システムでやり取りした内容を別途紙に出力して当事者が署名・捺印するなど、実質的に紙の課税文書を作成している場合は印紙税が必要になります。詳細は第9話「電子契約なら印紙税不要?」で解説しています。

変更契約書にはいくら貼りますか?

変更契約書の印紙税は変更内容によって異なります。増額変更の場合は増額分が記載金額となり、原契約と同じ号区分の税額が適用されます。減額変更・期間変更のみの場合は記載金額なし扱い(200円または非課税)になることが多いです。ただし変更内容や文書の形式によって判断が変わる場合があります。

まとめ

📋 この記事のポイント

  • 印紙税額は「号区分」と「記載金額」の組み合わせで決まる
  • 第1号文書(不動産譲渡等)・第2号文書(請負)は記載金額に応じて変動する
  • 第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)は記載金額に関わらず一律4,000円
  • 第17号文書(領収書)は5万円未満が非課税、5万円以上100万円以下は200円
  • 不動産譲渡・建設工事請負の軽減措置は令和9年3月31日まで(租税特別措置法第91条)延長されている(令和6年4月改正)
  • 消費税額が区分記載されていれば税抜金額、区分されていなければ税込金額が記載金額
  • 電子契約は原則として印紙税不要
  • 変更契約書は増額変更→増額分が記載金額、減額変更→記載金額なし(200円)
  • 判断が難しい場合は、税理士・所轄税務署への確認を行うことが望ましい

印紙税の実務で重要なのは、税額の暗記よりも「号区分の正確な判断」と「記載金額の読み方」を社内で標準化することです。契約類型ごとに印紙税判断の根拠を契約台帳に残し、担当者が変わっても同じ水準で対応できる体制を整えることが、コンプライアンス上も重要です。

次の第4話「業務委託契約書に印紙税はかかる?請負・委任の違いで変わります」では、今回最も判断が難しいとされた「業務委託契約書の号区分」を詳しく解説します。

📚 印紙税の判断に迷ったら、こちらも参照ください
印紙税の号区分判断で特に迷いやすいのは、業務委託契約書(請負 vs 委任)・請負基本契約と個別発注書の関係・変更契約書の記載金額の3点です。それぞれ以下の記事で詳しく解説しています。

契約の印紙税管理、仕組みで解決しませんか?

印紙税の判断を担当者の記憶に頼るのではなく、契約類型・号区分・記載金額・紙か電子かを整理し、社内で同じ基準で判断できる仕組みを作ることが重要です。

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