新規事業に許認可は必要か|無許可営業を防ぐ調査方法

新規事業の開始日が決まってから、担当者が「この事業には許可が必要なのではないか」と気付く。インターネットで業種名を検索したものの、自社の事業が説明例に当てはまるか分からない。事業の一部を外部に委託するから自社には許可が不要だと思い込む。届出を出せばすぐ営業できると考えていた。申請準備や施設要件を見落としていて、事業開始が延期される——。新規事業の許認可をめぐっては、こうした行き違いが繰り返し起こります。

結論を先に示します。許認可が必要かどうかは、会社が付けたサービス名や業種名ではなく、実際に「誰が・何を」行うのかによって判断します。そのため、事業で行う行為を一つずつ分解し、それぞれの行為について、根拠となる法令、手続、申請先、要件、所要期間、そして取得後の義務までを確認する必要があります。本記事は、その調査手順を、行政法の前提知識がない方にも分かるように解説します。事業全体の進め方は第1話(総論)をご覧ください。

この記事の要点

  • 事業名ではなく、実際に行う行為を分解して調べる
  • 国の法律だけでなく、条例・自治体の手続も確認する
  • 許可・登録・届出などの名称だけで法的効果を判断しない
  • 申請先・要件・所要期間・営業開始可能日まで確認する
  • 取得後の更新・変更・報告などの継続義務も調べる
  • 不明点は、具体的な事実を示して所管行政庁に相談する
  • 取得が難しい場合は、事業モデルを変える代替案も検討する
この記事を実務で使う

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新規事業の許認可調査が必要な理由

一定の事業は、公共の安全、消費者の保護、信用秩序、衛生、生命・身体や財産を守るために、参入や営業の方法が法律で規制されています。新規事業の許認可調査は、自社の事業がこうした規制の対象かどうかを、開始前に確認するために行います。

ここで誤解しやすいのが、会社設立や事業目的の登記との関係です。会社を設立し、定款に事業目的を書き、商業登記を済ませても、それだけで業法上の許可や登録を得たことにはなりません。商業登記の完了と、業法上の営業許可・登録などは別の問題です。既存の会社が新しい事業を追加する場合も、その事業について改めて許認可調査が必要になります。

さらに、次のような思い込みにも注意が必要です。いずれも「当然にそうなる」とは限らず、個別の法令ごとに確認すべき事項です。

  • 許認可を取得する前に、契約締結・広告・顧客募集・金銭の受領を始めてよいか
  • 無償の実証実験、試験運用、限定ユーザー向けの提供であれば規制の対象外か
  • BtoB(事業者向け)の事業であれば許認可は不要か
  • オンラインで完結するサービスであれば業法の対象にならないか

これらはすべて、実際に行う行為の内容によっては規制の対象になり得ます。「当然に対象外」と決めつけないことが出発点です。

※ 表は横にスクロールできます

確認事項経営判断への影響対応例
許認可の要否その事業に参入できるか申請、事業モデルの変更
申請要件人員・施設・財務の条件採用、設備投資、増資
所要期間サービスの開始時期開始延期、段階的な導入
申請単位営業所・施設・地域ごとの手続拠点ごとの申請
取得前の行為広告・契約・料金受領の可否募集開始時期の調整
取得後の義務運用コスト報告、帳簿、研修、更新
変更・廃止手続事業変更・撤退変更届、廃止届、顧客対応

「許認可」とは何か|許可・登録・届出を一括りにしない

企業の実務では、「許認可」という言葉が、許可・認可・免許・登録・届出・認定・指定などの行政手続をまとめて指す便宜的な総称として広く使われています。本記事でも、その意味で「許認可」を使います。ただし、便宜上ひとまとめにしているだけで、名称が同じでも法的な効果は法律ごとに異なる点に注意が必要です。

例えば、次のような単純化は避けるべきです。許可はすべて禁止を解除する手続だ、認可はすべて私人間の行為を完成させる手続だ、届出は書類を出せば必ず始められる、登録はどの法律でも同じ効果を持つ、免許は許可より常に厳しい、届出には審査が一切ない——これらは、いずれも例外のない定義として成り立つものではありません。行政法の一般的な説明はあくまで出発点であり、個別の法令が使う名称と法的効果は必ずしも統一されていません。

※ 表は横にスクロールできます

名称実務上の確認ポイント誤解しやすい点
許可許可が下りる前に、その行為を開始できるか申請すれば直ちに営業できるとは限らない
認可認可が必要となる行為・契約と、認可の前後で効力がどう変わるかすべての認可が同じ法的効果を持つわけではない
免許免許が事業・資格行使の前提か、有効期間はあるか「許可より厳しい手続」と一律には言えない
登録登録の完了が営業開始の条件か届出と同じ効果とは限らない
届出事前か事後か、形式要件は何か提出するだけで足りるとは限らない
認定参入の条件か、それとも優遇・証明の条件か制度によって法的効果が異なる
指定誰が・何のために指定するのか、効果は何か名称が同じでも制度ごとに意味が異なる
ポイント

手続の名称ではなく、根拠法令に書かれた「要件・効果・開始できる時期・違反したときの措置」を確認します。なお、行政手続法上の「申請」は、おおまかにいえば、法令に基づいて行政庁に許可・認可・免許などの利益を付与する処分を求め、行政庁が諾否の応答をすべきこととされている行為を指します。ただし、自社の事業に必要な具体的手続は、個別の業法で確認する必要があります(行政手続法の条文は記事末尾のe-Gov法令検索で確認できます)。

許認可調査は「業種」ではなく「行為」を分解して行う

本記事の中心となる考え方です。例えば「オンラインプラットフォーム事業」という名称だけでは、許認可の要否は判断できません。同じ「プラットフォーム」でも、実際の行為には次のようなものが含まれ得るからです。

  • 商品を自社で販売する
  • 第三者間の売買を仲介する
  • 代金をいったん自社で受け取る
  • 利用者にポイントを発行する
  • 中古品を買い取る
  • 仕事を紹介する
  • 不動産取引を媒介する
  • 金融商品を紹介・勧誘する
  • 医療・健康に関する情報やサービスを提供する
  • 食品を製造・保管・販売する
  • 有償で人や物を運ぶ
  • 個人情報を第三者へ提供する

これらは、すべてに同じ法律が当てはまるという意味ではありません。それぞれの行為ごとに、規制する法令も手続も異なります。行為を分解して初めて、どの業法・行政手続を調べるべきかが見えてきます。

ステップ1 事業で実際に行う行為を洗い出す

調査の最初の作業は、事業部への聞き取りです。「自社は場所を提供するだけ」「代金を一時的に預かるだけ」「広告を載せるだけ」といった言い方で法的な役割を小さく見積もらないよう、実際に何をするのかを具体的に確認します。

※ 表は横にスクロールできます(許認可調査のための事業ヒアリングシート)

確認項目具体的に聞くこと許認可との関係
商品・サービス何を製造・販売・提供するか規制対象となる行為の特定
自社の役割売主、仲介者、代理人、場所提供者など適用される業法が変わる
顧客法人、個人、未成年者など保護規制の確認
料金誰から誰へ支払われるか資金移動、前払式支払手段などの確認
商品の取得方法新品、中古品、委託販売など古物営業などの確認
人の紹介雇用か、業務委託か、単なる情報掲載か職業紹介などの確認
施設店舗、工場、倉庫、厨房など施設基準、自治体手続
提供地域国内、特定の自治体、海外申請先、条例、外国法
オンライン提供ウェブ、アプリ、遠隔での提供オンラインでも対象か
外部委託何を誰に委託するか許可の主体、委託の可否
実証実験有償・無償、対象者、期間試験的な提供が対象か
開始予定日広告・契約・提供をいつ始めるか手続完了からの逆算

ステップ2 許認可が問題になりやすい行為から当たりを付ける

調査の入口を見つけやすくするために、許認可を確認しやすい代表的な分野を例示します。これは網羅的な「許認可が必要な業種一覧」ではありません。同じ商品・サービスでも、製造・卸売・小売・仲介・保管などで必要な手続は変わります。

※ 表は横にスクロールできます(代表例であり、網羅一覧ではありません)

事業分野・行為確認の入口となる事項主な確認先の例注意点
食品の製造・調理・販売営業の種類、施設、衛生基準保健所、都道府県・市区町村業態ごとに手続が異なる
酒類の製造・販売製造か、卸か、小売か所轄の税務署製造と販売で手続が別
医薬品・医療機器・化粧品製造、販売、広告の別都道府県、所管省庁広告にも別の規制
建設・不動産工事の規模、媒介・代理の別都道府県、国の機関取引態様で手続が変わる
人材紹介・労働者派遣紹介か、派遣か労働局第13話で詳説
中古品の売買買取り・委託販売の有無警察署、公安委員会非対面取引にも留意
運送・旅行有償で人・物を運ぶか、手配か運輸局など委託構造を確認
金融・保険・投資・貸金勧誘・媒介・資金の取扱い財務局、金融庁第12話で詳説
電気通信・放送通信役務の提供形態総務省など登録か届出かを確認
廃棄物処理・リサイクル収集・運搬・処分の別都道府県・市区町村家電・自動車等は別制度
宿泊・住宅・福祉・教育提供形態、対象者保健所、都道府県など条例・地域要件に注意
警備警備業務の種別公安委員会資格者の配置要件
動物の取扱い販売・保管・貸出しなど都道府県・政令市登録の単位を確認
注意

上の表は「当たりを付ける」ための入口にすぎません。実際には、国の法令だけでなく都道府県・市区町村の条例や施設基準が関係したり、複数の許認可が重なって必要になったりします。また、許認可が不要な場合でも、資格者の配置、表示、広告、帳簿、報告などの行為規制が適用されることがあります。「許認可が不要=法務上の確認は不要」ではありません。

ステップ3 根拠法令と所管行政庁を特定する

行為の当たりが付いたら、根拠となる法令と所管の行政庁を特定します。具体的には、次の手順で進めます。

  1. 事業で行う「行為」を検索語にする(業種名ではなく行為)
  2. 所管省庁・都道府県・市区町村の公式ページを探す
  3. 根拠となる法令・条例を確認する
  4. 対象者・対象行為・適用除外を確認する
  5. 必要な手続の正式名称を確認する
  6. 申請・届出の提出先を確認する
  7. 申請の単位(会社、営業所、施設、地域など)を確認する
  8. 申請の要件を確認する
  9. 標準処理期間・審査期間を確認する
  10. 取得前にできない行為を確認する
  11. 取得後の義務を確認する

公的情報の調査先

調査では、まず一次情報にあたります。代表的な調査先は、e-Gov法令検索、各省庁の公式サイト、都道府県・市区町村の公式サイト、保健所・警察・財務局・運輸局・労働局などの所管窓口、e-Gov電子申請、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21などです。

注意

e-Gov電子申請は、e-Govで受付が可能な手続を検索・申請するサービスであり、国内のすべての許認可や自治体の手続を網羅した検索データベースではありません。「e-Govで見つからない=許認可は不要」とは言えません。J-Net21の許認可情報は調査の入口として有用ですが、最終的な判断は、根拠法令と所管行政庁の最新情報で確認します。検索で出てきた民間記事だけで要否を確定せず、古いPDF、廃止された制度、改正前の要件にも注意してください。法令の本文だけでなく、政令・省令・規則・告示・審査基準・申請要領まで確認します。

※ 表は横にスクロールできます(許認可調査記録)

項目記録内容
対象となる行為自社が実際に行うこと
手続の正式名称許可・登録・届出など
根拠法令・条項法律・政省令・条例
所管行政庁申請・相談先
申請単位会社、営業所、施設、地域など
主な要件人員、施設、財産、資格など
申請時期事前か事後か
営業開始可能日いつからその行為を開始できるか
標準処理期間公表されている場合
更新・有効期間更新期限など
変更・廃止手続事業変更・撤退時
罰則・行政処分根拠法令上の措置
情報源公式URL、確認日
未確認事項行政相談などが必要な事項

ステップ4 申請要件と事業開始までの期間を確認する

許認可の存在を見つけただけでは、経営判断には足りません。「取得できる見込みがあるか」「いつから始められるか」「いくらかかるか」まで整理して初めて、判断材料になります。

申請要件として確認する事項

  • 法人・個人などの主体要件
  • 定款・登記事項上の事業目的
  • 欠格事由
  • 役員・責任者・管理者などの人的要件
  • 資格者・実務経験者の配置
  • 営業所・店舗・工場・倉庫などの施設要件
  • 設備、面積、構造、衛生、安全などの基準
  • 資本金、純資産、保証金などの財務要件
  • 社内規程、業務方法書、システムなどの体制要件
  • 申請書類、添付書類、手数料
  • 現地調査・面談・試験の有無
  • 更新・講習などの要否

定款の事業目的について、「定款に目的がない契約は当然に無効になる」というわけではありません。一方で、許認可の申請や登記の実務では、事業目的の追加・変更を求められることがあります。さらに実務では、金融機関の融資審査や決済口座の開設・連携などのコンプライアンス審査で、定款の事業目的に当該事業の記載がないことが問題視される場合もあります。必要かどうかは、申請先や取引予定の金融機関に確認し、株主総会での目的変更が要る場合はそのスケジュールも見込んでください。

標準処理期間の正しい理解

行政手続法では、行政庁は、申請が事務所に到達してから処分をするまでに通常要する標準的な期間(標準処理期間)を定めるよう努めるものとされ、定めた場合はこれを公にしておかなければならないとされています。ここで重要なのは、標準処理期間は「その期間内に必ず許可等が得られる」ことを保証する期限ではないという点です。補正、追加資料、現地確認、関係機関との調整などにより、実際の処理期間が延びることがあります。また、補正や申請者側の対応に要する期間などを標準処理期間の算定に含めない取扱いが定められている場合もありますが、除外される期間の有無や範囲は制度ごとに異なります。行政庁が公表する標準処理期間の注記、審査基準、申請要領を確認してください。

見落とされがちなのは、「申請から処分まで」の期間よりも、「申請前の準備」にかかる期間が大きいことです。施設の整備や有資格者の採用には数か月単位の時間がかかることもあります。事業開始予定日から十分に余裕を持って逆算してください。

注意

標準処理期間のカウントが始まるのは、申請が行政庁の事務所に到達してからです。前例の少ない新規事業では、その前の事前相談の段階で「事実関係を整理してほしい」「追加資料を出してほしい」と求められ、申請の受付・到達までに数か月を要することがあります。この受理前の期間は標準処理期間には含まれません。スケジュールを組む際は、申請にたどり着くまでの期間も見込んでください。

※ 表は横にスクロールできます(事業開始日からの逆算表/月数は制度ごとに確認)

工程主な作業想定担当完了条件遅れた場合の影響
事業内容の確定行為の分解、役割の整理事業部・法務調査前提が固まる調査全体が後ろ倒し
事前相談所管行政庁への相談法務・事業部論点・要件の把握準備の手戻り
準備施設整備、資格者採用、書類作成総務・人事・事業部申請要件を満たす申請できない
申請・審査申請、補正、現地確認対応法務・事業部処分(許可・登録など)開始日に間に合わない
営業開始表示・体制の最終確認事業部適法に開始できる状態無許可営業のリスク

※ 具体的な月数は一般的なルールとして決まっているわけではありません。個別制度の要件と行政庁の運用を確認して設定してください。

ステップ5 取得前に何を始めてよいかを確認する

「サービス提供を始める前なら、準備として何をしても問題ない」とは限りません。何を許認可取得前に行えるかは、個別の法令ごとに確認が必要です。「営業開始」が何を指すかも法律によって異なり得ます。

  • 広告、顧客募集、申込みの受付、予約受付
  • 契約の締結
  • 料金や預り金の受領
  • 仕入れ、試験運用、無償提供
  • 委託先による業務の開始
  • ウェブサイトやアプリの公開

※ 表は横にスクロールできます(取得前行為の確認表)

行為開始予定日許認可取得前に可能か根拠・確認先対応
広告・顧客募集個別法令を確認根拠法令・所管行政庁確認後に開始時期を決定
契約締結・料金受領個別法令を確認根拠法令・所管行政庁取得後まで延期も検討
試験運用・無償提供当然に対象外とは限らない根拠法令・所管行政庁対象範囲を事前確認

外部委託すれば許認可は不要になるのか

「許可を持つ業者に一部を委託すれば自社は許認可が一切不要になる」「場を提供するだけのプラットフォームなら規制されない」「契約書に『当社は仲介者にすぎない』と書けば対象外になる」「決済を決済代行会社に任せれば金融規制はなくなる」「実際の業務を子会社にやらせれば親会社の問題はなくなる」——これらはいずれも、そのまま当てはまるとは限りません。法令の適用は、契約書の名称だけでなく、実態で判断されます。

許認可の主体という観点からは、少なくとも次を確認します。

  • 顧客との契約主体、サービスの提供主体は誰か
  • 価格・取引条件を決めるのは誰か
  • 指示・監督を行うのは誰か
  • 顧客から料金を受け取るのは誰か
  • 事故・苦情に対応するのは誰か、広告上の表示主体は誰か
  • 許認可を持つ主体と、実際に営業する主体が一致しているか
  • その委託は法令上許されているか、再委託は許されるか
  • 委託元に管理・監督義務が残らないか
注意

許可事業者に業務を委託し、契約上は「自社は仲介にすぎない」と整理していても、価格の決定権、顧客との関係、トラブル時の実質的な対応を自社が握っている場合、行政からは自社が実質的な事業主体とみなされることがあります。その場合、委託先側の「名義貸し」や、自社側の無許可営業の問題が生じ得ます。形式ではなく、誰が実質的に事業を支配し、経済的利益を得ているかで評価される点に注意してください。

委託や提携の進め方そのものは第6話、雇用・派遣・業務委託の区分は第13話、事業モデル自体の適法性は第3話で扱います。本記事では、許認可の「主体」の確認に絞ります。

国の法律だけでなく条例・地域要件も確認する

許認可は国の法律だけの問題ではありません。次の点を確認します。

  • 国の法律に基づく許認可でも、申請窓口や運用が都道府県・市区町村に委ねられていることがある
  • 自治体の条例で、追加の届出、施設基準、表示、営業時間、地域制限などが設けられている場合がある
  • 本店所在地ではなく、店舗・施設・工場・倉庫などの所在地を基準に申請先が決まる場合がある
  • 複数の地域で事業を行う場合、地域ごとの申請・届出が必要になる場合がある
  • オンライン事業でも、実店舗・倉庫・配送・顧客対応の拠点などに地域の手続が関係する場合がある

※ 表は横にスクロールできます(地域別確認シート/以下は自社で記入するためのテンプレートです)

拠点・提供地域行う業務国の手続自治体の手続申請先確認状況
本店統括・契約未確認
店舗A(地域X)対面販売条例の確認所管窓口未確認
倉庫(地域Y)保管・配送施設基準の確認所管窓口未確認

行政庁への事前相談を有効に進める方法

「この事業は許可が必要ですか」と抽象的に尋ねるだけでは、正確な回答は得にくいものです。具体的な事実を示すほど、的確な回答につながります。事前相談には、次の資料を準備します。

事業概要、関係者図、商品・サービスの流れ、金銭の流れ、契約関係、ウェブ画面・広告案、施設図面、外部委託の範囲、質問事項、自社の暫定的な法令理解、事業開始予定日。

※ 表は横にスクロールできます(行政相談記録/相談後に自社で記入・保存するためのテンプレートです)

項目記録内容
相談日時
行政機関・部署
担当者
提示した事実
質問
回答内容
回答の前提
追加資料
書面回答の有無
次の対応
注意

口頭相談の回答は、提示した具体的事実や質問の仕方によって変わり得ます。後から前提事実が変われば、その回答はそのまま使えません。担当者名・日時・提示資料・回答の前提を記録し、重要な事項は可能であれば正式な手続や書面で確認してください。また、行政相談を受けたという事実だけで、将来の行政処分が当然に否定されるわけではなく、行政庁が個別契約の有効性や民事責任まで判断するとは限りません。なお、法令の適用が不明確なときに使える公的制度(グレーゾーン解消制度など)は第3話で詳しく扱います。

法務ナレッジ管理ツール

LegalOS 法律相談

許認可調査では、所管行政庁への相談内容、外部専門家の回答、判断の前提、未確認事項などを記録し、後の案件でも再利用できる状態にしておくことが大切です。LegalOS 法律相談は、過去の相談と回答を端末内に蓄積し、類似する過去事例を検索するためのナレッジ管理ツールです。

このツールは、許認可の要否を自動判定するものではなく、行政庁の正式な回答や、弁護士その他の専門家による法的助言に代わるものでもありません。入力した内容だけで適法性が保証されるわけではありません。

LegalOS 法律相談を見る

許認可を取得できない場合の代替案

許認可を取得できない、または開始予定日に間に合わない場合でも、直ちに事業全体を断念するとは限りません。実態を変えることで、適法に実行できる形に組み替えられる場合があります。

  • 規制対象となる業務を、許可を持つ事業者へ適法に委託する
  • 自社の役割(媒介・代理・販売など)を変更する
  • 資金を預からない仕組みに変える
  • 取扱う商品・サービスの範囲を限定する
  • 対象顧客や提供地域を限定する
  • 許認可取得まで段階的に事業を開始する
  • 施設を変更する、有資格者を採用・配置する
  • 別法人やJVで実施する
  • 許認可取得まで、広告・契約・料金受領などを延期する
注意

契約書の名称を変えたり、形式上だけ委託の形にしたりすることで規制を回避できる、という意味ではありません。実態が変わらなければ、法的な評価も変わらない可能性が高いです。代替案は「実態を変える案」として検討してください。

※ 表は横にスクロールできます(代替案比較)

代替案法的効果追加コスト開始時期残る確認事項
規制業務を許可事業者へ委託自社の役割が変わる委託費比較的早い場合がある委託の可否、管理義務
資金を預からない仕組みへ変更適用規制が変わり得るシステム改修設計変更の期間実態が変わっているか
提供地域・顧客を限定手続の範囲が変わる機会損失の可能性段階的に開始限定の実効性

許認可取得後に確認すべき継続義務

許認可は、取得した時点で法務対応が終わるわけではありません。取得後にも次のような義務が続くことが多く、運用コストとして見込んでおく必要があります。

有効期間と更新、変更届(役員・責任者・営業所などの変更)、廃止届、帳簿・記録の作成保存、定期報告、行政庁による検査、研修・講習、標識・登録番号などの表示、広告規制、苦情対応、施設・人員・財務要件の継続的な維持、委託先の管理、そして行政処分や法改正のモニタリング。

※ 表は横にスクロールできます(許認可管理台帳)

許認可等許可番号等所管行政庁有効期限更新期限変更届事項担当部署証憑保管先
役員・営業所など

これらを法務だけで管理しようとしないことも重要です。有効期限や更新は総務、施設・人員要件は事業部や品質管理、財務要件は経理、というように、事業部・人事・総務・経理・品質管理などと役割分担を決めておきます。

無料ツール

LegalOS 法改正アラート

許認可は、取得時点の要件だけでなく、その後の法改正、政省令・条例の変更、申請様式やガイドライン、行政運用の変更を継続して確認する必要があります。関係する法令の動きを早く知るための、初動確認を支援する無料ツールです。

このツールは、法改正情報の初動確認を支援するものであり、自社に必要な許認可を自動判定したり、許認可の取得可否や個別事業の適法性を確定したりするものではありません。重要な事項は、所管行政庁の公式情報や専門家へ確認してください。

無料の法改正アラートを見る

具体例で見る許認可調査

想定事例

既存企業が、ウェブサイトと実店舗を組み合わせ、一般消費者から中古の家具・家電を買い取り、整備して再販売する事業を始める。商品の一部は顧客から委託を受けて販売し、配送は外部事業者へ委託する。

この事例では、「中古品の売買だから古物営業の確認だけ」で終えてはいけません。実際に行う各行為を分解することが重要です。買取り・委託販売・通信販売・修理・設置・回収・処分・配送は、それぞれ別の確認を要し得ます。具体的な法令に触れる際は、2026年6月時点の警察庁・都道府県公安委員会などの公式情報を確認してください。

中古品の買取り・再販売については、古物営業法に基づく古物商許可が問題になります。新たに古物営業を始める場合の申請窓口は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署です。令和2年4月1日施行の改正により、営業所等の所在する都道府県ごとに許可を取得する仕組みから、主たる営業所等の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ける仕組みに改められました。許可取得後に他の都道府県を含めて営業所を新設する場合は、新たな許可の取得ではなく変更届で対応しますが、営業所の新設・所在地変更などについては、原則として変更日の3日前までの事前届出が必要です。また、営業所ごとに管理者を選任する必要があります。

古物商がインターネットなどを利用し、相手方と対面せずに古物の買受けなどを行う場合には、法令で定められた方法により相手方の真偽を確認する措置が必要です。単にオンラインで中古品を販売する場合と、一般消費者から非対面で買い取る場合とを区別して確認します。さらに、ホームページなどを利用して古物取引を行う場合には、URLなどに関する申請・届出や、ウェブサイト上の許可番号などの表示も確認が必要です。整備(修理)や設置、家電などの回収・処分、配送、通信販売については、古物営業とは別の法令・行政手続が問題になる場合があります。

注意

「ウェブで申し込んでもらい、消費者の自宅へ引き取りに行って買い取る」スキームでは、特定商取引法の「訪問購入」規制(書面交付やクーリング・オフなど)が関係し得ます。ただし、自動車・家電・家具・書籍など政令で定める物品は訪問購入規制の適用除外とされているため、取扱う品目によって結論が変わります。消費者向けの販売・広告・買取りに関する規制は第11話で扱います。

※ 表は横にスクロールできます(事例の許認可調査表)

行為許認可等の確認申請・相談先事業開始への影響暫定評価
中古品の買取り・再販売古物営業への該当性と古物商許可の要否・要件主たる営業所管轄の警察署古物営業に該当する場合は、許可取得前に当該買取営業を開始しない条件付きGO
複数地域での店舗運営営業所新設の事前届出(原則3日前まで)など営業所管轄の警察署拠点ごとの届出・管理者選任HOLD
非対面での買取り相手方の真偽を確認する方法所管警察署本人確認の画面・運用設計に影響HOLD
ホームページ利用URLの申請・変更届出、許可番号などの表示所管警察署届出時期・サイト表示に影響HOLD
消費者への通信販売・出張買取特定商取引法の表示・訪問購入規制(品目による)消費者庁・経済産業局など取扱品目により業務設計に影響HOLD
修理・設置・回収・処分別制度の該当性都道府県・市区町村など対応範囲により追加手続HOLD
配送の外部委託委託の構造・主体—(自社で確認)委託先の手続は別途確認HOLD

この整理は、事実が確定していない前提での暫定的なものです。誰が買い取るのか、所有権をいつ取得するのか、委託販売はどの範囲か、店舗をどの自治体に置くのかなどが固まると、評価は変わります。事実が定まっていない論点を、安易にGOと評価しないことが大切です。

新規事業の許認可調査でよくある失敗

※ 表は横にスクロールできます

失敗なぜ問題か改善方法
業種名だけで検索する実際の行為と適用法令がずれる行為を分解してから調べる
民間サイトの一覧だけで判断する古い・不正確な情報のおそれ根拠法令と所管行政庁で確認
許可・登録・届出を同じものとして扱う開始できる時期を誤る名称ごとに効果を確認
本店所在地の手続だけ確認する施設・地域の手続を見落とす拠点・提供地域ごとに確認
国の法律だけ見て条例を見ない自治体の追加手続を見落とす条例・施設基準も確認
申請すればすぐ営業できると思う無許可営業のリスク営業開始可能日を確認
「届出」だから当日提出すれば即開始できると考える窓口で受け取りを保留され、開始日に事業が止まることがある事前に窓口へ書類案を持ち込み、内諾を得ておく
定款の事業目的の変更を後回しにする融資・口座開設のコンプライアンス審査で滞る申請準備と同時に目的変更の総会手続を計画する
標準処理期間だけで開始日を決める補正・準備期間を見落とす準備期間も含めて逆算
準備・施設整備・採用の期間を見落とす申請自体ができない申請前の工程も計画する
外部委託すれば自社に許可不要と決めつける実態で規制される場合がある許認可の主体を確認
無償実験・試験運用なら対象外と思う当然に対象外とは限らない対象範囲を事前確認
取得前に広告や契約を始める個別法令に抵触するおそれ取得前にできる行為を確認
取得後の更新・変更届を管理しない失効・違反のリスク管理台帳で継続管理
行政相談の前提・回答を記録しない後で再利用・検証できない日時・前提・回答を記録
事業変更後に許認可を再確認しない変更で要件が変わり得る変更時の再確認を手続化
許認可が不要なら調査終了と考える行為規制を見落とす表示・帳簿・広告規制も確認

経営者へ報告する許認可調査結果のまとめ方

経営者が知りたいのは、法令の長い解説ではありません。「この事業を実施できるか」「どの許認可が必要か」「取得の見込みはあるか」「いつから始められるか」「いくらかかるか」「取得前に何をしてはいけないか」「取得後の管理コストはどれくらいか」「取得できない場合の代替案は何か」「経営者が判断すべきことは何か」です。これらを1ページに整理します。

※ 表は横にスクロールできます(経営者向け許認可サマリー)

項目記載内容
対象事業・行為許認可調査の前提
判断の前提評価の基礎とした事実・仮定
暫定判断GO・条件付きGO・HOLD・NO-GO
必要な手続正式名称と根拠法令
申請先所管行政庁
主な要件人員・施設・財務・体制など
最短の開始見込み準備・申請・審査を踏まえた見込み
取得前の制限広告・契約・営業など
追加コスト設備、採用、申請、専門家など
取得後の義務更新、報告、帳簿など
代替案現行案が難しい場合
未確認事項行政相談・追加調査事項
経営判断事項開始延期、追加投資、構造変更など

報告には、評価の前提とした事実を必ず明記します。事業内容が変われば前提も変わるため、変更があった場合には再調査が必要であることを添えておきます。

新規事業の許認可チェックリスト

保存して使える実務チェックリストです。新規事業の許認可調査の抜け漏れ防止にご活用ください。

事業の事実関係

  • 事業で実際に行う行為を分解した
  • 自社の役割を売主・仲介者・代理人などに整理した
  • 契約主体とサービス提供主体を確認した
  • 金銭の受取先・分配先を確認した
  • 外部委託の範囲を確認した
  • 店舗・施設・営業所の所在地を確認した
  • 提供地域と対象顧客を確認した
  • 無償実験・試験運用も含めて確認した

法令・行政手続

  • 規制対象となり得る行為を洗い出した
  • 根拠となる法律・政省令・条例を確認した
  • 許可・登録・届出などの正式名称を確認した
  • 対象者・対象行為・適用除外を確認した
  • 所管行政庁と申請先を確認した
  • 申請単位を確認した
  • 取得前にできない行為を確認した
  • 複数の許認可が必要でないか確認した

申請準備

  • 人的要件・欠格事由を確認した
  • 資格者・責任者の配置要件を確認した
  • 施設・設備要件を確認した
  • 財務要件を確認した
  • 社内体制・規程・システム要件を確認した
  • 必要書類・手数料を確認した
  • 現地確認・面談・試験の有無を確認した
  • 事前相談の要否を確認した

スケジュール

  • 申請準備期間を見積もった
  • 標準処理期間を確認した
  • 標準処理期間が保証期限ではないことを考慮した
  • 補正・追加資料の期間を見込んだ
  • 取得前の広告・契約・料金受領の可否を確認した
  • 事業開始予定日から逆算した
  • 許認可が遅れた場合の代替案を検討した

取得後の管理

  • 有効期間・更新期限を確認した
  • 変更届・廃止届の対象事項を確認した
  • 定期報告・帳簿保存義務を確認した
  • 表示・広告上の義務を確認した
  • 許認可要件を継続して満たす管理方法を決めた
  • 管理責任者と証憑保管先を決めた
  • 法改正・行政運用の確認方法を決めた
  • 事業内容を変更した場合の再確認手続を決めた

まとめ

新規事業の許認可調査の要点を、改めて整理します。

  • 許認可の要否は、業種名ではなく実際の行為から調べる
  • 許可・登録・届出などは名称だけで判断しない
  • 国の法令だけでなく、条例・自治体の手続も確認する
  • 申請要件・申請先・取得前の制限・所要期間を確認する
  • 標準処理期間だけで開始日を決めない
  • 取得後の更新・変更・報告なども管理する
  • 取得が難しい場合は、実態を変える代替案を検討する
  • 調査結果は、経営判断に必要な形に整理して報告する

許認可調査の目的は、必要な申請書を見つけることではありません。新規事業を、いつ、どの条件で、適法に開始できるかを明らかにすることです。次回の第3話では、許認可の有無だけでは判断しきれない「事業モデルそのものの適法性」(業法上の禁止行為やグレーゾーンの確認)を解説します。

よくある質問(FAQ)

許可、認可、登録、届出は何が違いますか

一般的な説明はありますが、名称が同じでも法的効果は法律ごとに異なります。重要なのは名称の分類ではなく、根拠法令に書かれた「要件・効果・いつから行為を開始できるか・違反したときの措置」です。個別の制度ごとに確認してください。

許認可を申請中でも営業を始められますか

制度によります。多くの場合、許可・登録などが完了するまで営業を開始できませんが、届出制で事前の手続が前提となる場合などもあり、一律には言えません。「申請中なら始めてよい」と決めつけず、根拠法令と所管行政庁で確認してください。

外部の許可事業者に委託すれば、自社の許可は不要ですか

必ずしもそうではありません。法令の適用は契約の名称ではなく実態で判断されます。誰が契約主体・提供主体か、価格や条件を決めるのは誰か、料金を受け取るのは誰かなどを確認し、許認可を持つ主体と実際の営業主体が一致しているかを点検する必要があります。

無料の実証実験でも許認可は必要ですか

無償だから当然に対象外、とは限りません。行為の内容によっては、無償の試験提供や限定ユーザー向けの提供でも規制の対象になり得ます。対象範囲を事前に確認してください。

e-Govで検索して出てこなければ許認可は不要ですか

そうとは言えません。e-Gov電子申請は、e-Govで受付できる手続を扱うサービスで、国内のすべての許認可や自治体手続を網羅した検索データベースではありません。見つからないことを、許認可が不要である根拠にしないでください。

標準処理期間内に必ず許可が下りますか

保証されるものではありません。標準処理期間は、行政庁が定めるよう努め、定めた場合は公表する「通常要する標準的な期間」であり、期間内の処分を約束する期限ではありません。補正や現地確認などで延びることがあり、申請前の準備期間は通常これに含まれません。

行政窓口に相談すれば、適法性が保証されますか

相談は有効ですが、口頭の回答は提示した事実や質問の仕方によって変わり得ます。前提が変われば回答はそのまま使えず、相談を受けたという事実だけで将来の行政処分が当然に否定されるわけでもありません。重要事項は正式な手続や書面での確認を検討してください。

本記事は、2026年6月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。法令・行政手続・許認可制度は改正されることがあり、許認可の要否、申請先、要件、所要期間、罰則・行政処分の内容は、事業の具体的な行為、取扱商品・サービス、顧客、金銭の流れ、提供地域、施設、人員、委託構造などによって異なります。許可・認可・免許・登録・届出・認定・指定は、名称が同じでも法的効果が異なる場合があります。記事中の具体例は、事実が確定していない前提での暫定的な整理です。実際の判断にあたっては、最新の法令と所管行政庁の公式情報を確認し、必要に応じて弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。税務・会計・技術・安全・セキュリティに関する事項についても、各分野の専門家への確認が必要となる場合があります。

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