法改正

【2027年義務化見通し】勤務間インターバル11時間の完全解説|就業規則の書き方・文例・シフト設計テンプレ付き

※本記事の「2027年義務化」は、労働基準関係法制研究会報告書および実務家の見解を踏まえた「有力な見通し」であり、現時点では法案も施行時期も確定していません。

📌 TL;DR(この記事の要点)
  • 勤務間インターバル制度は「終業から翌日始業まで一定時間の休息を確保する」制度
  • 勤務間インターバル制度の「原則11時間」確保について、義務化を含む法規制強化が検討されており、早ければ2027年頃の施行が有力視されている(現行は努力義務)
  • 就業規則への規定が必須となる見込み(本記事で文例を3パターン掲載)
  • 夜勤・交替制勤務がある企業はシフト設計の抜本的見直しが必要
  • 法案未成立・施行時期未確定だが、早期の準備着手を推奨
🚨 重要:本記事の位置づけ

本記事で解説する内容は、2025年1月公表の「労働基準関係法制研究会報告書」に基づく「提言・方向性」であり、法案も条文案も確定していません。

今後の労働政策審議会での審議を経て、内容が変更される可能性があります。施行時期も未確定です。最新情報は厚生労働省の公式発表をご確認ください。

2025年1月、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」が報告書を公表し、勤務間インターバル制度の義務化が提言されました。現行の「努力義務」から「法的義務」への転換であり、企業の労務管理に大きな影響を与える見通しです。

本記事では、制度の基本から就業規則の具体的な書き方シフト設計のテンプレートまで、実務で使える情報を網羅的に解説します。

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勤務間インターバル制度とは

制度の定義と目的

勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。

勤務間インターバル制度の概念図:終業から翌日始業まで11時間以上の休息時間を確保する仕組み
図1:勤務間インターバル制度の仕組み

2019年4月の労働時間等設定改善法の改正により、企業の「努力義務」として導入されました。しかし、導入企業の割合は令和5年調査で約6%、令和6年調査でも5.7%にとどまっています。

EU基準との比較

EU加盟国では、EU労働時間指令により「すべての労働者に、24時間ごとに最低でも連続11時間の休息時間を確保する」ことが義務付けられています。今回の日本での義務化検討は、この国際基準との整合を図るものです。

※表は横にスクロールできます

項目 日本(現行) EU
法的位置づけ 努力義務 義務
インターバル時間 規定なし(9〜11時間推奨) 11時間以上
適用対象 約6%の企業が導入(2023年) 原則として全労働者(義務)

出典:厚生労働省「勤務間インターバル制度について」令和5年就労条件総合調査令和6年就労条件総合調査

義務化検討の背景とスケジュール

改正の経緯

今回の改正議論は、以下の背景から進められています。

  • 過労死・メンタルヘルス問題の深刻化(長時間労働や短い休息時間が健康リスク要因として注目されている)
  • 過労死等の労災認定基準でも「長時間労働」「連続勤務」などがリスク要因として位置付けられており、勤務間インターバルの確保が重要視されている
  • 努力義務化から5年経過しても導入率が6%程度にとどまる現状
  • EU等の国際基準との乖離
  • 2024年問題(建設業・運送業の残業規制強化)との整合性確保

改正スケジュール(見込み)

※表は横にスクロールできます

時期 内容
2025年1月 労働基準関係法制研究会報告書の公表
2025年〜 労働政策審議会で具体的な法改正の審議
2026年(見込み) 通常国会で改正法案の審議
2027年4月頃〜(有力な見通し) 改正法の施行
⚠️ スケジュールについて

上記スケジュールは、研究会報告書の公表時期や過去の労働法改正の流れを踏まえた実務家の予測です。研究会報告書自体には具体的な施行時期の言及はありません。審議の進捗によっては前後する可能性があります。

出典:厚生労働省「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します(2025年1月8日)

提言されている改正内容

※表は横にスクロールできます

項目 提言内容
インターバル時間 原則11時間(例外・代替措置も検討)
法的位置づけ 努力義務から義務へ(義務化も視野に入れた法規制の強化を検討)
例外措置 適用除外職種、代替措置、11時間未満の許容、経過措置等を検討
導入アプローチ 段階的に実効性を高める形での施行

就業規則の書き方・規定例【3パターン】

勤務間インターバル制度を導入する場合、就業規則への規定が必要です。以下、実務で使える3パターンの規定例を紹介します。

就業規則規定例3パターン比較:シンプル型・標準型・詳細型の特徴と適用場面
図2:就業規則規定例 3パターンの比較

パターン①:シンプル型(小規模事業所向け)

残業が少なく、シフト勤務がない事業所向けのシンプルな規定例です。

【就業規則規定例①】

(勤務間インターバル)

第○条 会社は、従業員の健康確保の観点から、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、原則として11時間以上の休息時間(以下「勤務間インターバル」という。)を確保するものとする。

2 前項の休息時間が確保できない場合は、従業員は翌日の始業時刻を繰り下げることができる。この場合、繰り下げた時間は所定労働時間に含むものとする。

3 本条の規定は、正社員、契約社員、パートタイマー等の雇用形態にかかわらず適用する。

パターン②:標準型(一般企業向け)

例外事由や手続きを明確にした標準的な規定例です。

【就業規則規定例②】

(勤務間インターバル)

第○条 会社は、従業員の健康確保および生活時間の確保のため、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、11時間以上の休息時間(以下「勤務間インターバル」という。)を確保しなければならない。

2 前項の休息時間が確保できない場合、従業員は所属長の承認を得たうえで、翌日の始業時刻を繰り下げるものとする。繰り下げた時間は、所定労働時間を勤務したものとみなす。

3 次の各号に該当する場合は、第1項の規定にかかわらず、勤務間インターバルを短縮することができる。ただし、この場合においても9時間以上の休息時間を確保するよう努めなければならない。

(1)災害その他避けることができない事由により臨時の必要がある場合

(2)システム障害等の緊急対応が必要な場合

(3)その他会社が特に必要と認めた場合

4 前項の規定により勤務間インターバルを短縮した場合、所属長はその理由を記録し、従業員の健康状態に配慮した必要な措置を講じなければならない。

5 本条の規定は、管理監督者を含むすべての従業員に適用する。ただし、管理監督者については健康確保措置として本条を準用するものとし、やむを得ない業務上の必要がある場合はこの限りでない。

パターン③:詳細型(交替制勤務・夜勤あり向け)

医療・介護・製造業など、交替制勤務や夜勤がある事業所向けの詳細な規定例です。

【就業規則規定例③】

(勤務間インターバル)

第○条 会社は、従業員の健康確保のため、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、次の各号に定める休息時間(以下「勤務間インターバル」という。)を確保しなければならない。

(1)日勤者:11時間以上

(2)夜勤者:勤務終了後12時間以上

(3)交替制勤務者:シフト間において10時間以上

2 前項の休息時間が確保できない場合、次の各号のいずれかの措置を講じるものとする。

(1)翌日の始業時刻の繰り下げ(繰り下げ時間は所定労働時間とみなす)

(2)代替休息の付与(例:不足時間の1.25倍の休息を1週間以内に付与 等、自社方針で設定)

3 次の各号に該当する場合は、第1項の規定の適用を除外する。ただし、可能な限り休息時間の確保に努めるものとする。

(1)災害、事故等の緊急対応

(2)患者・利用者の容態急変等、生命・身体の安全確保に必要な場合

(3)労使協定で定めた特別な事情がある場合

4 会社は、勤務間インターバルの遵守状況を月次で把握し、恒常的に確保できない部署については、業務量の調整、人員の補充等の措置を講じるものとする。

5 従業員は、勤務間インターバルの確保に支障が生じる場合、速やかに所属長に報告しなければならない。

💡 規定作成と運用の重要ポイント
  • インターバル時間の給与扱い:始業時刻を繰り下げた時間分を「有給(働いたものとみなす)」とするか、「無給(不就労控除)」とするかは、企業のコストに直結します。本例では従業員有利の「有給」としていますが、自社の財務状況と合わせて検討してください。義務化された際の法的取扱いは今後の審議で明確化される見込みです。
  • 管理監督者の扱い:法的には労働時間規制の適用除外となる可能性が高いですが、研究会報告書では健康・福祉確保措置の充実が提言されています。規程例②では「健康確保措置として準用」という形で、適用対象としつつも柔軟な運用を可能にしています。
  • 代替休息のレート:法定基準が設定されるまでは、自社の割増賃金率などを参考に設定(例:1.0倍〜1.5倍)します。例示の「1.25倍」は割増賃金率(25%)との整合を意識した例であり、法定の基準ではありません。
  • 36協定との整合性:インターバルを確保すると、必然的に残業可能時間が減ります。36協定の特別条項(限度時間)とインターバル確保が矛盾していないか確認が必要です。
  • 本規定例はあくまで叩き台です。実際の導入・施行時には、必ず最新の法令を確認し、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。

シフト設計テンプレート【業種別】

11時間インターバルを確保するためのシフト設計例を業種別に紹介します。

インターバル時間の計算表

終業時刻別に、11時間インターバルを確保した場合の翌日始業可能時刻を示します。

※表は横にスクロールできます

終業時刻 11時間後 9時始業の場合
20:00 翌7:00 ○ 問題なし
21:00 翌8:00 ○ 問題なし
22:00 翌9:00 ○ ギリギリOK
23:00 翌10:00 △ 始業繰下げ必要
24:00 翌11:00 △ 始業繰下げ必要
25:00(深夜1時) 翌12:00 △ 午後出勤(法的にはOK、運用上注意※)

※25:00終業→翌12:00始業は11時間のインターバルを確保しているため法的要件は満たしますが、生活リズムの大幅な乱れ・業務への影響が懸念されるため、恒常化は避けるべきです。

業種別シフト設計例

IT・広告業界(プロジェクト型業務)

【課題】納期直前の深夜作業 → 翌朝9時出社が常態化

【対策案】

  1. フレックスタイム制の活用(コアタイム11:00〜15:00)
  2. 深夜作業翌日は午後出勤をデフォルト化
  3. 22時以降の残業は事前申請制(インターバル確保の確認必須)
  4. 勤怠システムにインターバル違反アラートを設定

医療・介護業界(夜勤あり)

【課題】夜勤明け→日勤のシフトでインターバル不足

【対策案】

  1. 夜勤明けは原則「公休」または「遅番」のみ配置可能
  2. 2交替制から3交替制への移行検討(16時間夜勤の解消)
  3. 夜勤専従者の活用(インターバル管理を分離)
  4. 緊急時の例外規定を明確化(患者急変対応等)

運送業(長距離運行)

【課題】長距離運行後のインターバル確保、2024年問題との両立

【対策案】

  1. 運行計画にインターバル時間を組み込み(帰着時刻+11時間を次回出発下限に)
  2. 中継拠点でのドライバー交替制の導入
  3. デジタコ・運行管理システムでインターバル自動チェック
  4. 荷主への説明・協力要請(待機時間の削減)

勤怠管理システムの対応ポイント

勤務間インターバル制度を適切に運用するためには、勤怠管理システムの機能確認・更新が不可欠です。

確認すべきシステム機能

※表は横にスクロールできます

機能 確認ポイント
インターバル自動計算 退勤〜翌出勤の時間を自動計算できるか
アラート機能 11時間未満の場合に本人・管理者へ通知できるか
始業繰下げ管理 繰下げ時間の記録・集計ができるか
レポート出力 部署別・月別のインターバル遵守率を可視化できるか
例外承認フロー 例外適用時の申請・承認ワークフローがあるか

よくある質問(FAQ)

勤務間インターバル制度はいつ義務化されますか?
現時点では未確定です。労働基準関係法制研究会の報告書を踏まえた労働政策審議会での審議を経て、2026年通常国会で法案審議、2027年4月以降に施行される見通しですが、審議状況により変更の可能性があります。
勤務間インターバル時間は何時間が義務化されますか?
研究会報告書では「原則11時間」が提言されています。ただし、業種・職種による例外や代替措置も検討されており、最終的な時間数は今後の審議で決定されます。段階的な施行(経過措置期間中は9時間など)の可能性も示唆されています。
管理監督者にも勤務間インターバルは適用されますか?
現行法上、管理監督者は労働時間規制の適用除外ですが、研究会報告書では管理監督者の健康・福祉確保措置の充実も提言されています。健康確保の観点から、就業規則上「管理監督者を含むすべての従業員を対象とする」規定を設ける企業も増えています。ただし、厳格な義務とするか、健康確保措置として準用するかは慎重に検討してください。
フレックスタイム制や裁量労働制でも勤務間インターバルは適用されますか?
具体的な適用関係は今後の審議で明確化される見込みです。ただし、労働者の健康確保という制度趣旨からは、労働時間制度に関わらず何らかの形でインターバル確保が求められる可能性が高いと考えられます。
勤務間インターバルを確保できなかった場合の罰則はありますか?
義務化された場合の罰則の有無・内容は、今後の審議で決定されます。ただし、労働基準法違反として是正勧告・指導の対象となる可能性、また安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われるリスクは想定されます。
現在努力義務で導入している場合、何を見直す必要がありますか?
現在9時間や10時間で運用している場合、原則11時間への引き上げが必要になる可能性があります。また、例外規定や代替措置の内容が法定された場合、自社規程との整合性確認が必要です。施行前に自社規程と法定基準の差異を把握しておくことをお勧めします。

まとめ:法案成立前から「備え」を始める

勤務間インターバル制度の義務化は、企業の労務管理に大きな転換を求めるものです。法案はまだ成立していませんが、だからこそ「今から準備を始める」ことが重要です。

📋 今から始めるチェックリスト
  • 現状把握:従業員の実際の勤務間インターバル時間を集計・分析
  • 就業規則の確認:現行規程でインターバルに関する規定があるか確認
  • シフト設計の見直し:11時間インターバルを前提としたシフト案の作成
  • 勤怠システムの点検:インターバル管理機能の有無を確認
  • 管理職への周知:制度の方向性と対応方針を共有
  • 36協定との整合性確認:特別条項(限度時間)とインターバル確保が矛盾していないか検証
  • 副業・兼業者の把握:本業でインターバルを確保しても副業で崩れるリスクに注意
  • 専門家との連携:社労士・弁護士への相談体制を構築
💡 労使コミュニケーションの重要性

トップダウンで時間規制だけを導入しても、現場が回らなくなるリスクがあります。労使委員会や現場ヒアリングを通じた段階的導入を検討し、現場の実態を踏まえた制度設計を心がけましょう。

参考資料(一次情報)

📅 最終更新:2025年12月|労働基準関係法制研究会報告書(2025年1月公表)および労働政策審議会の審議状況を反映
【免責事項】

本記事は2025年12月時点の公開情報に基づいて作成しています。法案は未成立であり、今後の審議過程で内容が変更される可能性があります。実際の対応にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。

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