勤務間インターバル11時間は義務化される?現行法・審議状況・就業規則の文例【2026年版】
※2026年10月29日現在、勤務間インターバル11時間の一般的な義務化を定めた改正法は成立しておらず、施行時期も未確定です。2027年施行を確定事項・有力な日程として扱うことはできません。
- 勤務間インターバル制度は「終業から翌日始業まで一定時間の休息を確保する」制度
- 勤務間インターバル制度の「原則11時間」確保について、義務化を含む法規制強化が検討されており、法案の成立・施行時期は未確定である(現行の一般制度は導入の努力義務)
- 自主導入時は就業規則・賃金規程との整合確認が重要(本記事で文例を3パターン掲載)
- 夜勤・交替制勤務がある企業は休息時間とシフト運用の点検を優先したい
- 法案未成立・施行時期未確定だが、早期の準備着手を推奨
本記事で解説する内容は、2025年1月公表の「労働基準関係法制研究会報告書」に基づく「提言・方向性」であり、法案も条文案も確定していません。
2026年10月14日の第212回労働政策審議会労働条件分科会でも、勤務間インターバル制度の法的位置付け等が検討論点とされました。10月23日の第213回でも労働基準関係法制の検討が続いており、11時間の一般的義務化の成立・施行を示すものではありません。最新の審議資料と成立法令を区別して確認してください。
2025年1月、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」が報告書を公表し、勤務間インターバル制度の規制強化・義務化を視野に入れた検討を提言しました。現行の一般制度は事業主の導入努力義務であり、11時間確保の一律の法的義務に転換したわけではありません。
本記事では、制度の基本から就業規則の具体的な書き方、シフト設計のテンプレートまで、実務で使える情報を網羅的に解説します。
勤務間インターバル制度とは
制度の定義と目的
勤務間インターバル制度とは、1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。
2019年4月の労働時間等設定改善法の改正により、企業の「努力義務」として導入されました。厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査」では、導入企業の割合は6.9%でした(令和6年調査は5.7%。対象は常用労働者30人以上の民営企業等)。
EU基準との比較
EUの労働時間指令(2003/88/EC)は、原則として24時間ごとに連続11時間の休息を保障する枠組みを定めています。ただし、業務や勤務形態に応じた適用除外・逸脱の仕組みもあります。日本では一律11時間の法定義務は未成立であり、単純に同一の法規制として比較できません。
※表は横にスクロールできます
| 項目 | 日本(現行) | EU |
|---|---|---|
| 法的位置づけ | 努力義務 | 義務 |
| インターバル時間 | 一律の法定時間数なし(自主設定) | 11時間以上 |
| 適用対象 | 導入企業6.9%(2025年調査) | 原則として労働者を保護(例外規定あり) |
出典:厚生労働省「勤務間インターバル制度について」|令和5年就労条件総合調査|令和7年就労条件総合調査
義務化検討の背景とスケジュール
改正の経緯
今回の改正議論は、以下の背景から進められています。
- 過労死・メンタルヘルス問題の深刻化(長時間労働や短い休息時間が健康リスク要因として注目されている)
- 過労死等の労災認定基準でも「長時間労働」「連続勤務」などがリスク要因として位置付けられており、勤務間インターバルの確保が重要視されている
- 2019年の努力義務化後も、2025年調査で導入率が6.9%にとどまる現状
- EU等の国際基準との乖離
- 2024年問題(建設業・運送業の残業規制強化)との整合性確保
審議経過と今後の時期(未確定)
※表は横にスクロールできます
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年1月 | 労働基準関係法制研究会報告書の公表 |
| 2025年〜 | 労働政策審議会で具体的な法改正の審議 |
| 2026年10月14日 | 労働条件分科会で勤務間インターバル制度等を検討(法案成立ではない) |
| 法案提出・施行日:未確定 | 成立法・公布日・施行日を今後確認 |
上表は公表済みの審議経過と未確定事項を区別したものです。研究会報告書には「2027年4月施行」という日程は定められておらず、2026年10月29日時点でも一律11時間義務化の施行日を断定する根拠はありません。
出典:厚生労働省「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します(2025年1月8日)
提言されている改正内容
※表は横にスクロールできます
| 項目 | 提言内容 |
|---|---|
| インターバル時間 | 原則11時間(例外・代替措置も検討) |
| 法的位置づけ | 義務化を含む法規制強化を検討(現行は導入の努力義務) |
| 例外措置 | 適用除外職種、代替措置、11時間未満の許容、経過措置等を検討 |
| 導入アプローチ | 段階的導入や経過措置を含め検討(施行方式は未決定) |
就業規則の書き方・規定例【3パターン】
勤務間インターバル制度を自主導入し、始業・終業時刻や賃金の取扱い等を定める場合は、就業規則・賃金規程等との整合を確認します。労基法89条の就業規則作成・届出義務は常時10人以上の労働者を使用する事業場に適用され、導入した全企業に一律の新たな届出義務が発生するわけではありません。以下は自主制度の文例です。
パターン①:シンプル型(小規模事業所向け)
残業が少なく、シフト勤務がない事業所向けのシンプルな規定例です。
(勤務間インターバル)
第○条 会社は、従業員の健康確保の観点から、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、原則として11時間以上の休息時間(以下「勤務間インターバル」という。)を確保するものとする。
2 前項の休息時間が確保できない場合は、従業員は翌日の始業時刻を繰り下げることができる。この場合、繰り下げた時間は所定労働時間に含むものとする。
3 本条の規定は、正社員、契約社員、パートタイマー等の雇用形態にかかわらず適用する。
パターン②:標準型(一般企業向け)
例外事由や手続きを明確にした標準的な規定例です。
(勤務間インターバル)
第○条 会社は、従業員の健康確保および生活時間の確保のため、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、11時間以上の休息時間(以下「勤務間インターバル」という。)を確保しなければならない。
2 前項の休息時間が確保できない場合、従業員は所属長の承認を得たうえで、翌日の始業時刻を繰り下げるものとする。繰り下げた時間は、所定労働時間を勤務したものとみなす。
3 次の各号に該当する場合は、第1項の規定にかかわらず、勤務間インターバルを短縮することができる。ただし、この場合においても9時間以上の休息時間を確保するよう努めなければならない。
(1)災害その他避けることができない事由により臨時の必要がある場合
(2)システム障害等の緊急対応が必要な場合
(3)その他会社が特に必要と認めた場合
4 前項の規定により勤務間インターバルを短縮した場合、所属長はその理由を記録し、従業員の健康状態に配慮した必要な措置を講じなければならない。
5 本条の規定は、管理監督者を含むすべての従業員に適用する。ただし、管理監督者については健康確保措置として本条を準用するものとし、やむを得ない業務上の必要がある場合はこの限りでない。
パターン③:詳細型(交替制勤務・夜勤あり向け)
医療・介護・製造業など、交替制勤務や夜勤がある事業所向けの詳細な規定例です。
(勤務間インターバル)
第○条 会社は、従業員の健康確保のため、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、次の各号に定める休息時間(以下「勤務間インターバル」という。)を確保しなければならない。
(1)日勤者:11時間以上
(2)夜勤者:勤務終了後12時間以上
(3)交替制勤務者:シフト間において10時間以上
2 前項の休息時間が確保できない場合、次の各号のいずれかの措置を講じるものとする。
(1)翌日の始業時刻の繰り下げ(繰り下げ時間は所定労働時間とみなす)
(2)代替休息の付与(例:不足時間の1.25倍の休息を1週間以内に付与 等、自社方針で設定)
3 次の各号に該当する場合は、第1項の規定の適用を除外する。ただし、可能な限り休息時間の確保に努めるものとする。
(1)災害、事故等の緊急対応
(2)患者・利用者の容態急変等、生命・身体の安全確保に必要な場合
(3)労使協定で定めた特別な事情がある場合
4 会社は、勤務間インターバルの遵守状況を月次で把握し、恒常的に確保できない部署については、業務量の調整、人員の補充等の措置を講じるものとする。
5 従業員は、勤務間インターバルの確保に支障が生じる場合、速やかに所属長に報告しなければならない。
- インターバル時間の給与扱い:始業時刻を繰り下げた時間の賃金取扱いは、労働契約・就業規則、勤務時間の変更方法、休業手当の要否等によって判断します。会社の財務状況だけで「無給」を自由に選択できるわけではありません。文例の「有給」は自主制度の設計例であり、将来の法定取扱いを示すものではありません。
- 管理監督者の扱い:労基法41条2号の管理監督者は現行法上、労働時間・休憩・休日規定の適用除外ですが、将来のインターバル規制の対象範囲は未確定です。研究会報告書では健康・福祉確保措置の充実も論点です。規程例②では「健康確保措置として準用」という形で、適用対象としつつも柔軟な運用を可能にしています。
- 代替休息のレート:例示の「不足時間の1.25倍」は社内独自の仮定であり、割増賃金率25%から導ける休息時間の法定換算式はありません。代替休息の量・期限・実施方法は労使で検討し、健康確保の実効性を確認してください。将来の法定代替措置と混同しないことが必要です。
- 36協定との整合性:休息時間の自主基準を設ける場合、36協定による時間外・休日労働の上限を緩和する効果はありません。36協定の範囲内でも休息確保・健康管理が必要であり、シフト運用との整合を確認します。
- 本規定例はあくまで叩き台です。実際の導入・施行時には、必ず最新の法令を確認し、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。
シフト設計テンプレート【業種別】
11時間インターバルを確保するためのシフト設計例を業種別に紹介します。
インターバル時間の計算表
終業時刻別に、11時間インターバルを確保した場合の翌日始業可能時刻を示します。
※表は横にスクロールできます
| 終業時刻 | 11時間後 | 9時始業の場合 |
|---|---|---|
| 20:00 | 翌7:00 | ○ 問題なし |
| 21:00 | 翌8:00 | ○ 問題なし |
| 22:00 | 翌9:00 | ○ ギリギリOK |
| 23:00 | 翌10:00 | △ 11時間目標なら繰下げ検討 |
| 24:00 | 翌11:00 | △ 11時間目標なら繰下げ検討 |
| 25:00(深夜1時) | 翌12:00 | △ 11時間確保(自主目標、要注意※) |
※前日を基準に25:00(翌1:00)終業→翌日12:00始業は11時間の間隔です。ただし、一般労働者に一律11時間を課す法的要件は現時点で存在しません。自主目標の充足と、深夜労働・労働時間・健康確保の適法性は別途確認してください。
業種別シフト設計例
IT・広告業界(プロジェクト型業務)
【課題】納期直前の深夜作業 → 翌朝9時出社が常態化
【対策案】
- フレックスタイム制の活用(コアタイム11:00〜15:00)
- 深夜作業翌日は午後出勤をデフォルト化
- 22時以降の残業は事前申請制(インターバル確保の確認必須)
- 勤怠システムにインターバル違反アラートを設定
医療・介護業界(夜勤あり)
【課題】夜勤明け→日勤のシフトでインターバル不足
【対策案】
- 夜勤明けは原則「公休」または「遅番」のみ配置可能
- 2交替制から3交替制への移行検討(16時間夜勤の解消)
- 夜勤専従者の活用(インターバル管理を分離)
- 緊急時の例外規定を明確化(患者急変対応等)
運送業(長距離運行)
【課題】長距離運行後のインターバル確保、2024年問題との両立
【対策案】
- 運行計画では自動車運転者の改善基準告示に基づく休息期間・拘束時間を別途確認し、帰着時刻+11時間だけで適法性を判定しない
- 中継拠点でのドライバー交替制の導入
- デジタコ・運行管理システムでインターバル自動チェック
- 荷主への説明・協力要請(待機時間の削減)
勤怠管理システムの対応ポイント
勤務間インターバル制度を適切に運用するためには、勤怠管理システムの機能確認・更新が不可欠です。
確認すべきシステム機能
※表は横にスクロールできます
| 機能 | 確認ポイント |
|---|---|
| インターバル自動計算 | 退勤〜翌出勤の時間を自動計算できるか |
| アラート機能 | 11時間未満の場合に本人・管理者へ通知できるか |
| 始業繰下げ管理 | 繰下げ時間の記録・集計ができるか |
| レポート出力 | 部署別・月別のインターバル遵守率を可視化できるか |
| 例外承認フロー | 例外適用時の申請・承認ワークフローがあるか |
よくある質問(FAQ)
まとめ:法案成立前から「備え」を始める
勤務間インターバル制度の義務化は引き続き検討段階です。成立していない制度を既存の法定義務と扱わず、まずは「実態を把握して自主的に改善する」ことが重要です。
- 現状把握:従業員の実際の勤務間インターバル時間を集計・分析
- 就業規則の確認:現行規程でインターバルに関する規定があるか確認
- シフト設計の見直し:11時間インターバルを前提としたシフト案の作成
- 勤怠システムの点検:インターバル管理機能の有無を確認
- 管理職への周知:制度の方向性と対応方針を共有
- 36協定との整合性確認:特別条項(限度時間)とインターバル確保が矛盾していないか検証
- 副業・兼業者の把握:本業でインターバルを確保しても副業で崩れるリスクに注意
- 専門家との連携:社労士・弁護士への相談体制を構築
トップダウンで時間規制だけを導入しても、現場が回らなくなるリスクがあります。労使委員会や現場ヒアリングを通じた段階的導入を検討し、現場の実態を踏まえた制度設計を心がけましょう。
参考資料(一次情報)
- 厚生労働省「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します(2025年1月8日)
- 労働基準関係法制研究会報告書(PDF)
- 厚生労働省「勤務間インターバル制度について」
- 働き方・休み方改善ポータルサイト「勤務間インターバル制度」
- 厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」
- e-Gov法令検索「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」
- 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」
- 厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(導入率6.9%)
- 厚生労働省「第212回労働条件分科会資料」(2026年10月14日)
- 厚生労働省「第213回労働条件分科会資料」(2026年10月23日)
本記事は2026年10月29日時点の公表情報に基づいて作成しています。勤務間インターバル11時間の一般的義務化を定める改正法は未成立であり、今後の審議で内容が変更される可能性があります。実際の対応にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。
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