印紙税シリーズ 第8話

覚書・変更契約書・合意書の印紙税
|タイトルではなく内容で決まります

「覚書だから印紙不要」は誤解です。原契約が課税文書かどうか・何を変更するか・金額変更があるかで判断します。

最終更新:2026年4月28日

「覚書だから印紙はいらない」「変更契約書は印紙不要のはず」――そう思い込んで実務を進めると、後から過怠税を指摘されるリスクがあります。

まず知っておきたい前提:印紙の貼り忘れがあっても、契約・覚書の法的効力は影響を受けません。ただし印紙税法第20条により、税務調査等で発覚した場合には納付すべき印紙税額の3倍(自己申出の場合は1.1倍)の過怠税が課されます。金額が大きくなるほど過怠税も高額になるため、事前の正確な判断が重要です。

印紙税の判断基準は、文書のタイトルではなく記載内容です。覚書・変更契約書・合意書・確認書・承諾書――いかなる名称であれ、その内容が課税文書の「重要な事項」を変更するものであれば、課税対象になります。

本記事では、企業法務・総務・経理担当者が既存契約に紐づく変更文書の印紙税を一次判断できるよう、判断フロー・変更内容別の判断表・増減額の記載金額判断・電子契約との関係を体系的に整理します。

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まず結論|覚書でも内容次第で印紙税が必要です

3つのポイントで判断する
  • 原契約が課税文書か確認する(請負・売買・取引基本契約等)
  • 変更内容が「重要な事項」に当たるか確認する(金額・目的・当事者等)
  • 紙で作成・交付するか、電子で締結するか確認する(電子なら原則不要)
❌ よくある誤解

「覚書」「合意書」「確認書」というタイトルだけで印紙の要否を判断することはできません。
印紙税法は、文書の名称・形式ではなく記載内容で課税文書を判定します(印紙税法別表第一・課税物件表)。

⚠️ 判断が難しいケースについて

本記事は実務参考情報として整理していますが、個別事案の最終判断には、取引の具体的事情・文書の記載内容を踏まえた検討が必要です。判断に迷う場合は、税理士または所轄税務署にご確認ください。

覚書・変更契約書・合意書とは何か

既存の契約を変更・補充・確認するために作成される文書は、実務でさまざまな名称が使われます。法律上、これらの名称に厳格な定義はなく、記載内容によって法的性質が決まります。

文書類型別の概要と印紙要否の方向性

文書名 主な役割 原契約との関係 印紙要否の方向性 注意点
覚書 当事者間の合意・確認・意向の記録 原契約の補足・確認として機能することが多い 内容次第 重要事項の変更が含まれる場合は課税対象になる
変更覚書 原契約の特定条項を明示的に変更する 原契約の一部を改定する文書 内容次第 金額・目的等の重要事項変更は課税対象になりやすい
変更契約書 原契約の条項を正式に変更する 原契約の変更を明記した正式な契約書 内容次第 名称が「変更契約書」でも内容が課税対象かは別途判断が必要
合意書 当事者の合意内容を文書化する 新たな合意・既存契約の変更いずれも 内容次第 新規の課税事項を含む場合は独立した課税文書となる
確認書 既存の合意内容・事実を確認する 原契約内容の再確認が主目的 不要が多い 確認のみで内容変更がなければ不課税。ただし書き方に注意
承諾書 一方当事者の同意・承諾を示す 原契約に関連する承諾行為を記録 不要が多い 承諾に伴い新たな義務・金額が生じる場合は別途検討が必要
追加契約書 原契約に新たな合意を追加する 原契約の拡張・追加として機能 内容次第 追加業務・追加報酬が含まれる場合は課税対象の可能性大
補充契約書 原契約の未定事項を補充する 原契約と一体として機能 内容次第 補充内容が課税事項(金額・目的等)であれば課税対象
協定書 複数当事者間の取り決めを記録する 独立した合意または既存関係の補完 内容次第 内容が請負・売買・継続的取引等に該当すれば課税
契約終了合意書 契約の終了・解除・合意解約を記録する 原契約の終了を確認する 不要が多い 終了に伴う精算金・解約料等の金額記載がある場合は別途検討

※上記は一般的な傾向であり、個別の記載内容・原契約の性質によって判断が異なります。

印紙税はタイトルではなく内容で判断する

印紙税法は、文書の「名称」や「形式」ではなく、文書に記載された内容(記載事項)によって課税文書を判定します(印紙税法第2条、別表第一 課税物件表)。

📖 印紙税法基本通達(国税庁)の考え方

既に成立している課税文書の内容を変更するための文書(変更契約書・覚書等)は、その変更に係る事項が課税文書の「重要な事項」に該当する場合に限り、課税文書となります。タイトルや外形ではなく、記載内容を実質的に判断します。

参照:国税庁「印紙税の手引」・印紙税法基本通達(昭和52年4月7日直所3-8)

具体的には、以下の3点を確認することが実務上の出発点です。

確認事項 判断の内容 課税への影響
① 文書を作成・交付する媒体 紙(書面)か、電子(電磁的記録)か 電子の場合は原則不課税
② 原契約の性質 原契約が課税文書(第1〜第20号)に該当するか 非課税文書の変更書は不課税
③ 変更内容の性質 変更内容が課税文書の「重要な事項」に当たるか 重要事項の変更なら課税、そうでなければ不課税

原契約が課税文書かどうかを確認する

変更文書が課税対象になるかは、まず原契約が課税文書かどうかを確認することが前提です。原契約が課税文書でなければ、その変更文書も基本的に課税対象にはなりません。

実務で多い主要課税文書の例

課税文書の種類 主な例 変更覚書への影響
第1号の1 不動産等の譲渡に関する契約書 不動産売買契約書 売買金額・目的物件の変更は課税対象
第1号の2 地上権・賃借権設定に関する契約書 土地賃貸借契約書 賃料・期間変更は要検討
第2号 請負に関する契約書 建設工事・システム開発・制作委託 請負金額・請負内容の変更は課税対象
第7号 継続的取引の基本となる契約書 取引基本契約書・継続的業務委託基本契約 目的・当事者・対価等の変更は要検討
第17号 金銭の受取書 領収書(5万円以上) 変更文書として発行するケースは少ない
原契約が課税文書でない場合(例)
NDA(秘密保持契約)のみの変更覚書、委任契約の変更覚書(報酬なし)、労働契約の変更文書などは、原契約が課税文書でない場合、変更文書も原則として課税対象になりません。ただし変更内容が新たな課税事項を含む場合は別途検討が必要です。

重要な事項を変更する文書は課税対象になり得る

原契約が課税文書であっても、すべての変更が課税対象になるわけではありません。変更する内容が課税文書の「重要な事項」に該当する場合に限り、変更文書も課税文書となります。

「重要な事項」判断の原則と例外
  • 原則:金額・目的・当事者・履行期限など、課税の根拠となる事項の変更は「重要な事項」に該当する
  • 例外(注意):支払期日・連絡先・書式・担当者など手続的事項の変更は原則として重要な事項に当たらないが、それらの変更が実質的に対価・契約目的に影響する場合は重要な事項と評価されることがある
  • 実務の安全策:判断に迷う場合は「重要でない」と決めつけず、文書に「本覚書による金額変更なし」等を明記しつつ、必要に応じて200円の印紙を貼る

「重要な事項」の具体例(文書号別)

文書の号 重要な事項(例) 重要でない事項(例)
第1号文書
(不動産売買等)
目的物件・譲渡金額・当事者・引渡日 支払方法の細部・振込口座・連絡先
第2号文書
(請負)
請負金額・請負の目的・完成期日・追加業務 施工の細部仕様・検収書式・通知方法
第7号文書
(継続的取引基本)
取引当事者・取引目的・対価・契約期間 担当者・通知先・書類書式
⚠️ 実務上の注意点

「重要な事項」に当たるかどうかは、個別の文書・取引の性質によって判断が異なります。文書の内容が記載事項の変更にとどまるのか、実質的な課税事項の変更に及んでいるのかを慎重に確認してください。

変更内容別の印紙要否判断表

変更内容 印紙要否 理由 注意点
契約金額を増額する 原則必要 請負金額等の重要事項の変更に当たる 増加額が記載金額となる場合が多い
契約金額を減額する 要検討 重要事項の変更だが減額は記載金額なし 記載金額なしとして200円の印紙が必要になる場合あり
金額変更なく仕様だけ変更する 不要が多い 仕様変更のみで金額・目的の変更なし 仕様変更に伴い追加費用が発生する場合は要再検討
仕様変更に伴い追加費用が発生する 原則必要 追加報酬=請負金額の増額に相当する 追加費用額が記載金額となる
契約期間を延長する 要検討 第7号文書では期間が重要事項になり得る 第2号・第1号文書では期間延長が重要事項か別途確認が必要
契約期間を短縮する 要検討 重要事項の変更か個別判断が必要 終了時期の変更のみなら不要の場合が多い
支払期日を変更する 不要が多い 支払期日は一般的に重要事項に当たらない 支払総額が変わる場合は別途検討が必要
支払方法を変更する 不要が多い 支払方法は一般的に重要事項に当たらない 記載内容に金額変更が含まれないか確認
納期(履行期限)を変更する 原則必要(200円) 第2号文書において「履行期限」は重要な事項に該当する。ただし金額の記載がなければ記載金額なし→200円 実務上、納期変更のみで高額の過怠税が生じるケースは稀だが、定義上は重要事項。「納期変更のみ・金額変更なし」と明記した上で200円の印紙を貼るのが安全
検収方法を変更する 不要が多い 検収手続は一般的に重要事項ではない 検収条件が変わることで対価に影響する場合は要検討
損害賠償条項を変更する 不要が多い 損害賠償条項は一般的に重要事項ではない 賠償上限額の明記・変更の場合は慎重に
秘密保持条項のみ変更する 不要が多い 秘密保持は課税事項の重要事項ではない NDA単独の変更覚書は原則不課税
反社条項のみ追加する 不要 反社条項は課税文書の重要事項に当たらない 反社条項だけの覚書は印紙不要の判断が一般的
当事者名・住所を変更する 要検討 当事者は第1号・第2号文書では重要事項になり得る 社名変更・住所変更のみか、当事者の実質的交替かで異なる
契約終了合意をする 不要が多い 終了合意は課税事項に新たな事項を加えない 終了に伴う精算金額が明記される場合は別途検討
原契約の誤記訂正のみ 不要 誤記訂正は実質的な内容変更ではない 誤記訂正と明記され、内容変更を伴わない場合に限る

※上記は一般的な傾向であり、文書の具体的な記載内容によって異なります。最終判断は個別事情を踏まえて行ってください。

増額・減額変更の印紙税

変更文書で最も判断に迷うのが、契約金額の増額・減額変更です。記載金額の読み方によって印紙税額が大きく変わります。

増額・減額変更の記載金額判断表

ケース 記載金額の判断 印紙要否 注意点
原契約100万円を150万円に増額する 増加額50万円が記載金額(原則) 必要 増加額のみ記載の場合は増加額が記載金額
「50万円を追加する」と記載する場合 追加額50万円が記載金額 必要 追加額が明記されている場合はその金額で判断
「変更後の契約金額を150万円とする」と記載する場合 変更後の金額150万円が記載金額 必要 変更後の金額が明記されていれば変更後の金額が記載金額となる
原契約150万円を100万円に減額する場合 記載金額なし扱い 要検討 第2号文書等では減額変更は記載金額なしとして印紙税200円になる場合あり
増額・減額が混在する場合 差引後の純増加額 要検討 一部増額・一部減額の場合は差引後の純増加額で判断。純減の場合は記載金額なし
単価のみ変更する場合 変更後の総額または増加相当額 要検討 単価変更による総額への影響を確認。総額が明記されているかで異なる
月額報酬を変更する場合 月額変更額×契約期間分が総額の場合もあり 要検討 継続的業務委託の場合は第7号文書の適用も確認
契約期間延長に伴い総額が増える場合 延長期間分の報酬が追加額となり得る 要検討 延長分の金額が明記されているか確認が必要
追加業務の対価を記載する場合 追加業務の対価が記載金額 必要 請負の場合は追加業務分の金額が第2号文書の記載金額となる
「金額変更なし」と明記する場合 記載金額なし 不要(または200円) 明示的に金額変更なしと記載し、他の重要事項の変更がない場合は不課税または税額200円
原契約の金額を引用していない場合 変更後の金額・追加額から判断 要検討 金額が一切記載されていなければ記載金額なしとして扱う
税込・税抜の区分記載がある場合 税抜金額が記載金額 消費税額が区分記載(または税込・税抜価格を両方明記)されている場合、消費税額は記載金額に含まれない 【実務テクニック】増額時に「税込110万円(うち消費税10万円)」と記載すれば、記載金額は100万円以下として判定できる。「税込110万円」のみ記載だと110万円が記載金額となる。消費税の区分明記は印紙税節減に有効
実務ポイント:変更文書に「変更後の契約金額は○円とする」と記載する場合、変更後の総額が記載金額となります。一方、「○円を追加する」と差額のみを記載する場合は差額が記載金額となります。どちらの書き方にするかで印紙税額が変わるため、記載方法を意識して起案することが重要です。

契約期間・支払条件・納期変更の扱い

契約期間の延長

契約期間の延長は、文書の号によって取扱いが異なります。特に第7号文書(継続的取引基本契約書)の期間延長は明確なルールがあります

❗ 第7号文書の期間延長は要注意

第7号文書(取引基本契約書・継続的業務委託基本契約等)において、契約期間を3ヶ月を超えて更新・延長する覚書は、それ自体が第7号文書として課税され、4,000円の印紙が必要とされています。「金額変更なし・期間延長のみ」であっても例外ではありません。一方、3ヶ月以内の短期延長の場合は課税対象とならない場合があります。

第2号文書(請負契約書)の覚書で完成期日のみを変更する場合は、国税庁の重要事項の定義では履行期限(納期)も重要な事項に該当し得るため、金額の記載がなくても200円の印紙が必要になる場合があります。

支払条件の変更

支払期日・支払スケジュールの変更のみを内容とする覚書は、一般的に課税文書の「重要な事項」には当たらないとされることが多く、印紙税は不要と判断されることが多いです。ただし、支払条件の変更に伴い実質的な支払総額が変わる場合は、別途検討が必要です。

納期・検収の変更

納期・検収方法のみの変更覚書は、一般的に重要な事項の変更とは見なされず、印紙不要と判断されることが多いです。ただし納期変更に伴い遅延損害金・追加費用が発生する場合は、その内容を確認してください。

⚠️ 複数の変更が混在する場合の注意

1つの覚書に「金額変更なし」「納期変更のみ」と書いてあっても、実際の取引内容によっては重要事項の変更を含むと判断される可能性があります。文書の記載内容を慎重に確認してください。

原契約引用の有無による違い

変更文書が原契約を明確に引用しているかどうかは、課税文書の判断に影響する場合があります。原契約との関係が明確であれば、変更内容の性質をより正確に判断できます。

ケース 印紙税への影響 注意点
原契約日・契約名・当事者を明確に引用している場合 変更内容の判断が明確になる 引用されている原契約の号・課税文書性を確認
「別紙契約」とだけ記載している場合 原契約の特定が曖昧になる 原契約の課税文書性が不明な場合は調査が必要
原契約をまったく引用していない場合 単独文書として課税文書性を判断する必要がある 内容によっては独立した課税文書として課税される可能性
原契約の金額を引用している場合 変更前後の金額差が明確になる 増加額・減少額の判断に影響する
原契約の金額を引用していない場合 変更後の金額・追加額のみで判断 金額記載がなければ記載金額なしとして扱う
原契約の課税文書性が明らかな場合 変更内容の重要事項該当性のみ判断 課税文書の変更として検討を進める
原契約の課税文書性が不明な場合 原契約を遡って確認する必要がある 原契約書・台帳を確認。不明な場合は税務署への照会も
原契約が電子契約の場合 原契約は課税文書に該当しない 【重要】原契約が電子(非課税)であっても、紙の覚書の内容が課税物件表上の重要事項(請負金額の増額等)を証する文書であれば、覚書単体で課税対象と判断されるリスクが高い。「原契約が非課税文書だから変更覚書も不要」という解釈は保守的な実務では採用しない方が安全
原契約が紙契約の場合 原契約は課税文書として確定 変更内容の重要事項該当性を判断
変更契約だけ紙の場合 変更文書が紙の課税文書に該当するか判断が必要 原契約が電子でも変更文書が紙なら変更文書の内容で判断する

契約類型別|覚書・変更契約書の印紙税判断例

契約類型 主な変更内容 印紙要否 注意点
請負契約の変更覚書 請負金額の増額・追加業務 必要 増加額が記載金額となる。第2号文書として課税
建設工事請負契約の変更契約 工事金額・工事範囲の変更 必要 第2号文書として増加額で課税。建設工事は税額も高額になりやすい
システム開発契約の仕様変更覚書 仕様変更のみ(費用増なし) 不要が多い 仕様変更のみで請負金額が変わらない場合は不課税の場合が多い
システム開発契約の仕様変更覚書 仕様変更+追加費用発生 必要 追加費用が請負金額の増額に相当。増加額が記載金額
Web制作契約の追加制作覚書 追加ページ・追加機能の対価記載 必要 追加制作の対価が記載金額。第2号文書として課税
業務委託契約の変更覚書 委託業務の追加・報酬増額 要検討 請負型なら第2号文書として課税対象。準委任型は原則非課税文書の変更として不要の場合が多い
準委任型業務委託の変更覚書 月額報酬の変更 不要が多い 準委任契約は原則として課税文書でないため変更覚書も不課税の場合が多い
取引基本契約書の変更覚書 取引条件・対価・期間の変更 要検討 第7号文書の重要事項(目的・期間・対価等)の変更は課税対象になり得る
売買契約の変更覚書 売買代金の変更 必要 不動産売買は第1号文書として課税。動産売買は号によって異なる
不動産売買契約の変更覚書 売買代金・目的物件の変更 必要 第1号文書の重要事項変更。変更後の金額・増加額で税額を判断
賃貸借契約の変更覚書 賃料・期間の変更 要検討 第1号の2文書(不動産の賃借権設定)の変更は要検討。賃料増額は重要事項
NDAの変更覚書 秘密情報の範囲・期間の変更 不要 NDAは原則として課税文書でないため変更覚書も不課税
反社条項追加の覚書 反社会的勢力排除条項の追加 不要 反社条項のみの追加は課税文書の重要事項に該当しない
契約期間延長の覚書 期間のみ延長(金額変更なし) 第7号:3ヶ月超で必要(4,000円) 第7号文書(取引基本契約書等)は3ヶ月超の延長で4,000円の課税。第2号文書(請負)は金額記載なしとして200円になる場合あり
契約終了合意書 合意解約・期間満了確認 不要が多い 精算金・解約料の金額記載がある場合は別途検討が必要

電子契約の場合

印紙税法上の課税文書は紙の「文書」の作成・交付を前提としています。電子的な方法(電子署名・クラウド型電子契約サービス等)で作成・締結される文書は、現行の印紙税法上「文書」に該当しないとされており、印紙税は課税されません。

✅ 電子契約で覚書・変更契約書を締結した場合
クラウドサイン・DocuSign・freeeサイン等の電子契約サービスを使い、電磁的方法で覚書・変更契約書を締結した場合は、原則として印紙税の課税対象にはなりません。これは覚書・変更契約書に限らず、すべての文書種別に共通する取扱いです。

電子契約・紙契約の判断表

状況 原契約 覚書(変更文書) 覚書への印紙税 注意点
原契約も覚書も紙 課税文書(紙) 内容次第 通常の判断フローで確認
原契約は紙、覚書は電子 課税文書(紙) 電子(電磁的方法) 不要 覚書が電子であれば印紙税不要
原契約は電子、覚書は紙 非課税(電子) 課税リスク大 原契約が電子(非課税)でも、紙の覚書に「請負金額の増額」等の重要事項を記載すれば、その覚書単体で課税文書と判定されるリスクが高い。「原契約が非課税文書の変更だから不要」という解釈は採用しない方が安全
原契約も覚書も電子 非課税(電子) 電子(電磁的方法) 不要 両者が電子なら印紙税不要
PDFをメール送付のみ(押印・印刷なし) 非課税(電子) 非課税(電子) 不要 物理的な紙文書を作成・交付していない場合は印紙税不要
PDFを印刷して押印・郵送 状況による 紙として課税文書に該当し得る 内容次第 印刷・押印・郵送により紙の文書を作成・交付した場合は課税対象になる
電子契約後に紙原本も作成 電子で非課税 紙として課税文書に該当し得る 内容次第 電子締結後に紙の原本を別途作成・交付した場合は紙の文書として課税対象になる可能性
紙覚書を2通作成 状況による 紙・2通 内容次第 課税文書の場合は各通に印紙が必要(ただし当事者各1通)
紙覚書1通+写し1通 状況による 紙・原本1通 内容次第 写しは原則として課税文書とならないが、写しに押印等がある場合は別途確認
電子契約サービスで覚書締結 状況による 電子(電磁的方法) 不要 クラウド電子契約サービスの場合は印紙税不要。コスト削減の有効手段

契約審査実務での管理方法

印紙要否判断フロー

1
STEP 1|紙で作成・交付する文書か
電子契約(クラウドサービス等)で締結する場合は印紙税不要。紙で作成・交付する場合はSTEP 2へ。
2
STEP 2|原契約が課税文書か
原契約の文書号(第1号・第2号・第7号等)を確認する。非課税文書の変更であれば原則不要。
3
STEP 3|原契約のどの事項を変更するか
変更する条項・内容を特定する(金額・目的・当事者・期間・支払条件・納期等)。
4
STEP 4|課税文書の重要事項を変更しているか
変更内容が課税文書の重要事項(金額・目的・当事者等)に該当するか確認する。重要事項でなければ不課税。
5
STEP 5|契約金額の変更があるか
増額・減額・追加額の有無を確認する。増額なら増加額、減額なら記載金額なし(または200円)。
6
STEP 6|原契約を明確に引用しているか
原契約の特定情報(契約名・締結日・当事者)が明記されているか確認する。
7
STEP 7|記載金額をどう読むか
変更後の金額・増加額・記載金額なしのいずれかを判断し、税額を確認する(印紙税額一覧参照)。
8
STEP 8|電子化できるか検討する
印紙税節減の観点から、電子契約での締結が可能か検討する(取引先の同意が必要)。
9
STEP 9|判断根拠を台帳に記録する
判断結果・根拠・判断者・判断日を契約台帳に記録し、証跡を保存する。

契約締結前チェックリスト

  • 覚書・変更契約書・合意書のタイトルだけで印紙の要否を判断していないか
  • 原契約を特定したか(契約名・締結日・当事者を確認)
  • 原契約が課税文書(第1号・第2号・第7号等)か確認したか
  • 変更内容が課税文書の「重要な事項」に当たるか確認したか
  • 契約金額の増減があるか確認したか
  • 増額部分・減額部分の記載方法を確認したか(変更後総額 vs 差額記載)
  • 契約期間・支払条件・納期・検収の変更を確認したか
  • 原契約を明確に引用しているか確認したか(契約名・締結日・当事者)
  • 紙契約か電子契約か確認したか
  • 原本通数を確認したか(各通に印紙が必要)
  • 消印担当者を確認したか
  • 契約台帳に変更履歴と印紙判断を記録したか

契約審査メモ例

📝 契約審査メモ(印紙税判断記録)
文書名 業務委託契約変更覚書 第○号
文書種別 変更覚書(既存契約の一部変更)
原契約名 業務委託契約書(令和○年○月○日付)
原契約締結日 令和○年○月○日
原契約の文書区分 第2号文書(請負に関する契約書) / 非課税
変更内容 委託業務追加・報酬月額50万円増額
重要事項変更の有無 あり(請負金額の増額に相当)
記載金額 50万円(増加額)
印紙税額 200円(1万円未満の記載金額)/ 400円 / 1,000円 等
紙契約/電子契約 紙契約(書面2通作成)
原本通数 2通(各自1通保管)
判断根拠 印紙税法別表第一第2号・印紙税法基本通達
判断者 法務部 ○○
判断日 令和○年○月○日

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原契約と覚書・変更契約書を紐づけて管理しないと、後から印紙税の判断根拠が追えなくなります。LegalOSでは以下の管理業務を支援しています。

  • 原契約と覚書・変更契約書の紐付け管理
  • 契約変更履歴管理・変更理由の記録
  • 印紙税判断記録・判断根拠の保存
  • 契約金額変更の履歴管理
  • 契約期間・更新期限管理
  • 覚書承認ワークフロー・証跡保存
  • 監査ログ・グループ会社横断管理
LegalOSを見る 有料プロンプト集を見る

よくある質問

覚書には印紙が必要ですか?

覚書というタイトルだけでは判断できません。原契約が課税文書(請負・不動産売買・継続的取引基本契約等)であり、かつその覚書が課税文書の重要な事項(金額・目的・当事者等)を変更する内容であれば、課税文書となり印紙が必要です。タイトルではなく記載内容で判断してください。

変更契約書には印紙が必要ですか?

「変更契約書」という名称だけでは判断できません。原契約の性質と変更内容(重要事項の変更か否か)を確認して判断します。たとえば請負契約の請負金額を変更する変更契約書は課税対象ですが、支払期日のみを変更する変更契約書は一般的に課税対象にはなりません。

合意書にも印紙税はかかりますか?

合意書も名称ではなく内容で判断します。合意の内容が課税文書(請負・売買等)の重要事項を変更するものであれば課税対象になります。単に事実確認や行為の承認のみを内容とする合意書は、一般的に課税対象にはなりません。

契約金額を増額する覚書はいくらの印紙ですか?

増加額が記載金額となり、印紙税額一覧表(第2号文書等)に従って判断します。たとえば増加額が100万円であれば1,000円の印紙(第2号文書の場合)、200万円であれば2,000円の印紙となります。変更後の総額のみを記載している場合は、その総額が記載金額となります。

契約金額を減額する覚書にも印紙は必要ですか?

減額変更の場合、記載金額なし扱いとなることが多く、課税文書に当たる場合は200円の印紙となります(重要事項の変更に該当するかどうかによっても異なります)。具体的な判断は税理士・所轄税務署にご確認ください。

支払条件だけを変更する覚書はどうなりますか?

支払期日・支払方法のみを変更する覚書は、一般的に課税文書の「重要な事項」には当たらないとされることが多く、印紙不要の場合が多いです。ただし支払総額が変わる内容を含む場合は別途確認が必要です。

契約期間延長の覚書には印紙が必要ですか?

原契約の号によって扱いが異なります。第7号文書(取引基本契約書等)の場合、3ヶ月を超える期間延長の覚書は第7号文書として4,000円の印紙が必要とされています。3ヶ月以内の短期延長であれば課税対象外となる場合があります。第2号文書(請負)の覚書で期間のみ延長し金額変更がない場合は、履行期限は重要事項に当たり得るため200円の印紙が必要になる場合があります。

反社条項だけ追加する覚書は印紙不要ですか?

反社条項のみを追加する覚書は、課税文書の重要な事項を変更するものではないため、印紙不要と判断されることが一般的です。ただし他の変更内容が含まれないよう文書を整理した上で判断してください。

原契約が電子契約の場合、紙の覚書には印紙が必要ですか?

これは実務上グレーな論点です。原契約が電子(非課税)であっても、紙の覚書に「請負金額の増額」「目的物の変更」等の重要事項を記載していれば、その覚書自体が課税文書と判定されるリスクが高いとされています。「原契約が非課税文書の変更だから覚書も不要」という解釈は保守的な実務では採用しない方が安全です。確認が必要な場合は税理士・所轄税務署へのご相談を推奨します。

覚書を電子契約にすれば印紙不要ですか?

原則として印紙税は不要です。印紙税法上の課税対象は紙の「文書」の作成・交付であり、電磁的方法(電子署名・クラウドサービス等)で締結した覚書は課税文書に該当しません。印紙税コスト削減の観点から電子契約への移行は有効な手段です。ただしPDFを印刷して押印・郵送した場合は紙の文書として課税対象になります。

LegalOSで覚書と原契約を管理できますか?

LegalOSでは原契約と覚書・変更契約書の紐付け管理、変更履歴の記録、印紙税判断の記録・証跡保存を含む契約管理の仕組み化を支援しています。詳細はLegalOSページをご覧ください。

まとめ

覚書・変更契約書・合意書の印紙税|3つの判断軸
  • タイトルではなく内容で判断する――覚書・変更契約書・合意書の名称に関わらず、記載内容が課税対象かを判断する
  • 原契約が課税文書かを確認する――非課税文書の変更覚書は原則として課税対象にならない
  • 変更内容が「重要な事項」かを確認する――金額・目的・当事者等の重要事項変更であれば課税対象になり得る
  • 増額変更は増加額が記載金額――減額変更は記載金額なし扱いが多い
  • 電子契約なら原則印紙不要――印紙税コスト削減に電子契約は有効
  • 判断に迷う場合は税理士・税務署に確認――個別事情によって判断が異なるため専門家への相談が安全

覚書・変更契約書・合意書の印紙税は、原契約との関係・変更内容・金額変更の有無・電子か紙かを組み合わせて判断します。単体で管理すると判断を誤りやすいため、原契約との紐付けと変更履歴を一体で管理する仕組みが重要です。

免責事項:本記事は2026年4月時点の情報をもとに、実務参考として整理したものです。印紙税の判断は個別の文書内容・取引の具体的事情によって異なります。最終的な判断は、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
主要参照:印紙税法(昭和42年法律第23号)・印紙税法別表第一(課税物件表)・印紙税法基本通達(昭和52年4月7日直所3-8)・国税庁「印紙税の手引」(国税庁ウェブサイト

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