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印紙税シリーズ 第6話

注文書・発注書・注文請書に印紙税は必要?
実務で多い誤解を整理

印紙税法 別表第一 第2号文書 法務・総務・経理・営業事務 向け 2026年9月更新

「注文書を送っているが、印紙は必要か?」「注文請書を毎回紙で返送しているが、印紙を貼り忘れていないか?」——日常的な発注・受注業務の中で、こうした疑問は絶えず生じます。注文書・発注書・注文請書は名称が似ていても、その文書が契約の成立等を証すべき文書か、請負型か売買型か、紙で作成・交付されるかによって印紙税の扱いが大きく異なります。この記事では、印紙税法・課税物件表の適用に関する通則5・印紙税法基本通達・国税庁の公表資料を根拠に、実務で生じやすい誤解を整理し、判断フローと管理方法まで解説します。

📋 この記事でわかること

  • 印紙税法上の「契約書」の定義は第2条ではなく「課税物件表の適用に関する通則5」にあること
  • 注文書・発注書・注文請書・注文書兼請書の違いと印紙税の基本構造
  • 注文書・発注書が原則として課税文書にならない理由と、例外的に契約書になる3類型(基本通達21条)
  • 注文請書が第2号文書に該当し得る理由と判定基準
  • 請負型・売買型・準委任型による扱いの違い(一般動産の売買は第1号文書ではなく不課税)
  • 紙・PDF・メール・FAX・電子契約それぞれの扱いと「作成」の意味(基本通達44条)
  • 第2号文書の最新税額表と建設工事請負契約書の軽減措置(2027年3月31日まで)
  • 基本契約書との関係——基本契約の印紙が個別注文請書の印紙を免除しない理由
  • 過怠税の原則3倍と、自主申出時の1.1倍
  • 実務運用フロー・チェックリスト・契約審査メモ例

まず結論|注文書は原則不要、注文請書は内容次第で印紙が必要

CONCLUSION

注文書・発注書は、通常は発注者(注文者)側が作成する申込みの意思表示にすぎず、契約の成立等を証すべき文書とはなりにくいため、原則として印紙税の課税文書に該当しない。ただし基本通達21条2項の3類型(基本契約等に基づき自動的に契約が成立する場合/見積書等に基づく申込みである旨の記載がある場合/双方の署名押印がある場合)に当たると、注文書でも契約書になる。

注文請書のうち、申込みに対する承諾として契約の成立等を証すべき目的で作成されるものは印紙税法上の「契約書」に該当し、その契約内容が請負であれば別表第一 第2号文書に該当する。印紙税法上の「契約書」には一方のみが作成する請書も含まれる(通則5)ため、受注者だけが記名押印していても課税文書となり得る。

一般的な動産(既製品・カタログ商品)の売買の注文請書は、そもそも課税物件表に掲げられていないため不課税文書。第1号文書となるのは不動産・鉱業権・試掘権・無体財産権・船舶・航空機・営業の譲渡など、限定列挙された対象に関するものであり、通常の物品売買は含まれない。

PDFをメール送付するのみで紙の正本を作成・交付しない場合、FAX送信のみの場合も、課税文書の「作成」がないため印紙税は課されない。電子契約・電子承諾も同様。

基本契約書に印紙を貼っても、個別注文請書に必要な印紙は別途必要。課税文書該当性は各文書ごとに独立して判断する。

⚠ 実務上の誤解が多い点
「注文書と注文請書の違いを意識せずに運用している」「毎月大量に紙の注文請書を返送しているのに印紙の貼付を失念している」「基本契約書に印紙を貼ったので個別の請書は不要と思っていた」——いずれも過怠税のリスクに直結します。過怠税は原則として本来の印紙税額の3倍(印紙税法20条1項)ですが、調査による決定を予知してされたものでない自主的な申出をした場合は1.1倍に軽減されます(同条2項)。「3倍」だけを前提に発覚を先送りするのは、実務対応として合理的ではありません。

判断の出発点|「契約書」の定義は第2条ではなく通則5にある

注文書・注文請書の印紙税を論じる記事では、しばしば「契約書とは契約の成立等を証すべき文書をいう(印紙税法第2条)」という説明が見られますが、これは条文の対応が正確ではありません。

印紙税法第2条(課税物件)は、別表第一の課税物件の欄に掲げる文書に印紙税を課する旨を定めた規定であり、「契約書」の定義規定ではありません。印紙税法上の「契約書」の定義は、別表第一「課税物件表の適用に関する通則」の5に置かれています。

【課税物件表の適用に関する通則5(要旨)】
第1号・第2号・第7号・第12号から第15号までにおいて「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む)の成立・更改、または契約の内容の変更・補充の事実(=「契約の成立等」)を証すべき文書をいう。そして、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書や、当事者の全部・一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解または商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものも「契約書」に含まれる
参考:国税庁タックスアンサー No.7117「契約書の意義」/質疑応答事例 「契約書の意義」

この定義があるため、受注者だけが記名押印した注文請書であっても、契約の成立を証する文書であれば課税文書になり得るのです。逆に、文書のタイトルが「契約書」であっても、契約の成立等を証すべき内容がなければ課税文書にはなりません。判断は表題ではなく、文書の記載内容から客観的に行います(基本通達2条・3条)。

注文書・発注書・注文請書の違い

これらの文書は日常業務で混用されがちですが、誰が作成するか、どの段階で発行するか、契約の成立にどう関わるかが異なります。印紙税の判断もこの区別から始まります。

文書名 作成者 文書の役割 契約成立との関係 印紙要否の方向性
注文書 発注者(注文者) 発注者が購入・発注する意思を示す文書。申込みの意思表示 通常は申込みの事実を証明する目的の文書。ただし基本通達21条2項の3類型に当たれば契約書になる 原則不要
例外あり
発注書 発注者(注文者) 注文書とほぼ同義。業種によって呼び方が異なる 同上。表題の違いで課否が変わることはない 原則不要
例外あり
注文請書 受注者(請負人・売主) 受注者が注文を承諾・請け負うことを証する文書 申込みに対する承諾文書として、契約の成立を証する文書となる 請負型:第2号文書
一般動産売買:不課税
請書 受注者 注文請書と実質的に同義。「ご注文の件、承りました」の趣旨 通則5により、一方のみが作成する文書も「契約書」に含まれる 請負型:第2号文書
見積書 受注者候補 受注者候補が提示する価格・条件の提案書 申込みの誘引または申込みにとどまり、それ自体では契約の成立を証しない 原則不要
見積依頼書 発注者 受注者候補に見積もりを依頼する文書 契約成立前の準備行為 不要
納品書 受注者 商品・成果物を引き渡す際に交付する書類 履行の記録であり、契約の成立等を証する文書ではない 原則不要
検収書 発注者 成果物・納品物の検査・受領を確認する書類 契約の履行完了を記録する文書 原則不要
注文書兼請書 一体書式(双方) 発注者の申込みと受注者の承諾が1枚の書式に記載される 双方の署名・押印があれば意思の合致を証する文書と認められる(基本通達21条2項3号) 請負型:第2号文書
発注書兼請書 一体書式(双方) 注文書兼請書と実質同義。押印欄の構成による 同上 請負型:第2号文書
【参照条文】 印紙税法第2条(課税物件=別表第一の課税物件の欄に掲げる文書に印紙税を課する)/同法第3条(納税義務者=課税文書の作成者。2以上の者が共同して作成した課税文書については連帯納付義務)/同法第5条(非課税文書)/別表第一 第2号文書「請負に関する契約書」/課税物件表の適用に関する通則5(「契約書」の定義)。

注文書・発注書は原則不要——ただし例外3類型がある

契約は申込みと承諾の合致によって成立します(民法第522条)。注文書・発注書は通常、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される文書であり、契約の成立等を証すべき文書ではないため、原則として課税対象になりません。

✅ 注文書が原則不要な理由(3点)
① 発注者(申込み側)が作成する文書であること
② 相手方の承諾がない段階では契約が成立していないこと
③ 契約の成立等を「証する」文書ではなく、申込みの事実を証明する文書にとどまること

もっとも、これはあくまで原則です。国税庁は、印紙税法基本通達21条およびタックスアンサー No.7118「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」において、申込書等と表示された文書であっても契約書に該当する場合を例示しています。注文書・発注書を「常に印紙不要」と扱う運用は誤りです。

注文書・発注書が「契約書」になる3類型(基本通達21条2項)

類型 内容 実務上のポイント・ただし書
① 基本契約書・規約・約款等に基づく申込み 基本契約書、規約または約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合の申込書等 ただし、契約の相手方が別に請書等を作成することが記載されているものは除かれる。基本契約に「個別契約は注文書の交付と請書の交付により成立する」と定めている場合、注文書は課税文書にならない
② 見積書等に基づく申込み 見積書その他相手方が作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている申込書等 同じただし書あり。見積書番号・見積日を引用した注文書は要注意。ワンライティング方式で見積書と一体作成する注文書も同様に検討が必要
③ 双方の署名・押印があるもの 契約当事者双方の署名または押印があるもの。2部提出された申込書のうち1部に署名押印して返却するものが典型 ただし、その署名・押印が意思の合致の証明以外の目的であることが明らかなもの(単なる文書の受付印など)は契約書に該当しない

国税庁「工事注文書等」と「基本契約に基づき下請業者に交付する注文書」の対比

この2つの質疑応答事例は、注文書の課否が基本契約における個別契約の成立方法の定め方で反転することを示しています。実務上、最初に確認すべきはここです。

事例・状況 注文書の課否 理由
「工事注文書等」1(1)
基本契約に基づく申込みである旨の記載があり、注文書の交付により自動的に個別契約が成立する
第2号文書に該当 基本通達21条2項1号に該当。注文書自体が契約の成立を証する文書になる
「工事注文書等」1(2)
基本契約に基づく申込みである旨の記載があるが、別途「請書」を作成する旨が記載されている
課税文書に該当しない 21条2項1号のただし書に当たり、注文書は課税文書として扱われない(この場合は請書側で判断する)
「工事注文書等」2
見積書に基づく申込みであることが記載された工事注文書
第2号文書に該当 基本通達21条2項2号に該当。ただし別途請書を作成する旨の記載があるものは除かれる
「工事注文書等」3
契約当事者双方の署名または押印のある工事注文書
第2号文書に該当 基本通達21条2項3号。別途請書を作成する旨の記載があっても、契約の事実を証明する文書であれば第2号文書に該当する点に注意
「基本契約に基づき下請業者に交付する注文書」
基本契約に「個別契約は注文書を交付し、請書を交付することによって成立する」旨の定めがある
契約書に該当しない 個別契約は請書の交付によって成立するため、注文書は契約の申込みの事実を証明する目的で作成された申込文書にすぎない
⚠ 発注書に「承諾欄」を設けている場合
発注書に受注者の署名欄・承諾欄が設けられており、受注者が署名または押印して返送する運用になっている場合は、基本通達21条2項3号(双方の署名または押印)に該当し得ます。実質的に「注文書兼請書」として機能していないか、書式そのものを点検してください。

注文請書は第2号文書に該当し得る

注文請書(請書)のうち、受注者が申込みに対する承諾として契約の成立等を証すべき目的で作成するものは、印紙税法上の「契約書」に該当します。その契約内容が請負であれば、第2号文書に該当します。受注者のみが記名押印していても、通則5により契約書に含まれます。

国税庁の質疑応答事例「工事注文請書」は、土木工事を請け負った際に作成する注文請書について、請負者のみが署名押印する文書であっても第2号文書(請負に関する契約書)に該当すると明示しています。タックスアンサー No.7102 でも「工事注文請書」「物品加工注文請書」が第2号文書の具体例として掲げられています。

第2号文書該当性チェック表

確認項目 判定 実務上のポイント
契約の成立等を証明する文書か 要確認 「ご注文承りました」の一文でも、文脈上契約の成立を証する文書となり得る。判断は表題ではなく記載内容から客観的に行う(基本通達2条・3条)
仕事の完成を目的とする契約か(請負該当性) 要確認 建設工事のような有形的なものだけでなく、警備・機械保守・清掃など無形的な結果を目的とする役務提供も請負に含まれる(No.7102)
受注者のみの記名押印でよいか 該当する 通則5により、一方のみが作成する請書も「契約書」に含まれる。相手方の押印がないことは非課税の理由にならない
金額が記載されているか 参考 課否ではなく税額の計算に影響。記載金額のないものは200円
消費税額等が区分記載されているか 参考 消費税額等が区分記載されていれば、その額は記載金額に含めない(No.7124)。「税込」表記のみだと税込額が記載金額になり得る
発注内容(業務・成果物)が特定されているか 要確認 取引類型(請負/売買/委任)の判定に直結する重要な要素
紙で作成し、相手方に交付するか 要確認 課税文書の「作成」=課税事項を記載し、目的に従って行使すること。相手方に交付する目的の文書は交付の時が作成の時(基本通達44条)
電子メール・FAX送信のみではないか 要確認 PDFのメール送信・FAX送信のみで紙の正本を交付しない場合は課税原因が発生しない
第7号文書に当たらないか 参考 営業者間で継続する複数取引の基本的取引条件を定める内容を含むと第7号文書になり得る。第1号・第2号で契約金額のないものと第7号に該当する文書は第7号となる(通則3イ)
基本契約書と一体で読む必要があるか 参考 基本契約書と個別注文請書はそれぞれ独立して課税文書該当性を判断する
【一次資料】 国税庁タックスアンサー No.7102「請負に関する契約書」 (令和8年4月1日現在法令等。根拠法令等:印法別表第一の二、印令21・26、印基通別表第一第2号文書の1・10)/質疑応答事例 「工事注文請書」 (根拠:課税物件表の適用に関する通則5)/ 「請負の意義」

請負型・売買型・準委任型で判断が変わる

注文請書の印紙税判断で最も重要な論点が、その取引が請負か、売買か、委任・準委任かという点です。ここで押さえておくべきなのは、一般的な動産の売買は、そもそも課税物件表に掲げられていないという事実です。

国税庁の質疑応答事例「物品販売の注文請書」は、カタログ商品の販売を受注した際に作成する「注文請書」について、表題が「請書」であっても、物品の譲渡契約に該当するため第2号文書には該当しないと回答しています(同事例の注記のとおり、物品の譲渡に関する契約書は昭和42年3月までは旧第19号文書として課税対象でしたが、現在は課税物件表に掲名されていません)。

⚠「売買の注文請書は第1号文書または非課税」という整理は不正確
第1号文書となる譲渡の対象は、不動産、鉱業権、試掘権、無体財産権(特許権・実用新案権・商標権・意匠権・回路配置利用権・育成者権・商号・著作権)、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に限られています(No.7101)。したがって、既製品・在庫品・原材料といった通常の一般動産の売買は第1号文書には該当せず、非課税文書(=課税文書だが非課税物件欄に該当するもの)でもなく、そもそも課税物件表に掲げられていない不課税文書です。「非課税」と「不課税」を混同すると、社内基準の説明が成り立たなくなります。
区分 請負型 売買型(一般動産) 委任・準委任型
法的根拠 民法第632条(請負) 民法第555条(売買) 民法第643条・第656条(委任・準委任)
目的 仕事の完成・成果物の引渡し 特定の物・商品の所有権移転 事務処理そのもの(仕事の完成義務なし)
注文請書の所属 第2号文書
(請負に関する契約書)
不課税文書
課税物件表に掲名がない
※不動産・鉱業権・試掘権・無体財産権・船舶・航空機・営業の譲渡は第1号文書
不課税文書
課税物件表に掲名がない
典型例 建設工事・システム開発・製品加工・Web制作・広告制作・警備・機械保守・清掃・会計監査 既製品・カタログ商品・在庫品の購入、物品調達 市場調査・技術調査等の事務処理委託、一定の顧問・運用業務
注文請書への印紙 必要(紙で交付する場合) 不要(一般動産の場合) 不要
判断のポイント 仕事の完成が契約の目的か。完成しなければ債務不履行責任を負う構造か あらかじめ規格が統一された製品の所有権移転が主目的か 事務処理の遂行自体が目的か。調査結果を報告書にまとめて提出することに対価が支払われる場合は請負と解される余地がある
【留意点:成果完成型の準委任】 国税庁の質疑応答事例「請負の意義」は、民法第648条の2(成果等に対する報酬)に規定する、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約する契約は「請負」には該当しないとしています。もっとも、契約書の記載内容が実質的に仕事の完成を目的とするものであれば請負と判断されるため、条文名の引用ではなく契約書の記載内容から判断してください。
参考: 質疑応答事例「請負の意義」同「物品販売の注文請書」No.7101「不動産の譲渡・土地の賃貸借・消費貸借・運送等に関する契約書」
⚠ 判断が難しいケース(混合契約・製作物供給契約)
国税庁の質疑応答事例「取付工事を行う機械の売買契約書」では、あらかじめ一定の規格で統一した機械のカタログ販売は物品の売買、取付工事は請負に該当するとされ、契約書の書き方によって印紙税額が変わることが具体例とともに示されています。注文者の指示する規格で機械を製作する場合は請負に該当します。ソフトウェアでもカスタマイズ開発(請負)と既製品ライセンス購入(売買・使用許諾)が混在します。請負部分と売買部分の金額を区分記載するかどうかで結論が変わり得るため、書式設計の段階で確認してください。
参考:質疑応答事例「取付工事を行う機械の売買契約書」

注文請書の印紙税額(第2号文書)

請負に関する注文請書が第2号文書に該当する場合、印紙税額は次のとおりです。建設工事の請負に係る契約書については、租税特別措置法第91条により平成26年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に作成されるものについて軽減措置が適用されます(記載金額100万円を超えるものが対象)。

記載された契約金額 印紙税額(本則) 建設工事の請負
(軽減措置・2027年3月末まで)
備考
1万円未満非課税非課税非課税物件欄に該当
1万円以上 100万円以下200円200円ちょうど1万円は課税。100万円以下は軽減措置の対象外
100万円超 200万円以下400円200円ここから軽減措置の対象
200万円超 300万円以下1,000円500円
300万円超 500万円以下2,000円1,000円
500万円超 1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超 5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超 1億円以下6万円3万円
1億円超 5億円以下10万円6万円
5億円超 10億円以下20万円16万円
10億円超 50億円以下40万円32万円
50億円超60万円48万円
契約金額の記載のないもの 200円 200円
(軽減措置の対象外)
金額を書かなくても非課税にはならない
⚠「1万円未満」と「記載金額なし」の混同に注意
「記載金額1万円未満 → 非課税」と「契約金額の記載のないもの → 200円(課税)」はまったく別の取扱いです。注文請書に金額を記載しなかった場合でも、第2号文書に該当する以上は200円の印紙が必要です。「書いていないから非課税」は誤りです。なお、記載金額のない第2号文書が第7号文書の要件も満たす場合は、通則3イにより第7号文書(4,000円)に所属が決定される点にも注意してください。
【複合文書の注意】 上表は通常の第2号文書を前提とした税額です。第2号文書と他の号の文書に重複して該当する場合は、課税物件表の適用に関する通則による所属決定が必要となり、記載金額が1万円未満でも非課税とならない場合があります。複数の課税事項を含む文書は、国税庁タックスアンサー No.7140「印紙税額の一覧表(その2)」等も確認してください。
【建設工事の軽減措置】 軽減措置の対象となるのは、請負に関する契約書のうち建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるもので、記載金額が100万円を超え、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものです(租税特別措置法第91条)。当初契約書だけでなく、工事金額の変更や工事内容の追加の際に作成される変更契約書・補充契約書等も対象になります。また、建設工事の請負契約に基づき作成される契約書であれば、建設工事以外の請負に関する事項が併記されていても全体が軽減措置の対象になります(例:建物建設工事5,000万円+建物設計500万円=5,500万円で3万円)。
他方、建設業法第2条第1項の「建設工事」に該当しないもの(測量、設計のみの契約、船舶の建造、機械の保守・修理など)は軽減措置の対象外です。
参考: 国税庁タックスアンサー No.7108(令和8年4月1日現在法令等)/ 質疑応答事例「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置」

紙・PDF・メール・FAX・電子契約の違い

印紙税の課税対象となるのは課税物件表の物件名欄に掲げられている「文書」であり、電磁的記録は文書に含まれません。国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は、建設工事の受注に際し、書面で注文請書を作成することに代えて、取引情報を記録した電磁的記録に電子署名を付して電子メールで送信する場合について、当該電磁的記録に印紙税は課税されないと明示しています。

鍵になるのは「作成」の意味(基本通達44条)

課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいいます。そして、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、交付の時が「作成の時」とされています(印紙税法基本通達第44条)。

この解釈があるため、注文請書の用紙に記載を済ませていても、現物を相手方に交付しない限り課税原因は発生しません。福岡国税局の文書回答事例「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」は、注文請書の調製行為を行っても現物の交付がなされない以上、電磁的記録を電子メールで送信しても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に課税文書を作成したことにはならないと整理しています。ただし、電子メール送信後に注文請書の現物を別途持参するなどの方法で相手方に交付した場合は、課税文書の作成に該当します。

交付方法 印紙要否 理由・根拠 実務上の注意点
紙の注文請書を郵送 必要 紙の課税文書として作成・交付される(基本通達44条:交付の時が作成の時) 消印も必要。正本を複数作成した場合は各通に貼付
紙の注文請書を手渡し 必要 同上。交付方法(郵送・手渡し)は問わない 手渡し時に消印を忘れずに
PDFをメール送付のみ
(紙の正本は交付しない)
不要 電磁的記録は課税物件表の「文書」に含まれない。現物の交付がない以上、課税文書の作成に当たらない 紙の正本を後日交付する運用になっていないか確認
PDFを印刷して押印後に郵送 必要 印刷・押印により紙の課税文書として作成し、交付したことになる 「PDFで送ったから不要」と混同しないこと
メール本文のみで承諾
(「ご注文承りました」等)
不要 電磁的記録による意思表示であり、課税文書の作成に当たらない メールは取引の証跡として保存すること(電子帳簿保存法の電子取引データ保存にも留意)
電子契約サービスで承諾
(電子署名を付して締結)
不要 電磁的記録として作成された文書は課税物件表の「文書」に該当しない 電子署名の法的有効性・取引先との合意は別途確認
クラウドサービス上で注文承諾 不要 同上。電磁的記録上の処理 紙の注文請書を別途作成・交付していないか確認
FAXで送信のみ
(紙の正本は交付しない)
不要 国税庁 No.7120 は、ファックスや電子メール等により送信する場合、正本等は送付元に保存され送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であるため課税対象とならないと明示している 「グレーな領域」ではない。送付元に残る用紙も、相手方に交付されない以上は課税文書の作成に当たらない
FAX送信後、紙の正本も郵送 必要 紙の正本を交付した時点で課税文書の作成となる 「念のため原本も送る」という運用が課税原因を生む
電子承諾後に紙の注文請書を作成・交付 必要 電子承諾自体は不要でも、その後に紙の課税文書を作成・交付すれば課税対象 「記録として紙でも作っておこう」という習慣に注意
単なる写し(コピー)を受領 不要 正本を複写機でコピーしただけで、署名・押印や「正本と相違ない」旨の証明がないものは単なる写し 写し・副本・謄本と表示されていても、双方または所持者以外の一方の署名・押印があるもの、正本と相違ない旨の証明があるものは課税対象
✅ 電子化による印紙税削減の整理
注文請書の印紙税コストを削減する確実な方法は、電子契約サービスを利用するか、PDFをメール送付するのみで紙の正本を作成・交付しない運用に切り替えることです。実務上の要点は「電子化したこと」ではなく、紙の正本を相手方に交付しない運用を徹底できているかにあります。営業現場が「控えとして紙も渡している」といった運用を残していないか、書式・業務フローの両面で確認してください。あわせて、電子署名の法的効力と取引先との合意の確保も別途必要です。

基本契約書との関係|各文書ごとに独立して判断する

取引先と基本契約書(取引基本契約書)を締結している場合、個別の注文請書との関係を正しく理解することが重要です。基本契約書に印紙を貼っていても、個別注文請書に必要な印紙は別途必要です。印紙税は、課税文書を作成した時に納税義務が成立し、その作成者が納税義務を負うためです(国税通則法15条2項12号、印紙税法3条。作成時期について印紙税法基本通達44条)。

パターン 印紙 判断根拠・注意点
基本契約書なし+注文請書(請負・紙) 注文請書に必要 注文請書が単独で第2号文書として課税対象となる
基本契約書あり(印紙貼付済み)+個別の承諾文書なし 注文書側も要確認 個別の承諾文書が存在しない場合でも、基本契約の定めにより注文書の交付だけで個別契約が成立するなら、注文書自体が基本通達21条2項1号により課税文書となり得る
基本契約書あり(印紙貼付済み)+注文請書あり(請負・紙) 注文請書にも別途必要 基本契約書の印紙が個別注文請書の印紙を代替することはない。各文書について独立に課税文書該当性を判断する
基本契約書が第7号文書
(継続的取引の基本となる契約書:4,000円)
注文請書にも別途必要 第7号文書と、個別取引に係る第2号文書は別個の課税文書として、それぞれ課税される
基本契約書が第2号文書
(請負金額の総額記載あり)
各文書ごとに判断 基本契約書が第2号文書として課税される場合でも、個別注文請書が別途課税文書となるなら両方に印紙が必要
基本契約に「注文書の交付と請書の交付により個別契約が成立」と定めがある 請書側で判断 注文書は申込文書にとどまり課税文書に該当しない(国税庁「基本契約に基づき下請業者に交付する注文書」)。課税判断は請書側に集約される
基本契約に「注文書の交付により自動的に個別契約が成立」と定めがあり、請書の作成に触れていない 注文書側が課税 基本通達21条2項1号により注文書が第2号文書に該当し得る(国税庁「工事注文書等」1(1))
基本契約書が電子契約+個別注文請書が紙 注文請書に必要 基本契約書が電子で印紙不要でも、紙の注文請書は独立して課税対象となる
基本契約書が電子契約+個別注文請書も電子 両方不要 電磁的記録は課税物件表の「文書」に該当しない
⚠ よくある誤解:「基本契約書に印紙を貼ったから個別は不要」
基本契約書と個別注文請書は、それぞれ独立した課税文書として印紙税を判断します。基本契約書に貼付した印紙は、その後に作成される個別注文請書に係る納税義務を免除するものではありません。個別注文請書を紙で大量に発行している企業では貼り忘れが生じやすく、定期的な内部監査での確認が必要です。

注文書兼請書・発注書兼請書の注意点

「注文書兼請書」は、一枚の書面に発注者の申込み欄と受注者の承諾欄が設けられた書式です。契約当事者双方の署名または押印があるものは、一般に意思の合致を証明する目的で作成されたものと認められ、原則として契約書に該当します(基本通達21条2項3号)。

書式・記載パターン 印紙要否 判断のポイントと注意点
注文者側の申込み欄のみ記載(受注者の欄に記載・押印なし) 原則不要 承諾の意思表示がないため、実質的には注文書として機能する。ただし基本通達21条2項1号・2号に当たらないかは別途確認
受注者側の承諾欄に署名・押印あり(請負型) 必要 双方の意思表示が揃い、契約の成立を証する文書となるため第2号文書に該当する
双方署名押印(一体書式・請負型) 必要 最も明確に課税文書に該当する形式。記載金額に応じて税額を判断
受注者の押印が単なる受付印である場合 実態により判断 意思の合致の証明以外の目的でなされたことが明らかな押印(単なる文書の受付印)は契約書に該当しない。ただし頭金・初回金の受領印は契約の成立に伴うものとして契約書に該当する
控えとして双方が1通ずつ所持(正本2通) 各通に必要 一の契約について2通以上の文書が作成され、いずれも契約の成立を証明する目的で作成されたものであれば、すべてが課税対象(No.7120)
単なるコピーを控えとして保管 不要 署名・押印や「正本と相違ない」旨の証明がない単なる写しは課税対象外。自分だけの印鑑を押したものも課税対象外
売買型(既製品購入等)の兼請書 原則不要 一般動産の売買は課税物件表に掲名がなく不課税。ただし不動産・無体財産権等の譲渡なら第1号文書、継続的取引の基本条件を定めるなら第7号文書に該当し得る
請負型(システム開発・工事等)の兼請書 必要 記載金額に応じた第2号文書の税額。建設工事なら軽減措置の適用も検討
電子フォームで双方が承諾 不要 電磁的記録として処理されている場合は課税文書の作成に当たらない
⚠ 兼請書の運用で多い誤り
「注文書と書いてあるから印紙は不要」と判断していたが、実際には受注者の承諾欄・押印欄が設けられており、返送後は実質的に「注文書兼請書」として機能していたケース。文書のタイトルではなく記載内容と双方の意思表示の有無で判断します。書式のひな形を全社的に棚卸しすることが有効です。

貼り忘れた場合の過怠税|原則3倍、自主申出なら1.1倍

印紙税を課税文書の作成の時までに納付しなかった場合、所轄税務署長は、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(=本来の税額の3倍)に相当する過怠税を徴収します(印紙税法20条1項)。

ただし、これがすべてではありません。課税文書の作成者から所轄税務署長に対し、政令で定めるところにより印紙税を納付していない旨の申出があり、かつその申出が、印紙税についての調査があったことにより国税通則法32条1項の賦課決定があるべきことを予知してされたものでないときは、過怠税の額は納付しなかった印紙税の額とその10%相当額との合計額(=1.1倍)となります(同条2項)。手続は「印紙税不納付事実申出手続」として国税庁が公表しており、提出先は課税文書の作成場所の所在地を所轄する税務署です。

⚠「3倍」だけを前提にしないこと
「貼り忘れ=3倍」と単純に理解していると、発覚時に社内で報告が滞り、結果として自主申出のタイミングを逃すことになりかねません。軽減の要件は「調査があったことにより決定があるべきことを予知してされたものでないこと」ですので、社内で不納付を把握した時点で速やかに検討することが実務上重要です。なお、過怠税は法人税の損金に算入されません。また、印紙を貼付しても消印を行わなかった場合は、消印されていない印紙の額面金額に相当する過怠税が別途徴収されます。
参考: 国税庁「D2-20 印紙税不納付事実申出手続」(印紙税法20条2項、施行令19条1項)質疑応答事例「印紙を貼り付けなかった場合の過怠税」Legal GPT「印紙の貼り忘れが発覚したらどうする?過怠税と実務対応」

実務運用フロー|5つの確認で判断する

1
基本契約における個別契約の成立方法を確認する
最初に見るべきは個別の注文書・請書ではなく、基本契約書の「個別契約の成立」条項です。「注文書の交付により自動的に成立する」のか、「注文書の交付と請書の交付により成立する」のかで、どちらの文書が課税対象になるかが変わります(基本通達21条2項1号とそのただし書)。基本契約がない場合は、実際の受発注フローを確認します。
2
注文書・注文請書のうち、何が契約の成立等を証明する文書かを確認する
タイトルではなく記載内容と署名欄の構成で判断します。注文書側に「基本契約に基づく申込み」「見積書○号に基づく申込み」といった記載がないか、双方の署名・押印欄がないかを確認します。注文請書側は、受注者のみの記名押印でも通則5により契約書に含まれます。
3
請負・売買・準委任等の取引類型を確認する
仕事の完成が目的なら請負(第2号文書)。既製品・カタログ商品など一般動産の所有権移転が主目的なら不課税。事務処理の遂行自体が目的なら委任・準委任で不課税。不動産・鉱業権・試掘権・無体財産権・船舶・航空機・営業の譲渡は第1号文書です。混合契約では、請負部分と売買部分の金額の区分記載の有無まで確認します。
4
紙・PDF・FAX・電子契約の作成方法と交付方法を確認する
紙の正本を相手方に交付する場合に課税原因が発生します(基本通達44条)。PDFのメール送信のみ、FAX送信のみで紙の正本を交付しない場合は課税対象になりません。逆に「後日、紙の原本も送る」「控えとして紙も渡す」という運用が残っていないかを、営業現場まで確認します。
5
記載金額と軽減措置を確認する
記載金額の有無は課否ではなく税額の計算に影響します。「記載金額なし」は200円、「1万円未満」は非課税で、両者は別扱いです。消費税額等が区分記載されていればその額は記載金額に含めません。建設工事の請負で記載金額100万円超なら、2027年3月31日までの軽減措置を適用します。
6
印紙貼付・消印・台帳記録を行う
判断結果に基づき、紙の注文請書には所定金額の収入印紙を貼付し消印します。正本を複数作成する場合は各通に貼付します。判断根拠・文書種別・所属号・記載金額・印紙税額・交付方法を契約台帳に記録し、後日の説明可能性を確保します。
7
電子化できる場合は電子承諾に切り替える
大量の注文請書を紙で発行している場合、電子契約サービス・電子承諾への切り替えを検討します。電磁的記録による承諾は課税対象外となり、コスト削減と管理効率化につながります。切り替え後は、紙の正本を交付する運用が残らないよう社内規程で明確化してください。

契約審査実務での管理方法

契約締結前チェックリスト

□ 注文書・注文請書 印紙税判断チェックリスト

  • 基本契約書の「個別契約の成立」条項を確認したか(注文書のみで成立するか、請書の交付を要するか)
  • 注文書か注文請書か(発注者作成か受注者作成か)を確認したか
  • 文書のタイトルではなく記載内容から客観的に判断したか
  • 注文書に「基本契約に基づく申込み」「見積書に基づく申込み」の記載がないか確認したか(基本通達21条2項1号・2号)
  • 注文書・発注書に契約当事者双方の署名・押印がないか確認したか(同3号)
  • 受注者の押印が単なる受付印にすぎないか、意思の合致の証明かを確認したか
  • 請負型の取引か(仕事の完成が契約の目的か)確認したか
  • 一般動産の売買(不課税)か、不動産・無体財産権等の譲渡(第1号文書)かを区別したか
  • 委任・準委任型でないか、成果完成型の場合の実質を確認したか
  • 混合契約で、請負部分と売買部分の金額が区分記載されているか確認したか
  • 紙の正本を相手方に交付する運用か(PDF・FAX送信のみか)確認したか
  • 「後日、紙の正本も交付する」運用が残っていないか確認したか
  • 正本を複数作成する場合、各通に貼付する前提になっているか確認したか
  • 記載金額の有無を確認したか(記載金額なしでも200円)
  • 「1万円未満(非課税)」と「記載金額なし(200円)」を混同していないか
  • 消費税額等が区分記載されているか確認したか(No.7124)
  • 建設工事の請負で記載金額100万円超の場合、軽減措置(2027年3月31日まで)を確認したか
  • 基本契約書に印紙貼付済みでも、個別注文請書の印紙を別途確認したか
  • 第7号文書に該当し得る内容が混入していないか確認したか
  • 台帳に判断根拠・文書種別・所属号・印紙税額・交付方法を記録したか

契約審査メモ例

📝 印紙税判断メモ(注文請書)

文書名
○○システム開発 注文請書(2026年○月○日付)
文書種別
注文請書(受注者・当社作成)
作成者
受注者(当社)/印紙税法3条1項
個別契約の成立方法
取引基本契約書第○条「注文書の交付を受けた当社が注文請書を交付することにより成立する」→ 注文書は申込文書(不課税)、請書側で判断
取引類型
請負型(成果物:○○システムの完成・納品を目的とする)
契約書該当性
あり(通則5:一方のみが作成する請書も「契約書」に含まれる)
所属号
第2号文書(請負に関する契約書)
記載金額
500万円(消費税額等を区分記載 → 記載金額に含めず/No.7124)
軽減措置
建設業法上の建設工事に該当しないため対象外
印紙税額
1万円(500万円超1,000万円以下)
交付方法
紙の正本を郵送(→ 交付の時に作成/基本通達44条。印紙貼付・消印必要)
基本契約書との関係
取引基本契約書(第7号文書・印紙4,000円貼付済み)あり。個別注文請書の印紙は別途必要
電子化可否
次回以降、電子契約への切替えを検討(紙の正本を交付しない運用を規程化)
判断者/判断日
法務部 ○○/2026年○月○日

注文請書を大量発行する企業では、個別判断に頼らず、①個別契約の成立方法、②文書種別、③取引類型、④交付方法、⑤記載金額の5要素をシステムや台帳で管理し、同じ基準で判断できる運用体制を整えることが重要です。

✅ LegalOSでの管理活用例
LegalOSでは、注文書・注文請書の紐付け管理、基本契約と個別発注の関係管理、契約類型(請負/売買/準委任)の記録、印紙税判断の根拠保存、電子承諾・紙交付の区分管理、契約審査ワークフローの標準化、証跡保存・監査ログの仕組み化を支援しています。

よくある質問

注文書には印紙が必要ですか?
原則として不要ですが、例外があります。注文書は通常、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される文書であるため課税対象になりません。ただし、①基本契約書・規約・約款等に基づく申込みであることが記載され、一方の申込みで自動的に契約が成立することとなっている場合、②見積書その他相手方が作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている場合、③契約当事者双方の署名または押印がある場合は、契約書に該当します(印紙税法基本通達21条2項、国税庁 No.7118)。なお①②には、相手方が別に請書等を作成する旨の記載があるものを除くというただし書があります。
「契約書とは契約の成立等を証すべき文書をいう(印紙税法第2条)」という説明は正しいですか?
条文の対応が正しくありません。印紙税法第2条は「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する」と定める課税物件の規定です。印紙税法上の「契約書」の定義は、別表第一「課税物件表の適用に関する通則」の5に置かれています(国税庁 No.7117「契約書の意義」)。実務メモや社内基準を作る際は、根拠条文を通則5に修正してください。
発注書には印紙が必要ですか?
注文書と同じ判断です。表題が「発注書」であっても取扱いは変わりません。受注者の承諾欄・署名欄が設けられ、返送時に押印されている場合は基本通達21条2項3号に当たり、契約書に該当し得ます。
注文請書には印紙が必要ですか?
請負に関する内容で、かつ契約の成立等を証すべき注文請書を紙の正本として交付する場合は、原則として必要です。注文請書は受注者が注文を承諾・引き受けることを証する文書です。契約の成立等を証すべき文書で、その契約内容が請負であれば印紙税法 別表第一 第2号文書に該当します。国税庁の質疑応答事例「工事注文請書」は、請負者のみが署名押印する文書であっても、通則5により第2号文書に該当するとしています。一般動産の売買の注文請書や、PDF・FAXの送信のみで紙の正本を交付しない場合は扱いが異なります。
受注者しか押印していない請書でも課税されるのですか?
課税されます。通則5は、「念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書」も印紙税法上の「契約書」に含めています。相手方の押印がないことは非課税の理由になりません。
売買の注文請書にも印紙は必要ですか?
一般動産の売買であれば不要です。国税庁の質疑応答事例「物品販売の注文請書」は、表題が「請書」であっても、カタログ商品の販売は物品の譲渡契約であり第2号文書に該当しないとしています。物品の譲渡に関する契約書は現在の課税物件表に掲げられていないため、非課税ではなく不課税です。ただし、不動産・鉱業権・試掘権・無体財産権・船舶・航空機・営業の譲渡は第1号文書に該当します。また、注文者の指示する規格で製作する場合や取付工事を伴う場合は請負部分が生じるため、個別に判断が必要です。
準委任契約の注文請書はどうなりますか?
原則として不課税です。委任・準委任に関する契約書は課税物件表に掲げられていません。国税庁の質疑応答事例「請負の意義」は、民法648条の2に規定する、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約する契約は「請負」に該当しないとしています。ただし、契約書の記載内容が実質的に仕事の完成を目的とするものであれば請負と判断されるため、条文名ではなく記載内容で判断してください。
請負の注文請書はいくらの印紙ですか?
記載金額によって異なります(第2号文書の税額表)。1万円未満は非課税、1万円以上100万円以下は200円、500万円超1,000万円以下は1万円、1億円超5億円以下は10万円などです。契約金額の記載のないものは200円で、非課税にはなりません。建設工事の請負で記載金額100万円超のものは、2027年3月31日までに作成されるものについて軽減措置が適用されます。
PDFで注文請書を送る場合は印紙不要ですか?
紙の正本を交付しない場合は不要です。課税対象となるのは課税物件表の物件名欄に掲げられている「文書」であり、電磁的記録は文書に含まれません(国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」)。福岡国税局の文書回答事例も、現物の交付がない以上は課税文書を作成したことにならないとしています。ただし、電子メール送信後に注文請書の現物を別途持参するなどして相手方に交付した場合は、その現物に印紙税が課されます。
FAXで注文請書を送る場合はどうなりますか。「グレー」だと聞いたことがありますが。
国税庁の公表見解は明確です。タックスアンサー No.7120「契約書の写し、副本、謄本等」は、ファックスや電子メール等により送信する場合、正本等は送付元に保存されて送付先に交付されておらず、送付先で出力された文書は写しと同様であるため課税対象にならないと明示しています。送信側の手元に残る用紙も、相手方に交付されない以上、課税文書の「作成」(基本通達44条)には当たりません。判断が分かれるのは、その後に紙の正本を交付する運用があるかどうかです。
メールで承諾するだけなら印紙不要ですか?
不要です。メール本文での承諾は電磁的記録による意思表示であり、課税文書の作成に当たりません。なお、取引情報を含むメールは電子帳簿保存法上の電子取引データとして適切に保存する必要があります。
基本契約書に印紙を貼っていれば注文請書の印紙は不要ですか?
基本契約書に印紙を貼ったことだけを理由に、個別注文請書が不要になるわけではありません。印紙税は課税文書ごとに、その作成の時に納税義務が成立します。基本契約書と個別注文請書はそれぞれ独立した課税文書として判断され、基本契約書に貼付した印紙が個別注文請書に係る納税義務を免除することはありません。実務上最も多い誤解のひとつです。
注文書兼請書はどう判断しますか?
双方の署名・押印があれば、請負型なら第2号文書に該当します。契約当事者双方の署名または押印があるものは、一般に意思の合致を証明する目的で作成されたものと認められるためです(基本通達21条2項3号)。ただし、その押印が単なる文書の受付印であることが明らかな場合は契約書に該当しません。なお、頭金・初回金などの受領印は契約の成立に伴って受け取るものといえるため、契約書に該当することになります。
注文請書に金額が記載されていない場合はいくらですか?
200円です(非課税にはなりません)。「契約金額の記載のないもの」の第2号文書は200円、「記載金額1万円未満」は非課税で、両者は別の取扱いです。なお、記載金額のない第2号文書が第7号文書の要件も満たす場合は、通則3イにより第7号文書(4,000円)に所属が決定されます。
印紙を貼り忘れた場合の過怠税は必ず3倍ですか?
原則は3倍ですが、自主的な申出により1.1倍になる場合があります。印紙税法20条1項は、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額を過怠税として徴収すると定めています。一方、同条2項は、所轄税務署長に対して印紙税を納付していない旨の申出があり、かつその申出が調査により決定があるべきことを予知してされたものでないときは、納付しなかった印紙税の額とその10%相当額の合計額とする旨を定めています。手続は国税庁「印紙税不納付事実申出手続」を参照してください。なお、過怠税は法人税の損金に算入されません。
LegalOSで注文書・注文請書を管理できますか?
はい、対応しています。LegalOSでは注文書・注文請書の紐付け管理、基本契約との関係整理、契約類型(請負/売買/準委任)の分類記録、印紙税判断根拠の保存、電子承諾・紙交付の区分管理、ワークフローの標準化、証跡保存・監査ログの機能を活用できます。

まとめ

注文書・発注書・注文請書の印紙税は、次の5つの軸で整理できます。

SUMMARY

① 個別契約の成立方法:基本契約で「注文書の交付のみで成立」とするか「請書の交付により成立」とするかで、課税対象となる文書が変わる。

② 何が契約の成立等を証する文書か:印紙税法上の「契約書」は通則5に定義があり、一方のみが作成する請書も含まれる。注文書でも基本通達21条2項の3類型に当たれば契約書になる。

③ 取引類型:請負は第2号文書。一般動産の売買と委任・準委任は課税物件表に掲名がなく不課税。第1号文書は不動産・鉱業権・試掘権・無体財産権・船舶・航空機・営業の譲渡などに限られる。

④ 作成・交付の方法:相手方に交付する目的で作成される課税文書は、紙の正本を相手方に交付した時が「作成の時」となる(基本通達44条)。PDFのメール送信のみ、FAX送信のみ、電子契約は課税対象外。

⑤ 記載金額と軽減措置:「記載金額なし(200円)」と「記載金額1万円未満(非課税)」は別扱い。建設工事の請負で記載金額100万円超なら2027年3月31日まで軽減措置。

また、基本契約書に印紙を貼っていても個別注文請書の印紙は別途必要であり、課税文書該当性は各文書ごとに独立して判断します。貼り忘れが判明した場合は、過怠税が原則3倍である一方、調査による決定を予知しない自主的な申出であれば1.1倍に軽減される点も、社内フローに織り込んでおいてください。

大量の注文請書を発行している会社ほど、個別判断ではなく社内での統一ルールを整備することが重要です。最終的な判断は個別事情により異なる場合があるため、不明な点は税理士・所轄税務署への確認をお勧めします。

【本記事の主な一次資料】 印紙税法(第2条・第3条・第5条・第8条・第20条)/印紙税法別表第一(課税物件表・第1号文書・第2号文書・第7号文書)/課税物件表の適用に関する通則3・通則5/印紙税法基本通達(第2条・第3条・第19条・第21条・第44条)/租税特別措置法第91条/国税庁タックスアンサー No.7101No.7102No.7108No.7117No.7118No.7120No.7124No.7140 (いずれも令和8年4月1日現在法令等)/国税庁質疑応答事例( 工事注文書等工事注文請書基本契約に基づき下請業者に交付する注文書物品販売の注文請書請負の意義取付工事を行う機械の売買契約書建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い )/ 福岡国税局 文書回答事例(注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合)国税庁 D2-20 印紙税不納付事実申出手続。※質疑応答事例は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づき作成されたものです。

注文書・注文請書の印紙税管理を仕組み化する

注文書・注文請書の印紙税では、「基本契約で個別契約がどう成立するか」「何が契約の成立等を証する文書か」「請負型か売買型か」「紙の正本を交付するか」の整理が重要です。日常的に大量発行される文書だからこそ、個別判断に頼らず社内で統一基準を整える必要があります。

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