新規事業の知的財産をどう守るか|特許・商標・著作権・営業秘密
発表日が決まり準備が進んでいる。サービス名とロゴは決まったが商標調査をしていない。開発した技術を特許出願するかノウハウとして秘密にするか決まっていない。開発の一部を外注しているが権利帰属を確認していない。共同開発先と成果を「共有」にするだけで利用範囲を決めていない——新規事業の現場でよくある状況です。
新規事業の知的財産を守るには、制度を個別に知るだけでは足りません。競争力を生む技術・ブランド・コンテンツ・ノウハウを棚卸しし、公開前の出願・秘密管理・権利帰属・契約・証拠保存を組み合わせます。本記事は、自社の新規事業から生まれる知的財産の守り方を実務の順序で整理します(他社権利の侵害調査は第8話、提携契約の知財条項は第6話)。
この記事の要点
- 新規事業の価値を、技術・ブランド・表現・ノウハウ等に分解して棚卸しする
- 公開前に、特許・意匠の出願要否を判断する(公開後では手遅れになり得る)
- 商品名・サービス名は、公表前に商標調査・出願を検討する(先願主義)
- 特許にする情報と営業秘密にする情報を、解析可能性・秘密維持・事業価値で分ける
- 著作権は自動的に発生しても、権利帰属・利用範囲・証拠を整える
- 従業員・外注先・共同開発先との権利関係を、開始前に決める
- 親会社・子会社・JVのどの法人が権利を持つかを決める
- 出願・登録だけでなく、維持・利用許諾・監視・事業終了まで設計する
- 他社権利を侵害しないかの調査は、第8話で別途行う
GO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは、本シリーズで法務調査・経営判断を整理するための社内区分であり、法令上の正式な分類ではありません。
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
社内説明の文面も、確認メモも、AIへの指示文も、毎回イチから。用途別に実務ツールを確認できます。
用途別に実務ツールを確認する→迷ったら、用途を選ぶだけの 1分診断 →
新規事業で守るべき知的財産を棚卸しする
法律名から考えず、まず事業価値を生むものを列挙します。「知的財産」は発明・デザイン・著作物・営業秘密・ブランド・ノウハウ等の事業上の価値を広く含む概念で、特許権・商標権等の「知的財産権」とは区別します。価値があっても登録できる権利になるとは限らず、その場合は秘密管理や契約で守り、一つの製品・サービスを複数の制度で重層的に保護することもあります。
※ 表は横にスクロールできます。
| 事業上の価値 | 具体例 | 保護方法の候補 | 公開前の対応 |
|---|---|---|---|
| 技術・機能 | 装置、制御方法、処理方法 | 特許・営業秘密 | 出願要否判断 |
| 商品・サービス名 | 名称、ロゴ、アプリ名 | 商標 | 調査・出願 |
| 製品・画面デザイン | 外観、包装、画像 | 意匠・著作権等 | 出願要否判断 |
| コンテンツ | 文章、画像、動画、音楽 | 著作権 | 作成者・帰属確認 |
| ソフトウェア | ソースコード、画面、仕様書 | 著作権・特許・営業秘密 | 権利者・公開範囲確認 |
| ノウハウ | 製造条件、運用方法 | 営業秘密・契約 | 秘密管理 |
| データ | 収集データ、分析結果 | 契約・営業秘密等 | 取得・利用権限確認 |
| 顧客・営業情報 | 顧客リスト、価格、戦略 | 営業秘密 | アクセス管理 |
| 共同開発成果 | 発明、改良技術、モデル | 契約・各知財制度 | 帰属・利用権決定 |
データに一律の「所有権」があるわけではなく、データならすべて著作権・営業秘密で守られるわけでもありません。取得元との契約、個人情報該当性、秘密管理状況などを踏まえて、利用できる範囲を個別に確認します(詳細は第9話)。
知的財産を守る5つの方法を比較する
主な保護方法は、特許権・商標権・著作権・営業秘密・意匠権です。それぞれ対象・手続・公開の有無が異なります。順位付けはできません。たとえば、中核技術は特許、製造条件は営業秘密、サービス名は商標、画面・資料・コードは著作権、製品外観は意匠、というように複数の制度を組み合わせます。
※ 表は横にスクロールできます。
| 保護方法 | 主な対象 | 手続 | 公開の有無 | 主な強み | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 特許 | 技術的思想(発明) | 出願・審査・登録 | 原則公開 | 排他的権利 | 新規性・費用・公開 |
| 商標 | 名称・ロゴ等 | 出願・審査・登録 | 公開 | ブランド保護 | 指定商品・役務 |
| 著作権 | 創作的な表現 | 原則自動発生 | 公開不要 | 多様な表現を保護 | アイデア・機能は別 |
| 営業秘密 | 非公知の有用情報 | 秘密管理 | 非公開 | 3要件を満たす限り保護され得る | 管理・立証が必要 |
| 意匠 | 製品等のデザイン | 出願・審査・登録 | 原則公開 | 外観等を保護 | 公開前出願 |
アイデアがあるだけで事業全体を独占できるわけではありません。特許権・商標権・意匠権は原則として出願・登録の手続が必要で、著作権は創作時に発生しますがアイデア・機能・事実そのものは保護しません。意匠は物品・建築物・画像等のデザインを保護する制度で、画面デザインならすべて登録できると断定はできません。
ステップ1 知財マップを作成する
守る対象・作成者・利用会社・保護方法・公開予定・対応期限・利用地域・重要度・リスク・担当者を一覧にした「知財マップ」を作ります。事実確認の前に権利者を断定せず「権利者候補」とします。次は自社で記入するテンプレートです。
※ 表は横にスクロールできます。
| 知財・情報 | 作成者・発明者 | 現在の権利者候補 | 保護方法 | 公開予定 | 対応期限 | 重要度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
ステップ2 公開前に出願・秘密管理を判断する
展示会・営業提案・プレスリリース・ウェブサイト・SNS・動画・論文・ピッチ・クラウドファンディング・試作品提供・ベータテスト・採用資料・取引先説明などは、発明・意匠の公開となる場合があります。公開予定日から逆算し、出願要否・秘密情報の除外を判断します。次は自社で記入するテンプレートです。
※ 表は横にスクロールできます。
| 公開するもの | 公開先 | NDAの有無 | 特許・意匠出願 | 商標出願 | 公開可否 |
|---|---|---|---|---|---|
特許・意匠は、出願前に公開された発明・意匠について新規性が問題となり得ます。いずれも公開前出願が原則です。特許には新規性喪失の例外(特許法第30条)があり、現行は公開日から1年以内に出願し、出願と同時に適用を受ける旨の書面と出願日から30日以内の証明書面が必要です。意匠には別制度の例外(意匠法第4条)があり、例外期間は原則1年ですが、根拠法令・提出書類が特許と異なるため意匠出願の手続を別途確認します(令和6年1月施行の改正で手続が一部緩和)。これらは原則に対する例外で、安易な事後救済策ではありません。第三者が同じ発明・意匠を先に出願・公開していれば、例外を適用しても登録できないことがあります。例外制度は国・地域によって異なるため、海外出願を予定する場合は公開前に対象国の制度を確認します。NDAに基づく限定開示と公衆への公開は区別し、「NDAがあれば必ず新規性を失わない」とは考えないでください。「承認完了まで公表禁止」と硬直化させるより、公開期限と出願準備を早期に共有する体制が現実的です。
ステップ3 特許と営業秘密を使い分ける
二者択一ではなく、中核技術を特許化し、運用ノウハウを営業秘密にする組合せもあります。「特許は20年、営業秘密は永久」といった保護期間だけで決めず、解析可能性・侵害立証・秘密維持・独自開発リスク・ライセンスや資金調達での重要性などで比較します。秘密にする場合も管理方法を決め、出願しない判断も理由・承認者・再評価時期を記録します。
※ 表は横にスクロールできます。
| 判断項目 | 特許が候補になりやすい | 営業秘密が候補になりやすい |
|---|---|---|
| 外部解析 | 製品から分かる | 外部から分かりにくい |
| 侵害発見 | 発見・立証しやすい | 使用状況を把握しにくい |
| 秘密維持 | 長期維持が難しい | 長期管理が可能 |
| 独自開発 | 他社開発を排除したい | 独自開発リスクを受容 |
| 技術寿命 | 権利化が有効 | 長期間秘密が価値を持つ |
| ライセンス | 権利を明示したい | 限定開示で利用 |
| 公開 | 公開を許容できる | 公開できない |
| 管理体制 | 出願・権利維持 | 厳格な秘密管理 |
営業秘密として管理していても、第三者による適法な独自開発まで禁止できるわけではありません。また、市販製品を誰でも容易に解析して情報を取得できる場合は、非公知性が否定される可能性があります。他社の独自開発や解析を排除する必要性が高い技術では、特許出願との比較が重要です。
ステップ4 サービス名・商品名・ロゴを商標で守る
名称候補を複数用意し、先行商標を調査し、指定商品・指定役務を検討し、出願人を決め、使用開始・公表の前に出願時期を判断します。商標権は指定商品・役務との関係で保護範囲が決まり、将来のサービス拡張も見込みますが、広すぎる指定が常に有利とは限りません。次は自社で記入するブランド保護シートです。
※ 表は横にスクロールできます。
| 名称・ロゴ | 使用する商品・サービス | 使用会社 | 使用開始日 | 調査 | 出願 | 海外 |
|---|---|---|---|---|---|---|
日本の商標制度は先願主義で、同一・類似の商標が競合する場合、先に使用した事実だけでなく原則として先に出願した者が優先されます。商号登記・ドメイン取得・SNSアカウント取得は商標登録とは別です。J-PlatPat等での検索は調査の入口として有用ですが、検索だけで登録可能性や侵害リスクは確定しません(類否判断・指定商品役務・周知著名商標等の確認が必要)。名称公表後の変更はウェブサイト・契約・広告・在庫等に大きな手戻りを生むため早期確認が重要で、グループ会社等に使わせる場合は品質・ブランド管理とライセンスも検討します。
ステップ5 著作権の作成者・権利者・利用範囲を確認する
著作権は、思想・感情を創作的に表現した著作物について原則として創作時に発生します(登録は発生要件ではありません)。一方、アイデア・事実・方法・機能そのものは当然には保護されません。著作権が発生しても自社が著作権者とは限らないため、著作者・著作権者・利用者を区別し、創作日・修正履歴・原データ等の証拠を保存します。次は自社で記入する著作物管理表です。
※ 表は横にスクロールできます。
| 著作物 | 作成者 | 発注・雇用関係 | 著作権者候補 | 契約 | 利用範囲 | 証拠 |
|---|---|---|---|---|---|---|
従業員が職務で作成した著作物でも、当然に会社が著作者になるわけではありません。法人等の発意・業務従事者が職務上作成・法人名義での公表・別段の定めがないこと、といった著作権法第15条の要件を満たす必要があります(ただしプログラムの著作物は公表名義の要件が不要。第15条第2項)。要件を満たさなければ従業員個人が著作者となり得るため、就業規則・雇用契約・知財規程も整備します。
外注制作では、原則として実際に創作した個人が著作者となります。受注者が法人で著作権法第15条の法人著作の要件を満たす場合は受注法人が著作者となることがあります。いずれにせよ発注・代金支払いだけで著作権が当然に発注者へ移転するわけではありません(文化庁も、利用には契約上の整理が必要と説明)。譲渡か利用許諾かを決め、利用目的・媒体・地域・期間・改変・再委託・第三者提供を定めます。譲渡を受ける場合、翻案権等(第27条)・二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(第28条)は契約で特掲しないと譲渡人に留保と推定されるため(第61条第2項)、含める旨を明記します。著作者人格権は一身専属で譲渡できないため、改変・公表等の予定があれば必要かつ合理的な範囲の不行使特約を検討します(特約でも人格権自体は消滅しません)。なお、著作権の譲渡を受けても、外注先が成果物や開発過程のデータを自社の生成AI・機械学習の学習等に利用する行為を当然には禁止できないことがあります(著作権法第30条の4は非享受目的の利用を一定範囲で許諾なく認めます。ただし著作権者の利益を不当に害する場合は除く)。AI学習・リバースエンジニアリング等を制限する必要があれば契約で明示します。第三者素材・フォント・写真・OSS等を含むか、再委託者・クリエイターとの関係も確認します。
AI生成物が著作物に当たるかは、生成にあたっての利用者の創作意図と創作的関与の程度によって個別に判断されます。これとは別に、利用するAIサービスの規約で商用利用・再配布・入力情報の取扱い等に契約上の制限が設けられている場合があります。さらに、著作物性の有無にかかわらず、既存著作物と類似し依拠性が認められれば第三者の著作権侵害が問題となり得ます。「AIで作れば自社の著作権になる」「AI生成物には著作権がない」「規約で権利が与えられれば著作物になる」と一律に判断せず、著作物性・契約上の利用権限・第三者権利を分けて確認してください(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」「同チェックリスト&ガイダンス」)。
画面UI等のデザインは、機能性・利便性を追求する結果「誰が作っても似た表現になる」として著作物性が否定される場合があり、競合に画面構成を模倣されても著作権では差し止めにくくなります。独創的なUI・アイコン配置は、著作権を過信せず、意匠法上の画像の意匠(令和元年改正で意匠の対象に画像が追加)としての保護を公開前に検討します。
ステップ6 従業員・役員・外注先が生み出す発明を管理する
発明者となるのは発明の創作に実質的に関与した自然人であり、上司・管理職・会社名を形式的に発明者へ加えたり、費用負担だけで会社を発明者としたりはできません。次は関係者ごとの確認表です。
職務発明制度は、従業者等と使用者等の利害を調整する制度です。契約・勤務規則その他の定めにより、特許を受ける権利を使用者へ原始的に帰属させる設計が可能です(第35条第3項)。一方、従業者等には相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利が問題となり(第35条第4項)、相当の利益が不合理かを判断する際に、従業者等との協議の状況・基準の開示状況・意見聴取の状況等が考慮されます(形式的に行えば足りるわけではなく、規程の内容と運用を整合させます)。一律の定額報奨のみだと、事業が大化けした際に相当の利益として不十分と争われ対価請求のリスクが残るため、事業利益に応じた実績報奨の基準と、策定時の協議・開示・意見聴取の記録を備えます。会社が特許を受ける権利を取得後、出願せず営業秘密・ノウハウとして管理する場合でも、相当の利益の付与が問題となることがあります。出向者・兼務者・共同研究者はどの会社の職務発明かを整理し、外注先・業務委託先の発明は従業員の職務発明と同じ扱いになるとは限らないため、契約で発明届・権利帰属・出願協力・対価・第三者利用を定めます。
※ 表は横にスクロールできます。
| 作成・発明者 | 主な対象 | 確認する文書 | 主な確認事項 |
|---|---|---|---|
| 従業員 | 発明・著作物・ノウハウ | 就業規則・知財規程 | 帰属・報奨・秘密保持 |
| 役員 | 発明・著作物 | 委任契約・規程 | 帰属・利用・秘密保持 |
| 出向者 | 発明・著作物 | 出向契約 | 出向元・先の帰属 |
| 業務委託先 | コード・デザイン・発明 | 業務委託契約 | 譲渡・許諾・出願協力 |
| 共同開発先 | 共同成果 | 共同開発契約 | 貢献・帰属・利用 |
| 大学・研究機関 | 発明・研究成果 | 共同研究契約 | 公表・出願・利用 |
ステップ7 営業秘密として守る情報を管理する
営業秘密にする情報は「特許出願しなかった情報」ではなく、事業上の必要性を踏まえて秘密として管理する情報です。候補は、製造条件・調整値・配合・検査方法・アルゴリズムの詳細・学習方法・ソースコード・設計図・原価・価格戦略・顧客リスト・仕入先・営業手法・事業計画・失敗データ・運用手順・セキュリティ情報などで、これらが常に営業秘密になるとは限りません。
不正競争防止法上の営業秘密として保護されるには、一般に秘密管理性・有用性・非公知性の3要件が問題となり、情報の性質と管理状況を個別に確認します。社内で「機密」と呼ぶだけでは足りず、NDAだけで秘密管理性が当然に認められるわけでもありません。漏えい後に秘密扱いを始めても、失われた非公知性を当然には回復できません。経済産業省の「営業秘密管理指針」(令和7年=2025年3月改訂が最新)と「秘密情報の保護ハンドブック」が、法的要件と望ましい管理対策を整理しています。
次は自社で記入する営業秘密管理台帳です。
※ 表は横にスクロールできます。
| 情報 | 管理責任者 | 保管場所 | 閲覧者 | 秘密表示 | 持出し | 契約終了・退職時 |
|---|---|---|---|---|---|---|
実務では最低限、秘密情報の範囲を特定して一般情報と区分し、紙・ファイル・システム上で秘密と認識できるようにし、アクセス権を業務上必要な者へ限定し、複製・持出し・ログのルールを定め、私物端末・個人クラウド・私用メール・外部送信・生成AIへの入力を管理します。委託先・共同開発先への開示範囲を限定し、退職・出向終了・委託終了時にアカウント停止と資料返還・削除を行い、終了後も必要な秘密保持は合理的な範囲・期間を検討します。ルール作成だけでなく研修・監査・運用確認と、漏えい時の証拠保全・アクセス停止・調査まで備えます。令和7年改訂指針はクラウド・SaaS等に即した秘密管理性の考え方も示しており、アクセス権限の最小化(ID・多要素認証等)やアクセスログの保存・保管期間の設定が実務上重要です(ただし一律の基準ではなく、情報の性質と管理状況により個別に判断されます)。
新規事業で生成AIを使う場合、秘密情報・未出願発明・顧客情報・ソースコード等を安易に外部サービスへ入力しないこと、利用サービスの契約条件・学習利用の有無・保存期間・管理者設定を確認すること、社内で利用可能なサービス・入力可能情報・承認手続を決めることが基本です。匿名化・マスキングをしても再識別や組合せによる漏えい可能性を確認します。「入力しなければ営業秘密になる/入力したら必ず営業秘密性を失う」と一律に断定せず、実際の公開範囲・利用規約・管理状況で判断します。
無料ダウンロード
NDAレビュー10観点チェックリスト(無料PDF)
未出願技術・ノウハウ・事業計画等を委託先・共同開発先・提携候補へ開示する前に、秘密情報の定義・利用目的・共有範囲・返還や削除などを確認するための無料資料です。一般的な確認項目を整理するもので、NDA締結で営業秘密性が保証されるものでも、特許・意匠の公開前出願に代わるものでもなく、個別契約・開示情報に応じて追加確認が必要です。
無料のNDAチェックリストを見るステップ8 親会社・子会社・JVのどの法人が知財を持つか決める
新規事業を本体・子会社・JV会社等で実施する場合、知的財産の保有主体と利用主体が異なることがあります。発明者・著作者、出願人、登録後の権利者、営業秘密の管理主体、事業で利用する会社、ライセンスを受ける会社、費用負担会社、侵害対応会社などを整理します。次は自社で記入するテンプレートです。
※ 表は横にスクロールできます。
| 知財 | 作成・開発主体 | 権利保有主体 | 利用会社 | 利用根拠 | 費用負担 | 終了時処理 |
|---|---|---|---|---|---|---|
親会社が権利を持っても子会社が当然に自由利用できるわけではなく、逆も同様です。グループ会社間でも、譲渡・利用許諾・費用負担を整理します。商標をグループ会社へ使わせる場合はブランド・品質管理も検討します。知財管理会社への集約が常に有利とは限らず、JVの出資比率に応じて知財が当然に各株主へ帰属するわけでもありません。JV解散時の権利帰属・継続利用や、権利保有会社の倒産・売却時の事業継続も開始前に決めます(実施主体は第4話、提携・JV契約は第6話)。
ステップ9 海外展開を見据えて出願国・地域を選ぶ
知的財産権には原則として属地主義があり、日本で取得した権利がそのまま全世界で効力を持つわけではありません。販売国・製造国・研究開発国・競合所在国・模倣品の生産輸出国・主要顧客国・ライセンス先・資金調達や事業売却で重視される市場を踏まえて、対象国を絞ります。次は自社で記入するテンプレートです。
特許協力条約(PCT)、商標の国際登録(マドリッド制度)、意匠の国際登録(ハーグ制度)、パリ条約上の優先権といった制度がありますが、これらは複数国での手続を効率化する仕組みであり、一度の出願で自動的に世界中の権利が得られるわけではありません。最終的な権利取得は各国・地域の制度と審査によります。日本出願後にパリ条約の優先権を主張して海外出願できる優先期間は、特許・実用新案が12か月、意匠・商標が6か月です。国内での公表・話題化を見てから海外出願を検討すると、とくに商標は6か月を過ぎやすく、海外で第三者に名称・ロゴを先取りされることがあります。具体的な日数は2026年6月時点の特許庁・WIPO等の公式情報を確認してください。各国の新規性喪失例外・先使用・職務発明・著作権・営業秘密の制度は同一でなく、日本で公開してから海外出願すれば必ず保護できるとは限りません。翻訳・現地代理人・審査・登録・更新・権利行使の費用を見込み、海外展示会・海外サイト公開の前にも出願時期を確認します。
※ 表は横にスクロールできます。
| 国・地域 | 事業予定 | 製造・販売 | 競合 | 特許 | 商標 | 意匠 | 営業秘密対策 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
ステップ10 知財予算と出願優先順位を決める
すべての発明・名称・デザインを出願することは、費用・管理負担の面から現実的でない場合があります。事業への貢献・差別化・模倣されやすさ・寿命・事業化の確度・海外展開・ライセンス可能性・資金調達やM&Aでの重要性・他社の先行出願・侵害立証の難易・秘密維持の可否・費用などで優先順位を付けます。次の判断欄は社内管理上の区分です。
※ 表は横にスクロールできます。
| 知財候補 | 事業価値 | 模倣リスク | 権利化可能性 | 費用 | 海外 | 判断 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 早期出願/追加調査/営業秘密管理/契約で保護/当面保留/権利化しない | ||||||
「早期出願/追加調査/営業秘密管理/契約で保護/当面保留/権利化しない」は、GO・条件付きGO・HOLD・NO-GOと同様に社内管理上の区分で、法令上の正式な分類ではありません。出願しない判断も担当者の口頭だけにせず、理由・承認者・前提・再評価時期を記録します。事業内容・公開予定・競合状況が変われば再評価し、公開後に方針変更しても新規性等の問題で対応できない場合があります。事業中止予定でも、知財が他事業・ライセンス・売却に使えないか検討します。
ステップ11 知財ポートフォリオを継続的に管理する
知財ポートフォリオとは、保有・利用する特許・商標・意匠・著作権・営業秘密・ライセンス等を、事業戦略と結び付けて管理する考え方です。出願・登録状況、権利者、対象商品・サービス、利用状況、更新・年金・維持期限、海外権利、共同保有者、契約終了時の利用権、侵害・模倣の監視、未利用権利、営業秘密の管理状況、事業終了・売却時の処理などを継続管理します。次は自社で記入する台帳です(未取得の番号を仮で記載しないでください)。
※ 表は横にスクロールできます。
| 知財 | 権利者 | 対象事業 | 出願・登録番号 | 期限 | 利用会社 | 契約 | 担当者 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
四半期・年度の事業レビュー、商品・サービスの公開前、大型アップデート前、新しい国への進出前、新規提携・共同開発前、資金調達前、M&A・事業売却前、組織再編前、事業撤退前、主要開発者の退職時などを定期レビューのタイミングとし、出願・登録後に放置せず事業利用・費用・競合・市場との関係を見直します。
ステップ12 資金調達・M&A・事業売却に備えて知財を整える
新規事業の知財は、競合排除だけでなく、資金調達・業務提携・M&A・事業売却・ライセンス等でも確認されます。投資家・買手等は、中核技術やブランド、権利者、出願・登録の適切さ、従業員・外注先・共同開発先からの権利取得、職務発明規程、第三者素材・OSSの利用条件、共同保有・利用制限、重要ライセンスの継続性、支配権変更時の利用権、営業秘密の管理、係争の有無、更新料・年金の支払、必要な知財が対象会社へ集約されているか、売却後も必要な知財を使えるか、などを確認します。
※ 表は横にスクロールできます。
| 確認項目 | 証拠・資料 | 不備がある場合の影響 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 権利帰属 | 契約・発明届・譲渡書 | 事業利用・売却に支障 | 契約・登録等の整理 |
| 出願・登録 | 公報・証明書 | 保護範囲が不明 | 台帳整備 |
| 外注成果 | 業務委託契約 | 利用権不足 | 譲渡・許諾確認 |
| 共同開発 | 共同開発契約 | 利用制限・共有問題 | 利用条件確認 |
| 営業秘密 | 規程・ログ・権限 | 保護・立証が困難 | 管理改善 |
| ライセンス | 契約書 | 支配権変更等で終了 | 継続条件確認 |
登録件数が多ければ企業価値が高いとは限りません。事業に必要な権利を適切な主体が保有・利用でき、形式上の権利者と実際の利用者が異なる場合は契約関係を説明できることが重要です。M&Aや売却の直前に整理すると相手方同意・登録・対価・税務等で時間を要するため、新規事業の開始時から証拠と契約を整えます。
具体例で見る新規事業の知財戦略
産業機器メーカーA社が、設備へ後付けするセンサーユニットと故障予測クラウドサービスを開発中。従業員がセンサー制御技術を考案し、製造条件は社内ノウハウとして蓄積。AI分析機能の一部はB社へ委託し、画面・ロゴはC社へ依頼。大学Dとの共同研究も行う。半年後に展示会とプレスリリースで公表し、将来は海外販売と子会社化を検討している。
棚卸しすべき知財は、センサー制御技術、製造条件・調整方法、AI分析技術、ソースコード、学習データ・分析結果、サービス名、ロゴ、外観、画面デザイン、説明資料、大学との成果、顧客設備データ、運用ノウハウなどです。次は暫定評価です(前提事実が未確定のため)。
※ 表は横にスクロールできます。
| 対象 | 保護方法の候補 | 現在の課題 | 公開前の対応 | 暫定評価 |
|---|---|---|---|---|
| センサー制御技術 | 特許・営業秘密 | 発明者・新規性未確認 | 出願判断 | HOLD |
| 製造条件 | 営業秘密 | 管理区分がない | 台帳・アクセス制限 | 条件付きGO |
| AI分析機能 | 契約・著作権・特許等 | B社との帰属不明 | 契約確認 | HOLD |
| サービス名 | 商標 | 先行調査未実施 | 調査・出願判断 | HOLD |
| ロゴ・画面 | 著作権・商標・意匠等 | C社の権利が未整理 | 譲渡・許諾確認 | HOLD |
| 大学との成果 | 契約・特許等 | 公表・出願条件不明 | 共同研究契約確認 | HOLD |
| 顧客設備データ | 契約・秘密管理等 | 利用権限未確認 | 第9話の確認 | HOLD |
特定の保護方法を唯一の正解とはしません。中核技術は外部から解析可能かを踏まえ特許出願を検討し、製造条件や調整値は営業秘密として管理する選択肢があります。サービス名は公表前に先行商標調査と出願を検討し、B社・C社・大学との契約を確認しなければA社が成果を自由に利用できるとは限りません。顧客設備データは契約・個人情報・秘密情報の観点からも確認し、展示会の予定を優先して権利確認を後回しにしないことが重要です。GO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは法令上の正式な分類ではなく、本シリーズの社内整理用の区分です。
新規事業の知的財産管理でよくある失敗
※ 表は横にスクロールできます。
| 失敗 | なぜ問題か | 改善方法 |
|---|---|---|
| 展示会・プレスリリース後に特許・意匠出願を検討する/新規性喪失の例外があるから公開しても問題ないと考える | 公開で新規性が問題となり得、例外は事後救済策ではなく海外や第三者の先行出願の影響も残る | 公開前に出願要否を判断し、公開予定日から逆算して準備する |
| すべてを特許出願しノウハウ管理しない/特許を取得すれば自由に実施できると考える/出願しなければ自動的に営業秘密になる・NDAがあれば営業秘密になると考える | 公開・費用の負担が大きく、特許権でも他社権利の非侵害は保証されず、営業秘密は3要件(秘密管理性・有用性・非公知性)を満たさなければ保護されない | 解析可能性・秘密維持・事業価値で使い分け、範囲特定・秘密表示・アクセス制限・ログ・退職時対応を整える |
| サービス開始後に商標調査を行う/商号・ドメイン取得と商標登録を混同する/日本で出願したからと海外出願を後回しにする | 先願主義で先に出願した者が優先され、パリ条約の優先期間は商標が6か月(特許・実用新案は12か月)と短く、国内で話題化してからでは海外で名称・ロゴを先取りされ得る | 公表前に先行調査と出願を検討し、海外進出国の商標出願も早期に判断する |
| 著作権は自動発生だから契約・証拠が不要と考える/外注費を払えば著作権が自動移転すると考える/画面UIは著作権で当然に守られると過信する | 著作者は原則実際の創作者で代金支払だけでは移転せず、UIは創作的表現の幅が狭く著作物性を否定され模倣を差し止めにくいことがある | 譲渡か許諾か・27条28条・人格権・証拠保存を契約で整え、独創的なUIは画像の意匠での保護も検討する |
| 従業員の成果はすべて当然に会社へ帰属すると考える/会社・上司を発明者にする/一律の定額報奨のみで処理する | 法人著作・職務発明には法定の要件があり、発明者は実質的に関与した自然人で、大化け時に相当の利益が不十分と争われ得る | 職務発明規程・知財規程を整備し、発明者・帰属・実績報奨と協議等の記録を確認する |
| 共同開発成果を「共有」とだけ定める/親会社の知財を子会社・JVが自由に利用できると考える/海外出願や登録後の更新・年金・撤退や売却時の処理・AIやOSS等の利用条件を確認しない | 共有でも自由に使えるとは限らず、属地主義で日本の権利は海外で当然効力を持たず、放置で失効や第三者権利の問題が生じる | 帰属・利用範囲・グループ内の譲渡許諾を定め、対象国を早期に選び台帳で継続管理し、利用条件と撤退・売却時の処理を確認する |
経営者へ提出する知財戦略サマリー
経営者が必要とするのは制度の詳細ではなく、競争力を生む知財は何か、何を出願・秘密化するか、公開期限までに何をするか、権利者・利用者は誰か、外注・共同開発契約に問題はないか、海外はどの国か、費用はいくらか、権利化しない場合のリスク、事業売却・資金調達への影響、判断すべき事項です。
※ 表は横にスクロールできます。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 中核となる知財 | 技術・ブランド・コンテンツ・ノウハウ |
| 保護方針 | 特許・商標・著作権・営業秘密等 |
| 公開予定 | 展示会・公表日と対応期限 |
| 権利帰属 | 従業員・外注先・共同開発先との関係 |
| 保有・利用主体 | 親会社・子会社・JV等 |
| 海外対応 | 対象国・出願時期 |
| 費用・優先順位 | 出願・維持・管理コスト |
| 重要リスク | 公開、権利不足、漏えい等 |
| 条件付きGO | 公開・商用化前に必要な対応 |
| HOLD事項 | 調査・契約確認が必要な事項 |
| 経営判断事項 | 出願、秘密化、予算、保有主体等 |
新規事業の知的財産チェックリスト
棚卸し・公開前対応
- 技術・名称・デザイン・コンテンツ・ノウハウを列挙し、作成者・発明者・権利者候補を確認した
- 保護方法の候補と公開予定日・対応期限、重要度・模倣リスクを整理した
- 特許・意匠の出願要否を確認し、新規性喪失例外へ安易に依存していない
- サービス名・商品名・ロゴの商標調査を行った
- 秘密情報を公開資料から除外し、公開内容・日時・承認記録を保存した
特許・営業秘密
- 発明者を適切に確認し、出願人・権利保有主体を決めた
- 特許と営業秘密を比較し、出願しない理由と再評価時期を記録した
- 営業秘密の管理責任者を決め、秘密表示・アクセス制限・ログ等を整備した
- 退職者・委託終了者への対応を整備した
商標・著作権
- 使用予定の名称・ロゴと使用する商品・サービスを整理し、先行商標を調査して出願人・出願時期を決めた
- ドメイン・SNS・海外使用・グループ会社の使用条件を確認した
- 著作物の作成者と法人著作の要件、外注先との譲渡・利用許諾・第27条/第28条・著作者人格権を確認した
- ソースコード・元データ・第三者素材・OSS等と、作成日・修正履歴等の証拠を確認した
従業員・外注・共同開発
- 職務発明規程・発明届・出願判断・実績報奨と協議等の手続を整備した
- 出向者・兼務者・役員・外注先の権利関係を確認した
- 共同開発前の既存知財を一覧化し、成果の帰属・利用範囲・改良成果を定めた
- 契約終了後の利用権を確認した
グループ・海外・継続管理
- 親会社・子会社・JVの保有・利用関係とグループ内ライセンス等を整理した
- 海外販売・製造・競合国と海外出願の対象国・期限(パリ優先期間を含む)を確認した
- 出願・登録・更新・年金等を台帳管理し、未利用権利・維持費用を見直した
- 資金調達・M&A・事業終了・売却時の権利帰属資料と処理を整理した
- 他社権利を侵害しないための第8話の調査を行った
関連プロンプト集
法務AIプロンプト集100選
新規事業の知財管理では、事業部・開発者へのヒアリング、知財候補の棚卸し、公開前チェック、外注先・共同開発先への確認、経営者向け報告などの整理作業が必要になります。本プロンプト集は、守るべき知財候補の洗い出し、公開前に確認すべき質問の整理、特許・営業秘密の比較材料の整理、外注先・共同開発先との権利関係の確認、経営者向け知財サマリーの原案づくりなどに使え、生成AIへの指示を毎回ゼロから作る負担を減らします。
生成AIの出力は論点整理の補助です。AIが特許性・商標登録の可否・著作権者を判定・確定するものではなく、弁理士・弁護士への相談が不要になるものでもありません。出願・権利帰属・侵害判断等は、事実関係・契約・一次情報を確認し、必要に応じて弁理士・弁護士等の確認を受けてください。
法務AIプロンプト集100選を見るまとめ
- 知財戦略は、すべてを出願することではなく、新規事業の価値を技術・ブランド・表現・ノウハウ等に分解することから始める
- 特許・意匠は公開前に出願要否を判断し、サービス名・商品名は公表前に商標調査・出願を検討する(先願主義)
- 特許と営業秘密は、解析可能性・秘密維持・事業価値等で使い分ける
- 著作権が自動発生しても、作成者・権利者・利用範囲・証拠を確認する
- 従業員・外注先・共同開発先との権利関係を開始前に整え、親会社・子会社・JV間でも保有・利用関係を契約で整理する
- 海外出願は販売国・製造国・競合国等で優先順位を付け、資金調達・M&A・事業売却でも説明できる状態にする
- 他社権利を侵害しないための調査は、第8話で別途行う
新規事業の知的財産を守るとは、権利をできるだけ多く取得することではありません。事業の競争力を生む価値を特定し、公開前出願、秘密管理、契約、証拠保存を組み合わせ、必要な会社が必要な範囲で利用できる状態を作ることです。次回の第8話では、他社の知的財産権を侵害しないための調査を扱います。
よくある質問(FAQ)
新規事業のアイデアは特許で守れますか
単なるアイデアや抽象的な着想がそのまま特許になるわけではありません。特許は技術的思想(発明)を対象とし、発明該当性・新規性・進歩性等が問題になります。具体的な技術として成立しているか、出願前に公開していないかなどを個別に確認します。
特許出願前に展示会やウェブサイトで公開してもよいですか/新規性喪失の例外があるなら公開後に出願すればよいですか
原則は公開前出願です。展示会・ウェブサイト・プレスリリース等での公開は新規性に影響し得ます。新規性喪失の例外(特許法第30条。現行は公開日から1年以内、出願時の手続と出願日から30日以内の証明書面が必要)はありますが、公開前出願の原則に対する例外で、安易な事後救済策ではありません。第三者の先行出願や、例外の範囲が狭い海外出願への影響は残り得ます。
特許と営業秘密はどちらを選ぶべきですか
一律にどちらが強いとは言えません。外部から解析できるか、侵害を立証できるか、長期間秘密を維持できるか、独自開発される可能性、ライセンスや資金調達での重要性などで比較します。中核技術を特許化し、製造条件等を営業秘密にする組合せもあります。
サービス名は使用開始後に商標出願しても間に合いますか/ドメイン名を取得すれば名称を独占できますか
日本は先願主義のため、先に使用した事実だけで常に優先されるわけではなく、公表・使用開始前の調査と出願の検討が安全です。ドメイン名やSNSアカウントの取得、商号登記は商標登録とは別で、これらだけで名称を独占できるわけではありません。
著作権は自動的に発生するのに、なぜ契約が必要ですか/外注費を支払えば著作権は発注者へ移りますか
著作権は創作時に発生しますが、著作者・著作権者・利用者は別概念です。外注制作は原則として受注者が著作者で、代金支払だけでは著作権は当然には移転しません。譲渡か利用許諾か、第27条・第28条を含むか、著作者人格権の取扱い、納品範囲、証拠保存を契約で整える必要があります。
従業員が作ったプログラムや資料は会社のものですか
当然に会社のものになるわけではありません。法人著作には、法人の発意・職務上の作成・法人名義での公表・別段の定めがないこと等の要件があります(プログラムは公表名義の要件が不要)。要件を満たさなければ従業員個人が著作者となり得るため、就業規則・知財規程で整えます。発明は職務発明(特許法第35条)として、規程による帰属設計と相当の利益が問題になります。
共同開発成果は共有にするのが公平ですか/NDAを締結すれば営業秘密として保護されますか
出資比率や費用割合で当然に帰属するわけではなく、「共有」とだけ定めると、共有でも自由に利用・許諾・処分できるとは限らない問題が残ります。帰属と利用範囲を具体的に決めます。NDAは重要ですが、NDAを締結しただけで営業秘密の3要件(特に秘密管理性)が当然に満たされるわけではありません。
親会社の特許・商標を子会社も使えますか/日本で取得すれば海外でも保護され、他社権利を気にせず実施できますか
いずれも当然にはそうなりません。グループ会社でも譲渡・利用許諾・費用負担を整理する必要があり、知的財産権は原則として属地主義で、日本で取得した権利が海外で当然に効力を持つわけではありません(販売国・製造国・競合国等で各国・地域の権利取得を検討します)。また、自社が特許を取得しても他社の特許権等を侵害せず実施できる保証はなく、侵害回避の調査(クリアランス・FTO等)は第8話で別途行います。
本記事は、2026年6月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。発明該当性・新規性・進歩性、商標の登録可能性や類否、意匠の登録可能性、著作物性や権利帰属、営業秘密該当性、職務発明の取扱い、海外での保護等は、対象・事実関係・契約・各国制度によって異なります。知的財産と知的財産権は同一ではなく、出願・登録・秘密管理等の手続や要件を満たして初めて保護され得るものがあります。新規性喪失の例外は公開前出願の原則に対する例外であり、特許権の取得は自由実施や他社権利の非侵害を保証しません。GO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは本シリーズの社内整理用の区分であり、法令上の正式な分類ではありません。記事中の具体例は前提事実が未確定の暫定的な整理です。実際の判断にあたっては、最新の法令・審査基準・ガイドラインを確認し、弁理士・弁護士・税理士・情報セキュリティ専門家等にご相談ください。
🔍 関連ガイドへ進む
この記事と関連度の高い実務ガイドをまとめています。次に読むならこちら。
この記事の確認観点を、実務の型に変える。
読んだ内容を、確認メモ・文例・AI指示文に落とせます。
