新規事業で他社の知的財産権を侵害しないための調査
新商品の仕様がほぼ固まり、発売日も決まっている。開発担当者は似た特許を検索したが見つからず問題ないと考え、サービス名は検索エンジンで同名が出ないため採用しようとしている。製品デザインは競合品を参考に一部変更し、広告画像は素材サイトや生成AIで作成、外部開発会社はGitHubのコードを組み込むがライセンス一覧がない。転職者は前職の仕様書を持ち込んでいる——そして発売直前に法務へ「知財的に大丈夫か」と相談が来ます。
新規事業の知財侵害を防ぐには、発売直前に商品名や特許を一度検索するだけでは足りません。開発初期から、技術・名称・デザイン・コンテンツ・ソフトウェア・持込み情報を分けて調査し、権利範囲・権利状態・利用条件を確認し、問題があれば設計変更・名称変更・許諾取得等を行う必要があります。本記事は第7話(自社の知財を守る)と対になり、他社の権利を侵害せず新規事業を実施できるかを調べる手順を整理します。
この記事の要点
- 使用する技術・名称・デザイン・素材・コードを棚卸しし、対象国と調査の深さを決める
- 特許性調査とFTO(実施リスク)調査を区別する
- 特許はタイトルや要約ではなく、クレームと権利状態(分割・外国権利・補償金請求権)を確認する
- 商標は外観・称呼・観念と商品・役務を確認する(区分違い=非類似ではない)
- 意匠は登録意匠に類似するデザインも確認する(「何%変えれば安全」はない)
- 著作物・素材・フォント・OSS・生成AIは、作成者・権利者・許諾範囲・ライセンス・利用形態と、規約と第三者侵害(類似性・依拠性)を分けて確認する
- 他社の営業秘密を持ち込ませず、問題発見後は設計・名称変更や許諾等を比較し、調査時点・前提・残存リスクを記録する
本記事のGO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは、社内検討を整理するための区分であり、法令上の正式な分類ではありません。
知財クリアランスとは、新規事業で実施・使用する技術・名称・デザイン・コンテンツ・ソフトウェア等が、他社の権利や利用条件に抵触しないかを調査・評価し、必要な対応を行う実務上の作業です。「知財クリアランス証明書」が発行される制度ではなく、調査しても全権利・全事実を発見し非侵害を完全に保証できるわけではありません。検索結果がゼロでも、検索語・分類・表記・未公開出願・海外権利・著作権等の問題が残り得ます。調査の深さは事業規模・投資額・対象国・公開時期・設計変更の可否で変わり、仕様・名称・素材・対象国が変われば更新します。目的は「問題なし」の印ではなく、事業を実施可能な形に整えることです。
読んだだけで終わると、次の案件でまたゼロから考えることになります。
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知財クリアランスで確認する6つの分野
調査は分野ごとに検索方法も判断基準も異なります。同じ対象を複数分野で確認することもあり(ロゴは商標権と著作権、製品外観は意匠権と著作権など)、すべてを同じ「似ているか」で判断しません。
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| 調査分野 | 主な対象 | 主な確認方法 | 問題発見時の対応例 |
|---|---|---|---|
| 特許 | 技術・方法・システム | 公報・クレーム・権利状態 | 設計変更・許諾 |
| 商標 | 名称・ロゴ | 商標検索・商品役務確認 | 名称変更・出願・許諾 |
| 意匠 | 製品・包装・画面 | 意匠公報・画像・分類 | デザイン変更・許諾 |
| 著作権 | 文章・画像・コード等 | 作成者・契約・ライセンス | 差替え・許諾 |
| OSS・AI | コード・生成物 | ライセンス・規約・依存関係 | 構成変更・条件遵守 |
| 営業秘密 | 持込み資料・ノウハウ | 取得経緯・権限・開発記録 | 隔離・独自開発 |
特許性調査とFTO調査は目的が違う
特許性・先行技術調査は「自社の発明が特許を取れるか」を、FTO(Freedom to Operate)・侵害予防調査は「自社の予定する実施が他社の存続中の権利に抵触しないか」を調べるもので、目的が異なります。特許を取得できる技術でも他社のより広い特許権を侵害する可能性があり、自社が特許権を取得しても自由に実施できる保証はありません。「FTO調査をすれば自由実施が保証される」とも言えません(未公開出願や検索漏れの残存リスクがあります)。
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| 比較項目 | 特許性・先行技術調査 | FTO・侵害予防調査 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 自社発明の特許可能性 | 自社事業の実施リスク |
| 主な対象 | 先行する技術情報 | 存続中の権利・将来権利化し得る公開出願 |
| 古い文献 | 重要になり得る | 権利消滅なら直接リスクは低下 |
| 調査地域 | 技術公開を広く確認 | 実施国・製造国等 |
| 主な確認 | 新規性・進歩性等 | クレーム・権利状態・実施態様 |
| 結論 | 出願方針の判断材料 | 設計変更・許諾等の判断材料 |
ステップ1 調査対象・国・深さを決める
調査の前に「誰がどこで何を行うか」を整理します。特許権等は国・地域ごとに確認が必要で、海外だけで販売する場合でも国内製造・輸出等を確認し、クラウドでは処理がどの国のサーバーで行われるかが問題になることもあります。そのうえで、すべての候補に同じ費用・時間をかけず、事業規模・投資額・対象国・設計変更の難しさ・中核機能か・差止め時の影響などに応じて調査の深さを変えます(「初動確認で見つからなかったから専門調査は不要」とは限りません)。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 対象 | 自社が行うこと | 委託先等が行うこと | 国・地域 | 開始予定日 | 調査分野 |
|---|---|---|---|---|---|
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| レベル | 想定場面 | 調査内容 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 初動確認 | 構想・候補比較 | 簡易検索・論点抽出 | 事業部・法務 |
| 重点調査 | 仕様・名称決定前 | 分類・類似・権利状態確認 | 法務・知財 |
| 専門調査 | 商用化・大型投資・海外 | FTO・法的評価等 | 弁理士・弁護士等 |
| 継続監視 | 発売後・仕様変更 | 新規出願・権利変動確認 | 法務・知財 |
ステップ2 特許FTOの対象技術を分解する
サービス全体を一語で検索せず、装置・センサー・制御・通信・データ処理・認証・課金・AIモデル・UI・製造・保守・外部連携などの技術要素へ分解します。同義語・上位下位概念・英語・旧用語や、IPC・FI・Fタームなどの特許分類、主要競合・出願人、引用/被引用文献もたどり、一つの検索式で完結させず検索条件・検索日・対象DBを記録します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 技術要素 | 自社仕様 | 検索語 | 特許分類 | 主要競合 | 調査結果 |
|---|---|---|---|---|---|
件数がゼロでも、表記・分類・分解方法を見直します。J-PlatPatは特許・実用新案・意匠・商標の公報や、手続・審査経過、権利の存続・消滅等のリーガルステータスを無料で検索・閲覧できる公的な情報基盤ですが、検索結果だけで侵害の有無は確定しません。
ステップ3 クレームと権利状態を確認する
クレームチャートとは、他社特許の請求項の各構成要件と自社製品・方法の対応関係を整理する表です。特許権の技術的範囲は原則として特許請求の範囲の記載を基準に定められ、各構成要件を自社製品・方法が充足するか比較します。次は自社で記入する社内整理用の簡易表で、最終的な侵害判断書ではありません。
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| 構成要件 | 他社特許の記載 | 自社製品・方法 | 充足可能性 | 根拠資料 |
|---|---|---|---|---|
原則として一つでも構成要件を欠けば文言侵害は成立しませんが、均等論等が問題となる場合があるため「一か所変えれば必ず非侵害」とは限りません。タイトル・要約・図面だけで判断せず、独立/従属請求項を区別し、製造・使用・販売・輸入・方法の使用等のどの行為か、部品・ソフト・サービス提供での間接侵害、製造委託先・販売店・顧客の行為、対象国も確認します。また、検索結果の案件が現在有効な特許権とは限りません。公開出願の拒絶・取下げ・放棄、登録後の年金不納・存続期間満了・無効審決による消滅、権利者の変更、審査・補正によるクレーム変更、分割・関連出願の継続、日本で消滅しても外国の対応特許が存続している場合があります。出願公開後、発明の内容を記載した書面を提示して警告を受けた後の実施や、公開出願に係る発明と知りながら行った実施は、特許権の設定登録後に補償金請求権(特許法第65条)を行使され得るため、公開済み・出願中案件も確認対象になり得ます。J-PlatPatの経過情報・リーガルステータスを確認して検索日・確認時点を記録し、検索担当者が単独で最終判断をせず、高リスク案件は弁理士・弁護士等へ確認します。
ステップ4 商標を調べる
使用予定の文字・ロゴを確定し、読み方・意味・略称と、商品・サービスの内容・区分・類似群コードを整理します。完全一致検索だけでなく称呼・類似文字・図形等も検索し、指定商品・指定役務と権利状態・権利者を確認します。名称候補を一つに絞る前に調査し、変更できる期限を設定します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 名称候補 | 読み方 | 商品・サービス | 区分・類似群 | 検索結果 | リスク | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|---|
商標の類似は外観・称呼(読み方)・観念(意味)を総合的に検討し、使用する商品・サービスと登録商標の指定商品・指定役務との関係を確認します。特許庁の「類似商品・役務審査基準〔国際分類第13-2026版対応〕」では、類似群コードが同じ商品・役務は、区分が同じか違うかにかかわらず、原則として類似関係にあるものと推定されます(同コードは重要な検索・審査上の手掛かりですが、個別案件の類否を最終確定するものではありません。区分違い=非類似とは限らず、逆に同じ文字列でも商品・役務との関係等で直ちに使用不可とは限りません)。同名が検索で出ない・完全一致商標がないだけでは不十分で、読み方が近い商標やロゴの図形要素も確認します。J-PlatPatで見つからなくても、未登録の周知・著名表示、不正競争防止法、商号等が問題になり得て、商号登記・ドメイン・SNSアカウントの取得は商標の使用可否を保証しません。海外展開では対象国ごとに調査します。
ステップ5 意匠を調べる
調査対象のデザインを製品・部品・包装・画像等の単位で分け、用途・物品等を整理して、J-PlatPatでキーワード・分類・権利者等から検索し、図面・画像を比較します。部分意匠・関連意匠と権利状態も確認します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 対象デザイン | 登録意匠 | 共通点 | 差異点 | 権利状態 | 暫定評価 | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|---|
意匠権の効力は、登録意匠及びこれに類似する意匠に及びます(意匠法第23条)。見た目が少し違うだけで非侵害と断定できず、デザイン全体の美感、共通点・差異点、需要者の視点等が問題となります。部品や一部分だけが登録対象(部分意匠)の場合もあり、デザイナーが独自に作成しても他社意匠権との抵触は別問題です。委託先に任せても自社の販売・使用リスクが当然になくならず、著作権・不正競争防止法・商標権等も問題となる場合があります。高リスク案件は専門家評価を行います。
ステップ6 著作物・素材を確認する
著作権クリアランスは「同じ作品が検索で見つかるか」を見る作業ではありません。使用する著作物ごとに、作成者・権利者・入手経路・利用条件・実際の利用方法を確認します。利用条件は、商用利用の可否、利用媒体、複製・公衆送信・翻訳・改変・二次的著作物の作成・再配布・顧客提供・子会社や委託先の利用、地域・期間・数量上限、クレジット表示、著作者人格権、再許諾、契約終了後の利用などです。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 著作物・素材 | 入手元・作成者 | 権利者候補 | 利用条件 | 実際の利用方法 | 証拠 | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|---|
素材を購入したことと著作権そのものを取得したことは同じではありません。「著作権フリー」「ロイヤリティフリー」やクレジット表示だけで無条件利用できるとは限らず、ネットで見つけた画像を出典表示だけで使えるとも限りません。社内資料で許されても広告・商品・顧客向けで許されるとは限らず、委託先が納品した制作物でも第三者素材を適切に利用しているか確認します。フォントはデスクトップ・ウェブ・アプリ埋込み・動画・ロゴ加工等で条件が異なる場合があります。文化庁は、他人の著作物の利用は権利制限規定に該当する場合を除き、原則として権利者の許諾を得て、許諾された方法・条件の範囲で利用すると説明しています。著作権法の引用(第32条第1項)は、公表された著作物を公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内で行う必要があり、出所の明示(第48条)も求められます。その判断では、引用の目的・必要性、主従関係、明瞭な区別、引用の範囲などが主要な確認要素となり(形式的に満たせば常に適法というわけではありません)、広告素材・装飾目的等に広く一般化しないでください。
ステップ7 OSS・生成AIを管理する
OSSは著作権が放棄されたソフトウェアではなく、ライセンス条件に従うことを前提に利用が認められているソフトウェアです。「公開」「無料」「多くの企業が使う」という理由だけで条件確認を省略しません。利用するOSS・ライブラリ・依存関係(推移的依存を含む)を一覧化し、ライセンス名・バージョン・著作権表示・通知文・ソース提供義務・改変表示・特許条項等を確認します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| コンポーネント | バージョン | 入手元 | ライセンス | 利用形態 | 主な義務 | 担当者 | 対応状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
すべてのOSSにソースコード公開義務があるわけではありませんが、ライセンス・利用形態によってはソース提供等の義務が問題となります。社内利用・配布・組込み・改変・SaaS提供で義務が変わり得て、SaaSなら義務が一切生じないとは限りません。コピーレフト型と許容的ライセンスの違いや、複数ライセンスの互換性も確認します。GitHub等に公開されていること自体は著作権放棄や無条件利用を意味せず、ライセンス表示がないコードを自由利用可能と判断しません(IPAも、GitHub上のコードはフリー素材でないと説明しています)。委託先がOSSを使う場合は部品表・ライセンス一覧・通知文等の提出を求めます。なお、SBOMはコンポーネント・バージョン・依存関係・ライセンス情報等を把握するソフトウェア部品表で、ライセンス・脆弱性管理に役立ちますが、作成するだけでライセンス遵守・非侵害・安全性が自動的に保証されるわけではありません。OSSライセンス遵守とセキュリティ管理は別の論点で、管理を法務担当者個人に依存させません。
生成AIを使った成果物では、(1)生成物の著作物性、(2)規約上の利用範囲、(3)入力素材を入力する権限、(4)出力物が第三者権利を侵害しないか、(5)入力した秘密情報の管理、を分けて確認します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 生成物 | AIサービス | 入力素材 | 主なプロンプト | 人の修正 | 利用目的 | 確認結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
AIサービスが商用利用を認めていても、第三者権利を侵害しないことを保証するものとは限りません。AI生成という理由だけで利用者の責任はなくならず、「AI生成」と表示すれば侵害が解消する・少し修正すれば必ず非侵害になる、というものでもありません。著作物性が否定される場合でも既存著作物の侵害問題は残ります。著作権侵害は原則として既存著作物との類似性と依拠性の双方が問題となり(いずれかを欠けば侵害になりません)、似ているだけで直ちに侵害とは断定できませんが、特定作品をプロンプトへ入力・指定した場合や学習データに当該著作物が含まれる場合等に依拠性が問題となり得ます。生成物が既存著作物に類似しないか確認し、特定の作家・キャラクター・ロゴ等を強く参照する指示を避け、入力素材の利用権限を確認し、使用モデル・プロンプト・入力素材・修正内容を記録します。文化庁も、AI生成物による著作権侵害は原則として生成・利用を行った者が問題となり得るほか、具体的事情によってはAIの開発者・提供者も責任を問われる場合があると整理しています。
ステップ8 営業秘密・委託先を管理する
他社の登録権だけでなく、他社の営業秘密・秘密情報を不適切に取得・使用しないことも知財リスク管理に含まれます。採用・配属時には前職の秘密情報・資料・コード等を持ち込ませず、一般的な経験・技能と特定企業の秘密情報を区別し、入社時誓約書や研修を行い、独自開発の経緯・仕様・コード履歴を保存します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 情報・資料 | 提供者 | 取得経緯 | 利用権限 | 保存場所 | 利用可否 | 対応 |
|---|---|---|---|---|---|---|
クリーンルーム開発とは、他社の保護対象となり得るコード・秘密情報等へアクセスする者と、新しいコード・設計を作成する者を分離するなどして独自開発の過程を管理する方法です。ただしクリーンルーム方式を採用すれば著作権侵害・営業秘密侵害・契約違反等が当然に否定されるわけではありません。問題を発見したら利用を一時停止して隔離・証拠保全し、法務・情報セキュリティ・経営層へ報告します。また、開発を外部へ委託しても発注者側の販売・提供リスクが当然になくなるわけではありません。契約に「第三者権利を侵害しない」と書いても実際の侵害がなくなるわけではなく、表明保証だけに依存せず、実際の構成・素材・ライセンスを確認できる資料(OSS一覧・ライセンス一覧・SBOM・第三者素材・生成AI利用・再委託・知財調査状況)を受領し、責任条項と事前承認・資料提出・代替対応を組み合わせます。委託先に責任を追及できても、差止めや顧客対応等の事業上の影響が回避されるとは限りません。
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| 確認事項 | 委託先回答 | 提出資料 | 自社確認 | 未対応時の措置 |
|---|---|---|---|---|
| 第三者素材 | ||||
| OSS | ||||
| 生成AI | ||||
| 再委託 | ||||
| 知財調査 |
ステップ9 問題発見後の対応を比較する
他社権利等が見つかっても、直ちに事業全体をNO-GOとせず、問題となる権利・重要性・設計変更の可否・期限・費用等を踏まえて代替案を比較します。設計・仕様の変更、名称変更、デザイン・素材・コードの差替え、機能や地域の除外、製造・販売国の変更、利用許諾、権利の譲受け、クロスライセンス、非侵害・無効理由の検討、消滅・満了を待つ、発売延期などが選択肢です。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 対応案 | 開始時期 | 費用 | 事業価値への影響 | 法的リスク | 実行条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 設計変更 | |||||
| 名称変更 | |||||
| 許諾取得 | |||||
| 対象範囲縮小 | |||||
| 発売延期 |
ライセンス交渉では、対象権利・商品サービス・地域・用途・独占/非独占・期間・対価・再許諾・改良技術・契約終了後の処理などを確認します(「ライセンス料を払えば関連するすべての知財を使える」わけではありません)。他社権利が見つかっただけで直ちに侵害とは限らない一方、社内担当者の感覚だけで非侵害・無効と判断せず、非侵害理由・無効資料・権利状態・実施態様を整理し、高リスク案件は弁理士・弁護士等の鑑定・意見を検討します。無効理由があると考えても権利が当然に消滅するわけではなく、係争の費用・期間や差止め・信用・資金調達への影響も経営判断へ反映します。
ステップ10 警告対応と継続監視
権利者から警告書・照会書・削除依頼等を受けた場合、事実・権利・期限を確認する前に、侵害を認めたり全面否定したりしないことが重要です。受領日・期限を記録し、対象商品・主張権利・権利状態を確認し、仕様・売上・開発経緯の資料を保全して、対応体制を決め経営者へ報告します。また、知財クリアランスは発売時に一度実施して終わりではなく、仕様・名称・素材・委託先・対象国の変更時や、競合の新製品・重要な他社出願の公開登録時などに再調査します。次は自社で記入するテンプレートです。
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| 項目 | 確認内容 | 担当 | 期限 | 状況 |
|---|---|---|---|---|
| 主張権利 | ||||
| 対象商品 | ||||
| 回答期限 | ||||
| 証拠保全 |
事実確認前に侵害を認める、関係資料・ソースコード・メール等を削除する、回答期限を放置する、委託先へ責任を丸投げする、顧客・販売店へ根拠なく安全宣言する、SNSで相手方を批判する——これらは避けます。対応案(事実照会・非侵害の説明・設計変更や販売停止・削除や差替え・許諾交渉・和解・無効資料の提示・審判訴訟・委託先への補償請求等)は、権利内容・事実・事業影響で異なり、一つを一般的な正解として推奨できません(特許庁も、警告書による当事者間交渉は解決手段の一つだが、警告だけで強制的に解決されるものではないと説明しています)。継続監視を行ってもすべての出願・権利を発見できるとは限らず、仕様・名称の変更を法務・知財へ通知する社内フローを設け、過去の「問題なし」を変更後の仕様へそのまま流用しないようにします。調査結果の有効性は、確認時点と前提仕様に依存します。
再調査トリガー表(自社で記入)を開く
| 変更・事象 | 再調査分野 | 担当 | 実施期限 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 新機能追加 | ||||
| 名称変更 | ||||
| 海外展開 | ||||
| OSS更新 | ||||
| 委託先変更 |
具体例で見る知財クリアランス調査
産業機器メーカーA社が、設備へ後付けするセンサー端末と、AIで故障予測を行うクラウドサービスを発売する。センサー端末は海外メーカーの通信モジュールを搭載し、ソフトウェアには複数のOSSを利用。サービス名とロゴは外部デザイン会社B社が制作し、広告画像の一部は素材サイトと生成AIを利用。AI開発担当者には競合企業からの転職者が含まれる。製造は国内、販売は日本と米国を予定している。
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| 調査対象 | 現時点の評価 | 追加確認 | 対応 |
|---|---|---|---|
| センサー・通信技術 | HOLD | 日本・米国のFTO調査 | クレーム比較 |
| 故障予測機能 | HOLD | 実装仕様・関連特許 | 技術分解・専門評価 |
| サービス名 | HOLD | 称呼・商品役務・米国商標 | 名称候補比較 |
| 端末外観 | HOLD | 登録意匠・類似デザイン | 意匠調査 |
| ロゴ・広告画像 | HOLD | B社・素材・AIの利用条件 | 証拠・許諾確認 |
| OSS | 条件付きGO | ライセンス・依存関係 | SBOM・表示対応 |
| 転職者の知識 | HOLD | 前職資料・独自開発記録 | 持込み排除・記録 |
| 通信モジュール | HOLD | 部品メーカーの許諾・補償 | 契約・資料確認 |
日本での調査結果を米国へそのまま流用せず、通信モジュールのメーカー保証だけで完成品のFTOが保証されるとは限りません。サービス名は広告・改修前に候補を複数調査し、OSSはライセンスを確認してSBOM等で構成を管理します。外部デザイン会社の保証だけでなく素材・生成AI利用の資料を受領し、転職者の一般的な経験は活用できても前職資料・秘密情報は持ち込ませません。仕様や利用素材が未確定な段階で安易にGOとしないことが重要です。
知財クリアランスでよくある失敗
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| 失敗 | 改善方法 |
|---|---|
| 発売直前に初めて調査する/検索結果がゼロなら安全と考える | 開発初期から調査し、調査時点・前提仕様を記録する |
| 特許性調査とFTO調査を混同する/自社が特許を取れば自由実施できると考える/タイトル・要約・図面だけで見る | クレーム・権利状態・対象国を確認し、構成要件全部を比較する |
| 商標を完全一致・同一区分だけで調べる/デザインを一定割合変更すれば安全と考える | 外観・称呼・観念と類似群、登録意匠に類似するデザインまで確認する |
| ネット画像・購入素材・GitHubコードを自由利用と考える/AI規約や委託先保証だけで済ませる | 権利者・ライセンス・利用形態・第三者侵害を確認し、委託先から資料を受領する |
| 転職者の前職資料を利用する/一度の結果を仕様変更・海外展開後も流用する/警告書を放置または即侵害自認する | 持込みを排除して独自開発を記録し、変更時に再調査し、警告書は事実確認・証拠保全を優先する |
経営者へ提出する知財クリアランスサマリー
経営者が必要とするのは検索件数の一覧ではなく、何を・どの国で・どの仕様を前提に調べ、重大な他社権利は何か、侵害可能性・不確実性の程度、設計変更や許諾の可否、発売時期への影響、未調査事項、最大の影響、判断すべき事項です。
※ 表は横にスクロールできます。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 調査対象 | 技術・名称・デザイン・素材等 |
| 対象国 | 製造・販売・提供国 |
| 調査時点・前提 | 仕様・名称・確認日 |
| 重要な権利 | 権利者・対象・権利状態 |
| 暫定評価 | GO・条件付きGO・HOLD・NO-GO |
| 代替案 | 設計・名称変更、許諾等 |
| 開始時期への影響 | 再設計・交渉・追加調査 |
| 残存リスク | 未公開出願・検索漏れ等 |
| 条件付きGO | 発売前に必要な対応 |
| 経営判断事項 | 予算・延期・許諾・中止等 |
関連ツール
LegalOS 法律相談(法務ナレッジ管理ツール)
知財調査では、調査日・検索条件・対象仕様・専門家への相談・委託先回答・経営判断などの履歴を継続的に残す必要があります。LegalOS 法律相談は、過去の知財相談・回答を端末内へ保存し、類似案件の調査・相談履歴を検索し、仕様変更前後の判断経緯を整理し、警告書対応や専門家相談の記録を残し、担当者変更時の引継ぎに使えます。
本ツールは記録・整理を支援するもので、知財侵害を自動判定したり、特許・商標の検索を自動完了したり、非侵害を保証したりするものではありません。弁理士・弁護士の意見に代わるものでも、警告書への回答を自動的に確定するものでもありません。
LegalOS 法律相談を見る新規事業の知財クリアランスチェックリスト
調査の前提
- 製品・サービスの仕様と製造・販売・提供国を整理し、委託先・部品・外部サービス・名称・ロゴ・素材を一覧化した
- 発売日・設計変更期限と、調査時点・前提仕様を記録した
特許・技術
- 特許性調査とFTO調査を区別し、技術を構成要素へ分解してキーワードと特許分類・競合・引用文献等を確認した
- 特許請求の範囲・権利状態・存続期間・権利者と、分割・関連出願・外国権利を確認し、自社仕様とクレームを比較した
- 設計変更後に再評価した
商標・意匠
- 名称候補を複数用意し、読み方・略称・意味と、指定商品役務・類似群を確認した
- 完全一致以外の類似商標・ロゴ図形を、対象国ごとに確認した
- 製品・包装・画面等の意匠と、部分意匠・関連意匠・権利状態を確認した
著作物・素材
- 文章・画像・動画・音楽等を一覧化し、作成者・権利者・入手経路を確認した
- 商用利用・改変・再配布等の条件、素材サイト規約の確認日、フォント条件、委託先の第三者素材を確認した
- 引用その他の権利制限の要件を確認し、必要な許諾・クレジット表示を行った
OSS・生成AI
- OSS・ライブラリ・依存関係を一覧化し、ライセンス・バージョン・入手元と、利用形態・表示・通知・ソース提供等の義務を確認した
- 委託先からOSS一覧・SBOM等を受領した
- 生成AIの規約・入力素材の利用権限・生成物と既存作品の類似性を確認し、生成過程・入力素材・人の修正を記録した
営業秘密・委託先・判断・発売後
- 転職者へ他社秘密の持込み禁止を説明し、受領資料の取得経緯・権限を確認し、独自開発の記録を保存した
- 委託先の再委託・第三者素材を確認し、知財保証・資料提出・代替対応を契約で定めた
- 問題となる権利ごとに代替案を比較し、条件付きGO・HOLD事項を明確にして経営者へ残存リスクを報告した
- 警告書の初動手順と、変更時の再調査ルール、発売後の監視対象・担当者を定めた
関連プロンプト集
法務AIプロンプト集100選
知財クリアランスでは、事業部・開発者への質問、技術要素の分解、名称・素材・OSSの棚卸し、未確定事項の整理、経営者向け報告などの作業が必要になります。本プロンプト集は、調査対象の洗い出し、確認事項の整理、調査結果のGO・条件付きGO・HOLD等への整理、代替案の比較、経営者向けサマリーの原案づくりに使え、生成AIへの指示を毎回ゼロから作る負担を減らします。
生成AIの出力は調査対象・質問事項・報告構成等の整理を支援するものです。AIが特許侵害の有無を確定したり、商標・意匠の類似を最終判断したり、著作権・OSSの適法性を保証したりするものではなく、弁理士・弁護士による確認が不要になるものでもありません。権利範囲・侵害・無効・許諾条件等は、一次資料・具体的仕様・契約を確認し、必要に応じて弁理士・弁護士等の確認を受けてください。
法務AIプロンプト集100選を見るまとめ
- 知財クリアランスは、検索結果がゼロかを確認する作業ではない
- 技術・名称・デザイン・素材・OSS・持込み情報を分け、特許性調査とFTO調査を区別する
- 特許はクレーム・権利状態・対象国、商標は外観・称呼・観念と商品役務、意匠は類似意匠まで確認する
- 著作物・素材・OSS・生成AIは権利者・利用条件・ライセンス・規約と第三者侵害(類似性・依拠性)を確認し、他社営業秘密を持ち込ませない
- 問題発見後は設計変更・名称変更・許諾等を比較し、警告書は事実確認と証拠保全を優先し、仕様・対象国・素材が変われば再調査する
新規事業の知財侵害を防ぐとは、「問題のある権利が見つからないこと」を祈る作業ではありません。事業で実際に行う技術・表示・利用行為を具体化し、他社の権利と利用条件を確認し、問題があれば事業を実行できる形へ修正する作業です。次回の第9話では、新規事業のデータ利用と個人情報保護を扱います。
よくある質問(FAQ)
特許を検索して同じ技術がなければ、自由に実施できますか/自社が特許を取得すれば他社特許を侵害しませんか
いずれも保証されません。検索がゼロでも未公開出願・海外権利等の問題が残り得ます。自社が特許を取得しても他社のより広い特許権等を侵害せず実施できる保証はなく、特許性調査とFTO調査は目的が異なります。
公開特許公報を見つけたら事業を中止すべきですか/特許請求の範囲の一部が違えば非侵害ですか
公報を見つけただけで直ちに侵害とは限りません。権利状態・対象国・特許請求の範囲を確認します。文言侵害は原則として構成要件をすべて充足する場合に成立し一つ欠ければ原則不成立ですが、均等論等があるため「一か所変えれば必ず非侵害」とは限りません。高リスク案件は専門家へ確認します。
同じ商標が登録されていなければ名称を使えますか/区分が違えば同じ商標を使えますか
完全一致の登録商標がないだけでは不十分です。類似は外観・称呼・観念を総合的に見て商品・役務との関係を確認します。類似群コードが同じなら区分が違っても原則として類似と推定されます(同コードは手掛かりで、個別案件の類否を最終確定するものではありません)。未登録の周知表示・不競法・商号等も問題になり得ます。
競合品と何%デザインを変えれば意匠権侵害になりませんか
「何%変えれば安全」という基準はありません。意匠権の効力は登録意匠およびこれに類似する意匠に及び、デザイン全体の美感・共通点・差異点・需要者の視点等で判断されます。部分意匠・関連意匠もあり、独自作成でも抵触は別問題です。
ネット画像は出典を書けば使えますか/購入素材やGitHub・OSSのコードは自由に使えますか
いずれも一律には言えません。公開や出典表示は無条件利用を認めず、素材購入・サブスク加入は著作権の取得を意味しません。GitHubでの公開も著作権放棄ではなく、OSSはライセンスと利用形態(社内・配布・組込み・改変・SaaS等)に従う必要があり、すべてに公開義務があるわけではありません。
AIサービスが商用利用を認めていれば、生成物を安全に使えますか
規約上の商用利用と第三者非侵害は別問題です。著作権侵害は類似性と依拠性の双方が問題となるため、生成物が既存著作物に類似しないか、入力素材の利用権限を確認します。AI生成でも利用者の責任はなくならず、広告・ロゴ等の高リスク用途では追加の権利確認を行います。
転職者の知識は使えますか/委託先が保証すれば調査は不要ですか/警告書を受けたら即販売停止ですか
一般的な経験・技能は活用できますが、前職の営業秘密・資料・コードは持ち込ませず独自開発を記録します。委託先が保証しても発注者の販売・提供リスクは当然には消えず、資料受領や自社確認を組み合わせます。警告書は侵害の即自認も無視も避け、事実・権利・期限の確認と証拠保全を優先します。
本記事は、2026年6月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言・鑑定ではありません。知財クリアランス(FTO調査等)は実務上の表現で、行政機関が非侵害を証明・認証する制度ではなく、調査を行ってもすべての権利・事実を発見し非侵害を完全に保証できるわけではありません。特許侵害は原則として特許請求の範囲の構成要件の充足を基準に判断し、均等論・間接侵害等が問題となる場合があります。商標・意匠の類否、著作物性や著作権侵害、OSSライセンスの解釈、営業秘密該当性等は、対象・事実関係・契約・各国制度によって異なり、J-PlatPat等の検索結果のみで権利の有効性・侵害の有無・登録可能性は確定しません。海外について記載した事項は、対象国の制度確認が別途必要です。GO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは本シリーズの社内整理用の区分であり、法令上の正式な分類ではありません。記事中の具体例は前提事実が未確定の暫定的な整理です。実際の判断にあたっては、最新の法令・審査基準・ガイドラインを確認し、弁理士・弁護士・OSSやソフトウェアの専門家等にご相談ください。
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