新規事業の販売・広告は適法か|特商法・景表法・消費者契約法

LPに「業界No.1」「絶対に成果が出る」「今だけ50%OFF」と表示し、No.1の根拠は代理店から受け取った短い調査レポートだけ。通常価格での販売実績はほとんどなく、無料トライアル後に自動課金されるが広告は無料部分だけを強調。SNSでは社員やインフルエンサーへ好意的な投稿を依頼し商品やポイントを提供するが広告と明示せず、定期購入の総額・解約条件は申込直前まで分からない。広告は代理店が作ったので自社は責任を負わない——販売開始直前に法務へ「この表現で大丈夫か」と相談が来る、新規事業でよくある状況です。

販売・広告法務は、完成したキャッチコピーを法務が最後に確認する作業ではありません。商品・価格・契約条件・販売方法・根拠資料・広告媒体・申込画面・委託先管理を一体として設計し、一般消費者が受ける全体的な印象と実際の取引内容を一致させる作業です。「表現を弱くすれば安全」「注記を付ければ問題ない」「代理店に任せたので責任を負わない」という理解は誤りです。

本記事では、新規事業の販売・広告を始める前に、適用法令・取引類型の確認から、通信販売の表示、優良誤認・有利誤認、根拠資料、価格・No.1・ステマ・景品・広告審査体制までを、自社へ当てはめて判断できるように整理します。

この記事の要点

  • 販売方法・対象顧客・取引類型を先に確認する
  • 広告・LP・SNS・申込画面・営業資料を一体で確認し、表示と実際の商品・価格・契約条件を一致させる
  • 効果・性能・No.1・価格・無料・期間限定・定期購入表示は広告開始前に根拠・条件を確認する
  • インフルエンサー等へ依頼した表示も広告主側で管理する
  • 打消し表示だけで強調表示の誤認が常に解消されるわけではない
  • 景品・キャンペーンは提供方法と限度額を確認する
  • 根拠資料・承認・修正履歴を保存し、公開後も監視する

本記事のGO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは、社内検討を整理するための区分であり、法令上の正式な分類ではありません。

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販売・広告法務は「表示文言」だけの問題ではない

広告審査の対象はキャッチコピーだけではなく、商品の実態・価格・契約条件・販売方法・媒体・根拠資料・申込画面・規約・委託先の表示・実際の運用の組合せです。次の流れ全体で、表示と取引内容が一致しているかを確認します。

事実・条件
広告表現
申込画面・契約成立
商品・サービス提供
解約・返品・返金
苦情・行政対応

広告表現が事実であっても、表示方法・比較方法・重要条件の不表示・全体的印象によって問題となり得ます。

最初に適用法令と取引類型を確認する

「広告だからすべて同じ法律」ではありません。少なくとも次を区別します。

※ 表は横にスクロールできます。

法令主な対象主な規制新規事業での確認例
景品表示法一般消費者向けの表示・景品優良誤認・有利誤認・指定告示・景品規制効果・No.1・価格・景品
特定商取引法通信販売等の取引類型広告表示事項・最終確認画面・返品特約等通販表示・定期購入・電子メール広告
消費者契約法消費者契約の勧誘・条項取消事由・不当条項勧誘トーク・申込画面
電子消費者契約法電子消費者契約操作ミスの錯誤特例申込確認画面
特定電子メール法広告・宣伝メールオプトイン・表示・受信拒否メール・配信委託先
個別業法商品・業種ごと業種別の広告・表示規制医薬品・食品・金融等

特定商取引法は、通信販売・訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入の類型ごとに規制が異なります。本記事は新規事業で頻出する通信販売・ウェブ申込み・SNS広告を中心にします。「ウェブ販売だから常に通信販売」と即断せず、申込み・勧誘・契約過程を確認します。BtoB・海外顧客・事業目的で契約する個人事業主等は、景品表示法と消費者契約法で「消費者」の範囲が異なる点を含め、適用除外・範囲を個別に確認します。

※ 自社記入用。表は横にスクロールできます。

商品・サービス販売主体対象顧客申込・勧誘方法取引類型候補適用法令・未確認

ステップ1 販売方法・対象顧客・申込みの流れを具体化する

販売開始前に、販売主体、BtoB/BtoC、勧誘・申込みの場、広告から申込みまでの画面遷移、無料登録と有料契約の境界、無料トライアルから自動課金への移行、定期購入・自動更新、代理店・アフィリエイト経由か、対象地域、未成年者の利用可能性、契約成立時点、解約・返品・返金方法を確認します。契約条項の詳細は第10話に譲り、本記事は「どの段階でどの条件を表示すべきか」に重点を置きます。

広告
LP・商品ページ → 料金・重要条件
入力 → 最終確認画面 → 申込ボタン
確認メール → 提供・課金
解約・返品

ステップ2 すべての広告・表示を棚卸しする

広告審査の対象を、担当者が「広告」と呼ぶ素材だけに限定しないでください。コーポレートサイト・商品ページ・LP・ECモール・アプリストア・各種広告・SNS公式投稿・インフルエンサー投稿・アフィリエイト・比較サイト・口コミ・動画・ライブ配信・メール/SMS・営業資料・FAQ・店頭POP・申込画面・最終確認画面・確認メール・サポート説明まで含めます。同じ文言でも画面サイズ・表示時間・リンク・音声・周辺表示で印象が変わるため、媒体ごとに確認します。

※ 自社記入用。表は横にスクロールできます。

媒体・画面表示内容作成・公開主体根拠資料法務確認公開日・修正期限

ステップ3 商品・サービス・価格・条件の事実を確定する

広告審査の前に、その基礎となる事実を確定します。内容・品質・性能・効果・対象者・使用条件・料金・追加費用・割引・無料期間・契約期間・自動更新・解約返品返金・在庫・比較対象・調査結果・実績・第三者認証・推薦監修・キャンペーン景品などです。「たぶんそう」「顧客にはこう説明している」「一般的な表現だから大丈夫」という説明だけで根拠確認を終えないでください。根拠資料の例は、仕様書・試験報告書・販売実績・価格履歴・調査票・集計データ・認証書・スクリーンショット等です。

※ 自社記入用。表は横にスクロールできます。

表示案表示の意味根拠資料対象商品・期間確認者・媒体暫定評価

ステップ4 通信販売の広告表示と最終確認画面を確認する

通信販売の広告表示事項(特定商取引法11条)

通信販売の広告では、事業内容に応じて、販売価格・対価、送料その他の負担、支払時期・方法、引渡時期、申込期間、申込みの撤回・解除・返品特約、事業者の名称・住所・電話番号、代表者または通信販売責任者、追加費用、動作環境、継続契約(定期購入)の条件等を確認します。請求があれば遅滞なく書面等を提供する旨を表示する等の要件を満たせば一部省略できますが(11条ただし書)、「特商法表示ページへのリンクがあればすべて省略できる」わけではありません

最終確認画面(特定商取引法12条の6)

最終確認画面では、申込み確定の直前に、分量、販売価格・対価、総額、支払時期・方法、引渡時期、申込期間、申込みの撤回・解除、定期購入・継続契約の条件(各回の数量・金額、契約期間、解約条件、自動更新・自動課金)等を、消費者が確認・訂正できるようにします。誤認させる表示は禁止されます。「申込ボタンの直前に規約リンクがあるだけ」では足りません。広告・商品ページ・カート・最終確認画面・規約・特商法表示・確認メールを一致させます。最終確認画面の表示が不十分で、定期購入の総額や解約条件等を消費者が誤認して申し込んだ場合、特定商取引法12条の6違反に基づき、消費者が申込みの意思表示を取り消すことができる場合があります(同法15条の4の民事上の救済)。通信販売には、訪問販売等と同じ一般的なクーリング・オフ制度はありません。

※ 自社記入用。表は横にスクロールできます。

表示項目LP・商品ページ最終確認画面規約・特商法表示確認メール不一致・修正担当

ステップ5 優良誤認・有利誤認を分けて確認する

優良誤認は、品質・規格・性能・効果・内容等を、実際より、または競争事業者より著しく優良であると事実に相違して示す表示です(客観的根拠のない効果、一部利用者の結果の一般化、根拠のない「専門家推奨」「満足度No.1」、AI生成文の未確認掲載等)。有利誤認は、価格・契約期間・解約・返金・送料・特典等を、実際より、または競争事業者より著しく有利であると事実に相違して示す表示です(実績のない二重価格、必須費用を除いた価格、初回価格だけを強調した定期購入、条件付きの「送料無料」、常時実施の「期間限定」等)。「著しく」は誤差の大きさではなく、一般消費者の選択に影響する程度かで判断され、故意・過失がなくても行政法上問題となり得ます。

令和5年改正景品表示法(2024年10月1日施行)

不当表示には措置命令・課徴金に加え、確約手続(是正措置計画の認定で措置命令・課徴金を受けない仕組み)が導入され、課徴金は売上額の推計や、過去10年以内に課徴金納付命令を受けた事業者への1.5倍加算の規定が整備されました。さらに、故意に優良誤認・有利誤認表示をした場合の直罰(措置命令を経ず100万円以下の罰金)も新設されています。本段落で説明した確約手続・課徴金制度の見直し・直罰規定は、2024年10月1日に施行されています。

※ 表は横にスクロールできます。

類型対象典型例
優良誤認品質・性能・効果・内容根拠のない効果、専門家推奨、機能の誇張
有利誤認価格・取引条件実績のない二重価格、必須費用の除外、条件付き「無料」
ステルスマーケティング広告であることの表示広告なのに事業者の表示と判別困難

ステップ6 効果・性能表示と合理的根拠資料を確認する

不実証広告規制(景品表示法7条2項)

消費者庁は、効果・性能表示について合理的根拠資料の提出を求めることができ、提出期限は原則として求めた日から15日後です。期限内に資料を提出しない場合、または提出資料が合理的根拠と認められない場合には、措置命令との関係で当該表示は優良誤認表示とみなされます(景品表示法7条2項)。資料は、(1)客観的に実証された内容、(2)表示された効果・性能と実証内容が適切に対応していること、の2要件が必要です。行政から求められた後に試験を行えば足りるとは限らず、広告開始前に確認・保存します。体験談・専門家コメント・社内試験・生成AIの回答だけで合理的根拠になるとは限りません。

※ 表は横にスクロールできます。

表示必要な根拠不十分になりやすい資料確認事項
効果・性能客観的な試験・調査少人数の体験談条件・対象・期間の一致
利用者の成果代表性のあるデータ一部の好成績例一般化できるか
満足度適切な調査設計誘導的アンケート母集団・質問・選択肢
専門家推奨推奨の事実と範囲抽象的な肩書き表示誰が何を推奨したか
No.1客観的・最新の調査イメージ調査比較対象・調査時点
AIによる評価裏付けとなる一次資料生成AIの回答のみ出典・実証の有無

ステップ7 No.1表示・ランキング・比較広告を確認する

「No.1」「顧客満足度No.1」「医師推奨」等は、それ自体が一律に禁止されるわけでも、調査会社のレポートがあれば当然に適法になるわけでもありません。何についてのNo.1か、比較対象、調査対象者が実際の購入・利用者か、調査時期・方法、サンプル数、質問文・回答選択肢、表示対象と調査対象の一致、表示期間と調査時点の関係、調査会社の独立性、委託時の自社確認、根拠資料の保存を確認します。あわせて、調査主体・時期・対象・方法等を、表示の近接箇所やリンク先から一般消費者が確認できるようにすることも検討します(一律の形式的な法定表示義務というより、表示の意味と根拠を正確に理解できる状態を確保するための実務対応です)。消費者庁「No.1表示に関する実態調査報告書」の問題意識(利用経験のない者へのイメージ回答、比較対象を示さない「業界No.1」、誘導質問、回答数不足、古い調査の継続使用、「満足度」を「品質No.1」と表示、自社アンケートを第三者調査のように表示等)を踏まえます。

比較広告

競合他社や従来品と比較すること自体は直ちに違法ではありません。比較対象が同等か、比較条件・時点がそろっているか、有利な項目だけを選んでいないか、根拠があるか、正確・適正に引用しているか、競合を誹謗中傷していないか、商標・ロゴ等の利用権、一般消費者が比較条件を理解できるかを確認します。

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表示案順位・比較内容比較対象・調査条件根拠資料表示との対応・注記暫定評価

ステップ8 価格・割引・無料・期間限定表示を確認する

価格表示は、数字が正しいかだけでなく、一般消費者が最終的に負担する内容と表示全体の印象を確認します。販売価格・税込税抜・送料・手数料・初期費用・必須オプション・解約料・初回価格・各回価格・総支払額・自動更新後の価格・ポイント・値引き・二重価格・期間/数量限定・最安値比較を区別します。

二重価格表示

比較対照価格として、過去の販売価格・将来の販売価格・メーカー希望小売価格・市価・競争事業者の価格・自店通常価格・会員価格を区別します。「過去に一度販売した価格なら通常価格に使える」「メーカー価格表があれば希望小売価格として必ず使える」わけではありません。過去の販売価格との比較は、比較対照価格で最近相当期間にわたり販売していた実績が必要です(具体的な期間・割合は消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」の最新版を確認)。価格履歴を保存し、一時的・例外的な販売や販売実態のない希望価格・市価を通常価格扱いしないようにします。

無料・期間/数量限定

「無料」「初回無料」「0円」「実質無料」「キャッシュバックで無料」は同じではありません。何が無料か、送料・手数料等の負担、無料期間・課金開始日・解約期限・解約方法、最低利用期間、商品返送義務、自動更新、利用できる機能の範囲を確認します。「本日限り」「残り3個」「先着100名」「期間限定」は実際の期間・在庫・人数と一致させます(リセットされるカウントダウン、終了後も繰り返す、在庫があるのに「残りわずか」、通常から同価格なのに「期間限定価格」等は問題となり得ます)。

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表示項目強調表示実際の価格・条件比較対照価格・履歴追加負担暫定評価

ステップ9 打消し表示・注記・画面全体の印象を確認する

強調表示の近くに注記を付ければ当然に誤認が解消されるわけではありません。強調表示と矛盾していないか、例外・条件を適切に説明しているか、文字の大きさ・場所・距離・表示時間・音声・スクロールの要否・スマートフォンでの見え方・リンク先を開かないと分からない条件・一般消費者が理解できる表現か・重要条件が分散していないかを確認します(消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書」参照)。「必ず成果が出る」と大きく表示し末尾に小さく「個人差があります」、「無料」と大きく表示し有料条件は別ページ、「いつでも解約可能」だが実際は最低利用期間・手数料あり、動画末尾に数秒だけ条件表示、PCでは読めてもスマートフォンで極端に小さい等は、誤認を解消できない場合があります。

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強調表示打消し表示表示場所・文字・時間スマホ表示誤認解消の可否修正案

ステップ10 ステルスマーケティング・口コミ・SNS広告を確認する

2023年10月1日施行のステルスマーケティング告示(景品表示法5条3号の指定告示)は、広告であるにもかかわらず、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難な表示を規制します。次の二段階で整理します。

①事業者の表示か

事業者が投稿内容を依頼・指示したか、表現を指定したか、修正・削除権限・投稿前確認があるか、報酬や商品・割引・ポイント・招待・将来の取引機会等を提供したか、投稿者と継続的関係があるか、従業員・関係会社等の投稿か、アフィリエイト報酬があるか、表示内容の決定にどの程度関与したかを確認します。対価があれば常に事業者の表示、無償提供がなければ事業者の表示でない、と単純化しないでください。

②広告であることの明瞭性

「広告」「PR」「○○社から提供を受けて投稿」等を入れれば常に適法になるわけではありません。表示全体から広告と明瞭に判別できるか、PR表記が他のハッシュタグに埋もれていないか、意味が一般消費者に伝わるか、動画・ライブで十分な時間・方法で示されているか、冒頭・画像・音声から認識できるか、「個人的に見つけた」等の矛盾表現がないかを確認します。社員・役員・家族等が一般利用者を装う口コミはリスクがあります。「PR」と表示しても、優良誤認・有利誤認や薬機法等の違法表示が適法になるわけではありません

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投稿者・関係性対価・便益依頼・決定主体広告表示方法投稿前審査・削除権限保存資料

ステップ11 広告代理店・アフィリエイター等を管理する

代理店・インフルエンサー・アフィリエイターへ委託しても、広告主の管理が不要になるわけではありません。一方で、外部者が独自に行った表示すべてについて広告主が常に表示主体になるとも限らず、表示内容の決定への関与を実態に応じて確認します。契約・運用では、使用可能な表示と禁止表現、効果・No.1・比較表示の事前承認、価格・キャンペーン情報の更新、PR・広告表記、薬機法等の業法、投稿前審査、再委託・掲載先の把握、投稿・画面の保存、不適切表示の修正・削除、行政照会への協力、違反時報告、契約終了後の削除、定期監査を定めます。「法令を遵守する」と契約に書くだけでは管理は完了しません

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委託先・業務掲載媒体・再委託事前審査広告表記・根拠共有定期確認・削除権限問題発生時の対応

ステップ12 勧誘・メール・ダークパターンを確認する

消費者契約法上の勧誘

新規事業の販売現場では、重要事項について事実と異なる説明(不実告知)、不確実な事項の断定的判断の提供、不利益事実の故意・重過失による不告知、不安をあおる、経験不足等につけ込む、退去意思に反する勧誘継続・退去妨害、過量契約、解約・返金の誤った説明、広告と営業説明の相違等に注意します。メリットを強調しつつ自動更新・違約金等の不利益となる重要事実を告げない画面設計も、不利益事実の不告知(消費者契約法4条2項)に当たり得ます。これらは消費者契約法上の取消し等の対象となり得ます(要件は消費者庁の逐条解説で確認)。「不適切な勧誘ならすべて契約が無効」ではなく、取消し・無効・行政規制を区別します。

電子メール・SMS広告とダークパターン

広告・宣伝メールは、特定電子メール法のオプトイン規制により原則として事前同意が必要で、同意記録、送信者情報、広告である旨の表示、受信拒否(オプトアウト)方法とその後の送信停止、既存顧客等の例外、配信委託先の管理を確認します(通信販売の電子メール広告は特定商取引法も適用)。また「ダークパターン」は日本法上の単独の違法類型ではありませんが、有料申込みを無料登録のように見せる、解約ボタンを見つけにくくする、不必要に契約を急がせる、存在しない在庫僅少・閲覧人数を表示する、オプションをあらかじめ選択済みにする、確認画面を経ずに確定させる等の設計は、特商法・景品表示法・消費者契約法・電子消費者契約法等との関係で問題となり得ます。

ステップ13 景品・キャンペーン・プレゼント企画を確認する

まず景品表示法上の「景品類」に該当するかを確認します。「プレゼント」「ポイント」「キャッシュバック」「特典」と呼ぶかではなく、取引に付随して提供する経済上の利益か、正常な商慣習に照らして値引き・アフターサービス等と評価できるかで判断し、一般懸賞・共同懸賞・総付景品・オープン懸賞・値引き・ポイント・紹介やレビュー投稿の特典等を区別します。「無料で配れば対象外」「SNSキャンペーンはすべてオープン懸賞」「ポイントはすべて値引き」ではありません

※ 表は横にスクロールできます。

類型判定景品類の最高額総額
一般懸賞取引付随・抽選等取引価額5,000円未満は取引価額の20倍/5,000円以上は10万円売上予定総額の2%
共同懸賞複数事業者が共同取引価額にかかわらず30万円売上予定総額の3%
総付景品取引付随・もれなく提供取引価額1,000円未満は200円/1,000円以上は取引価額の10分の2定めなし
オープン懸賞取引付随性なし景品表示法の金額規制なし

金額だけでなく、取引価額の算定、景品類の価額評価、売上予定総額、当選者数、懸賞期間、複数キャンペーンの併用、抽選か先着か、購入条件の有無、SNS・レビュー投稿が取引に付随するか、ポイントが値引きか景品類か、オープン懸賞に購入・来店条件が付いていないか、業種別告示の有無も確認します。友人紹介で紹介者へ渡すインセンティブも、取引に付随する場合は総付景品等の限度額に服し得ます。紹介者がSNS等で投稿する場合は、対価を得た事業者の表示としてステルスマーケティング規制の対象にもなり得ます。数値は2026年6月時点の消費者庁の告示・運用基準・Q&Aで確認してください。

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企画名参加・購入条件提供物景品類該当性・価額取引価額・最高額総額法務確認

ステップ14 業種別広告規制を確認する

景品表示法・特定商取引法だけを確認すれば足りるわけではありません。商品・サービスにより、医薬品・医療機器・化粧品(医薬品医療機器等法)、健康食品・食品(健康増進法・食品表示法等)、金融・投資(金融商品取引法等)、貸金・クレジット(貸金業法・割賦販売法等)、不動産(宅地建物取引業法・表示規約等)、求人(職業安定法等)、旅行(旅行業法等)、通信(電気通信事業法等)、美容・エステ(医療広告規制等)、環境表示、酒類・たばこ等の個別法令・自主基準が問題となり得ます。広告審査の前に、商品類型・許認可・所管官庁を確認します。許認可・業法の詳細は第2話第3話で扱います。

ステップ15 広告審査・根拠資料・公開後監視の体制を作る

広告審査を法務担当者一人の目視に依存させないでください。

商品・条件の確定 → 表示案作成 → 根拠資料登録
事業部・専門部署確認 → 法務・コンプライアンス審査
画面・媒体別確認 → 承認・公開 → 公開画面保存
定期監視・苦情確認 → 修正・停止・再審査

役割分担は、商品担当(事実・仕様)、マーケティング(表示案・媒体)、営業(顧客説明との整合)、法務(法令・表示全体)、品質・専門部署(効果・性能の根拠)、経理・決済(価格・課金・返金)、サポート(解約・苦情)、情報システム(最終確認画面・ログ)、経営者(高リスク表示の承認)で整理します。

表示等の管理上の措置(管理措置指針)

景品表示法上、事業者には表示等を適正に管理する体制整備等が求められます。消費者庁「表示等の管理上の措置についての指針」を踏まえ、法の考え方の周知・遵守方針の明確化・根拠情報の確認・情報共有・管理担当者の設置・根拠資料の保管・問題発生時の迅速な是正・委託先との情報共有・公開後の監視・苦情や行政照会への対応を整えます。広告案・修正履歴・承認者と承認日・公開日と媒体・公開画面のスクリーンショットや動画・根拠資料・試験条件・価格履歴・調査票・依頼内容・最終確認画面・規約や特商法表示の版・停止修正記録・苦情や行政対応記録を保存します。

※ 自社記入用。表は横にスクロールできます。

広告ID・商品媒体・主な表示根拠資料審査担当・承認日公開期間・使用期限公開後確認・修正停止

販売・広告のGO・条件付きGO・HOLD・NO-GO

※ 表は横にスクロールできます。

区分状態の目安
GO販売主体・取引類型・対象顧客が確定し、表示と商品・価格・契約条件が一致。表示事項・最終確認画面が整い、効果・No.1・価格に根拠があり、委託先管理・景品規制・記録も整っている
条件付きGO注記・価格表示・最終確認画面の修正、根拠資料の追加確認、PR表記の明確化、委託先契約・投稿ルールの修正、景品条件・解約表示の改善を公開前条件として開始できる
HOLD商品・性能・価格・契約条件が未確定、No.1・効果の根拠不足、定期購入の総額・解約条件が未表示、委託先の投稿を把握できない、景品該当性・限度額を判定できない、個別業法が未確認
NO-GO虚偽・根拠のない表示を修正しない、実績のない価格を通常価格として表示し続ける、有料・自動課金を無料登録のように表示する、広告を意図的に隠す、法定表示・最終確認画面を実装しない、景品上限超過を是正しない、業法上禁止の広告を行う

具体例で見る販売・広告の確認

想定ケース(暫定評価)

美容・健康管理を支援する月額制アプリ(個人向けBtoC)を新規提供。30日間無料トライアル後に月額課金、年間プランあり。「利用者満足度No.1」「専門家推奨」「最短2週間で変化を実感」「今だけ50%OFF」「いつでも解約可能」「初月無料」を掲げ、SNS・動画・検索広告を実施。インフルエンサーへ無償利用権と報酬、利用者へレビュー投稿でポイント、友人紹介で抽選プレゼント。広告は代理店へ委託。最終確認画面は初回価格のみを大きく表示し、解約は複数操作が必要。効果の根拠は少人数アンケートと社内集計のみ、No.1調査は委託先に対象者・質問文を自社で未確認。「通常価格」は開始時から比較対照に表示、動画の注記は最後に数秒、業種別規制の該当性は未確認。

※ 表は横にスクロールできます。

論点現時点の評価追加確認開始条件
取引類型・特商法表示条件付きGO通信販売の表示事項表示事項の整備
無料トライアル・定期購入・自動課金HOLD課金開始・解約期限・総額・更新申込前表示・通知
最終確認画面HOLD総額・各回・解約の表示確認画面の改修
効果表示HOLD合理的根拠資料根拠取得・表示調整
No.1・専門家推奨表示HOLD対象者・質問・推奨の事実と範囲調査確認・条件併記
二重価格・50%OFF・期間限定HOLD通常価格の販売実績・期間の一致価格履歴で裏付け
「いつでも解約可能」HOLD最低期間・手数料条件の明示・導線改善
打消し表示HOLD注記の場所・時間誤認解消できる表示
インフルエンサー広告HOLD関与・PR明瞭性広告表記・審査
レビュー特典・友人紹介HOLD事業者関与・懸賞類型・限度額表示と景品設計の確定
代理店管理条件付きGO事前審査・削除権限契約・運用ルール
業種別広告規制HOLD健康・医療表示等該当業法の確認
根拠資料・審査記録HOLD保存・承認の有無台帳・保存体制

根拠・画面・条件が未確定の論点が多く、現状で安易にGOとはできません。効果・No.1・二重価格・解約表示は根拠取得と表示修正、最終確認画面と解約導線は改修、インフルエンサーと景品は関与と限度額の整理が前提です。これらを整えれば多くは条件付きGOへ移せます。

新規事業の販売・広告でよくある失敗

※ 表は横にスクロールできます。

失敗なぜ問題か改善方法
広告文だけを確認し、商品・価格・契約条件を確認しない/条件変更後も旧広告を使う表示と実際の取引が食い違い、優良誤認・有利誤認となり得る事実・条件を確定し、変更時に表示も更新する
根拠資料を広告開始後に集める/No.1調査を調査会社へ丸投げする不実証広告規制で15日以内に合理的根拠を示せない、調査が表示に対応しない開始前に根拠と調査条件を確認・保存する
注記を書けば強調表示の誤認が解消されると考える小さい・離れた・短時間の注記では誤認を解消できない場合がある全体の印象で誤認が残らないか確認する
初回価格だけを強調し、実績のない通常価格や繰り返す期間限定を使う有利誤認・二重価格となり得て、常時実施なら「期間限定」は実態と異なる総額・各回価格を表示し価格履歴で裏付け、期間は実態と一致させる
PR表記だけでステマと優良誤認の両方を解決できると考える明瞭性の問題と表示内容の問題は別である広告の明瞭性と表示の根拠を別々に確認する
代理店・インフルエンサーへ任せきる/レビュー特典を隠す広告主の関与があれば自社の表示として問題となり得る事前審査・広告表記・関与の管理を行う
景品と値引き・ポイントを区別しない景品類該当性・限度額の判定を誤る類型を判定し最高額・総額を確認する
最終確認画面とLP・規約が一致しない/解約を著しく困難にする特商法上の表示義務違反や消費者トラブルになる6文書を照合し、解約導線を分かりやすくする
公開後の画面・根拠・承認記録を残さない表示の根拠や承認を後から立証できない公開画面・根拠・承認を保存し公開後も監視する

経営者へ提出する販売・広告サマリー

※ 表は横にスクロールできます。

項目記載内容
販売主体・対象顧客・取引類型誰が誰に何をどの方法で販売するか
主要表示・価格・自動課金高リスク表示、定期購入・無料・課金条件
効果・No.1・推薦の根拠不足している根拠と取得コスト
SNS・インフルエンサー・景品関与・PR明瞭性、景品該当性と限度額
個別業法・最終確認画面・解約導線該当業法、表示・導線の整備状況
行政・返金・信用リスク/開始条件措置命令・課徴金・確約手続等のリスクと、修正すれば開始できる条件
未確定事項・残存リスク・経営判断表示を弱めるか根拠を取るか、価格・条件変更か延期か、どのリスクを受容するか

関連ツール(無料)

法令・ガイドラインの更新を継続確認する

景品表示法・特定商取引法・消費者契約法やガイドライン・執行実務は改正・更新されます。「LegalOS 法改正アラート」は、開始後も法令・ガイドライン・行政処分等の更新を継続確認し、初動確認や見落とし防止に使える無料ツールです。広告や販売方法の適法性を自動判定するものでも、法案の成立・公布・施行を保証するものでもありません。最終判断は消費者庁等の公式情報で確認してください。

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新規事業の販売・広告チェックリスト

販売構造・表示

  • 販売主体・対象顧客・申込方法・取引類型を確定した
  • 広告・LP・SNS・営業資料・申込画面等を棚卸しした

特商法・申込画面

  • 法定表示事項・返品・解約・定期購入条件を確認した
  • 最終確認画面・確認メール・規約・特商法表示を一致させた

表示・根拠

  • 効果・性能・No.1・推薦・比較表示の根拠を広告開始前に確認した
  • 価格・割引・無料・期間限定表示と価格履歴・実際の条件を確認した

SNS・委託先

  • インフルエンサー・社員・口コミ・アフィリエイトの関与と広告表示を確認した
  • 代理店・委託先の事前審査・修正・削除・記録ルールを定めた

景品・個別業法

  • キャンペーンの景品類該当性・類型・最高額・総額を確認した
  • 商品・サービス固有の業法・ガイドライン・自主規制を確認した

体制・記録・公開後管理

  • 表示管理責任者・審査フロー・承認権限を定めた
  • 広告案・根拠・価格履歴・同意画面・公開画面・修正履歴を保存し、公開後も監視する

関連プロンプト集

法務AIプロンプト集100選

広告審査の質問事項の整理、広告文からの事実主張・条件・比較表現の抽出、根拠資料と表示の対応確認、LP・最終確認画面・規約の不一致候補の抽出、No.1・価格・ステマ・景品企画の論点整理、委託先への確認事項、経営者向け報告書の原案作成などに使えます。AIが広告の適法性や、優良誤認・有利誤認、合理的根拠の十分性、No.1調査の妥当性、景品類該当性・限度額、特商法・業法の適用を最終判断するものではなく、弁護士・専門部署の確認に代わるものでもありません。

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まとめ

  • 販売・広告法務は、商品・価格・販売方法・申込画面・運用を一体で確認する
  • 特商法・景品表示法・消費者契約法・個別業法を区別する
  • 効果・性能・No.1・価格表示は広告開始前に根拠を確認する
  • ステマ・口コミ・インフルエンサー広告は、事業者の関与と広告の明瞭性を確認する
  • 景品・キャンペーンは景品類該当性と限度額を確認する
  • 審査・根拠・承認・公開画面を記録し、公開後も監視する

販売・広告法務は、売れる表現を禁止する作業ではなく、一般消費者が商品・価格・契約条件を正しく理解できる状態を作り、根拠のある訴求を継続できる仕組みにする作業です。次回の第12話では、決済・ポイント・前払金(資金決済規制)を扱います。

よくある質問(FAQ)

広告の内容が事実なら、景品表示法上問題になりませんか

事実であっても、表示全体の印象・比較条件・重要条件の不表示によって優良誤認・有利誤認となり得ます。個々の数字が正しいかだけでなく、一般消費者が受ける印象と実際の取引内容が一致しているかを確認します。

広告に小さく注記を書けば、強い表現を使えますか

注記だけで誤認が常に解消されるわけではありません。強調表示と矛盾していないか、文字の大きさ・場所・表示時間・スマートフォンでの見え方等を含め、全体として誤認が残らないかで判断されます。

調査会社のNo.1調査結果があれば、そのまま表示できますか

委託すれば自社の確認が不要になるわけではありません。比較対象、調査対象者が実際の利用者か、質問・選択肢、調査時期、表示との対応等を確認します。対応しない調査や、利用経験のない者のイメージ調査を品質・満足度1位のように示す表示は優良誤認となり得ます。

「通常価格」「今だけ半額」はどのような場合に問題になりますか

通常価格で最近相当期間にわたり販売した実績がないと、二重価格として有利誤認になり得ます。販売実態のない希望価格・市価の利用や、常時同価格なのに「半額」と示す表示も問題です。価格履歴を保存して裏付けます。

インフルエンサーが自分の言葉で投稿すれば、PR表示は不要ですか

事業者の依頼・指示や対価等があり「事業者の表示」といえる場合は、広告であることを明瞭に示す必要があります。自分の言葉でも事業者の関与があれば不要にはならず、表示全体から広告と判別できるかで判断します。

通信販売には、どのような表示や最終確認画面が必要ですか

広告では価格・送料・支払時期・引渡時期・返品特約・事業者情報等を、最終確認画面では分量・総額・各回価格・解約・自動更新等を申込み直前に確認できるようにします。特商法表示ページへのリンクだけで足りるとは限らず、各画面を一致させる必要があります。

購入者へのプレゼントやポイントは、すべて景品規制の対象ですか

すべてが対象ではありません。値引きやアフターサービス等と評価できるものは景品類に当たらず、取引付随性のないオープン懸賞には金額規制がありません。取引に付随する景品類は類型ごとの最高額・総額を確認します。

本記事は、2026年6月17日時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別事案に対する法的助言ではありません。広告・表示の適法性は、商品・対象者・媒体・表示全体・根拠資料・販売方法・契約条件等により異なり、特定商取引法の適用取引類型は勧誘・申込み・契約の実態により異なります。優良誤認・有利誤認、合理的根拠、No.1表示、打消し表示、ステルスマーケティング該当性は個別の判断であり、景品類該当性・取引価額・景品類の価額・最高額・総額は企画ごとに異なります。商品・サービスによっては個別業法・自主規制が適用され、海外向け広告は対象国法の確認が必要です。GO・条件付きGO・HOLD・NO-GOは社内整理用の区分で法令上の分類ではなく、具体例は前提事実が未確定の暫定評価です。実際の販売・広告にあたっては、最新の法令・告示・ガイドライン・公式資料を確認し、必要に応じて弁護士・専門部署等にご相談ください。

読了後の実務化ガイド

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