個人情報保護法・企業法務

個人情報はどこまで共有できるか|委託・共同利用・第三者提供の実務結論

「取引先に顧客情報を渡してよいか」「グループ会社なら共有できるか」 「海外クラウドに保存すると外国第三者提供になるのか」。 個人データ共有の実務を、委託・共同利用・第三者提供・外国第三者提供の順に整理します。

基準日:2026年8月19日 現行法+令和8年改正法対応
令和8年改正法の現在のステータス

2026年7月10日に 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」 が成立し、同年7月17日に公布されました。

もっとも、2026年8月19日時点では主要な改正規定はまだ施行されていません。 現在は、個人情報保護委員会が政令・委員会規則・ガイドライン等の施行準備を進めている段階です。

したがって、本記事では、 現在適用されている義務を「現行ルール」、 令和8年改正法によって今後変更される事項を 「改正法施行後」 と明示して区別します。

政令・規則・ガイドラインに委任され、2026年8月19日時点で未確定の事項については、 推測で要件を断定しません。

会社で個人情報を扱っていると、次のような相談が繰り返し発生します。

  • この顧客情報を取引先に渡してよいのか
  • 業務委託先に渡す場合も本人同意が必要なのか
  • グループ会社であれば自由に共有できるのか
  • クラウドサービスの利用は「委託」なのか
  • 海外サーバに保存すると外国第三者提供になるのか
  • 海外の再委託先まで確認する必要があるのか

この問題で重要なのは、 外部に個人データを渡す行為をすべて「第三者提供」と考えないこと です。

個人情報保護法上は、少なくとも 委託、事業承継、共同利用、第三者提供 を区別する必要があります。 さらに、相手方が外国にある場合には、 法28条の外国第三者提供規律 を別途検討しなければならない場合があります。

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1.最初に結論|「誰に渡すか」より「何のために、どの立場で扱わせるか」

個人データを他者に共有できるかを判断するとき、 相手の会社名や「グループ会社かどうか」だけを見ても結論は出ません。

実務では、次の順序で検討すると整理しやすくなります。

対象情報が「個人情報」「個人データ」等のどれに該当するかを確認する
その取扱いが特定済みの利用目的の範囲内かを確認する
同一法人内部の利用か、別法人への提供かを確認する
別法人の場合、法27条5項の「委託」「事業承継」「共同利用」に該当するか確認する
いずれにも該当しなければ、第三者提供として法27条1項・2項を検討する
相手方が外国にある場合、法28条の外国第三者提供規律を追加で確認する
提供・受領記録、安全管理措置、委託先監督、再委託等の付随義務を確認する
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法的分類が曖昧な案件では、最初から 「委託として扱えば安全」 「共同利用ということにしておけばよい」 と結論付けることは推奨しません。

利用目的、契約上の権限、実際のデータアクセス、独自利用の可否、 再委託、国外アクセスまで確認したうえで法的分類を行うべきです。

これは社内リスク管理上の推奨であり、 判断が曖昧な案件が法律上当然に「委託」と評価されるという意味ではありません。

2.「個人情報」と「個人データ」は同じではない

共有規制を検討するときは、まず個人情報保護法上の情報区分を確認します。

区分 概要 実務上のポイント
個人情報 生存する個人に関する情報で、氏名等により特定の個人を識別できるもの等 利用目的規制等の対象となる
個人データ 個人情報データベース等を構成する個人情報 第三者提供、外国第三者提供、委託先監督等で特に重要
保有個人データ 個人情報取扱事業者が開示、訂正、利用停止等を行う権限を有する個人データ 公表事項、開示等の規律が加わる
要配慮個人情報 人種、信条、病歴等、特に慎重な取扱いを要する情報 取得・提供についてより慎重な確認が必要

例えば、名刺そのものも個人情報になり得ますが、 第三者提供規制の中心となる「個人データ」に当たるかは、 検索可能な形で個人情報データベース等を構成しているかなどを別途確認します。

3.利用目的を最初に確認する

個人情報を取得した後は、原則として、 あらかじめ特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うことはできません。 現行法18条1項が基本です。

もっとも、 「利用目的を超えたら必ず違法」 とまで単純化するのも正確ではありません。 現行法18条3項には、例えば次のような例外があります。

  • 法令に基づく場合
  • 人の生命、身体または財産の保護のために必要な場合
  • 公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のため特に必要な場合
  • 国の機関等の法令上の事務への協力が必要な場合
実務上の確認順序
  1. 当初の利用目的の範囲内か
  2. 範囲外であれば本人同意を取得できるか
  3. 法18条3項の例外に該当するか
注意

「第三者提供として適法か」と 「利用目的の範囲内か」は別の問題です。

例えば、法27条5項1号の委託に該当するとしても、 委託元自身の取扱いが利用目的規制に反してよいわけではありません。

4.委託|法27条5項1号

4-1.委託とは何か

現行法27条5項1号は、 利用目的の達成に必要な範囲内で 個人データの取扱いの全部または一部を委託することに伴って個人データが提供される場合、 その提供先を同条の「第三者」に該当しないものとして扱っています。

契約書の表題が「業務委託契約」であるかどうかだけでは決まりません。

個人情報保護委員会のガイドライン上も、 データ入力、編集、分析、出力等を他者に行わせることなど、 実質的に個人データの取扱いを他者に委ねているか が問題になります。

典型的な委託例
  • 給与計算を給与計算会社に委託する
  • 顧客へのDM発送を発送会社に委託する
  • コールセンター業務を外部事業者に委託する
  • システム運用会社に顧客データの処理を行わせる
  • SaaS事業者に個人データを取り扱わせる

一方、委託先が提供されたデータを、 自社の商品開発、独自マーケティング、独自営業等に利用できる場合、 その利用部分まで当然に法27条5項1号の「委託」に含まれるわけではありません。

委託業務に必要な範囲を超えた独自利用については、 第三者提供その他の法的根拠を別途検討する必要があります。

根拠:個人情報保護法27条5項1号、PPC通則編3-6-3等

4-2.委託なら第三者提供同意は原則不要。ただし委託先監督が必要

法27条5項1号の要件を満たす委託であれば、 その提供について法27条1項の第三者提供同意を取得する必要はありません。

その代わり、委託元には 法25条による委託先監督義務 があります。

個人情報保護委員会ガイドラインは、 委託元に対し、委託先において法23条に基づき自らが講ずべき安全管理措置と 同等の安全管理措置が講じられるよう、 必要かつ適切な監督を行うことを求めています。

法的義務とLegalGPT実務推奨を分ける

法25条そのものが、 すべての委託契約について 「監査条項」 「再委託事前承認条項」 といった特定の契約文言を一律に要求しているわけではありません。

一方、PPCガイドラインは、 安全管理措置の契約への盛込み、 取扱状況の把握、 定期的監査等を具体的な監督方法として示しています。

LegalGPTでは、個人データの重要度、取扱量、委託内容に応じ、 これらを契約条項として明文化することを推奨します。

4-3.クラウド利用は「当然に委託」ではない

クラウドサービスを利用しているという事実だけで、 クラウド事業者への個人データの「提供」や「委託」が当然に成立するわけではありません。

PPC Q&A Q7-53は、 クラウドサービス事業者が個人データを「取り扱うこととなっているか」 を基準に判断する考え方を示しています。

「提供」「委託」に当たらない場合がある例
  • 契約上、クラウド事業者が保存された個人データを取り扱わないこととなっている
  • 適切なアクセス制御が行われ、クラウド事業者が個人データを取り扱うことができない

このような場合、 単にクラウド上のサーバにデータが保存されるという理由だけで、 クラウド事業者への個人データの「提供」や法27条5項1号の「委託」に当たるとは限りません。

逆に、クラウド事業者が、 保守、サポート、分析、バックアップ復旧、データ処理等のために個人データへアクセスし、 これを取り扱うこととなっている場合には、 実態に応じて委託その他の法的整理を行う必要があります。

LegalGPT実務推奨

クラウド事業者によるアクセス可能性が明確でない場合には、 「クラウドだから委託」と決めつけるのではなく、 次の資料を確認します。

  • 利用規約
  • DPA
  • サービス仕様書
  • サポート時のアクセス権限
  • 管理者権限
  • 障害・復旧時のアクセス
  • 再委託先・サブプロセッサー

事実関係が確認できるまでの社内リスク管理として、 委託先に準じたデューデリジェンスを実施することは合理的です。

根拠:PPC Q&A Q7-53

5.共同利用|法27条5項3号

5-1.共同利用は一定の要件の下で「第三者に該当しない」仕組み

複数の会社が同じ目的のために個人データを共同して利用する場合、 法27条5項3号の要件を満たせば、 共同利用者は同条の「第三者」に該当しないものとして扱われます。

典型例は、企業グループ内で顧客情報や従業員情報を 一定の共通目的で利用する場合です。

よくある誤解

「同じ企業グループだから自由に共有できる」というルールはありません。

法人格が別である以上、 共同利用、委託、第三者提供その他のどの法的整理に基づくかを確認する必要があります。

5-2.共同利用で通知・容易に知り得る状態に置く事項

現行法上、共同利用を行うためには、次の事項を 本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置く必要があります。

  1. 共同利用する旨
  2. 共同利用される個人データの項目
  3. 共同利用する者の範囲
  4. 共同利用する者の利用目的
  5. 共同利用する個人データの管理について責任を有する者に関する所定事項
「グループ会社各社」という書き方にも注意

「当社グループ各社」などの記載についても、 本人から見て共同利用者の範囲を客観的に把握できる状態となっているかを確認します。

また、既に取得済みの個人データについて後から共同利用を開始する場合には、 当初の利用目的との関係も別途検討する必要があります。

5-3.共同利用の要件を欠いた場合

共同利用の必要事項を欠いている場合、 法27条5項3号によって 「第三者に該当しない」 と整理することはできません。

もっとも、それだけで直ちに 「本人同意がなければ違法」 と結論付けるのも正確ではありません。

改めて検討する法的ルート
  • 委託に該当しないか
  • 事業承継に該当しないか
  • 法27条1項各号の例外に該当しないか
  • 法27条2項以下のオプトアウト制度を適法に利用できる場面か

根拠:個人情報保護法27条5項3号、PPC通則編3-6-3等

6.第三者提供|法27条

6-1.現行ルール

委託、事業承継、共同利用等に該当せず、 別の法人等へ個人データを提供する場合は、 原則として法27条1項の第三者提供規制を検討します。

ただし、法27条1項各号には、 法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護、 公衆衛生・児童の健全育成、 国等への協力、 一定の学術研究等について例外が定められています。

また、法27条2項以下には、所定の要件を満たす オプトアウト制度 があります。

「委託でも共同利用でもない=必ず本人同意」ではない

正確には、 法27条上の第三者提供として、どの法的根拠を利用できるか を検討します。

6-2.提供記録・受領記録

第三者提供を行う場合には法29条、 第三者から個人データの提供を受ける場合には法30条により、 一定の場合に記録・確認義務が生じます。

「第三者提供記録は一律3年」は不正確

保存期間は一律3年間ではありません。

個人情報保護法施行規則上、 記録の作成方法等に応じて1年間または3年間 に分かれます。

また、 本人同意を取得した第三者提供だからという理由だけで、 当然に提供記録・受領記録が不要になるわけでもありません。

利用している提供根拠、提供態様、記録の作成方法を確認する必要があります。

一方、法27条5項によって第三者に該当しない 委託、事業承継、共同利用については、 通常の第三者提供としての法29条・30条とは別に整理されます。

根拠:個人情報保護法29条・30条、施行規則、PPC「第三者提供時の確認・記録義務編」

6-3.令和8年改正法によって第三者提供はどう変わるか

以下は2026年8月19日時点では現行義務ではありません

令和8年改正法では、 一定の契約履行等に伴う第三者提供について、 新たな例外規定が設けられます。

また、一定の統計作成等を目的とする第三者提供についても、 本人同意によらない新たな制度が設けられます。

さらに、オプトアウトによる第三者提供について、 提供先の氏名・名称等や利用目的について一定の確認を求める規律が追加されます。

施行前に断定してはいけないこと

現時点で、 「契約履行のためなら同意なしで自由に提供できる」 「統計目的なら自由に第三者提供できる」 と理解するのは誤りです。

詳細な対象範囲、要件、公表事項、確認方法等については、 政令・PPC規則・ガイドラインによる具体化を待つ必要があります。

7.外国にある第三者への提供|法28条

7-1.外国委託でも法28条を別途確認する

国内の委託先への個人データ提供であれば、 法27条5項1号の要件を満たす限り、 法27条上の第三者提供には当たりません。

しかし、委託先が 「外国にある第三者」 に該当する場合には事情が異なります。

外国委託の重要ポイント

PPC Q&A Q12-1が示すとおり、 外国にある事業者への委託であっても、 法28条の外国第三者提供規律を別途検討する必要があります。

ケース 法28条上の基本整理
外国事業者へ個人データを提供し、法定の例外等に当たらない 原則として本人同意を取得し、法28条2項所定の情報を事前提供
我が国と同等の水準にあるとPPC規則で認められた国・地域にある第三者 法28条上の外国第三者特則の対象外となり、国内提供と同様に法27条等を検討
受領者が規則所定の基準に適合する体制を整備している 法28条1項の本人同意によらない提供が可能となり得る。ただし法28条3項対応が必要
法27条1項各号の例外に該当する 法28条1項の外国第三者提供同意は不要
同等水準国・地域

2026年8月19日時点で、 個人情報保護委員会が同等水準国・地域として定めているものは、 EU及び英国 です。

根拠:個人情報保護法28条、PPC「外国にある第三者への提供編」、PPC Q&A Q12-1

7-2.本人同意ルートでは事前情報提供が必要

法28条1項の本人同意を根拠として外国にある第三者へ個人データを提供する場合、 同意取得に先立ち、 法28条2項および施行規則に基づく所定の情報提供が必要です。

本人同意ルートと基準適合体制ルートを混同しない

「外国の名称・外国制度・相手方の措置」の事前情報提供は、 主として本人同意ルートについて法28条2項が要求するものです。

基準適合体制ルートの義務内容とは区別して整理してください。

7-3.基準適合体制ルートでは継続的な相当措置確保が必要

外国の第三者との間で、 個人データの取扱いについて 日本の個人情報取扱事業者が講ずべき措置に相当する措置が 継続的に実施されることを確保できる体制が整備されている場合、 法28条1項の本人同意によらず提供できる場合があります。

この体制は、例えば、

  • 契約
  • 確認書
  • 覚書
  • グループ内規程
  • 一定の認証制度

などによって相当措置の実施が確保されているかが問題になります。

「SCC=日本法28条対応」ではない

日本の個人情報保護法28条上の基準適合体制を説明する際に、 一律に 「SCCを締結すればよい」 と表現するのは正確ではありません。

EU GDPRその他の外国法上SCCが必要となる場合は別として、 日本法上は、 個人情報保護委員会規則が定める基準に適合する体制を確保しているか が判断基準です。

7-4.海外クラウドはサーバ所在地だけで判断しない

誤りやすい理解

「データが海外サーバに保存される=必ず外国第三者提供」 という理解は正確ではありません。

まず、 クラウド事業者が個人データを取り扱うこととなっているか を確認します。

状況 基本的な整理
自社が海外に設置されたサーバを自ら管理し、外国第三者へ個人データを提供しない サーバ所在地だけを理由として法28条の外国第三者提供になるわけではない
外国クラウド事業者が契約上個人データを取り扱わず、適切なアクセス制御により取り扱えない クラウド事業者への「提供」自体がないと整理できる場合がある
外国クラウド事業者が保守・処理等のため個人データを取り扱う 委託等の基礎的整理に加え、法28条を検討

ただし、法28条上の「提供」に当たらない場合でも、 外国において個人データを取り扱う場合には、 法23条の安全管理措置との関係で、 当該外国の個人情報保護制度等を把握したうえで安全管理措置を講ずる必要がある場合 があります。

また、保有個人データに関する公表事項等についても、 外国で個人データを取り扱う場合の安全管理措置に関する情報提供が問題となる場合があります。

根拠:PPC Q&A Q7-53、Q10-24、Q10-25、Q12-3等

8.再委託|国内再委託と外国再委託を分けて考える

8-1.国内再委託

委託先がさらに別の事業者へ個人データの取扱いを委託する場合、 委託元は再委託の状況を含め、 法25条上の必要かつ適切な監督を行う必要があります。

PPCガイドラインでは、 再委託先の選定や取扱状況を把握するため、 事前の報告または承認を求めることや、 監査等を行うことが望ましいとされています。

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次のような高リスク案件では、 再委託について契約上の 事前書面承認 を要求する設計を推奨します。

  • 要配慮個人情報等を含む場合
  • 大量の顧客データを取り扱う場合
  • 基幹システム・クラウド・SaaS
  • 外国再委託が想定される場合

ただし、これは すべての再委託について法律が一律に事前承認を要求している という意味ではありません。

8-2.外国への再委託

国内の直接委託先が、 さらに外国にある事業者へ個人データの取扱いを再委託する場合、 直接委託先において 法28条の外国第三者提供規律 が問題となることがあります。

例えば、基準適合体制を根拠として外国再委託を行う場合には、 法28条3項の相当措置の継続的確保等について、 直接委託先が義務主体となる場面があります。

また、外国の再委託先が個人データを取り扱う場合、 委託元の安全管理措置の観点からも、 当該外国の個人情報保護制度等の把握が問題になります。

8-3.事故時の責任は「すべて委託元だけ」とは限らない

再委託先で漏えい等が発生した場合、 委託元は自らの法25条上の監督が適切であったかについて 責任を問われる可能性があります。

しかし、 「事故が再委託先で起きても法律上の責任はすべて最初の委託元だけが負う」 と一般化するのは正確ではありません。

委託先・再委託先自身が個人情報取扱事業者として 個人情報保護法上の義務を負う場合には、 それぞれについて、

  • 安全管理措置
  • 漏えい等報告
  • 本人通知
  • その他の個人情報保護法上の義務

が問題となります。 契約上の補償・責任分担も、法令上の義務とは分けて検討します。

8-4.令和8年改正法による委託先規律の変更

改正法施行後:受託者への直接規律

令和8年改正法では、 個人情報の取扱いの全部または一部について委託を受けた個人情報取扱事業者について、 委託された業務に必要な範囲を超えて 当該個人情報を取り扱うことを禁止する直接的な規律 が新設されます。

これにより、 従来の委託元による法25条上の監督に加え、 受託者自身に対して委託範囲を超えた取扱いを制限する規律がより明確になります。

改正法施行後:一定の受託者に対する適用特例

改正法では、 委託契約において個人情報の処理方法等を一定程度具体的に定め、 受託者がその契約に従って必要な範囲内で取り扱う一定のケースについて、 個人情報取扱事業者に通常適用される規律の一部について 特例を設ける制度も新設されます。

ただし、 契約に定めるべき具体的な処理方法、 委託元が取扱状況を把握するための措置、 その他の詳細は 個人情報保護委員会規則等に委任 されています。

2026年8月19日時点では、 この制度を前提として具体的な契約条項や対象業務を確定的に断定することはできません。

9.場面別の実務判断

場面 まず検討する法的整理 追加確認
同一法人内の別部署で利用 通常は第三者提供ではない 利用目的、安全管理、アクセス権限
国内の給与計算会社へ従業員データを渡す 委託 法25条の委託先監督
国内グループ会社で顧客情報を利用 共同利用・委託・第三者提供等を実態で判断 共同利用なら法27条5項3号の公表等
営業目的で提携会社へ顧客リストを渡す 第三者提供 本人同意、法27条例外、オプトアウト等
海外事業者へ業務委託し個人データを扱わせる 委託+外国第三者提供規律 法28条の各ルート、法25条監督
海外サーバに自社管理で保存 サーバ所在地だけで外国第三者提供とはならない 外国制度の把握を含む安全管理措置
外国クラウドだが事業者はデータを取り扱わない 「提供」「委託」に当たらない場合がある 契約、アクセス制御、外国制度、安全管理措置
外国SaaS事業者が保守等でデータを扱う 委託等+法28条 同等水準国、基準適合体制、本人同意等
国内委託先から外国事業者へ再委託 再委託+外国第三者提供規律 直接委託先の法28条対応、元委託者の法25条監督

10.契約・社内規程では何を定めるべきか

以下はLegalGPTの契約実務上の推奨例

以下の条項例は、 個人情報保護法がその文言をそのまま要求しているという意味ではありません。

個別案件のリスク、データ種類、委託内容、外国法、 情報セキュリティ体制等に応じて調整してください。

10-1.委託契約

受託者は、委託業務の遂行に必要な範囲においてのみ個人データを取り扱い、 委託者の事前の承諾なく、自己または第三者の目的のために利用してはならない。 受託者は、個人データについて必要かつ適切な安全管理措置を講じ、 委託者から合理的な範囲で取扱状況の報告を求められた場合はこれに応じるものとする。

10-2.共同利用

当社は、法令に従い、共同利用する旨、共同利用する個人データの項目、 共同利用者の範囲、利用目的および管理責任者に関する事項を、 本人に通知し、または本人が容易に知り得る状態に置いたうえで共同利用を行う。

10-3.第三者提供

個人データを第三者に提供する場合、 本人同意その他の法令上認められた根拠を事前に確認するとともに、 法令上必要となる提供記録を作成し、所定の期間保存する。

10-4.外国第三者への提供

本人同意ルート

外国にある第三者への個人データの提供について本人同意を取得する場合、 法28条2項および関係規則に従い、 提供先の所在国、当該国の個人情報保護制度に関する情報、 提供先が講ずる個人情報保護措置に関する情報等を、 同意取得前に本人へ提供する。

基準適合体制ルート

外国にある受託者は、 日本の個人情報取扱事業者が講ずべき措置に相当する措置を継続的に実施するものとし、 委託者は、その実施状況を法令および関係ガイドラインに従って定期的に確認する。 受託者は、相当措置の実施に支障が生じた場合、 速やかに委託者へ通知し、必要な是正措置に協力する。

10-5.再委託

受託者は、個人データの取扱いを第三者に再委託しようとする場合、 あらかじめ再委託先、所在国、委託業務、取り扱うデータの内容 その他委託者が合理的に必要とする情報を提供し、 委託者の事前の書面承認を得るものとする。

この「事前書面承認」はLegalGPTの実務推奨

法25条がすべての再委託について この方式を一律に要求しているという意味ではありません。

10-6.漏えい等

受託者は、個人データの漏えい、滅失、毀損その他の事故またはそのおそれを認識した場合、 遅滞なく委託者へ報告し、 原因調査、影響範囲の特定、被害拡大防止、本人通知、 監督機関への報告その他必要な対応に協力する。

契約上の報告期限と法令上の報告期限は別

契約上「24時間以内」などの短い初動報告期限を設定することは有用ですが、 これは個人情報保護法上の漏えい等報告期限そのものとは区別して定めます。

11.よくある危険な運用

次の運用は要注意
  • グループ会社だから自由に個人データを共有できると考える
  • 契約書の名称が「業務委託契約」なので自動的に法27条5項1号の委託になると考える
  • 委託先による独自利用を認めながら、すべてを委託として処理する
  • 共同利用の必要事項を公表等しないまま「グループ共同利用」と扱う
  • 共同利用の要件を欠けば直ちに本人同意しか選択肢がないと考える
  • 外国サーバに保存されるだけで必ず外国第三者提供になると考える
  • 海外クラウドなら必ず委託になると考える
  • 外国委託について法27条5項1号だけ確認し、法28条を確認しない
  • 本人同意ルートと基準適合体制ルートを混同する
  • 日本法上の基準適合体制を一律に「SCC」と表現する
  • 第三者提供記録の保存期間を一律3年間とする
  • 外国再委託先・サブプロセッサーを把握していない
  • 再委託には法律上一律に事前承認が必須だと説明する
  • 未施行の令和8年改正法を現行義務として運用する

12.個人データ共有チェックリスト

12-1.基本確認

  • 対象情報は「個人情報」に該当するか
  • 「個人データ」に該当するか
  • 要配慮個人情報等の特別な規律がないか
  • 利用目的の範囲内か
  • 利用目的を超える場合、法18条上の根拠を確認したか

12-2.国内共有

  • 相手方は同一法人か、別法人か
  • 法27条5項1号の委託に当たるか
  • 法27条5項2号の事業承継に当たるか
  • 法27条5項3号の共同利用に当たるか
  • 共同利用の必要事項を通知・容易に知り得る状態に置いているか
  • 上記に当たらない場合、法27条1項・2項の第三者提供根拠を確認したか
  • 法29条・30条の記録・確認義務を確認したか
  • 記録の保存期間を作成方法に応じて確認したか

12-3.委託

  • 利用目的達成に必要な範囲の委託か
  • 委託先による独自利用を認めていないか
  • 委託先を適切に選定しているか
  • 安全管理措置を確認しているか
  • 委託契約に必要な管理事項を定めているか
  • 委託先の取扱状況を把握できるか
  • 再委託先を把握できる仕組みがあるか

12-4.海外・クラウド

  • 相手方が実際に個人データを取り扱うこととなっているか
  • 単なるサーバ所在地と外国第三者提供を混同していないか
  • 契約上のアクセス権限・サポート権限を確認したか
  • 外国にある第三者への「提供」に当たるか
  • EUまたは英国に所在する第三者か
  • 基準適合体制が確保されているか
  • 本人同意ルートの場合、法28条2項の事前情報提供を行ったか
  • 基準適合体制ルートの場合、法28条3項の継続的確保措置を行っているか
  • 外国の個人情報保護制度等を把握したか
  • 外国再委託先を把握しているか
  • 保有個人データに関する必要な公表・情報提供事項を確認したか

13.よくある質問

Q1.グループ会社なら個人データを自由に共有できますか?

いいえ。 法人格が別であれば、それだけで自由に共有できるわけではありません。 委託、事業承継、共同利用、本人同意による第三者提供、 法27条1項の例外、適法なオプトアウト等のいずれの根拠によるかを確認します。 外国グループ会社の場合は法28条も別途検討します。

Q2.業務委託契約を結べば本人同意は不要ですか?

契約の名称だけでは決まりません。 利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを委託する実態があり、 法27条5項1号に該当する必要があります。 委託先が独自目的で利用する部分まで当然に委託となるわけではありません。

Q3.海外クラウドに保存すると必ず外国第三者提供になりますか?

いいえ。 サーバ所在地だけでは決まりません。 クラウド事業者が個人データを取り扱うこととなっているか、 契約内容やアクセス制御等を確認します。

ただし、外国第三者提供に当たらない場合でも、 安全管理措置として外国の制度等を把握する必要がある場合があります。

Q4.海外の委託先なら、委託なので法28条は不要ですか?

いいえ。 外国にある第三者への委託については、 法27条5項1号の委託に該当する場合でも、 法28条の外国第三者提供規律を別途確認する必要があります。

Q5.共同利用の公表事項が不足していた場合は、直ちに本人同意が必要ですか?

共同利用として法27条5項3号を利用することはできなくなりますが、 それだけで本人同意しか選択肢がなくなるわけではありません。 委託、事業承継、法27条1項の例外、 適法なオプトアウト等の別の法的根拠が成立するかを検討します。

Q6.外国第三者提供では必ず「外国名・制度・相手方措置」を本人に説明しますか?

必ずしもそうではありません。 法28条1項の本人同意ルートを利用する場合には、 同条2項に基づく事前情報提供が必要です。

一方、基準適合体制ルートでは、 法28条3項の継続的な相当措置確保や 本人から求められた場合の情報提供が中心となります。

Q7.再委託には法律上、必ず委託元の事前承認が必要ですか?

一律にそのような条文があるわけではありません。 PPCガイドラインでは、 再委託について事前の報告または承認を求めること等が 望ましい監督方法として示されています。

LegalGPTでは、 高リスク案件や外国再委託について 契約上の事前書面承認を推奨しています。

Q8.第三者提供記録は必ず3年間保存ですか?

いいえ。 施行規則上、 記録の作成方法等により 1年間または3年間 に分かれます。

Q9.令和8年改正法はもう施行されていますか?

いいえ。 改正法は2026年7月10日に成立し、7月17日に公布されていますが、 2026年8月19日時点で主要な改正規定はまだ施行されていません。

現在の実務では現行法に従い、 改正法については施行日、政令、 個人情報保護委員会規則、改訂ガイドライン等を確認しながら 準備を進める段階です。

14.現行ルールと令和8年改正法施行後の違い

論点 2026年8月19日時点の現行ルール 令和8年改正法施行後
委託元 法25条により委託先の必要かつ適切な監督 基本的に維持
受託者の委託範囲外利用 現行法上の各義務、契約、委託元監督等により規律 委託業務に必要な範囲を超える取扱いを制限する受託者への直接規律を新設
一定の受託者 個人情報取扱事業者に該当すれば原則として通常の規律が適用 一定の契約・処理方法等を満たす受託者について一部規律の適用特例を新設
契約履行等に伴う第三者提供 法27条の現行根拠によって判断 一定の場合について新たな例外を追加
統計作成等のための第三者提供 現行の法27条上の根拠が必要 所定の安全措置等を条件とする新制度を追加
オプトアウト提供先確認 現行制度に従う 提供先・利用目的等の確認に関する規律を強化
外国第三者提供 法28条の現行規律 法27条の新たな例外との関係を含め、施行後の規則・ガイドラインを要確認
政令・規則・ガイドライン待ちの事項

2026年8月19日時点では、少なくとも次の事項について 確定的な実務運用を断定すべきではありません。

  • 主要改正規定の具体的施行日
  • 契約履行等に伴う新たな第三者提供例外の詳細な適用範囲
  • 統計作成等の新制度における具体的安全措置・公表事項
  • 一定の受託者に関する適用特例の具体的な契約要件
  • 委託元が受託者の取扱状況を把握するための具体的方法
  • 新たなオプトアウト提供先確認の具体的方法
  • 改正後法27条と外国第三者提供規律との詳細な実務関係
  • 改訂PPCガイドライン・Q&Aで示されるクラウド・再委託の追加解釈

15.まとめ|「共有してよいか」は法的ルートを一つずつ確認する

個人情報・個人データの共有では、

  • 社外だから第三者提供
  • グループ会社だから共同利用
  • クラウドだから委託
  • 海外サーバだから外国第三者提供

といった ラベル先行の判断をしないこと が重要です。

実務ではこの9項目を順番に確認する

  1. 情報区分
  2. 利用目的
  3. 同一法人か別法人か
  4. 委託・事業承継・共同利用の該当性
  5. 第三者提供の法的根拠
  6. 外国第三者提供の該当性と法28条上のルート
  7. 委託先・再委託先監督
  8. 安全管理措置
  9. 提供・受領記録

特に海外クラウド・海外SaaSについては、 「サーバがどこにあるか」だけではなく、 「誰が個人データを取り扱うこととなっているか」 を事実認定したうえで法的整理を行ってください。

令和8年改正法への対応

令和8年改正法は既に成立・公布されていますが、 2026年8月19日時点では主要部分は未施行です。

現在の法的判断は現行法に基づいて行い、 改正法については政令・規則・ガイドライン等が確定した後に、 次の社内文書・運用を再点検することが適切です。

  • 個人情報保護規程
  • 委託先管理規程
  • 委託契約ひな形
  • DPA
  • クラウド・SaaS審査票
  • 外国第三者提供確認票
  • 再委託承認フロー
  • 第三者提供・受領記録手続
この記事の基準日

本記事は、 2026年8月19日時点 の個人情報保護法、 個人情報保護委員会ガイドライン・Q&A、 外国第三者提供に関する公表資料、 および2026年7月17日公布の令和8年改正法を基準として整理しています。

個別案件については、 実際のデータフロー、契約関係、データ項目、所在国、 クラウド事業者のアクセス権限、 再委託関係等を確認したうえで判断してください。

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