印紙税シリーズ 第7話 企業法務・契約実務 2026年4月更新

基本契約書・取引基本契約書に印紙税はかかる?
第7号文書の要件と個別契約との関係を実務解説

初回公開:2026年4月28日|印紙税法・印紙税法施行令・国税庁通達に基づき作成

「取引基本契約書は4,000円でいいんですよね?」——そう言い切れれば楽なのですが、実務はそう単純ではありません。基本契約書というタイトルがあるだけで第7号文書になるわけではなく、また第7号文書でも印紙が不要になるケースがあります。本記事では、法務・総務・経理担当者が社内の基本契約書・取引基本契約書について印紙税を一次判断できるよう、第7号文書の要件から印紙不要ケース、個別契約書・注文請書との関係、業務委託基本契約書の扱いまで実務的に整理します。

結論まとめ(TL;DR)

  • 基本契約書=自動的に第7号文書ではない:タイトルではなく、記載内容・契約類型・当事者属性で判断する
  • 第7号文書に該当する場合の税額は一律4,000円(1通につき)
  • 期間3か月以内かつ更新条項なしなら第7号文書から除外される(ただし3要件がすべて揃う場合のみ)
  • 準委任型の業務委託基本契約書は当然に第7号文書とはいえない
  • 基本契約書への印紙貼付は、個別契約書・注文請書の印紙義務を免除しない
  • 電子契約で締結すれば原則として印紙税不要(印紙税法基本通達第44条)
  • 判断が難しい場合は税理士・所轄税務署への確認を検討する
補足: 法務部や総務部の作業は、 この無料ツールを使うと便利に処理できます (一次整理・マスキング・論点整理など)

まず結論|基本契約書は第7号文書なら一律4,000円

印紙税法別表第一第7号文書は「継続的取引の基本となる契約書」と定められており、印紙税法施行令第26条が具体的な要件を規定しています。この要件をすべて満たす基本契約書は、1通につき一律4,000円の印紙税がかかります。

ただし、次の点が実務上の重要ポイントです。

  • タイトルが「基本契約書」であっても、要件を満たさなければ第7号文書ではない
  • 準委任型の業務委託基本契約書は、「請負」に関するものではないとして印紙不要と整理できることが多い
  • 契約期間3か月以内かつ更新条項なしの場合は除外される
  • 請負に関する基本契約書で金額の記載がある場合は第2号文書(請負に関する契約書)になることがある
  • 電子契約であれば原則として印紙税は不要

第7号文書該当の場合:印紙税額 一律4,000円/1通(記載金額の大小に関わらず固定)

基本契約書・取引基本契約書とは何か

基本契約書(取引基本契約書とも呼ばれます)とは、特定の取引先との間で継続的に繰り返される取引に共通して適用されるルールをあらかじめ定めた契約書です。一般的には、次のような内容が盛り込まれます。

  • 取引の基本条件(納品条件・検収・支払方法など)
  • 品質基準・クレーム処理
  • 秘密保持
  • 損害賠償・免責
  • 契約期間・更新条件
  • 個別契約との関係(個別契約が優先か基本契約が優先か)

基本契約書は、個々の発注ごとに詳細な契約書を作成する手間を省くための「フレームワーク契約」です。実際の取引条件(数量・金額・納期など)は、別途発行される個別契約書・注文書・注文請書で定めるのが一般的です。

名称と印紙税の関係:「取引基本契約書」「売買基本契約書」「業務委託基本契約書」「基本取引合意書」など、名称は問いません。印紙税はタイトルではなく文書の内容・記載事項によって判断します(印紙税法基本通達第3条)。

第7号文書とは何か

印紙税法別表第一(課税物件表)における第7号文書は、「継続的取引の基本となる契約書」と定義されています。課税物件表では「特約店契約書、代理店契約書、銀行取引約定書その他の契約書で、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるもの」と規定されています。

「政令で定めるもの」の具体的内容は、印紙税法施行令第26条が規定しており、同条第1号が実務上最もよく問題になります。

第7号文書の大きな特徴は次の2点です。

  • 税額が一律4,000円:記載金額の大小にかかわらず、第7号文書に該当する文書は1通につき4,000円(第1号・第2号文書のように金額に応じた階段税率ではない)
  • 記載金額がない場合は第7号文書が優先:請負に関する基本契約書で契約金額の記載がなければ、第2号文書ではなく第7号文書に所属が決定される(課税物件表の適用に関する通則3のイ)

第7号文書の要件

印紙税法施行令第26条第1号に基づき、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

① 営業者間の契約であること

「営業者」とは、印紙税法別表第一第17号文書の非課税物件欄に定める「営業」を行う者をいいます。個人事業主・法人(株式会社・合同会社等)は原則として営業者に該当します。一方、消費者個人や非営利法人(営業を行わないもの)が当事者の場合は要件を満たしません。

② 対象取引が限定列挙であること

第7号文書の対象となる取引は次の5種類に限られます。

  • 売買:財産権を移転し代金を受け取る契約
  • 売買の委託:売買を他者に委託する契約(代理店・販売店契約など)
  • 運送:物品・旅客を運送する契約
  • 運送取扱い:運送の委託を受けて取り次ぐ契約(利用運送等)
  • 請負:仕事の完成を約束し報酬を受け取る契約

注意:コンサルティング・準委任型業務委託など、上記5種類のいずれにも該当しない取引に関する基本契約書は、第7号文書の対象外となります。ただし、実際の契約内容が「請負」に該当するかどうかは個別事情によります。

③ 2以上の取引を継続して行うための契約であること

単発の取引を対象とした契約書は第7号文書に該当しません。「2以上の取引を継続して行うため」に締結される基本的な枠組みの契約であることが必要です。

実務上の注意:物品の加工請負契約で総数量・総金額が確定している場合に「6か月に分割納品」「代金を6か月分割払い」とした場合は、1取引における納期・支払分割にすぎず、「継続的取引のための基本契約」ではなく個別契約とみなされ、第7号文書には該当しないとされています(国税庁質疑応答事例)。

④ 基本条件を定めていること(1以上の事項)

2以上の取引に共通して適用される次の基本条件のうち、1つ以上が定められていること。

  • 目的物の種類:取引の対象となる物品・役務の種類(品名、商品カテゴリなど)
  • 取扱数量:1取引あたり・1か月あたりの具体的な取扱数量
  • 単価:取引単価の定め(価格表を参照する旨でも可)
  • 対価の支払方法:代金の決済方法・支払時期
  • 債務不履行の場合の損害賠償の方法:損害賠償範囲・計算方法
  • 再販売価格:代理店・販売店に対する再販売価格の定め

実務上、ほとんどの基本契約書には「支払方法」や「損害賠償」に関する条項が入っているため、この要件は比較的満たされやすい点に注意が必要です。

⑤ 電気・ガスの供給に関するものでないこと

電気・ガスの供給に関する基本契約書は第7号文書の対象外です(印紙税法施行令第26条第1号ただし書)。

第7号文書該当性チェック表

以下のすべてに「はい」が揃う場合、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当する可能性があります。

No. チェック項目 はい 備考
1当事者双方が営業者(個人事業主・法人等)か消費者個人・非営利法人は対象外
2対象取引が「売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負」のいずれかか準委任は該当しない可能性あり
32以上の取引を継続して行う前提の契約か単発契約は対象外
4目的物の種類を定めているか以下④のうち1つ以上あればよい
5取扱数量を定めているか
6単価を定めているか
7対価の支払方法を定めているか
8債務不履行・損害賠償の方法を定めているか
9再販売価格を定めているか
10契約期間の定めがないか、または3か月を超えるか3か月以内のみの場合は除外条件あり
11更新条項がある、または契約期間の定めがない更新なし・3か月以内の場合は除外
12電子契約ではなく紙(原本)の契約書か電子契約は原則非課税
13電気・ガスの供給に関する契約でないか電気・ガス供給は適用除外

※ 1〜3および4〜9のいずれか1つ以上、かつ10〜13を満たす場合に第7号文書に該当する可能性があります。最終判断は個別の契約内容・実態によります。

基本契約書でも印紙不要となるケース

ケース① 契約期間が3か月以内かつ更新条項なし

「契約期間の記載があり、その期間が3か月以内であり、かつ更新に関する定めのないもの」は第7号文書から除外されます(印紙税法別表第一第7号文書除外規定)。この3要件がすべて揃う必要があります。

  • 契約期間の定めがない → 除外されない(第7号文書に該当しうる)
  • 契約期間3か月以内 + 自動更新条項あり → 除外されない(自動更新は「更新の定め」)
  • 契約期間3か月以内 + 更新条項なし → 除外される(第7号文書に該当しない)

注意:「更新後の期間を加えてもなお3か月以内のものを除く」(印紙税法基本通達第7号文書の2)という規定があります。つまり当初1か月・更新後1か月の合計2か月でも3か月以内に収まる場合は除外されます。しかし、更新により3か月を超えうる場合は第7号文書に該当します。

ケース② 対象取引が第7号文書の対象外である場合

準委任型の業務委託基本契約書や、コンサルティング・アドバイザリー契約、知的財産の利用許諾を主たる目的とする基本契約書など、売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負のいずれにも該当しない取引を対象とする基本契約書は、第7号文書に該当しないと解されます。

ケース③ 基本条件の記載がない場合

基本契約書であっても、目的物の種類・取扱数量・単価・支払方法・損害賠償方法・再販売価格のいずれも定めていない場合は、第7号文書の要件④を満たさず、印紙不要となりえます。ただし、ほとんどの基本契約書には支払方法や損害賠償条項が含まれるため、このケースは少ないと思われます。

ケース④ 電子契約(電磁的記録)で締結した場合

電子契約サービス(クラウドサイン・DocuSignなど)を利用して電磁的記録として締結した基本契約書は、印紙税法上の「課税文書の作成」に該当せず、原則として印紙税は不要です(詳細は「電子契約の場合」参照)。

ケース⑤ 当事者の一方が営業者でない場合

消費者個人や非営利法人が契約当事者の場合、「営業者間の契約」という要件を満たさないため、第7号文書に該当しません。

第2号文書との関係

請負に関する基本契約書は、第7号文書と第2号文書(請負に関する契約書)の両方に該当しうるため、どちらに所属するかの判断が必要です。この判断基準は、課税物件表の適用に関する通則3のイに規定されています。

通則3のイの原則:「第1号または第2号に掲げる文書で契約金額のないものと第7号に掲げる文書とに該当する文書は、第7号文書とする」。すなわち、契約金額の記載があれば第2号文書(またはその税率)、なければ第7号文書(4,000円)となります。

第2号文書 / 第7号文書 比較表

比較項目 第2号文書(請負に関する契約書) 第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)
対象請負に関する契約書全般継続的取引の基本となる契約書
税額記載金額に応じて変動(1万円未満は非課税・記載なしは200円)一律4,000円
記載金額の影響金額が大きいほど税額が高くなる記載金額は税額に影響しない
競合時の原則契約金額の記載がある場合は第2号文書が優先契約金額の記載がない場合は第7号文書が優先(通則3のイ)
期間要件なし3か月以内かつ更新なしは除外
問題になりやすい契約書個別の請負契約書・注文請書基本契約書・取引基本契約書

実務上の判断フロー(請負型基本契約書の場合)

  1. 対象取引が「請負」に関するものか確認する
  2. 契約書に「契約金額」の記載があるか確認する
  3. 契約金額の記載あり → 第2号文書として税額を計算する(1万円以上の場合は金額に応じた税率)
  4. 契約金額の記載なし → 第7号文書として4,000円
  5. 第7号文書の要件(期間・更新・継続性など)を別途確認する

注意:「基本契約書に記載された月額単価×期間」で契約金額が算出できる場合は、記載金額があるものとして取り扱われ、第2号文書に所属することがあります。契約書の記載内容を具体的に確認することが重要です。

基本契約書と個別契約・注文請書の関係

実務上よく誤解されるのが、「基本契約書に印紙を貼れば個別契約書・注文請書への印紙が不要になる」という考え方です。これは誤りです。印紙税は課税文書ごとに個別に課税されるため、基本契約書への印紙貼付は、付随する個別契約書や注文請書の印紙義務に一切影響しません。

基本契約書と個別契約の関係整理表

パターン 基本契約書の扱い 個別契約等の扱い 備考・注意点
基本契約書のみ(個別書面なし) 第7号文書なら4,000円 (なし) 口頭・メール等での個別発注は課税対象外
基本契約書+個別契約書 第7号文書なら4,000円 請負なら第2号文書、売買なら非課税が多い 個別契約書も内容により別途課税
基本契約書+注文書(発注書) 第7号文書なら4,000円 注文書のみでは通常課税対象外 注文書は申込書・請求書類と同扱い
基本契約書+注文請書 第7号文書なら4,000円 注文請書が請負なら第2号文書として別途課税 基本契約書への印紙は注文請書の印紙を免除しない
基本契約書が第7号文書・個別契約書が第2号文書 4,000円 金額に応じた印紙税 両方に印紙が必要
基本契約書が電子・注文請書が紙 印紙不要 注文請書が第2号文書なら別途課税 電子化は基本契約書のみに有効
基本契約書が紙・注文請書が電子 第7号文書なら4,000円 印紙不要 電子化は注文請書のみに有効
基本契約書も個別契約も電子 印紙不要 印紙不要 最も印紙税コストが低い運用

契約類型別|基本契約書の印紙税判断例

基本契約書の印紙要否判断表

契約書の種類 第7号
該当可能性
印紙要否 主な注意点
売買取引基本契約書 要(4,000円) 要件を満たすことが多い典型例
商品売買基本契約書 要(4,000円) 基本条件の記載内容を確認
製造委託基本契約書 要(4,000円) 製造委託は「請負」に関するものとして該当しやすい
請負基本契約書(金額記載あり) 要確認 第2号文書の可能性 記載金額により第2号文書となりうる
請負基本契約書(金額記載なし) 要(4,000円) 通則3のイにより第7号文書が優先
業務委託基本契約書(請負型) 要(4,000円) 成果物納品を主とする場合は請負に該当しやすい
業務委託基本契約書(準委任型) 不要の可能性 「請負」ではないとして第7号文書外となりうる。内容確認要
代理店契約書 要(4,000円) 売買の委託として典型例
販売店契約書 要(4,000円) 再販売価格を定めていれば要件充足しやすい
フランチャイズ契約書 要確認 内容による 販売委託・ロイヤルティ等、複合的性質に注意
継続的保守契約書 要確認 内容による 請負型かどうか・基本条件の記載を確認
単発業務委託契約書 第7号文書には非該当 継続性なし。ただし第2号文書(請負)の可能性あり
NDA単体 通常不要 取引条件を定めるものでなければ非課税
共同研究契約書 通常不要 対象取引が限定列挙外であることが多い
3か月以内・更新条項なしの基本契約書 非該当 不要 3要件(記載あり・3か月以内・更新なし)がすべて揃う場合
電子契約で締結した基本契約書 不要(原則) 印紙税法基本通達第44条。紙原本作成は別途課税

契約類型別・詳細判断表

契約類型 主な性質 第7号
該当可能性
印紙要否 注意点
売買基本契約 売買 典型的な第7号文書
継続的商品売買契約 売買 単価・品名の記載で要件充足しやすい
製造委託基本契約 請負 金額記載の有無で第2号との競合に注意
加工委託基本契約 請負 同上
建設工事基本契約 請負 要確認 内容による 金額記載ありなら第2号文書。建設業法との関係も考慮
システム開発基本契約 請負/準委任 要確認 内容による 請負型か準委任型か確認が必須
Web制作基本契約 請負 高め 要の可能性 成果物納品型なら請負、継続型なら確認要
保守運用基本契約 請負/準委任 要確認 内容による 継続的役務提供型は準委任として不要の場合も
広告運用基本契約 準委任/請負 要確認 内容による 成果型か稼働提供型かで判断が異なる
コンサルティング基本契約 準委任 不要の可能性 「請負」に該当しないことが多い
SES基本契約 準委任 不要の可能性 労働者派遣との区別に注意。契約内容を確認
代理店契約 売買の委託 典型的な第7号文書
販売店契約 売買/再販売 再販売価格の定めにより要件充足しやすい
物流基本契約 運送/運送取扱い 第1号文書との競合も確認
清掃・警備基本契約 請負/準委任 要確認 内容による 成果物ありなら請負、役務提供なら準委任の可能性

業務委託基本契約書の注意点

「業務委託」という言葉は法令上の概念ではなく、実態として「請負」に近いものと「準委任」に近いものが混在しています。印紙税上の扱いは、契約の実質的な法的性質(請負か準委任か)で決まります。

請負型 vs. 準委任型の判断

  • 請負型:成果物・納品物を完成させることを目的とし、完成に対して報酬が支払われる → 第7号文書に該当しうる
  • 準委任型:善管注意義務を持って労務・役務を提供することを目的とし、稼働時間・月額で報酬が支払われる → 当然に第7号文書とはいえない

ただし、同一の基本契約書のもとで請負型の発注と準委任型の発注の両方が行われる場合など、実務では判断が容易でないケースもあります。

業務委託基本契約書の判断表

類型 性質 第7号文書 印紙要否 注意点
請負型業務委託基本契約 請負 該当しうる 要(4,000円) 金額記載の有無で第2号との競合に注意
準委任型業務委託基本契約 準委任 原則非該当 不要の可能性 内容確認必須。断定は慎重に
成果物納品型 請負寄り 該当しうる 要の可能性 成果物の有無・完成義務の有無を確認
月額稼働提供型(SES等) 準委任寄り 原則非該当 不要の可能性 契約内容の実態確認が必要
コンサルティング基本契約 準委任 非該当の可能性 不要の可能性 助言・指導が主の場合は請負でない
SES基本契約 準委任 非該当の可能性 不要の可能性 偽装請負・派遣との関係も別途確認
保守運用基本契約 請負/準委任 要確認 内容による 障害対応・定期保守の性質を確認
広告運用基本契約 準委任寄り 要確認 内容による 運用代行の実態確認が必要
システム開発基本契約 請負/準委任 要確認 内容による フェーズごとに変わる場合も多い
個別発注方式(単価は個別に決める) 要確認 内容による 基本条件として「損害賠償」等の記載があれば要件充足の可能性
金額を基本契約に記載する場合 第2号との競合 第2号の可能性 請負の場合、金額記載→第2号文書
金額を個別契約に記載する場合 第7号のみ 要(4,000円) 基本契約に金額なし→第7号文書に所属
著作権譲渡条項がある場合 要確認 内容による 著作権譲渡条項がある場合は、第1号文書該当性も含めて個別確認が必要

実務上の注意:業務委託基本契約書の印紙税判断は、契約書のタイトルではなく実質的な法律関係の性質によります。判断が難しい場合は、税理士や所轄税務署に個別確認することを検討してください。

電子契約の場合

電子契約サービス(クラウドサイン・docuSign・弁護士ドットコムクラウドサイン等)を利用して電磁的記録(データ)として締結した基本契約書は、原則として印紙税の対象になりません

根拠は印紙税法基本通達第44条です。課税文書の「作成」とは「課税事項を記載した文書を作成することをいい、課税事項を記載した文書を相手方に交付することを必要とする」(同44条)とされており、データの送受信は「用紙等への記載・交付」に該当しないと整理されています。

電子契約・紙契約の判断表

パターン 印紙税の扱い 注意点
紙の基本契約書を2通作成(甲・乙各1通) 各1通につき4,000円(計8,000円) 課税文書ごとに印紙が必要
紙の基本契約書1通+写し1通 原本1通分4,000円(写しは不要) 写しに押印等を行う場合は原本扱いになりうる
電子契約サービスで基本契約書を締結 原則不要 印紙税法基本通達第44条による
基本契約書は電子・注文請書は紙 注文請書のみ課税対象 紙の注文請書が第2号文書なら別途印紙
基本契約書は紙・注文請書は電子 基本契約書のみ課税対象 基本契約書が第7号文書なら4,000円
基本契約書も個別契約も電子 原則不要 最も印紙税コストを抑えられる運用
PDFを相手方にメール送付のみ 原則不要 電磁的記録の送付であれば非課税
PDFを印刷・押印して郵送 課税対象 印刷した紙原本が課税文書となる
電子契約後に参照用として紙原本も作成 紙原本は課税対象 電子契約後でも紙原本を作成すれば課税される

実務上のポイント:「電子契約=印紙税不要」は原則として正しいですが、電子契約後に紙の原本を作成・相手方に交付した場合は、その紙について課税対象となります。電子契約の運用では「紙原本を作成しない」ルールを社内規程で明確化することが重要です。

契約審査実務での管理方法

契約締結前チェックリスト

基本契約書・取引基本契約書の印紙税チェックリスト

基本契約書か単発契約書かを確認したか
継続的取引を予定しているか確認したか
当事者双方が営業者(法人・個人事業主等)か確認したか
対象取引が売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負のいずれかか確認したか
2以上の取引を継続して行う前提か確認したか
目的物の種類・取扱数量・単価・支払方法・損害賠償方法等のいずれかの記載があるか確認したか
契約期間が「3か月以内かつ更新条項なし」ではないか確認したか
請負型か準委任型か確認したか(業務委託の場合)
第2号文書との関係を確認したか(請負の場合)
契約書に金額の記載があるか確認したか
個別契約書・注文請書の有無と印紙要否を別途確認したか
紙契約か電子契約かを決定したか
紙契約の場合、原本通数を確認し印紙税額を計算したか
契約台帳に判断根拠(文書種別・印紙税額・判断日)を記録したか

契約審査メモ例

契約台帳や法務システムに記録する際の審査メモの例です。

【契約審査メモ】
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契約書名       :○○株式会社との取引基本契約書
契約類型       :売買取引基本契約(継続的商品売買)
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基本契約該当性 :あり(継続的取引のフレームワーク契約)
継続的取引該当性:あり(年間複数回の発注予定)
─────────────────────────────
第7号文書該当性 :該当(印紙税法施行令第26条第1号)
 理由:①営業者間、②売買に関する取引、③継続性あり
     ④支払方法・損害賠償方法の記載あり
第2号文書との関係:競合なし(売買取引のため)
─────────────────────────────
契約期間       :1年間(自動更新条項あり)
更新条項の有無  :あり(自動更新)
基本条件の記載  :支払方法、損害賠償方法、品質基準
─────────────────────────────
紙契約/電子契約 :紙契約(2通)
印紙税額       :4,000円 × 2通 = 8,000円
─────────────────────────────
個別契約・注文請書:個別発注書方式(注文請書なし)
 → 注文書のみ発行のため個別書類の印紙は不要
─────────────────────────────
判断者         :○○(法務部)
判断日         :2026年○月○日
特記事項       :—
─────────────────────────────

LegalOSでの管理・運用イメージ

基本契約書は、契約期間が長く・個別発注と継続的に紐づく特性上、以下のような管理機能が必要になります。LegalOSでは、これらの契約管理業務を一元化・ワークフロー化することができます。

  • 基本契約と個別契約の紐付け管理:どの基本契約のもとにどの個別契約・注文請書があるかを紐づけて管理
  • 契約類型管理:第7号文書・第2号文書・非課税文書の分類を記録
  • 第7号文書該当性の判断記録:審査時の判断根拠を証跡として保存
  • 印紙税額の記録:契約ごとの印紙税額・納付状況の管理
  • 契約更新期限管理:自動更新条項のある基本契約の更新期限アラート
  • 自動更新契約の管理:更新阻止・条件変更のタイミングを逃さない
  • 契約審査ワークフロー:チェックリスト・審査メモを標準化
  • 証跡保存・監査ログ:いつ・誰が・どのような判断をしたか記録
  • グループ会社横断管理:複数の関連会社にまたがる基本契約を一元管理

よくある質問

基本契約書には印紙が必要ですか?
タイトルが「基本契約書」であることだけで印紙税が発生するわけではありません。第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)の要件(①営業者間、②対象取引、③継続性、④基本条件の記載)をすべて満たす場合に限り、一律4,000円の印紙税が必要です。要件を満たさない場合や電子契約の場合は不要です。
取引基本契約書は4,000円ですか?
取引基本契約書が第7号文書に該当する場合、税額は1通につき一律4,000円です。2通の原本を作成するなら8,000円となります。ただし、請負に関する内容で契約金額の記載がある場合は第2号文書として別の税額になることもあります。
業務委託基本契約書は第7号文書ですか?
請負型(成果物の完成を目的とする)の業務委託基本契約書は第7号文書に該当しやすいです。準委任型(役務提供・稼働提供を目的とする)は、「請負」に関するものではないとして第7号文書の対象外と解されることが多いですが、契約の実態に応じて個別判断が必要です。
準委任型の基本契約書にも印紙は必要ですか?
準委任型の業務委託基本契約書は、印紙税法施行令第26条が対象として列挙する「売買・売買の委託・運送・運送取扱い・請負」のいずれにも当たらないと整理されることが多く、印紙税は原則不要とされるケースが少なくありません。ただし、契約書の具体的な内容・記載事項・他の課税事項によって判断が異なる場合もあります。確信が持てない場合は、税務署や税理士に個別確認されることをお勧めします。
契約期間が3か月以内なら印紙不要ですか?
「契約期間の記載があり・かつ期間が3か月以内・かつ更新に関する定めがない」という3つの要件をすべて満たす場合のみ、第7号文書から除外されます。契約期間の定めがない場合や、更新条項(自動更新を含む)がある場合は、3か月以内でも第7号文書に該当します。
自動更新条項がある場合はどうなりますか?
自動更新条項(「期間満了前に異議がなければ自動延長」等)は「更新に関する定め」に該当します。そのため、当初の契約期間が3か月以内であっても除外要件を満たさず、第7号文書に該当します。自動更新条項の有無は印紙税判断における重要ポイントです。
基本契約書に金額が書いてある場合はどうなりますか?
請負に関する基本契約書で、そこから契約金額が算出できる記載がある場合は第2号文書(請負に関する契約書)として金額に応じた税額になります。売買に関する基本契約書で単価や支払条件のみ定めている場合は、基本的に第7号文書として4,000円が適用されます。いずれにせよ、記載内容を具体的に確認することが重要です。
個別契約書や注文請書にも印紙が必要ですか?
はい。基本契約書に印紙を貼っても、個別契約書・注文請書の印紙義務は免除されません。課税文書は各文書ごとに個別に判断します。個別の注文請書が請負に関する契約書(第2号文書)に該当するなら、内容・金額に応じた印紙が別途必要です。
電子契約なら印紙不要ですか?
はい。電磁的記録(データ)として締結した基本契約書は、印紙税法上の「課税文書の作成」に該当しないため、原則として印紙税は不要です(印紙税法基本通達第44条)。ただし、電子契約後に別途紙の原本を作成・交付した場合は、その紙が課税対象となります。
基本契約書を2通作る場合は両方に印紙が必要ですか?
はい。2通とも原本として作成する場合は、各1通につき4,000円(合計8,000円)が必要です。1通を原本・もう1通をコピー(写し)とする場合、コピーには印紙不要です。ただし、コピーに押印等を行うと原本と同一とみなされることがあるため注意が必要です。
LegalOSで基本契約と個別契約を管理できますか?
はい。LegalOSでは、基本契約と個別契約の紐付け管理、契約類型管理、第7号文書該当性の判断記録、印紙税額の記録、契約更新期限管理、自動更新契約の管理、契約審査ワークフロー、証跡保存、監査ログ、グループ会社横断管理の仕組み化を支援しています。詳しくはLegalOSページをご覧ください。

まとめ

基本契約書・取引基本契約書の印紙税について、実務上の重要ポイントを整理します。

第7話 まとめ

  • 基本契約書=自動的に第7号文書ではない:印紙税法施行令第26条の要件(営業者間・対象取引・継続性・基本条件の記載)をすべて満たして初めて第7号文書となる
  • 第7号文書の税額は一律4,000円(記載金額に関わらず固定)
  • 3か月以内かつ更新条項なしの場合のみ除外。更新条項があれば3か月以内でも課税対象
  • 準委任型業務委託基本契約書は原則非課税と解されることが多いが、個別確認が必要
  • 請負基本契約書で金額記載ありなら第2号文書(金額に応じた税額)、なしなら第7号文書(4,000円)
  • 基本契約書への印紙は個別契約書・注文請書の印紙義務を免除しない
  • 電子契約は原則非課税(印紙税法基本通達第44条)
  • 判断に迷う場合は税理士・所轄税務署に相談する

次回(第8話)は、覚書・変更契約書・合意書の印紙税を解説します。「タイトルではなく内容で判断する」という原則が特に重要になる分野です。基本契約書を後から修正・変更する覚書にも印紙が必要かどうか、ぜひ続けてご確認ください。

基本契約書・取引基本契約書の印紙税・契約管理をもっと効率化したい方へ

基本契約書は契約期間が長く、個別発注と継続的に紐づいて運用されます。第7号文書に該当するかの判断記録、印紙税額の管理、個別契約との紐付け、更新期限のアラートまで、契約台帳や契約管理の仕組みが必要になります。

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【免責事項】本記事は、印紙税法・印紙税法施行令・国税庁公表情報(令和8年4月28日現在の法令・通達等)に基づき、一般的な実務情報の提供を目的として作成しています。個別の契約書への適用については、契約内容・実態・当事者属性等によって異なる場合があります。具体的な判断は、税理士・税務署・弁護士等の専門家にご確認ください。
【参照法令等】印紙税法別表第一(課税物件表)第7号文書・第2号文書、印紙税法施行令第26条、課税物件表の適用に関する通則3のイ・ハ、印紙税法基本通達第44条・第7号文書の1〜21

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