CIVIL LITIGATION DIGITALIZATION 企業法務のための民事訴訟IT化対応シリーズ 03 / 06

口頭弁論もウェブ会議で|企業担当者が知るべき期日対応と証人尋問の注意点

法令・制度基準日:2026年7月30日

「ウェブ期日なら、会社の会議室から参加すればよいのか」「企業担当者も一緒に画面に入れるのか」「証人になる従業員は自宅から参加できるのか」「期日中に社内チャットで指示を出してよいのか」「和解案を提示されたら、その場で回答しなければならないのか」「通信が切れたら欠席扱いになるのか」「録画して社内会議で共有してよいのか」。

結論から述べます。ウェブ期日は移動を減らす制度ですが、参加場所、同席者、通信環境、秘密情報、社内決裁を事前に設計しなければ、これまでになかった種類の事故が生じます。そして、ウェブで行うかどうかは当事者が選べるものではなく、法定の要件を踏まえて裁判所が判断します。

ウェブ会議による期日は、Zoomでの社内会議とは性質が違います。口頭弁論は公開の法廷で行われる正式な裁判手続であり、ウェブ参加者の様子も法廷の傍聴人から見られ得ます。一方、弁論準備手続や和解協議など、非公開で行われる手続もあります。いずれの場合も、録音・録画や参加方法を企業側が自由に決められるものではありません。証人尋問には、一般のウェブ期日とは別の要件があります。本記事では、シリーズ第3話として、企業担当者が実際に準備すべき事項を整理します。

民事訴訟IT化の全体像は第1話「民事訴訟のIT化で何が変わったか」で解説しています。

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民事訴訟のどの期日がウェブ会議で行われるのか

民事訴訟には複数の種類の期日があり、ウェブ会議による実施の要件は期日の種類ごとに異なります。「2026年5月21日から裁判がすべてオンラインになった」わけではありません。

まず、時期の整理をしておきます。法務省の公表資料によれば、弁論準備手続や和解期日のウェブ会議による実施の見直しは2023年3月1日に施行され、公開の法廷で行われる口頭弁論へのウェブ会議による参加は2024年3月1日に施行されました。したがって、ウェブ期日それ自体は2026年5月21日に始まったものではありません。2026年5月21日の全面施行で加わったのは、訴訟記録の電子化を前提とする証拠の扱いや、証人尋問の要件の見直しといった部分です。

図表1 民事訴訟の主な期日とウェブ実施の位置付け

手続 主な目的 ウェブ実施の可能性 企業担当者の関与 主な注意点
口頭弁論 公開の法廷で主張・証拠を提出し、審理を進める 裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いてウェブ会議により実施可(民訴法87条の2第1項) 同席する場合がある。裁判所への対応は代理人を中心とし、企業担当者が発言する場合は裁判所の進行と代理人との役割分担に従う 公開の手続であり、傍聴人がいる。ウェブでも正式な口頭弁論である
弁論準備手続 争点と証拠を非公開で整理する 改正法により、当事者双方が裁判所に出頭しなくてもウェブ会議で実施可能となった 事実確認のため待機・同席する場合が多い その場で不確かな事実を答えないこと。代理人を通じて回答する
和解期日 和解の条件を協議する ウェブ会議による実施が可能 参加することが多い。決裁権限が問題になる 金額・支払期日・秘密保持等の社内決裁範囲を事前に整理する
書面による準備手続・進行協議 書面のやりとりや進行の打合せ ウェブ会議・電話会議による実施が可能 関与は限定的 代理人から結果の共有を受ける経路を決めておく
審尋 非公開で当事者に事情を聴く 裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いて音声の送受信による方法で実施可(民訴法87条の2第2項) 事案により関与 口頭弁論とは要件・方式が異なる
証人尋問・当事者本人尋問 人の供述を証拠として調べる 一般のウェブ期日とは別の法定要件がある(民訴法204条。当事者本人尋問には同法210条により準用) 自社の役員・代表者または従業員が、当事者側の尋問対象者または証人となる場合、企業側の準備が必要 出頭場所に規則上の要件がある。簡易裁判所には民訴法277条の2の特則がある。詳細は後述

※本表は制度の大枠を整理したものです。ウェブ会議によるかどうかは事案ごとに裁判所が判断します。弁論準備手続・和解期日・書面による準備手続の根拠条文番号は、正確性を期すため本文に記載していません。個別の手続については代理人にご確認ください。

口頭弁論をウェブで行う要件|決めるのは裁判所

民訴法87条の2第1項は、裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所および当事者双方が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、口頭弁論の期日における手続を行うことができると定めています。

ここで企業側が誤解しやすい点を3つ挙げます。

  • 「意見を聴く」ことは、同意を得ることではありません。当事者の意見は聴かれますが、実施するかどうかの最終判断は裁判所にあります。「遠方だから当然にウェブになる」「双方が希望したから必ず認められる」という制度ではありません。
  • ウェブ参加でも正式な口頭弁論です。民訴法87条の2第3項により、期日に出頭しないでその手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなされます。社内会議のような感覚で臨む場ではありません。
  • 公開の手続である性質は維持されます。法務省の広報資料によれば、口頭弁論はこれまでどおり裁判所の法廷の傍聴席で傍聴することができ、ウェブ会議によって参加している方の様子についても、法廷にモニターを設置するなどの対応がとられます。つまり、企業担当者が画面に映っていれば、その様子は法廷の傍聴人からも見られ得ます。

法務省の資料は、口頭弁論について当事者の一方または双方がウェブ会議を利用して参加できるようになると説明しています。したがって、相手方が法廷に出頭し、自社側だけがウェブで参加するという形も想定されています。この場合、法廷側の音声や見え方が自社側と同じとは限らないため、期日前の接続確認がより重要になります。

図表2 ウェブ口頭弁論が決まるまでの流れ

制度上の流れ

1 裁判所と代理人の間で期日の実施方法を検討する
2 裁判所が当事者の意見を聴く
3 裁判所が相当性を判断し、実施方法を決定する

企業側の実務準備

4 代理人から参加方法・接続先・開始時刻の連絡を受ける
5 会議室を確保し、事前に接続確認を行う
6 同席者・発言者・緊急連絡先を代理人と確認する
7 期日を実施し、終了後に社内へ報告する

※1から3は裁判所の判断過程であり、企業が主導できる部分ではありません。4以降が企業側の準備領域です。

期日で参照する電磁的訴訟記録や証拠データの準備については、第2話「書類はオンライン提出の時代へ|mintsの仕組みと企業法務が知っておくべきこと」で解説しています。

弁論準備手続・和解期日で企業担当者は何をするか

弁論準備手続|その場で不確かなことを答えない

弁論準備手続は、争点と証拠を整理するための非公開の手続です。改正法により、当事者双方が裁判所に出頭しなくてもウェブ会議で実施できるようになり、従前あった遠隔地の要件も廃止されました。

進行の中心は代理人ですが、企業担当者が同席または待機を求められる場面があります。典型は、裁判所から事実関係の確認を受け、その場で回答できるかどうかが進行に影響する場合です。

ここで最も多い事故は、担当者が「たしかそうだったと思います」と曖昧に答えてしまうことです。期日での発言は正式な裁判手続の中で行われ、後の主張整理や審理に影響する可能性があります。

整理しておくべき前提があります。裁判所への法的な主張や手続上の対応は代理人が中心となります。企業担当者が当然に会社を代理して訴訟行為を行えるわけではありません。ただし、裁判所の求めや代理人との事前調整により、担当者が事実関係を説明する場面はあり得ます。誰がどの範囲で発言するかを、期日前に代理人と確認してください。そして、不確かな事項については、その場で回答せず、確認後に代理人を通じて回答する運用を事前に合意しておくことが推奨されます。

和解期日|決裁権限の範囲を先に決めておく

和解期日は、和解の条件を協議する手続です。ウェブ会議による実施が可能で、企業担当者や事業責任者が参加することも少なくありません。

ここで問題になるのは、多くの場合、法律ではなく社内の承認です。なお、担当者が会社を法的に代表して和解を成立させられるかという問題と、社内規程上どこまで承認が得られているかという問題は別です。実務で詰まるのは後者であり、あわせて代理人にどの範囲の和解権限を付与しているかも確認しておく必要があります。和解の条件は金額だけではありません。支払期日と分割の有無、秘密保持条項、謝罪や再発防止の文言、取引関係を継続するか、他の係属案件や類似案件への影響、会計上の処理や適時開示の要否。これらは、法務部門だけで決められないことが多いはずです。

仮想事例(実在の事件ではありません)

ある企業では、和解期日に法務担当者がウェブで参加した。裁判所から、和解金額を当初提示額から一定額上げれば成立の見込みがあると示され、その場での意向を求められた。担当者は、その場で回答できる社内承認範囲を与えられておらず、代理人にも当該条件で和解を成立させる権限が付与されていなかったため、「持ち帰って検討します」と回答するしかなかった。次回期日までに1か月を要し、その間に相手方の姿勢が変わり、条件は当初より不利になった――。

この事故は、担当者の力量の問題ではありません。期日に臨む前に、その場で回答できる範囲と持ち帰る事項を切り分けていなかったことから生じています。

図表3 和解期日前に企業が確認する事項と、当日の役割分担

区分 確認・担当事項
期日前に整理する(社内決裁) 事前に社内承認を得た条件の範囲と、代理人に付与する和解権限/分割払いを認める条件/秘密保持条項の要否/謝罪文言の可否/取引継続の方針/持ち帰りが必要な事項の一覧/法人代表者等の最終承認が必要な場合の連絡経路と対応可能時間帯
当日の企業担当者 事実関係の補足/社内事情の確認/決裁範囲内での意向表明/必要資料の手元準備/期日後の社内報告
当日の外部弁護士 裁判所への発言/法的主張と見通しの説明/質問への回答/進行管理/期日後の対応方針の提示
共同で決めておく 誰が発言するか/事実確認が必要になったときの合図の方法/社内チャットを使うかどうか/通信が切れた場合の連絡手順/和解案を持ち帰る際の伝え方

※裁判所への法的主張や手続対応は代理人を中心に行います。企業担当者が事実関係を説明する場合を含め、発言者と発言範囲は期日前に代理人と確認してください。

会議室・端末・通信環境をどう整えるか

ここからは実務準備です。以下はいずれも法令上の義務ではなく、実務上の推奨です。ただし、事故が起きたときに回復が難しい領域でもあります。

会議室

ウェブ期日で使う会議室に求められるのは、会議のしやすさではなく閉鎖性です。

  • 施錠でき、期日中に第三者が入室しない個室を確保する。会議室予約システムに「使用中・入室不可」の表示を出す。
  • 清掃担当者や設備業者の入室予定がないかを事前に確認する。
  • 音漏れを確認する。廊下側で聞こえるかどうかを、事前に人を立たせて確かめておくと確実です。
  • ガラス面のある会議室では、外から画面が見えないかを確認する。ブラインドやパーティションで対処します。
  • 背景に映り込む資料、ホワイトボードの書き込み、掲示物を撤去する。

端末

裁判所の現行資料では、ウェブ会議による期日にはTeamsを利用する運用が案内されています。ただしこれは法律上の要件ではなく現在の運用であり、使用システムや接続方法は変更される可能性があります。実際の期日では、裁判所または代理人から指定された方法に従ってください。なお、期日に現実に出頭する場合には、法廷等で電磁的訴訟記録を確認するために自らのPC等を持参する必要があるとされており、裁判所に代理人用の貸出端末はないとされています。企業側としては、次を確認しておくことが推奨されます。

  • カメラ・マイク・スピーカーの動作確認。ハウリング対策としてヘッドセットを用意する。
  • 電源の確保と充電。長時間の期日で電池切れを起こさない配置にする。
  • OSとアプリの更新を事前に済ませる。期日直前の自動更新で起動できない事態を避ける。
  • 社内のセキュリティ設定により外部会議システムがブロックされないかを、情報システム部門と確認する。管理者権限が必要な設定変更は事前に済ませる。
  • 画面共有をする可能性がある場合、デスクトップ通知をオフにする。

通信

  • 有線接続を基本とする。やむを得ずWi-Fiを使う場合は、安定した回線を選ぶ。
  • モバイル回線等の予備手段を用意し、切替え手順を事前に確認する。
  • 期日前に接続テストを行う。可能であれば当日と同じ会議室・同じ端末で行う。
  • 通信が切れた場合の連絡先(代理人の携帯番号など)を紙で手元に置く。端末が使えない状況を想定するためです。

図表4 ウェブ期日前の環境チェック

施錠できる個室を確保した
期日中に第三者が入室しないよう、予約と入室表示を行います。
音漏れと画面の視認を確認した
廊下側で音が聞こえないか、ガラス面から画面が見えないかを実際に確かめます。
背景に映る資料・掲示物を撤去した
ホワイトボードの書き込みも含めて確認します。
カメラ・マイク・通信の接続テストを行った
可能であれば当日と同じ会議室・端末で実施します。
OS・アプリの更新を事前に済ませた
期日直前の自動更新による起動不能を避けます。
画面共有時のデスクトップ通知を停止した
メール・チャットのポップアップを切ります。
予備回線と予備端末を用意した
切替え手順も事前に確認します。
緊急連絡先を紙で手元に置いた
端末が使えない状況を想定します。

会議室や端末の整備を含む社内基盤の見直しについては、法務DXで最初に整える業務を確認することも参考になります。

秘密情報・録音録画・社内チャットの注意点

録音・録画は「禁止」ではなく「許可制」

ここは正確に理解してください。民事訴訟規則77条は、法廷における写真の撮影、速記、録音、録画または放送は、裁判長の許可を得なければすることができないと定めています。同78条により、裁判所の審尋、口頭弁論期日外に行う証拠調べ、受命裁判官または受託裁判官が行う手続にも準用されます。

つまり、絶対的な禁止ではなく許可制です。もっとも、企業側の実務としては次の運用が必要です。

  • 社内共有目的であっても、許可なく録音・録画しない。「オンライン会議だから記録を残すのが当然」という社内の慣行を、そのまま持ち込まないでください。
  • スクリーンショットについても、裁判手続の画面を無断で保存する行為となります。自己判断で行わず、必要がある場合は事前に代理人を通じて裁判所へ確認してください。
  • 参加者全員に、期日前に禁止事項として周知する。特に、ウェブ会議に慣れている担当者ほど、無意識に録画ボタンを押す可能性があります。
  • 社内報告は、録音ではなく、期日後の代理人からの報告と担当者のメモによって行う運用にする。

画面共有と社内チャット

ウェブ期日で情報が漏れる経路は、想像よりも多くあります。画面共有時のデスクトップ通知、メールの件名表示、チャットのポップアップ、ブラウザのタブに残った別案件のタイトル、背景に映る資料、そして音漏れです。

社内チャットについては、代理人と企業担当者の補助的な連絡手段として使う場面があり得ます。ただし、次の点に注意してください。

  • 画面共有中に通知が表示され、内容が相手方や傍聴人に見られる可能性がある。
  • 誤送信のリスクがある。相手方の代理人や社外の相手に送ってしまう事故は現実に起こり得ます。
  • チャットの記録は残ります。後に開示や社内調査の対象となる可能性を意識してください。
  • 裁判所への発言をチャットで逐一指示するような運用は、手続の性質に照らして不自然です。使うとしても、事実確認の要否を伝える程度にとどめ、使うかどうか自体を期日前に代理人と決めておくことが推奨されます。

仮想事例(実在の事件ではありません)

ある企業では、和解期日に法務担当者と事業部長がウェブで参加した。担当者が自社の集計資料を画面共有したところ、共有画面の右下に社内チャットの通知がポップアップし、「この点は答えない方がよいのでは」という同僚のメッセージが数秒間表示された。担当者は気付かず共有を続け、期日後に代理人から指摘を受けて初めて事態を認識した――。

防ぐ方法は単純です。画面共有をする可能性がある端末では、期日前に通知をすべてオフにしておくこと。そして、共有は画面全体ではなく特定のウィンドウに限定することです。

関連記事:社外へ情報を出す前の確認とマスキングの考え方は「情報漏えい・マスキング地獄を防ぐ実務ガイド」で整理しています。

ウェブ証人尋問の要件|一般のウェブ期日とは違う

証人尋問は、一般のウェブ期日とは別の法定要件が置かれています。ここを混同すると、準備の前提を誤ります。

改正民訴法204条は、次の①から③のいずれかに該当する場合であって、かつ裁判所が相当と認めるときに、ウェブ会議の方法による証人尋問ができると定めています。

  1. 証人の住所、年齢または心身の状態その他の事情により、証人が受訴裁判所に出頭することが困難であると認める場合(1号)
  2. 事案の性質、証人の年齢または心身の状態、証人と当事者本人またはその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長および当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合(2号)
  3. 当事者に異議がない場合(3号)

3号がある場合でも、それだけでは足りません

「当事者双方に異議がなければ必ずウェブ尋問になる」わけではありません。裁判所の資料は、ウェブ尋問を実施するためには列挙事由が存在するとしても相当性の要件を満たす必要があると明記しています。相当性の判断について、同資料は、ウェブ尋問を実施する必要性が、証人が手元のメモ等を見て回答するおそれや、表情・声・動作の判別が対面と全く同等とは言い難いことといった弊害を上回る場合に、相当性の要件を充足することが考えられるとしています。

裁判所の資料は、相当性が認められやすい場面の例として、医師・学者等の専門家証人の尋問、重要な証人が遠隔地に所在するなどの事情で現実の出頭が困難な場合、圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある犯罪被害者などの場合を挙げています。企業間の紛争で、単に「担当者が忙しいから」という理由で認められるとは考えないでください。

当事者本人尋問との関係|従業員は通常「証人」です

民訴法210条は、ウェブ証人尋問に関する同法204条を当事者本人尋問について準用しています。また、同法211条により、当事者本人尋問に関する規定は、訴訟において当事者を代表する法定代理人についても準用されます。

企業実務で重要なのは、次の区別です。法人が当事者である場合、法人の代表者等の尋問と、一般の従業員の尋問は区別する必要があります。一般の従業員は通常、当事者本人ではなく証人として尋問を受けます。誰をどの立場で尋問するかは、事件ごとに代理人と確認してください。立場が変われば、宣誓の扱いや不出頭の効果など、適用される規律も異なります。

なお、簡易裁判所には、民訴法277条の2による特則があります。同条による尋問は、地方裁判所等における民訴法204条とは条文構造が異なるため、両者を同一の要件として整理しないよう注意が必要です。具体的な要件は代理人にご確認ください。少額訴訟等における取扱いは第5話で扱います。

図表5 ウェブ証人尋問が認められる要件

法定事由(民訴法204条) 裁判所資料に挙げられた例 当事者の同意・異議 裁判所の判断 企業側の準備
1号 出頭が困難 重要な証人が遠隔地に所在するなどの事情で現実の出頭が困難な場合 異議の有無は要件ではない 別途、相当性の判断が必要 出頭が困難である事情を客観的に説明できる資料を整理する
2号 圧迫を受けるおそれ 圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある犯罪被害者などの場合 同上 同上 証人の状況を代理人へ正確に伝える
3号 当事者に異議がない 専門家証人(医師・学者等)は相当性が認められる場合が多いとされる 相手方が異議を述べないことが前提 異議がないだけでは足りず、相当性の判断が必要 出頭場所の候補を早期に代理人と検討する

※本表は民訴法204条が適用される場合の整理です。当事者本人尋問には同法210条により準用されます。簡易裁判所については民訴法277条の2の特則があります。

証人はどこから参加できるのか

企業実務で最も判断を誤りやすいのが、この論点です。

改正民事訴訟規則123条1項は、ウェブ会議の方法により人証調べを行う場合、証人等を、次の要件を満たす場所であって裁判所が相当と認める場所に出頭させる必要があると定めています。

  1. 当事者本人またはその代理人が在席する場所でないこと。ただし、民訴法204条1号または3号に掲げる場合において、当該場所が当事者双方の在席する場所であるとき、または当事者本人もしくはその代理人が当該場所に在席することにつき当事者に異議がないときを除く(1号)
  2. 証人の陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると裁判所が認める者の在席する場所でないこと(2号)

この条文の読み方が実務を左右します。「自社の会議室は禁止」でも「自社の会議室なら自由」でもありません。問題は、その場所に誰が在席するかです。会社側の担当者や代理人だけが同席している状態は1号本文に触れる可能性がありますが、但書に該当する場合には例外があり得ます。そして、いずれにしても最終的には裁判所が相当と認める場所である必要があります。

裁判所の資料は、証人等が出頭するのに相当な場所として、証人等の最寄りの裁判所、受訴裁判所の別室、そして証人等の職場における独立した個室(他者が入ってこられず、音漏れ等も生じない場所)を挙げています。ただし、どの場所が相当とされるかは事案の類型によって異なるとされており、たとえば証言の信用性を慎重に判断すべきであり不正防止の必要性も高い場合には、基本的に最寄りの裁判所が考えられるとされています。

図表6 証人の参加場所ごとの注意点

場所 利用可能性 主な利点 主なリスク 事前確認事項
最寄りの裁判所 裁判所資料が、事案に応じた相当な場所の一つとして挙げている 裁判所管理下で本人確認や不正防止を行いやすい 証人の移動負担は残る。予約・調整が必要 利用可否と手続、書込み用の紙媒体を事前に送付する必要があるか
受訴裁判所の別室 圧迫のおそれがある場合等に挙げられている 証人と当事者の接触を相当程度回避できる 事案類型が限られる 裁判所との事前協議
自社(証人の職場)の会議室 職場の独立した個室が候補として挙げられているが、在席者と事案類型により判断が分かれる 証人の負担が小さい。設備を自社で整えられる 会社側の担当者や代理人が同席すれば場所要件に触れ得る。入室・音漏れの管理も自社責任 誰が在席するか/独立した個室か/裁判所の事前判断/代理人経由での協議
証人の自宅 当然に認められるものではない 移動負担がない 同居者の在席、通信環境、不正防止の確保が困難な場合がある 裁判所の判断。同居者の在席状況と通信環境
外部の貸会議室・ホテル 当然に認められるものではない 独立性を確保しやすい場合がある 第三者の立入り、音漏れ、通信の安定性を自ら担保する必要がある 裁判所の判断。施設の閉鎖性と通信環境
海外拠点 当然に可能とも不可能とも言えない 本人確認、通信環境、時差、所在地の問題が重なる 代理人を通じて裁判所に事前確認する

※いずれの場所についても、法的に一律に可・不可が決まるものではありません。最終的には、規則上の要件を満たし、かつ裁判所が相当と認める場所である必要があります。証人申請の段階で代理人と協議してください。

海外からの参加とmintsの海外利用は別の問題です

裁判所の資料によれば、mintsはシステムの仕様上、海外サーバーからアクセスすることができません。しかし、これは訴訟記録の閲覧や電子提出に関する制約であり、海外所在者がウェブ会議による期日に参加できるかどうかは別の論点です。後者については、裁判所の判断、所在場所、本人確認、通信環境、時差等を含めて、代理人を通じて裁判所に事前確認してください。

証人候補者への事前説明|「準備」と「証言内容の操作」は違う

最初に線を引いておきます。証人への事前説明とは、手続の進行と当日の環境を説明することです。証言内容を作り込むことや、事実と異なる供述を誘導することは、これに含まれません。記憶にないことを記憶しているように述べさせる働きかけは、証言の信用性を損なうだけでなく、それ自体が重大な問題を生じさせます。

そのうえで、自社の従業員や役員が証人となる場合、企業側が説明すべき事項は次のとおりです。

図表7 証人候補者への事前説明チェックリスト

当日の進行と所要時間
宣誓、主尋問、反対尋問、補充尋問という流れを事前に伝えます。
宣誓と本人確認の手順
ウェブ参加の場合の本人確認方法は、代理人を通じて裁判所に確認します。
出頭場所と入室の管理
誰も入室せず、音漏れしない場所であることを説明します。
カメラ位置と音声
顔と上半身が明瞭に映る位置に調整し、事前に接続テストを行います。
手元に置くもの・置かないもの
メモやスマートフォンを手元に置いてよいかは、事前に代理人へ確認します。裁判所は、証人が手元のメモ等を見て回答するおそれを相当性の判断で考慮するとしています。
資料の取扱い
尋問中の文書提示は代理人が行います。証人が自分で資料を用意して読み上げることは想定されていません。
質問への答え方
質問された事項に答える、分からないことは分からないと述べる、推測で答えない。これは証言内容の指示ではなく、正確に供述するための説明です。
録音・録画をしないこと
裁判長等の許可が必要であることを伝え、無許可で行わないよう周知します。
通信が切れた場合の対応
連絡先と、まず何をするかを紙で渡しておきます。
事前の接続テスト
当日と同じ場所・同じ端末で実施します。

なお、裁判所の資料によれば、尋問中に証人に書込みをさせる場合には紙媒体を準備する方法とデータに書込みをさせる方法があり、いずれも事前の準備や裁判所との打合せが必要とされています。特に、最寄りの裁判所以外の場所からウェブ参加する場合には書込み用の紙媒体やデータの送付が困難であるため、書込みを要する事案では出頭場所そのものの検討が必要になるとされています。証人の参加場所は、尋問の中身とも連動する論点です。

通信障害が起きた場合の対応

まず押さえるべき前提です。通信が切れただけで、自動的に期日が延期されるわけではありません。どのように扱われるかは、進行の状況や事案に応じた裁判所の判断によります。

関連して、裁判所の資料には示唆的な記載があります。ウェブ尋問を行う場合、尋問の対象者以外の多数の当事者・代理人がウェブ会議で参加すると、そのうちの一人の回線状況が悪くなって接続が切れた場合に手続を進めることができなくなることを踏まえ、可能な限り当事者・代理人は法廷に出頭することが考えられるとされています。つまり、通信障害は手続を止め得るものとして現実に想定されています。

企業側の実務対応は次のとおりです。なお、通信障害が生じた場合の法的効果や期日の具体的な取扱いについて、公表資料から確認できる範囲は限られています。最終的には裁判所の指示に従ってください。

図表8 通信障害時の初動フロー

1 まず再接続を試す(同じ回線・同じ端末)
2 復旧しなければ、代理人へ電話で連絡する
3 裁判所への連絡は、代理人または事前に決めた者が行う
4 予備回線・予備端末へ切り替える
5 以後の進行は裁判所の指示に従う
6 期日後に、発生時刻・状況・対応を記録に残す

※このフローは実務上の推奨であり、法令に定められた手順ではありません。連絡経路は事案ごとに代理人と事前に決めてください。

そして、この備えは属人化しやすい部分です。主担当が不在のときに誰が対応するのか、緊急連絡先を誰が把握しているのか。期日は担当者の都合で動きません。

関連記事:主担当・副担当の設定や担当者不在時の備えは「ひとり法務・少人数法務は何から整えるべきか」で整理しています。

ウェブ期日についてよくある誤解

図表9 ウェブ期日についてよくある誤解

よくある誤解 実際
希望すればウェブ期日にできる 裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いて実施されます(民訴法87条の2第1項)。意見を聴かれることと、同意が要件であることは異なります
ウェブ期日なら会社の会議室から自由に参加できる 当事者・代理人の参加場所と、証人等が出頭する場所は別の問題です。証人等については規則上の場所要件があり、裁判所が相当と認める場所である必要があります
企業担当者も代理人と一緒に自由に発言できる 裁判所への法的主張や手続対応は代理人が中心となり、企業担当者が当然に会社を代理して訴訟行為を行えるわけではありません。裁判所の求めや代理人との事前調整により事実関係を説明する場面はあり得るため、発言者と発言範囲は期日前に代理人と確認してください
証人は自宅から自由に参加できる 当然に認められるものではありません。同居者の在席、通信環境、不正防止の確保が問題となり、最終的には裁判所の判断です
当事者双方に異議がなければ、必ずウェブ証人尋問になる 民訴法204条3号に該当しても、別途、裁判所が相当と認める必要があります
オンライン会議なので録画してよい 法廷における録音・録画等は裁判長の許可を得なければすることができません(民事訴訟規則77条、78条により審尋等にも準用)。社内共有目的でも無許可では行えません。スクリーンショットについても自己判断で行わず、必要がある場合は代理人を通じて裁判所へ確認してください
社内チャットは裁判所には見えないので自由に使える 画面共有中に通知が表示されれば相手方や傍聴人に見られ得ます。誤送信や記録の残存のリスクもあります。使うかどうかを期日前に代理人と決めてください
通信が切れたら自動的に延期される 自動的に延期されるものではありません。まず再接続を試み、代理人へ連絡し、以後は裁判所の指示に従います
ウェブ期日では和解をその場で決めなければならない その場で回答すべき法的義務はありません。もっとも、決裁範囲を整理していないと、持ち帰りにより協議が長期化することがあります
海外拠点からも通常の社内会議と同じように参加できる mintsは海外からアクセスできませんが、ウェブ期日への参加可否はこれとは別の論点です。裁判所の判断、本人確認、通信環境、時差等を含め、代理人を通じて事前確認が必要です

関連コンテンツ:画面共有や資料送付の前に確認したい事項は「社外共有前チェックシート」に1枚でまとめています。

まとめ|ウェブ期日の成否は、事前に決めてあるかで決まる

  • ウェブで行うかは裁判所が判断する。当事者の意見は聴かれますが、希望が通る制度ではありません。
  • 一般のウェブ期日と証人尋問は要件が異なる。証人尋問には民訴法204条の法定事由と相当性の判断があります。
  • 企業担当者の役割は、代理人の補助と社内判断である。裁判所への法的主張や手続対応は代理人が中心となります。担当者が事実関係を説明する場面はあり得ますが、発言者と発言範囲は期日前に代理人と確認し、不確かな事項は推測で答えません。
  • 参加場所と同席者の管理が必要。特に証人の出頭場所は、規則上の要件と裁判所の判断に従います。自社会議室が使えるかどうかは、誰が在席するかで変わります。
  • 秘密情報と録音録画に注意する。録音・録画は裁判長等の許可制であり、画面共有時の通知は事前に止めます。
  • 和解権限を事前に整理する。その場で回答できる範囲と持ち帰る事項を、期日前に切り分けておきます。
  • 通信障害に備える。予備回線、予備端末、紙の緊急連絡先、そして主担当が不在のときの代替者を決めておきます。

ウェブ期日の成否は、接続できるかどうかで決まるものではありません。誰が、どこから参加し、何を担当し、問題が起きたときにどう動くかを事前に決めてあるかどうかで決まります。

続く第4話では訴訟記録のオンライン閲覧・電子送達・電子判決書の管理実務、第5話では法人本人訴訟と少額訴訟・支払督促、第6話では全体のチェックリストを扱います。

よくある質問(FAQ)

口頭弁論は、希望すればウェブ会議にできますか。

できるとは限りません。民訴法87条の2第1項は、裁判所が相当と認めるときに、当事者の意見を聴いてウェブ会議の方法により口頭弁論の期日における手続を行うことができると定めています。意見を聴かれることと、当事者の同意が要件であることは別です。実施するかどうかの判断は裁判所にあります。

企業担当者もウェブ期日に参加できますか。

事案により同席することがあります。ただし、裁判所への法的な主張や手続上の対応は代理人が中心となり、企業担当者が当然に会社を代理して訴訟行為を行えるわけではありません。裁判所の求めや代理人との事前調整により担当者が事実関係を説明する場面はあり得ますので、誰がどの範囲で発言するかを期日前に代理人と確認してください。なお、口頭弁論は公開の手続であり、ウェブ参加者の様子は法廷にモニターを設置するなどの方法で傍聴の対象となります(弁論準備手続や和解協議は非公開です)。

ウェブ期日を会社の会議室で行ってよいですか。

当事者・代理人の参加場所については、施錠でき、第三者が入室せず、音漏れや画面の視認が生じない個室であることが実務上重要です。他方、証人が出頭する場所については規則上の要件があり、会社側の担当者や代理人だけが同席する状態は要件に触れる可能性があります。いずれの場所についても、最終的には裁判所が相当と認める必要があるため、代理人を通じて事前に確認してください。

証人となる従業員は自宅から参加できますか。

当然に認められるものではありません。改正民事訴訟規則123条1項は、当事者本人またはその代理人が在席する場所でないこと(一定の例外があります)、証人の陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがあると裁判所が認める者の在席する場所でないことを求めており、加えて裁判所が相当と認める場所である必要があります。裁判所の資料は、相当な場所として最寄りの裁判所、受訴裁判所の別室、職場の独立した個室を挙げています。

当事者双方に異議がなければ、ウェブ証人尋問は必ず認められますか。

いいえ。民訴法204条3号の「当事者に異議がない場合」に該当しても、それだけでは足りません。裁判所の資料は、列挙事由が存在するとしても別途相当性の要件を満たす必要があると明記しています。なお、この整理は民訴法204条が適用される場合のものです。当事者本人尋問には同法210条により準用され、簡易裁判所には同法277条の2の特則があります。

ウェブ期日を録音・録画してもよいですか。

裁判長の許可を得なければ行うことができません。民事訴訟規則77条は、法廷における写真の撮影、速記、録音、録画または放送について許可を要すると定め、同78条により審尋等にも準用されます。絶対的な禁止ではありませんが、社内共有目的であっても無許可では行えません。スクリーンショットについても、裁判手続の画面を無断で保存する行為となるため、自己判断で行わず、必要がある場合は事前に代理人を通じて裁判所へ確認してください。参加者への事前周知も行ってください。

通信が切れた場合はどうなりますか。

自動的に期日が延期されるわけではありません。実務上は、まず再接続を試み、復旧しなければ代理人へ電話で連絡し、裁判所への連絡は代理人または事前に決めた者が行い、予備回線・予備端末へ切り替えて、以後は裁判所の指示に従うという流れになります。通信障害が生じた場合の法的効果や期日の具体的な取扱いについて公表資料から確認できる範囲は限られているため、事案ごとに代理人と連絡経路を決めておいてください。

参考資料・公的情報

本記事は、次の公的資料を確認して作成しています(いずれも最終確認日:2026年7月30日)。

本記事は2026年7月30日時点の公表情報に基づく一般的な解説であり、個別の事件についての法的助言ではありません。ウェブ会議による実施の可否、参加方法、証人等の出頭場所は、いずれも裁判所の判断によります。使用する会議システムや接続方法の案内は変更される可能性があります。実際の期日前には、担当裁判所の案内、担当書記官、および代理人弁護士にご確認ください。

読了後の実務化ガイド

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