シリーズ全10話 第5話|過去未了案件の是正 内容現在日:2026年8月27日
シリーズ
2026年住所等変更登記義務化|法人所有不動産の登記管理実務【全10話】
関連法令
不動産登記法第76条の5、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項、不動産登記規則第35条第8号
想定読者
法務・総務・コンプライアンス・不動産管理の各担当者

第3話の棚卸しで、2012年当時の本店住所のまま残っている土地が見つかった。しかし会社はその後、本店を3回移転し、商号も1回変更している──。

こうした案件は、第4話で扱った通常の申請手続とは別の準備が要ります。第5話は、過去に積み上がった未了変更をどう復旧するかだけを扱います。

POINT

結論|過去の変更を、回数分だけ登記し直すとは限らない

法務局の記載例は、申請書の原因欄について数回変更している場合は最後に変更した日を記載するとしています。3回移転していれば3件の変更登記、というものではありません。

ただし、中間の履歴を確認しなくてよいという意味ではありません。この作業の本質は「登記を何回するか」ではなく、登記記録上の旧表示から現在の表示まで、同じ法人であることと変更の連続性を何で証明できるかです。その証明ルートが、会社法人等番号で足りるのか、閉鎖事項証明書等まで必要になるのかで、作業量が大きく変わります。

シリーズ全10話

2026年住所等変更登記義務化|法人所有不動産の登記管理実務

制度の全体像から、自社不動産の棚卸し、過去分の処理、社内体制の構築までを10話で扱います。自社の状況に近いところから読み進めてください。

制度理解 第1話・第2話
棚卸し・是正 第3話〜第5話
第5話 過去の本店移転・商号変更が未登記ならどうする?|2028年3月31日までの対応 いまここ
自動化 第6話・第7話
組織再編 第8話
管理・チェックリスト 第9話・第10話
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2026年4月1日より前の未登記は2028年3月31日まで

施行日前に生じた変更も義務化の対象ですが、経過措置により猶予期間が設けられています。改正法附則第5条第7項は、施行日前の変更についても不動産登記法第76条の5を適用したうえで、「変更があった日」を「変更があった日または施行日のいずれか遅い日」と読み替える構造をとっており、法務省は施行日前の変更で変更登記がされていないものについて令和10年(2028年)3月31日までに変更登記をする必要があると案内しています。

POINT

「10年以上放置したから、すでに違反状態」ではありません

2010年の本店移転でも、2015年の商号変更でも、施行日前の変更である以上は猶予期間の中にあります。法務省のマスタープランでも、猶予期間中に住所等変更登記を行えば過料の適用対象となることはないとされています。過去の担当者を責める話ではなく、期限までに整えれば足りる話です。

一方で「2028年3月31日まで何もしなくてよい」わけでもありません。過去未了案件は、履歴の復元と証明資料の収集に時間がかかります。物件数が多い法人ほど、着手を前倒しする実務的な理由があります。

関連 期限の考え方、起算日、過料に至るまでの運用は第2話「法人の住所等変更登記はいつまで?」で扱っています。施行後に生じた変更には別途「変更があった日から2年以内」の期限が立つ点にも注意してください。

通常案件と過去未了案件は何が違うのか

表1:通常案件(第4話)と過去未了案件(第5話)の違い
観点通常案件過去未了案件
変更の回数直近の1回本店移転・商号変更が複数回、混在していることも多い
登記記録上の表示直前の表示何代も前の表示。物件ごとに異なることがある
履歴の確認現在事項証明書・履歴事項証明書で足りることが多い閉鎖事項証明書・閉鎖登記簿謄本まで遡ることがある
会社法人等番号現在の番号で完結しやすい過去に番号が変わっている可能性を確認する必要がある
期限変更があった日から2年以内2028年3月31日(施行日前の変更分)
主な作業申請書の作成と提出履歴の復元と、証明ルートの判定

※ 表は横にスクロールできます

まず「登記上の旧表示→現在表示」の履歴を復元する

最初の作業は、登記記録に残っている表示がいつの時点のものかを特定し、そこから現在までの経緯を時系列に並べることです。

図1:履歴復元のイメージ

登記記録に残っている表示

例:○○株式会社/東京都△△区(2012年当時の本店)

2015年 本店移転(同一管轄内)

商業登記は完了。不動産登記は未反映

2019年 本店移転(他管轄へ)

ここで会社法人等番号が変わっているかを確認する(後述)

2022年 商号変更

名称の変更も未反映であれば、住所と名称の両方が対象になる

現在の商号・本店

ここまでの連続性を、何で証明できるかを判定する

履歴の復元に使うのは、商業登記の現在事項全部証明書・履歴事項全部証明書・閉鎖事項証明書です。履歴事項全部証明書には保存期間の制約があるため、古い変更まで遡る場合は閉鎖事項証明書や閉鎖登記簿謄本が必要になることがあります。社内の沿革資料は手がかりにはなりますが、それだけで法的な事実を確定させないでください。

複数回変更している場合、申請書には何を書くのか

法務局が公開している法人向けの記載例は、原因欄について「会社の登記事項証明書に記載されている商号又は本店を変更した日」を記載するとしたうえで、数回変更している場合は、最後に変更した日を記載しますと明記しています。変更後の事項欄には、現在の商号または本店を記載します。

つまり、A→B→C→Dと3回移転していても、申請書上は「令和○年○月○日本店移転」(C→Dの日付)として、現在のDへ直す形になります。3件に分けて順番に申請していく必要はありません。

WARNING

「最後の変更日だけ書けばよい」=「中間履歴は確認不要」ではありません

申請書の記載を簡潔にできることと、変更の事実を証明しなくてよいことは別です。登記官は、登記記録上の旧表示Aから現在のDまでが同一法人の連続した変更であることを確認できなければなりません。その確認材料をどう提供するかが、次のセクションの論点です。

あわせて、申請書の原因欄に書く「最後に変更した日」と、第2話で扱った申請義務の起算日は別の概念です。混同しないでください。

図2:申請書の記載と、確認が必要な連続性

申請書に書くこと

登記の目的:○番所有権登記名義人住所変更/原因:最後に変更した日+本店移転/変更後の事項:現在の本店

登記官が確認する必要があること

旧表示A →(2015年)B →(2019年)C →(2023年)D が、いずれも同一法人の変更であること

その確認材料

会社法人等番号の提供で足りる場合と、閉鎖事項証明書等の提供が必要になる場合がある

会社法人等番号だけで履歴を証明できる場合

法務省のQ&Aによれば、会社法人等番号を提供することにより、法人の住所を証する情報や名称変更等を証する情報の提供を省略することができます。過去未了案件で問題になるのは、その省略が閉鎖登記記録に記録された事項にまで及ぶかです。

同Q&A(Q18-1)は、住所の変更事項等が閉鎖登記記録に記録されている場合であっても、会社法人等番号を提供すれば、次の閉鎖事項証明書の提供を省略することができるとしています。

POINT

省略できるとされている閉鎖事項証明書

  • 現在の会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書
  • 会社法人等番号が記載されていない閉鎖事項証明書(商業登記規則第44条第1項の規定により閉鎖された登記事項を証明したもの)

したがって、複数回の変更があること自体は、閉鎖事項証明書を必ず取得しなければならない理由にはなりません。まず現在の会社法人等番号との関係を確認するのが正しい順序です。

閉鎖事項証明書が必要になる場合

一方、法務省のQ&A(Q18-2)は、閉鎖事項証明書に現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている場合には、省略することができないとしています。

その理由として同Q&Aが挙げているのが、番号の付け替えです。平成24年5月20日(外国会社にあっては平成27年3月1日)以前の法人の登記においては、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記等をする場合には、会社法人等番号が変更されていたと説明されています。そして、この変更前の会社法人等番号が記録された登記記録に住所の移転の事項が記録されているときは、現在の会社法人等番号の提供に加えて、住所の移転の事項を確認することができる閉鎖事項証明書または閉鎖登記簿謄本を提供する必要があるとされています。

表2:会社法人等番号だけで足りる場合/閉鎖事項証明書等が必要になる場合
閉鎖登記記録の状態取扱い
現在の会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書会社法人等番号の提供により、提供を省略できるとされている
会社法人等番号が記載されていない閉鎖事項証明書(商業登記規則第44条第1項により閉鎖された登記事項を証明したもの)同上
現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書省略できない。変更前の番号の登記記録に住所の移転の事項が記録されているときは、それを確認できる閉鎖事項証明書または閉鎖登記簿謄本の提供が必要とされている

※ 表は横にスクロールできます

なお、法務局の記載例も同じ方向の注記を置いており、商号を複数回変更している場合や管轄登記所を異にする本店移転をしている場合には現在の登記事項証明書では変更を証明できないことがあるとし、それでも変更の経緯を証明できない場合には、申請する不動産を管轄する登記所に事前に相談するよう案内しています。過去未了案件では、この事前相談を工程に織り込んでおくと安全です。

平成24年5月20日以前の管轄外本店移転に注意

企業実務に引き直すと、注意すべきなのは次の組み合わせです。

図3:会社法人等番号が変わっている可能性の見取り図

1

平成24年5月20日以前に登記された変更があるか

外国会社については平成27年3月1日以前

2

その時期に、他の登記所の管轄区域内への本店移転や組織変更等があったか

これらの登記をする場合に会社法人等番号が変更されていたと説明されている

3

変更前の番号の登記記録に、住所の移転の事項が記録されているか

記録されている場合は、現在の番号の提供だけでは足りないとされている

4

結論

該当すれば、閉鎖事項証明書または閉鎖登記簿謄本を用意する。該当しなければ、現在の会社法人等番号の提供で足りる可能性がある

WARNING

「古い会社だから必ず旧番号がある」わけではありません

番号が変更されていたのは、上記の時期に一定の登記をした場合です。長く同じ管轄で登記されてきた会社であれば、設立が古くても番号は変わっていないことがあります。逆に、比較的新しい会社でも該当時期に他管轄へ移転していれば関係します。設立年ではなく、登記の履歴で判断してください。

なお法務省のQ&Aは、会社法人等番号の調べ方に関して、法人の閉鎖事項証明書に記載されている会社法人等番号は現在のものと異なる場合があるとも注意喚起しています。手元の古い書類から番号を転記する運用は避け、現在の登記事項証明書等で確認してください。

不動産によって旧表示が違う場合

企業で最も起きやすいのがこれです。取得時期がばらついていれば、登記されている表示も物件ごとに違います。

表3:ケース別の考え方
ケース状況実務上の要点
A:本店移転1回 2019年にA→B。不動産登記はAのまま 最も単純な過去未了案件。履歴も1段なので、現在の会社法人等番号で完結しやすい
B:本店移転3回 2010年A→2015年B→2020年C→2024年D。不動産登記はAのまま 申請書の原因は最後の変更日。AからDまでの連続性をどう示すかを先に決める
C:商号変更と本店移転が混在 旧商号A・旧本店X → 商号B → 本店Y → 現在は商号C・本店Z 名称と住所の双方が未反映。同一管轄内であれば、まとめて申請できる余地がある(後述)
D:旧会社法人等番号がある 平成24年5月20日以前に他管轄への本店移転等があり、閉鎖登記記録に現在と異なる番号が存在 現在の番号だけでは足りず、閉鎖事項証明書等が必要になる可能性がある。取得に時間を見込む
E:一部の物件だけ登記済み 本社ビルは現在表示、工場は旧本店、社宅はさらに前の旧本店 「会社として変更登記をしたことがある」は完了確認にならない。物件単位で現在表示と一致しているかを確認する

※ 表は横にスクロールできます

ケースEについて補足します。本店移転の際に本社ビルだけ手当てして、工場・社宅・遊休地が残ったというのは典型的な発生パターンです。過去の申請書控え、司法書士からの完了書類、登記完了証、当時の請求書、社内稟議などから「どの物件だけ処理したか」が分かる場合がありますが、これらは補助資料です。最終的には現在の登記記録で確認してください。

関連 物件単位の把握そのものは第3話「会社所有の不動産をどう洗い出す?」の作業です。第3話で作った所有不動産確認台帳に、「どの変更時点から未了か」「閉鎖事項の確認要否」「会社法人等番号の連続性」の欄を足しておくと、そのまま本記事の管理表につながります。

合併・会社分割を履歴に挟んでいたら別処理

履歴の途中に組織再編がある場合は、単純な表示変更として現在の名義まで直せるとは限りません。たとえばA株式会社が商号変更でB株式会社となり、その後C株式会社に吸収合併されたのであれば、所有主体そのものが承継されています。この場合に必要なのは表示の変更登記ではなく、承継を原因とする所有権移転登記です。

吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割・事業譲渡は、いずれもこの区別が問題になります。一方、持分会社と株式会社の間の組織変更、持分会社間の種類変更、特例有限会社から株式会社への移行などは、名義人の同一性が保たれる類型として別の扱いになります。履歴に組織再編・組織変更が含まれる場合は、まずその類型を確認してください。

詳しくは 何が変更登記で足り、何が移転登記になるのか、スマート変更登記の対象外とされる類型はどれかは、第8話「合併・会社分割ではスマート変更登記で足りない?|組織再編と不動産登記の注意点」で整理します。管理表の上でも、この案件は別レーンにしてください。

過去分がスマート変更登記で処理される場合

法人について実際にスマート変更登記が開始されたのは2026年5月15日です(制度そのものの施行日である2026年4月1日とは別の日付です)。

過去未了案件だからといって、必ず自社で申請しなければならないわけではありません。法務省の案内によれば、法人のスマート変更登記は次の場合に不動産登記システムへ変更情報が提供され、順次、登記官の職権による変更登記が行われるとされています。

法人のスマート変更登記の対象(法務省の案内による3類型)
1

会社法人等番号の登記後に、商業・法人登記上の住所等に変更があった場合

今後の変更が対象になるパターン。

2

既に商業・法人登記上の変更があり、2026年5月15日以降に会社法人等番号が所有権の登記事項として登記された場合

これから番号を入れる会社の過去分が対象になり得るパターン。

3

2026年5月15日より前に会社法人等番号が登記されており、既に商業・法人登記上の変更がある場合

すでに番号が入っている会社の過去分が対象になり得るパターン。

つまり、過去の変更であっても職権登記の対象になり得ます。旧表示を発見したら、いきなり申請書を作るのではなく、まず会社法人等番号が所有権の登記事項として登記されているか、すでに職権で登記されていないかを確認してください。

WARNING

ただし「たぶん直るはず」で完了扱いにしない

職権登記は完了まで一定の期間を要します。法人の場合は個人と異なり、登記をすることについての意思確認や完了連絡はないとされています。また、会社法人等番号がない法人は対象外で、吸収合併・吸収分割・新設合併・新設分割による変更の登記も対象外とされています。

2028年3月31日に向けたプロジェクトでは、登記記録で実際に現在の表示に変更されたことを確認し、その日付を台帳に残すところまでを社内管理上の完了基準にしてください。職権登記が完了する前に売却(所有権移転登記)や抵当権抹消の手続を行う必要がある物件は、職権登記を待たず自ら住所等変更登記を申請することになります。

詳しくは 会社法人等番号を不動産登記に入れる申出の手続は第6話、職権登記の仕組み・対象範囲・タイミングは第7話で扱います。

自社申請か、職権登記を待つか、専門家に依頼するか

図4:過去未了案件の判断フロー(企業実務上の目安であり、法令上定められた手順ではありません)

1

旧表示を発見

物件ごとに、登記されている名称・住所を確認する

2

会社法人等番号が所有権の登記事項として登記されているか

登記されていなければ、法人識別事項の申出(第6話)を検討するか、自社で変更登記を申請する

3

スマート変更登記の対象か

組織再編による承継など対象外の類型であれば、自社で申請する

4

職権登記が完了する前に、所有権移転・抵当権抹消等を行う必要があるか

必要があるなら、職権登記を待たず自ら住所等変更登記を申請する

5

必要がないなら、職権登記の進捗を確認しつつ対応する

法定期限を踏まえて対応状況を管理し、原則として期限前の反映確認を目標とする。余裕がなくなれば自社申請に切り替える

専門家への依頼を検討しやすいのは、本店移転が3回以上ある、商号変更と本店移転が混在している、平成24年5月20日以前に管轄外へ本店移転している、会社法人等番号が途中で変わっている、閉鎖事項証明書を複数取得する必要がある、合併・会社分割が履歴に挟まる、物件ごとに旧表示が違う、全国複数管轄にわたる、物件数が数十以上ある、職権登記の完了前に売却・抵当権抹消等を行う必要がある、といったケースです。もっとも、これは法的な基準ではなく、社内の工数と期限を踏まえた判断材料です。

POINT

複数の旧表示があっても、まとめられる余地があります

不動産登記規則第35条第8号は、同一の登記所の管轄区域内にある一または二以上の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも同一の登記名義人の氏名・名称または住所についての変更の登記または更正の登記であるときを、一の申請情報によって申請することができる場合として定めています。物件ごとに旧表示が異なり、登記原因やその日付が違っていても、同一管轄内であれば一の申請情報でまとめられる余地があります。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、申請件数ではなく個数で決まります。詳しくは第4話をご覧ください。

2028年3月31日対応の5フェーズ

図5:過去未了案件プロジェクトの5フェーズ

1

発見

所有不動産の母集団を確定し、旧表示が残っている物件を抽出する(第3話の作業)

2

履歴復元

商号履歴・本店履歴・会社法人等番号の履歴・組織再編の履歴を時系列に並べる

3

証明ルート判定

現在の会社法人等番号で足りるか、閉鎖事項証明書等が必要か、組織再編案件として別処理かを物件ごとに判定する

4

是正

自社申請、職権登記の活用、司法書士への依頼を組み合わせて実行する

5

完了確認

登記記録で反映を確認し、台帳を更新し、証跡を保存する

時間がかかるのはフェーズ2と3です。証明書の取得と読み解きが必要で、社内資料の照会も入ります。逆にここが終われば、フェーズ4は管轄ごとの事務作業になります。スケジュールを引くときは、フェーズ2・3に厚めの期間を置いてください。

過去未了案件管理表

第2話の期限管理表が変更イベント単位、第3話の確認台帳が不動産単位であるのに対し、この管理表は是正案件単位です。物件ごとに証明ルートと対応方法が違うため、独立した表として持つほうが管理しやすくなります。

表4:過去未了案件管理表(項目例)
項目記録する内容
管理番号案件番号
不動産所在・地番/家屋番号(登記記録どおり)
現在の登記表示登記されている名称・住所(旧商号・旧本店)
現在の会社情報現在の商号・本店
最後に登記済みの時点登記記録上の表示がいつの時点のものか
未反映の変更本店移転○回/商号変更○回
最後の変更日申請書の原因欄の候補となる日付
現在の会社法人等番号12桁
旧会社法人等番号有/無/未確認
閉鎖登記記録要/不要/確認中
組織再編有/無(有の場合は別レーンへ)
スマート変更登記対象/対象外/確認中
対応方法自社申請/職権登記の完了確認/司法書士へ依頼
法定期限2028/3/31(施行日前の変更分)
社内目標期限YYYY/MM/DD
申請日YYYY/MM/DD
完了確認日登記記録で反映を確認した日
証跡申請書控え・完了証・取得した証明書の保存先
備考共有持分、事前相談の記録などの個別事情

※ 表は横にスクロールできます

法務部が今確認するチェックリスト

2028年3月31日に向けて確認すること
1

旧表示が残っている物件を、物件単位で抽出したか

「会社として変更登記をしたことがある」は完了確認にならない。

2

登記記録上の表示がいつの時点のものかを特定したか

物件ごとに違うことを前提に確認する。

3

商号・本店の履歴を時系列に復元したか

履歴事項全部証明書で足りない場合は閉鎖事項証明書を取得する。

4

平成24年5月20日以前の管轄外本店移転・組織変更等がないか確認したか

該当すれば会社法人等番号が変わっている可能性がある。

5

現在の会社法人等番号を正しい方法で確認したか

古い書類からの転記ではなく、現在の登記事項証明書等で確認する。

6

証明ルートを物件ごとに判定したか

会社法人等番号で足りるか、閉鎖事項証明書等が必要か。

7

履歴に合併・会社分割等が含まれていないか確認したか

含まれていれば別レーンで処理する。

8

会社法人等番号が所有権の登記事項として登記されているかを確認したか

職権登記の対象になるかどうかの前提条件。

9

職権登記の完了前に売却・抵当権抹消等を行う必要がある物件を先に切り分けたか

必要があるなら職権登記を待たず自ら申請する。

10

管轄ごとに申請を束ねたか

同一管轄内であれば、旧表示が異なる物件でもまとめられる余地がある。

11

証明できない履歴について、登記所への事前相談を予定に入れたか

記載例でも事前相談が案内されている。

12

社内管理上の完了基準を「登記記録で反映を確認できた日」にしたか

申請したこと、職権登記の対象であることは、完了ではない。

関連 是正が終わった後に同じことを繰り返さないための社内ルールは第9話、シリーズ全体の点検表は第10話で扱います。制度の全体像を確認したい場合は第1話に戻ってください。

まとめ

POINT

第5話のまとめ

1.施行日前の未了分の期限は2028年3月31日。何年前の変更でも、この日までに整えれば猶予期間の中です。

2.変更の回数分だけ登記し直すとは限らない。申請書の原因欄は最後に変更した日を記載し、現在の表示へ直します。

3.ただし連続性の確認は必要。会社法人等番号で足りるか、閉鎖事項証明書等が必要かが分かれ目です。平成24年5月20日以前の管轄外本店移転等があると、番号が変わっている可能性があります。

4.過去分も職権登記の対象になり得る。会社法人等番号が登記され職権登記が未完了の状態は、一般に「正当な理由」があるとされています。社内管理上は登記記録で反映を確認し、職権登記の完了前に売却・抵当権抹消等を行う必要がある物件は自社で申請します。

5.時間がかかるのは履歴復元と証明ルートの判定。ここに厚めの期間を置いてスケジュールを引いてください。

ここまでで、過去に積み上がった未了変更を見つけて直すところまでが揃いました。次に必要なのは、同じことを繰り返さない仕組みです。その入口が、会社法人等番号を不動産登記に入れておくこと。次の記事で、その申出の手続を扱います。

よくある質問(FAQ)

Q110年前の本店移転でも変更登記が必要ですか?

A必要です。施行日前の変更も義務化の対象で、変更登記がされていなければ2028年3月31日までに行う必要があるとされています。何年前かは問われませんが、経過措置があるため現時点で直ちに違反状態というわけでもありません。

Q2本店を3回移転していますが、3回分の変更登記が必要ですか?

A回数分の申請が必ず必要になるわけではありません。法務局の記載例では、数回変更している場合は原因欄に最後に変更した日を記載し、変更後の事項として現在の本店を記載するとされています。ただし、旧表示から現在までが同一法人の連続した変更であることを確認できる必要があります。

Q3途中の商号変更も証明する必要がありますか?

A申請書に中間の変更をすべて書く必要はありませんが、変更の経緯を確認できる状態にはしておく必要があります。会社法人等番号の提供で足りる場合と、閉鎖事項証明書等の提供が必要になる場合があります。

Q4会社法人等番号があれば閉鎖事項証明書は不要ですか?

A不要になる場合とならない場合があります。法務省のQ&Aでは、現在の会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書や、会社法人等番号が記載されていない一定の閉鎖事項証明書は省略できるとされる一方、現在の会社法人等番号とは異なる番号が記載されている閉鎖事項証明書については省略できないとされています。

Q5平成24年以前に本店移転した会社は何に注意すべきですか?

A平成24年5月20日(外国会社は平成27年3月1日)以前の法人登記では、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店移転の登記等をする場合に会社法人等番号が変更されていたと説明されています。変更前の番号の登記記録に住所の移転の事項が記録されているときは、現在の番号の提供に加えて閉鎖事項証明書等が必要とされています。設立年ではなく登記の履歴で判断してください。

Q6過去分もスマート変更登記で直りますか?

A直る場合があります。法務省の案内では、既に商業・法人登記上の変更があり2026年5月15日以降に会社法人等番号が登記された場合や、2026年5月15日より前に番号が登記されており既に変更がある場合も対象とされています。ただし完了まで一定の期間を要し、法人には意思確認や完了連絡がないとされているため、登記記録で反映を確認してください。

Q72028年3月31日までに何を終えればよいですか?

A原則として、施行日前の未反映変更について2028年3月31日までに住所等変更登記を行う必要があります。もっとも、会社法人等番号が登記され、スマート変更登記の対象となっているものの職権登記が未完了の場合は、一般に「正当な理由」があるとされています。企業の内部管理上は、登記記録で現在表示への反映を確認した時点を完了として管理すると確実です。

参考資料・一次資料

不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の5、第76条の6|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123/
民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項
不動産登記令第4条、不動産登記規則第35条第8号(一の申請情報によって申請することができる場合)
法務省「住所等変更登記の義務化について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00694.html
法務省「住所等変更登記の義務化の施行に向けたマスタープラン」 https://www.moj.go.jp/content/001435690.pdf
法務局「不動産登記の申請書様式について」(1-5 会社の商号又は本店を変更又は移転した場合) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79
同ページ掲載「共通の記載例」(原因欄の記載、閉鎖事項証明書に関する注記、事前相談の案内) https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001365911.pdf
法務省「不動産登記令等の改正に伴う添付情報の変更に関するQ&A」(Q4、Q10、Q12、Q18-1、Q18-2ほか) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00237.html
法務省「スマート変更登記のご利用方法」(法人の場合の3類型、令和8年5月15日以降の運用) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00688.html
法務省「所有権の登記名義人による法人識別事項(会社法人等番号等)の申出について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00610.html

本記事は2026年8月27日時点で公開されている法令および法務省・法務局の資料に基づく一般的な情報提供です。過去の変更履歴が複雑な案件では、証明資料の要否が個別事情により異なります。実際の申請にあたっては、対象不動産を管轄する登記所または司法書士にご確認ください。

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