本店移転・商号変更をした会社が確認すべき不動産登記|登記漏れを防ぐ実務
第3話の棚卸しで、工場用地3筆と社宅1棟が旧本店のまま残っていることが分かった。では、次に何をすればよいのか。
第4話は、旧表示が見つかったあとの申請実務を扱います。制度の全体像は第1話、期限の考え方は第2話にあります。ここでは繰り返さず、何を、誰が、どこに、いくらで申請するのかに集中します。
結論|旧本店・旧商号が見つかったら
申請するのは所有権移転登記ではなく、所有権登記名義人の名称変更登記/住所変更登記です。申請先は不動産の所在地を管轄する登記所、登録免許税は不動産1個につき1,000円。申請人欄に会社法人等番号を記載すれば、登記事項証明書等の添付を省略できる場合があります。ただしその前に、会社法人等番号が所有権の登記事項として登記されていて職権登記(スマート変更登記)の対象になっていないかを確認してください。自主申請するかどうかの判断がここで変わります。
図1:旧表示の発見から登記完了までの10ステップ(企業実務上の推奨フローであり、法令上定められた手順ではありません)
対象不動産を確定する
第3話の確認台帳から、旧表示が残っている物件を抽出する
登記記録の旧表示を確認する
甲区の順位番号、登記されている名称・住所を正確に控える
商業・法人登記の変更履歴を確認する
旧表示から現在までの経緯と、変更があった日を特定する
会社法人等番号とスマート変更登記の対象かを確認する
所有権の登記事項として番号が登記されているかを物件ごとに確認する
自主申請するかを判断する
売却・担保取引の予定、対象外類型かどうかを踏まえて決める
管轄と申請単位を整理する
管轄登記所ごとに束ね、1件でまとめられる範囲を確認する
申請書・添付情報・登録免許税を準備する
不動産の個数から税額を算出し、添付情報を確定する
申請する
書面(郵送を含む)またはオンラインで、管轄登記所に申請する
登記完了を確認する
完了証を受領し、登記事項証明書等で反映を確認する
台帳と証跡を更新する
確認台帳を更新し、申請書控え・完了証を保存する
2026年住所等変更登記義務化|法人所有不動産の登記管理実務
制度の全体像から、自社不動産の棚卸し、過去分の処理、社内体制の構築までを10話で扱います。自社の状況に近いところから読み進めてください。
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本店移転・商号変更で申請する不動産登記
本店を移転しても、商号を変更しても、法人自体は同じです。所有者が入れ替わったわけではないので、申請するのは所有権移転登記ではなく、登記名義人の表示を直す変更登記です。
| 会社側の変更 | 直す登記事項 | 登記の目的(記載例) | 登記原因(記載例) |
|---|---|---|---|
| 本店移転・主たる事務所の移転 | 登記名義人の住所 | ○番所有権登記名義人住所変更 | 令和○年○月○日本店移転 |
| 商号変更・法人名称の変更 | 登記名義人の名称 | ○番所有権登記名義人名称変更 | 令和○年○月○日商号変更 |
| 合併・会社分割・事業譲渡による承継 | 所有権そのもの(名義人が入れ替わる) | 変更登記では処理できない。所有権移転登記の問題 | — |
※ 表は横にスクロールできます
登記の目的の「○番」は、甲区の何番の所有権の登記名義人について変更するのかを示す順位番号です。法務局の記載例では、付記登記がある場合でも主番号のみを記載するとされています。
申請前に確認する5つの情報
申請書を作る前に、次の5点を確定させます。ここが埋まっていれば、申請書の記載はほぼ機械的に決まります。
対象不動産
登記記録どおりの所在・地番・家屋番号。不動産番号を控えておくと申請書の記載を省略できる。
甲区の順位番号と登記上の旧表示
登記の目的の「○番」と、現に登記されている名称・住所。
現在の商号・本店
商業登記の登記事項証明書に記載されているとおりの表記。変更後の事項としてそのまま記載する。
変更があった日と変更履歴
商業登記の登記記録・議事録等を突き合わせて確認する。本店移転は、決議上の移転予定日だけで判断せず、実際の移転状況を含めて確認する。
会社法人等番号
商業登記の登記事項証明書または印鑑証明書に記載されている12桁の数字。法人番号(13桁)とは別のもの。
起算日と申請書の「原因の日付」は別の話
申請書の原因欄に書くのは、法務局の記載例によれば「会社の登記事項証明書に記載されている商号又は本店を変更した日」であり、数回変更している場合は最後に変更した日を記載するとされています。一方、第2話で扱った申請義務の起算日は、各変更があった日ごとに考えます。申請書の書き方と期限の数え方を混同しないでください。いずれにしても、商業登記の申請日・完了日が起算日になるわけではありません。
申請書には何を書くか
法務局は「登記名義人住所・氏名変更登記申請書(会社の商号又は本店を変更又は移転した場合)」の様式と記載例を公開しています。主要な記載事項は次のとおりです。
| 欄 | 記載する内容 |
|---|---|
| 登記の目的 | 「○番所有権登記名義人名称変更」または「○番所有権登記名義人住所変更」。甲区の順位番号を記載する |
| 原因 | 「令和○年○月○日商号変更」または「令和○年○月○日本店移転」。数回変更している場合は最後に変更した日を記載する |
| 変更後の事項 | 商業登記の登記事項証明書に記載されている現在の商号または本店 |
| 申請人 | 申請人である会社の住所・名称・会社法人等番号、代表者の資格および氏名。本人申請の場合は代表者が押印する |
| 添付情報 | 「登記原因証明情報」「会社法人等番号」。代理人による場合は「代理権限証明情報」を加える |
| 連絡先の電話番号 | 補正が必要な場合に登記所から連絡を受けられる番号 |
| 申請日・申請先 | 申請年月日と、対象不動産を管轄する法務局・地方法務局(支局・出張所) |
| 登録免許税 | 土地または建物1個につき1,000円で計算した金額 |
| 不動産の表示 | 登記記録どおりに正確に記載する。不動産番号を記載した場合は、所在・地番・地目・地積(建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積)の記載を省略できる |
※ 表は横にスクロールできます
登記識別情報は添付情報に挙げられていません
法務局の記載例で添付情報として挙げられているのは、登記原因証明情報と会社法人等番号(代理人による場合は代理権限証明情報)です。所有権移転登記と異なり、登記識別情報や権利証は添付情報として挙げられていません。「登記のことだから権利証が要るはずだ」と探し始める必要はありません。ただし個別の事情によって求められる書類が変わることはあるため、判断に迷う場合は管轄登記所または司法書士に確認してください。
書面申請の場合、申請書はA4の用紙を使用し、他の添付情報と共に左とじで提出します。複数枚にわたる場合はつづり目に契印が必要です。郵送による申請も可能で、その場合は封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載して書留郵便で送付するよう案内されています。
添付情報|会社法人等番号で何を省略できるか
法人実務で最も効くのがここです。法務省のQ&Aによれば、会社法人等番号を有する法人が不動産登記を申請する場合には、会社法人等番号を提供しなければならないのが原則です。そのうえで、会社法人等番号を提供することにより、住所を証する情報、法人の名称変更等を証する情報、法人の合併による承継を証する情報などの提供を省略することができるとされています。
ただし、「会社法人等番号を書けば添付書類が全部不要になる」わけではありません。省略できる範囲には明確な例外があります。
| 項目 | 会社法人等番号を提供する場合 | 登記事項証明書を提供する場合 |
|---|---|---|
| 申請書への記載 | 申請人欄の法人の名称の下に会社法人等番号を記載する | 添付情報欄に「登記事項証明書」と記録する。この場合、申請情報に会社法人等番号を記録してはならないとされている |
| 登記原因証明情報 | 履歴事項証明書や閉鎖事項証明書を添付する必要はないとされている(例外あり。下記参照) | 会社の登記事項証明書を添付する |
| 商業・法人登記が申請中の場合 | 不動産登記の申請の受付はされるが、当該法人登記が完了するまで不動産登記を処理することはできないとされている | 作成後3か月以内の登記事項証明書を提供した場合は、法人登記の完了にかかわらず不動産登記は処理されるとされている |
| 連件申請の場合 | 1件目に会社法人等番号を記載し、2件目以降は添付情報欄に「会社法人等番号(前件添付)」と記載して省略できるとされている | — |
※ 表は横にスクロールできます
古い変更履歴があると省略できないことがある
法務省のQ&Aは、住所の変更事項等が閉鎖登記記録に記録されている場合について、現在の会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書や、会社法人等番号が記載されていない閉鎖事項証明書は提供を省略できるとしています。一方、閉鎖事項証明書に現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている場合には、省略することはできないとされています。
これは古い法人ほど当たりやすい論点です。同Q&Aは、平成24年5月20日(外国会社は平成27年3月1日)以前の法人登記では、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店移転の登記等をする場合に会社法人等番号が変更されていたと説明しています。変更前の会社法人等番号が記録された登記記録に住所の移転の事項が記録されているときは、現在の会社法人等番号の提供に加えて、その事項を確認できる閉鎖事項証明書または閉鎖登記簿謄本を提供する必要があるとされています。
法務局の記載例も同じ方向で、商号を複数回変更している場合や管轄登記所を異にする本店移転をしている場合には、現在の登記事項証明書(履歴事項証明書)では変更を証明できないことがあるとし、その場合は登記記録上の表示から現在までの経緯が分かる閉鎖事項証明書等を添付するよう案内しています。それでも経緯を証明できない場合には、申請する不動産を管轄する登記所に事前に相談するよう明記されています。
登記事項証明書の「作成後○か月以内」について
現行の法務省Q&Aでは、会社法人等番号に代えて登記事項証明書を提供する場合の期間は作成後3か月以内とされており、同Q&Aは令和2年3月29日までは作成後1か月とされていたことも明記しています。一方、法務局が現在公開している法人向けの記載例には、旧来の「作成後1か月以内」との記載が残っています。本記事では現行のQ&Aに基づき「作成後3か月以内」と整理します。実際に登記事項証明書を添付する方法を採る場合は、念のため最新の様式・記載例もあわせて確認してください。なお、会社法人等番号を記載する方式であれば、この論点自体が生じません。
商業登記と不動産登記の順序
商業・法人登記の変更と不動産登記の申請をどの順序で進めるかは、実務上よく問題になります。法務省のQ&Aは、法人登記を申請している場合に会社法人等番号を提供して不動産登記を申請したときは、受付はされるが、その法人登記が完了するまで不動産登記を処理することはできないとしています。
したがって、商業登記の申請直後に会社法人等番号方式で不動産登記を出しても、処理は商業登記の完了待ちになります。企業実務としては、商業・法人登記の変更内容が確認できる状態になってから不動産登記を進めるほうが見通しが立ちやすいでしょう。ただしこれは法定の順序ではなく、進め方の問題です。急ぐ事情がある場合は、作成後3か月以内の登記事項証明書を提供する方式であれば法人登記の完了にかかわらず処理されるとされているため、どちらの方式を採るかを含めて検討することになります。
複数の土地・建物はまとめて申請できるか
申請情報は、登記の目的および登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供するのが原則です(不動産登記令第4条本文)。同条ただし書は、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的・登記原因およびその日付が同一であるときなどに例外を認めています。
さらに、不動産登記規則第35条第8号は、同一の登記所の管轄区域内にある一または二以上の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも同一の登記名義人の氏名・名称または住所についての変更の登記または更正の登記であるときを、一の申請情報によって申請することができる場合として定めています。これは登記の目的・原因・日付の同一性を要件とする一般ルールとは別の特則であり、同じ法人についての名称・住所の変更登記であれば、登記原因やその日付が異なる場合でも一の申請情報でまとめられる余地があります。物件ごとに変更の経緯が違う法人にとっては、実務上の負担を大きく左右する点です。
法務局の記載例も、土地1筆と建物1個について1通の申請書で申請する形になっており、登録免許税は2,000円と記載されています。
まとめられるのは同一管轄の範囲まで
一括して申請できるのは同一の登記所の管轄区域内にある不動産についてです。全国の不動産を本店所在地の法務局へ1件でまとめて申請することはできません。商業・法人登記の管轄(本店所在地)と、不動産登記の管轄(不動産の所在地)は別物です。
図2:複数不動産・複数管轄の整理イメージ
本社ビル(東京都○○区)
土地2筆+建物1個=不動産3個/管轄A → 1件でまとめられる範囲
大阪工場(大阪府○○市)
土地5筆+建物3個=不動産8個/管轄B → 管轄Aとは別の申請
社宅(神奈川県○○市)
建物1個/管轄C → さらに別の申請
整理の考え方
管轄登記所ごとに整理する。同一管轄内で、同一の登記名義人についてする名称・住所の変更登記または更正登記であれば、不動産登記規則第35条第8号により、登記原因やその日付等が異なる場合でも一の申請情報で申請できる場合がある。申請は書面(郵送を含む)またはオンラインで行えるため、各地の登記所へ出向く必要はない
オンライン申請は、登記・供託オンライン申請システムの申請用総合ソフトを利用します。電子証明書を持っていない場合でも、同ソフトで申請書を作成し、その情報をインターネット経由で送信するQRコード(二次元バーコード)付き書面申請という形態が用意されています。なお、商業・法人登記のオンライン申請とは別の手続です。
登録免許税はいくらか
法務局の記載例は、登録免許税は土地または建物1個につき1,000円としています。申請件数ではなく、対象となる不動産の個数で計算します。
| 対象 | 内訳 | 不動産の個数 | 登録免許税 |
|---|---|---|---|
| 本社ビル(管轄A) | 土地2筆+建物1個 | 3個 | 3,000円 |
| 大阪工場(管轄B) | 土地5筆+建物3個 | 8個 | 8,000円 |
| 社宅(管轄C) | 建物1個 | 1個 | 1,000円 |
| 合計 | — | 12個 | 12,000円 |
※ 表は横にスクロールできます
納付は、収入印紙を貼り付けた用紙または現金納付の領収書を貼り付けた用紙を申請書と一括してつづり、つづり目に契印をする方法によります。
単純計算できない場合があります
敷地権付き区分建物、共有持分、名称変更と住所変更が同時に生じている場合、変更登記と更正登記が混在する場合などは、個数の数え方や課税の区分が単純ではありません。物件数が多い場合や構成が複雑な場合は、税額の試算を含めて司法書士に確認するのが確実です。
自主申請とスマート変更登記、どちらを選ぶか
2026年現在、旧表示を発見したら必ず自主申請、というわけではありません。所有権の登記事項として会社法人等番号が登記されている物件は、登記官が職権で変更登記を行う対象になり得ます。以下は法的な区分ではなく、企業実務上の判断軸です。
| 自主申請を優先しやすいケース | 職権登記を待つことを検討できるケース |
|---|---|
| 売却・所有権移転登記の予定がある | 会社法人等番号が所有権の登記事項として登記済み |
| 抵当権の設定・抹消の予定がある | スマート変更登記の対象になっている |
| 取引スケジュールが決まっている | 当面、売却・担保取引の予定がない |
| 会社法人等番号が登記されておらず、そもそも対象外 | 変更の経緯が単純で、連携で処理される見込みが立つ |
| 吸収合併・吸収分割・新設合併・新設分割など対象外の類型 | — |
| 過去の変更が複雑で、個別の確認が必要 | — |
※ 表は横にスクロールできます
売却や抵当権抹消の手続では、現在の住所等と登記簿上の住所等が一致している必要があります。法務省の案内でも、登記簿上の表示がまだ変更されていない段階でこれらの手続をする必要がある場合には、別途自ら変更登記を申請する必要があるとされています。職権登記の対象であっても、取引が先に来るなら自社で申請するという判断になります。
自社で申請するか、司法書士に依頼するか
これも法的な区分ではなく、実務上の判断材料です。自社で対応しない場合は、不動産登記の申請代理を専門業務として扱う司法書士に依頼する方法があります。
| 自社対応を検討しやすい | 司法書士への依頼を検討しやすい |
|---|---|
| 対象物件が少ない | 全国に多数の不動産がある |
| 変更履歴が単純(直近の1回のみ) | 本店移転・商号変更が複数回ある |
| 同一管轄で完結する | 複数管轄にまたがる |
| 登記記録と商業登記の突合が容易 | 閉鎖事項証明書まで遡る必要がある |
| 社内に登記実務の経験者がいる | 組織再編が絡む/売却・担保設定の期限が迫っている/登記記録と社内資料が一致しない |
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複数回の本店移転・商号変更がある場合
登記記録上の表示が何代も前のものであっても、申請自体は現在の表示に向けて行います。法務局の記載例は、原因の日付について数回変更している場合は最後に変更した日を記載するとしています。
ただし、前述のとおり、変更の経緯を何で証明するかが論点になります。会社法人等番号の提供で足りる場合と、閉鎖事項証明書等が必要になる場合があり、その分かれ目は閉鎖事項証明書に記載された会社法人等番号が現在のものと同じかどうかです。古い会社ほど確認に時間がかかるため、スケジュールには余裕を見てください。
登記完了後に確認すること
甲区の順位番号と旧表示を登記記録で確認したか
申請書の「登記の目的」に直結する。
変更があった日を商業登記・議事録等で確認したか
予定日と実際の状況が食い違っていないかを含めて確認する。
変更の経緯を何で証明するかを決めたか
会社法人等番号の提供で足りるか、閉鎖事項証明書等が必要かを確認する。
管轄登記所ごとに申請を束ねたか
同一管轄内でまとめられる範囲を確認する。
不動産の個数から登録免許税を算出したか
申請件数ではなく個数で計算する。
完了証を受領し、登記記録で反映を確認したか
申請したことと、登記されたことは別。登記事項証明書等で名称・住所を確認する。
会社法人等番号の記録状況を確認したか
今後の職権登記の対象になるかどうかに関わる。
第3話の確認台帳を更新したか
「住所等変更登記:済」「完了確認日」「証跡」を埋める。
申請書控え・完了証・取得した証明書を保存したか
保存場所を固定し、担当者交代に耐える形にする。
次回の本店移転・商号変更で再利用できる形に整理したか
管轄一覧、物件一覧、申請書の雛形をセットで残す。
まとめ
第4話のまとめ
1.申請するのは表示変更登記。本店移転なら住所変更、商号変更なら名称変更。所有権移転登記ではありません。
2.申請先は不動産の所在地を管轄する登記所。同一管轄内で、不動産登記規則第35条第8号の要件を満たす名称・住所の変更登記であれば複数の不動産を1件でまとめられますが、全国分を1か所にまとめることはできません。
3.登録免許税は不動産1個につき1,000円。申請件数ではなく個数で計算します。
4.会社法人等番号で添付を省略できるが、例外がある。閉鎖事項証明書に現在と異なる会社法人等番号が記載されている場合などは省略できません。
5.自主申請か職権登記待ちかは、取引予定で決まる。売却・担保取引が先に来るなら自社で申請します。
ここまでが基本形です。直近の変更で、履歴が明確で、突合も容易なケースであれば、この流れで処理できます。問題は、何年も放置されてきた旧表示、複数回の変更、閉鎖登記記録まで遡る必要があるケースです。次の記事では、その過去未了案件の処理を扱います。
よくある質問(FAQ)
Q1本店移転の商業登記をすれば、不動産登記も自動で変わりますか?
A商業・法人登記と不動産登記は別の手続なので、商業登記をしたことで当然にすべて変わるわけではありません。ただし、所有権の登記事項として会社法人等番号が登記されている物件は、登記官が職権で変更登記を行う対象になり得ます。まず自社の物件がどちらかを確認してください。
Q2商号変更した場合、土地・建物の登記も変更が必要ですか?
Aその法人が所有権の登記名義人であれば、登記名義人の名称変更登記が必要になります。所有者が入れ替わるわけではないので、所有権移転登記ではありません。
Q3住所・名称変更登記の登録免許税はいくらですか?
A法務局の記載例では、土地または建物1個につき1,000円とされています。申請件数ではなく不動産の個数で計算するので、土地3筆と建物2個であれば5個分で5,000円です。敷地権付き区分建物や共有持分などは単純に計算できない場合があります。
Q4会社法人等番号があれば登記事項証明書は不要ですか?
A多くの場合は省略できますが、常にではありません。法務省のQ&Aでは、閉鎖事項証明書に現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている場合には省略できないとされています。平成24年5月20日以前は、組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店移転で会社法人等番号が変更されていたためです。
Q5全国に不動産がある場合、1つの法務局にまとめて申請できますか?
Aできません。不動産登記は対象不動産の所在地を管轄する登記所に申請します。同一管轄内であれば複数の不動産を1件の申請にまとめられますが、管轄をまたぐことはできません。申請自体は郵送やオンラインでも可能なので、各地の登記所へ出向く必要はありません。
Q6商業登記を申請した直後に不動産登記を出してもよいですか?
A法務省のQ&Aでは、法人登記を申請している場合に会社法人等番号を提供して不動産登記を申請したときは、受付はされるものの、その法人登記が完了するまで不動産登記を処理することはできないとされています。作成後3か月以内の登記事項証明書を提供した場合は、法人登記の完了にかかわらず処理されるとされています。
参考資料・一次資料
本記事は2026年8月27日時点で公開されている法令および法務省・法務局の資料に基づく一般的な情報提供です。申請書の様式・添付情報・手数料等は変更されることがあります。個別の申請にあたっては、対象不動産を管轄する登記所または司法書士にご確認ください。
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