シリーズ全10話 第2話|期限管理 内容現在日:2026年8月27日
シリーズ
2026年住所等変更登記義務化|法人所有不動産の登記管理実務【全10話】
関連法令
不動産登記法第76条の5・第164条第2項、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項
想定読者
法務・総務・コンプライアンス・不動産管理の各担当者

法人が所有する不動産について、住所等変更登記はいつまでに済ませる必要があるのか。結論から整理します。

POINT

結論

2026年4月1日以降に名称・住所が変わった場合は、原則としてその変更があった日から2年以内に変更登記を申請する義務があります(不動産登記法第76条の5)。

2026年4月1日より前に変わっていて、まだ変更登記をしていない場合は、2028年(令和10年)3月31日までに変更登記をする必要があります(民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項)。

正当な理由がないのに申請を怠った場合は、5万円以下の過料の適用対象となります(同法第164条第2項)。ただし、期限を過ぎた瞬間に自動的に科されるものではなく、登記官の催告を経たうえで裁判所が判断する運用とされています。

注意が必要なのは、期限の起算点が「商業登記が完了した日」でも「担当者が気付いた日」でもない点です。法人の場合、本店移転や商号変更をめぐって社内には複数の日付が存在します。どの日を起点として2年を数えるのかを決めないと、期限管理表そのものが作れません。

本記事は、制度の全体像ではなく期限に絞って整理します。制度そのものの概要、商業登記と不動産登記の違い、対象となる法人の範囲については第1話「住所等変更登記の義務化とは|2026年から法人も対象になる新制度を解説」をご覧ください。

表1:法人の住所等変更登記・期限早見表
区分原則的な期限根拠
2026年4月1日以降に名称・住所が変更された場合 変更があった日から2年以内 不動産登記法第76条の5
2026年4月1日より前に変更されており、変更登記が未了の場合 2028年3月31日まで 改正法附則第5条第7項(法務省案内)
会社法人等番号が登記され、職権による変更登記(スマート変更登記)の対象となっている場合 期限の考え方は上記と同じ。職権登記がされれば義務を履行したものとして扱われる 不動産登記法第76条の6、法務省マスタープラン

※ 表は横にスクロールできます

シリーズ全10話

2026年住所等変更登記義務化|法人所有不動産の登記管理実務

制度の全体像から、自社不動産の棚卸し、過去分の処理、社内体制の構築までを10話で扱います。自社の状況に近いところから読み進めてください。

制度理解 第1話・第2話
第2話 法人の住所等変更登記はいつまで?|2年以内の期限・過料・2028年3月31日の経過措置 いまここ
棚卸し・是正 第3話〜第5話
自動化 第6話・第7話
組織再編 第8話
管理・チェックリスト 第9話・第10話
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法人の住所等変更登記は「変更日から2年以内」

不動産登記法第76条の5は、所有権の登記名義人について氏名・名称または住所に変更があったときは、その変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないと定めています。法務省の案内も同じ整理で、正当な理由がないのに申請を怠ったときは同法第164条第2項により5万円以下の過料の適用対象になるとしています。

ここで押さえるべきは、条文が起算点としているのが「変更があった日」である、という一点です。次のいずれでもありません。

WARNING

起算点ではないもの

  • 商業・法人登記の申請日完了日
  • 不動産の登記事項証明書を取得した日
  • 社内で未了に気付いた日/担当者が引き継いだ日
  • 2026年4月1日(施行日)そのもの(施行後に生じた変更については、各変更日が起算点です)

複数の不動産を保有する法人では、1回の本店移転が複数の物件に同時に影響します。物件ごとに別々の期限が立つのではなく、同一の変更イベントについては、その変更時点で法人が所有権の登記名義人となっており、かつ旧表示が残っている不動産を、共通の期限でまとめて管理できると考えると整理しやすくなります。逆に、その変更より後に取得し、当初から新しい表示で登記されている物件については、その変更に係る変更登記の問題は生じません。

「変更があった日」とはいつか

本記事の実務上の核心です。法人では、ひとつの本店移転や商号変更に対して、社内決議日・効力発生日・実際の移転日・商業登記の申請日・完了日など、複数の日付が発生します。

不動産登記法第76条の5が起算点とするのは、登記記録に記録されている名称・住所という登記事項の内容が現に変わった日です。商業登記は変更の事実を公示する手続であって、変更そのものを発生させる手続ではありません。したがって、商業登記の完了日を起算点として2年を数えるのは正確ではありません。

以下は株式会社を例に説明します。株式会社以外の法人(合同会社等の持分会社、一般社団法人、医療法人など)については、それぞれの根拠法令と定款に基づいて、名称・住所の変更の効力がいつ生じたかを確認する必要があります。

本店移転の場合

株式会社の本店移転では、定款で本店の所在地をどこまで定めているかによって、株主総会での定款変更決議が必要な場合と、取締役会等の決定で足りる場合があります。ただし、単に取締役会等で定めた「移転予定日」を見れば足りるわけではありません。必要な機関決定や定款変更が適法に行われ、かつ現実に本店が移転した時点を踏まえて、商業登記上の本店移転日を確認する必要があります。

移転の準備期間や賃貸借の関係で、決議上の日付と現実の移転日が数か月ずれることは珍しくありません。この場合は、予定日だけで住所等変更登記の起算日を判断せず、議事録・商業登記の登記記録・実際に移転した日を突き合わせて確認してください。判断に迷う場合は司法書士に確認するのが確実です。

商号変更の場合

株式会社の場合、商号変更は定款変更事項であり、原則として株主総会の特別決議が必要です。決議の中で効力発生日を定めた場合はその日、特に定めがなければ決議の効力が生じた日が、名称の変更があった日として整理されます。決議日と効力発生日が異なる設計になっていることがあるため、議事録で必ず確認してください。株式会社以外の法人については、それぞれの根拠法令・定款に基づいて名称変更の効力発生日を確認します。

POINT

期間の満了日は余裕を持って設定する

法定期限の具体的な満了日は、変更の効力が生じた時点と、民法上の期間計算のルールを踏まえて個別に確認します。「変更日の2年後の同じ日」と機械的に置き換えられるものではありません。社内管理では、法定期限を独自計算でぎりぎりに設定するのではなく、確認した法定期限より数か月前を申請目標日として設定するのが安全です。複数管轄にまたがる申請では、書類収集と申請に相応の時間がかかります。個別案件で満了日が問題になり得る場合は、司法書士に確認してください。

詳しくは 変更日を特定したあと、実際にどの書類をそろえ、どの登記所に何をどう申請するのかは、第4話「本店移転・商号変更をした会社が確認すべき不動産登記|登記漏れを防ぐ実務」で扱います。

2026年4月1日より前の変更は2028年3月31日まで

施行日より前に生じた変更も義務化の対象です。ただし、施行前の変更にいきなり「すでに期限切れ」という扱いをするわけではありません。改正法の経過措置により、猶予期間が設けられています。

改正法附則第5条第7項は、施行日前に名称・住所の変更があった場合についても不動産登記法第76条の5を適用したうえで、条文中の「変更があった日」を「変更があった日または施行日のいずれか遅い日」と読み替える構造をとっています。施行日前の変更であれば、常に施行日(2026年4月1日)のほうが遅い日になりますから、そこから2年という計算になります。

この結果として、法務省は施行日前の変更で変更登記がされていないものについて、令和10年(2028年)3月31日までに変更登記をする必要があると案内しています。法務省のマスタープランでも、2年間の猶予期間が設けられており、猶予期間中に住所等変更登記を行えば過料の適用対象となることはないとされています。

図1:施行前/施行後の期限判定フロー

1

名称・住所の変更があった

本店移転、主たる事務所の移転、商号変更、法人名称の変更

2

変更があった日は2026年4月1日より前か

効力発生日ベースで判定する。商業登記の完了日ではない

3A

施行日より前だった場合

不動産登記に反映済みなら対応不要。未了であれば 2028年3月31日までが期限

3B

施行日以後だった場合

その変更があった日から2年以内が期限。変更ごとに期限が立つ

4

会社法人等番号の登記の有無を確認する

登記されていれば職権による変更登記の対象となり得る。職権で登記されれば義務を履行したものとして扱われる

WARNING

「2028年4月1日まで」ではありません

法務省の案内は一貫して令和10年3月31日としています。社内資料や期限管理表に落とすときは日付を取り違えないでください。また、この2028年3月31日は施行日前の変更で未了のものについての期限であり、すべての法人に一律に課される期限ではありません。施行日以後に生じた変更には、それぞれの変更日から2年という期限が別に立ちます。

過去の本店移転・商号変更も期限管理の対象

期限の考え方を、企業でありがちなケースに当てはめて整理します。

表2:ケース別の期限の考え方
ケース施行前/施行後期限の考え方まず確認すべきこと
A:2018年に本店移転。不動産登記は旧本店のまま 施行前 2028年3月31日まで 対象物件の洗い出し。移転が複数回あるなら履歴を時系列で整理し、現在の本店まで一度に直せるかを確認
B:2023年に商号変更。一部の土地だけ旧商号のまま 施行前 2028年3月31日まで なぜ一部だけ漏れたのか(管轄違い、共有持分、私道など)。同種の漏れが他にないか
C:2025年に本店移転。商業登記だけ変更済み 施行前 2028年3月31日まで 変更が施行日前である以上、変更日から2年ではなく経過措置の期限で管理する
D:2026年7月に商号変更 施行後 変更があった日から2年以内 効力発生日を議事録で特定。会社法人等番号が登記済みなら職権登記の対象になり得る
E:施行前の本店移転と施行後の商号変更が両方ある 両方 それぞれ別の期限。早いほうから管理する 一度の申請でまとめて現在の表示に直せるかを含め、申請方針を検討する

※ 表は横にスクロールできます

実務上は、ケースA〜Cのように施行前の未了案件が複数積み上がっている状態が典型です。この場合、すべてが2028年3月31日という同じ日に集中します。期限が同じだからこそ、直前にまとめて処理しようとすると、書類収集と申請が一時期に集中して破綻しやすくなります。

詳しくは 過去の未了案件を実際にどう処理するか(中間の変更をどう扱うか、一括で現在の表示まで直せるか)は、第5話「過去の本店移転・商号変更が未登記ならどうする?|2028年3月31日までの対応」で扱います。なお、合併・会社分割によって不動産を承継した場合は名義人自体が入れ替わるため、住所等変更登記ではなく所有権移転登記の問題になります。この切り分けは第8話をご覧ください。

期限を過ぎるとすぐ5万円の過料になるのか

結論として、期限を過ぎた瞬間に自動的に5万円が科されるわけではありません。もっとも、これは「期限を守らなくてよい」という意味ではありません。申請義務は法令上の義務であり、期限内の履行が求められている点は変わりません。

まず用語として、5万円以下の過料は行政上の秩序罰であり、刑事罰である罰金とは異なります。前科にはなりません。

運用面については、法務省が明確に示しています。登記官が義務違反の事実を把握しても直ちに裁判所への過料通知を行うことはせず、義務に違反した者に対して相当の期間を定めて義務の履行を催告し、それでも正当な理由なくその期間内に申請・申出がされないときに限って通知を行う、というのが現在の運用です。過料を科すかどうか、金額をいくらとするかは、通知を受けた裁判所が判断します。

図2:過料に至るまでの流れ

1

期限を経過し、変更登記が未了の状態

この時点で直ちに裁判所へ通知されるわけではない

2

登記官が義務違反を把握する

登記申請の審査の過程等で把握した情報による。例:表示に関する登記の申請情報に記載された住所等が登記記録と合致していなかったとき

3

登記官が催告する

相当の期間を定めて、申請をすべき旨を催告する

4

催告に応じて申請・申出をした場合

それ以前の正当な理由の有無にかかわらず過料通知は行われない。催告を受けて期間内に会社法人等番号の申出をした場合も同様とされている

5

正当な理由なく期間内に対応しなかった場合

登記官が管轄地方裁判所に過料事件を通知する

6

裁判所が判断する

要件に該当するかを判断し、5万円以下の範囲で過料の裁判が行われる

企業にとって重要なのは、4の存在です。催告を受けた段階で対応すれば過料通知はされない設計になっています。とはいえ、催告が届くのは登記官が義務違反を把握したときであり、その端緒として想定されているのは他の登記申請の審査過程などです。不動産の売却や担保設定を進めている最中に催告が来るという順序になりやすく、取引スケジュールへの影響という形で跳ね返ってきます。過料の額の大小とは別に、期限管理をしておく実務上の意味はここにあります。

「正当な理由」があると認められる場合

法務省は、義務の履行期間内において次のような事情が認められる場合には、一般に「正当な理由」があると認めるとしています。

表3:法務省が示す「正当な理由」の例
示されている事情法人実務での位置づけ
検索用情報の申出または会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合 法人にとって最も重要。会社法人等番号を登記しておけば、職権登記の処理待ちの状態が正当な理由として想定される
行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合 会社側が何もしていなくても表示がずれる類型。全国に物件がある法人では実際に生じ得る
義務を負う者自身に重病等の事情がある場合 通常は個人を想定した事情
義務を負う者がDV被害者等であり、避難を余儀なくされている場合 同上
経済的に困窮しているために登記費用を負担する能力がない場合 同上

※ 表は横にスクロールできます

WARNING

限定列挙ではなく、個別判断です

法務省は、上記に該当しない場合であっても、個別の事案における具体的な事情に応じて「正当な理由」を判断するとしています。逆にいえば、上記に形式的に当てはまるからといって常に認められると決まっているわけでもありません。マスタープランでは、催告手続において「正当な理由」の有無やその内容を申告して明らかにすることを求めるとされています。「正当な理由があるから放置してよい」という前提で期限管理を外すのは適切ではありません。

スマート変更登記を利用している会社はどう考えるか

会社法人等番号が所有権の登記事項として登記されている不動産については、商業・法人登記の変更情報が不動産登記システムに連携され、登記官が職権で変更登記を行う仕組み(スマート変更登記)の対象になります。

期限管理の観点で押さえるべきは次の3点です。

スマート変更登記と期限管理の関係
1

職権で登記されれば、義務を履行したものとして扱われる

法務省のマスタープランは、登記官の職権による住所等変更登記がされれば所有権の登記名義人は義務を履行したものと扱われるとしています(不動産登記法第76条の6)。自ら申請しなければ義務違反、という関係ではありません。

2

職権登記の処理待ちは「正当な理由」の例に挙げられている

会社法人等番号の登記がされているが職権による変更登記の手続がされていない場合は、一般に正当な理由が認められる例として示されています。処理を待っている間に直ちに義務違反となる、という理解は正確ではありません。

3

ただし、期限管理を外してよいわけではない

職権登記の対象は会社法人等番号が登記されている物件に限られ、古くから保有する物件では登記されていないことがあります。また、吸収合併・吸収分割・新設合併・新設分割による変更の登記は対象外とされています。どの物件が対象でどれが対象外かを把握していなければ、そもそも管理になりません。

WARNING

職権登記の完了を待てない取引がある場合

不動産の売却(所有権移転登記)や抵当権の抹消の手続では、現在の住所等と登記簿上の住所等が一致している必要があります。法務省の案内でも、登記簿上の表示がまだ変更されていない段階でこれらの手続をする必要がある場合には、別途自ら住所等の変更登記を申請する必要があるとされています。売却・担保取引の予定がある物件は、職権登記を待たずに自社で申請するという判断を、期限管理表とは別枠で持っておいてください。

詳しくは 会社法人等番号を不動産登記に入れる申出の手続は第6話で、職権登記の仕組み・対象範囲・タイミングは第7話「法人のスマート変更登記とは|本店移転・商号変更を法務局が職権登記する仕組み」で扱います。

法務部が作るべき「期限管理表」

ここまでの内容を、そのまま社内管理に落とせる形にします。ポイントは、不動産の一覧表とは別に、変更イベント単位の期限管理表を持つことです。物件は増減しますが、期限は変更イベントごとに立つためです。

表4:住所等変更登記の期限管理表(項目例)
項目記録する内容備考
不動産の表示所在・地番/家屋番号、不動産番号登記事項証明書の記載どおりに記録する
現在の登記名義登記記録上の名称・住所現在の商号・本店と一致しているかを判定する欄
変更内容本店移転/主たる事務所移転/商号変更/名称変更組織再編による承継は別管理とする
変更があった日YYYY/MM/DD(効力発生日)根拠となる議事録・決定書の所在も記録する
施行前/施行後の区分2026年4月1日より前/以後期限の決まり方が変わる分岐点
法定期限/社内目標日YYYY/MM/DD(2欄)施行前は2028/3/31。施行後は法定期限を個別に算定・確認し、それより前の社内目標日を併記する
変更登記の状況済/未了/申請中完了の確認方法(登記事項証明書等)も決めておく
会社法人等番号の登記登記あり/なし/未確認職権登記の対象かどうかを分ける最初の条件
スマート変更登記の対象対象/対象外/確認中組織再編類型は対象外として区別する
対応方針自社で申請/職権登記の完了を確認/司法書士へ依頼売却・担保予定がある物件は自社申請を優先する
完了確認日YYYY/MM/DD職権登記の場合も、登記記録で反映を確認した日を記録する
証跡の保存先フォルダ・文書番号担当者交代時の引継ぎを前提に、場所を固定する

※ 表は横にスクロールできます

関連 この表の左端に入る「対象不動産の一覧」をどう作るかは、第3話「会社所有の不動産をどう洗い出す?」で扱います。また、この管理表を一度きりの対応で終わらせず、本店移転やM&Aのたびに自動的に起動する社内ルールにする方法は第9話で整理します。

2028年3月31日までに法務部が進めること

2026年8月時点で、施行前の未了案件についての期限まで1年半ほどあります。日程だけを見れば余裕があるように見えますが、複数の不動産を持つ法人では、次の各段階にそれぞれ時間がかかります。

期限までに踏む段階
1

所有不動産の母集団を確定する

固定資産台帳、課税明細、登記情報などを突き合わせる。持分・私道・遊休地の把握に時間がかかりやすい。

2

本店移転・商号変更の履歴を確定する

履歴事項証明書や閉鎖事項証明書で時系列を復元する。古い変更ほど社内に記録が残っていない。

3

各物件の登記記録と現在の商号・本店を突合する

物件数が多い場合、証明書の取得だけでも日数と費用がかかる。

4

未了案件を抽出し、期限を設定する

施行前/施行後で分類し、管理表に落とす。

5

会社法人等番号の登記の有無を確認する

未登記であれば申出を検討する。職権登記の対象に載せられるかどうかが以後の負担を左右する。

6

申請方針を決め、実行する

自社申請か司法書士への依頼か、管轄ごとにどうまとめるかを決める。予算措置が必要な場合はさらに前倒しが要る。

1から3までは、法務部だけで完結しないことが多い工程です。経理・総務・各拠点への照会が入るため、社内調整に想定以上の時間がかかります。逆にいえば、母集団の確定さえ済んでいれば、以後の工程は機械的に進められます。着手の順序として、まず1に取りかかるのが合理的です。

まとめ

POINT

第2話のまとめ

1.施行後の変更は、変更があった日から2年以内。起算点は効力発生日であって、商業登記の完了日でも、気付いた日でもありません。

2.施行前の変更で未了のものは、2028年3月31日まで。何年前の変更であっても、この日までに対応すれば猶予期間内です。「2028年4月1日」ではありません。

3.過料は5万円以下だが、自動的に科されるものではない。登記官の催告を経て、正当な理由なく期間内に対応しない場合に裁判所へ通知され、裁判所が判断します。ただし、期限管理を外してよい理由にはなりません。

4.期限管理には、変更履歴と不動産登記の突合が必要。変更イベント単位で期限を立て、物件ごとの状況と会社法人等番号の有無を並べて管理します。

期限の枠組みが決まったら、次に必要なのは対象となる不動産の母集団を確定することです。どの土地・建物が自社名義なのかが分からなければ、期限管理表の行が埋まりません。次の記事で、その洗い出しの手順を扱います。

よくある質問(FAQ)

Q1法人の住所等変更登記はいつまでですか?

A2026年4月1日以降に名称・住所が変更された場合は、その変更があった日から2年以内です。2026年4月1日より前の変更で登記が未了のものは、2028年3月31日までとされています。

Q2商業登記をした日から2年ですか?

A違います。起算点は「変更があった日」です。本店移転であれば移転の効力が生じた日、商号変更であれば定款変更の効力が生じた日で整理するのが一般的で、商業登記の申請日や完了日ではありません。決議日と効力発生日が異なる設計になっていることもあるため、議事録で確認してください。

Q32026年4月1日より前の本店移転も対象ですか?

A対象です。ただし経過措置により猶予期間が設けられており、2028年3月31日までに変更登記をすれば、過料の適用対象とはならないとされています。「何年も前の変更だからすでに違反状態」ということではありません。

Q42028年3月31日を過ぎるとすぐ過料になりますか?

A直ちに科されるわけではありません。登記官が義務違反を把握した場合、まず相当の期間を定めて催告し、正当な理由なくその期間内に申請・申出がされないときに限って裁判所へ通知する運用とされています。過料を科すかどうかと金額は裁判所が判断します。なお、催告に応じて申請すれば、それ以前の正当な理由の有無にかかわらず通知は行われないとされています。

Q5スマート変更登記の対象なら、自分で申請しなくてよいですか?

A会社法人等番号が所有権の登記事項として登記されている物件については、職権で変更登記がされれば義務を履行したものとして扱われます。処理を待っている状態も、正当な理由が一般に認められる例として示されています。ただし、会社法人等番号が登記されていない物件や、吸収合併・吸収分割・新設合併・新設分割による変更は対象外です。また、職権登記の完了前に売却や抵当権抹消を行う必要がある場合は、自ら変更登記を申請する必要があります。

参考資料・一次資料

不動産登記法(平成16年法律第123号)第76条の5、第76条の6、第164条第2項|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123/
民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)附則第5条第7項
法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00687.html
法務省「住所等変更登記の義務化について」(令和7年10月30日) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」(令和8年6月2日現在) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00694.html
法務省「住所等変更登記の義務化の施行に向けたマスタープラン」(令和7年3月28日) https://www.moj.go.jp/content/001435690.pdf
法務省「住所等変更登記の義務化の関係法令等」(省令・通達の掲載ページ) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00696.html
法務省「スマート変更登記のご利用方法」(令和8年4月30日更新) https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00688.html
法務省「所有権の登記名義人による法人識別事項(会社法人等番号等)の申出について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00610.html

本記事は2026年8月27日時点で公開されている法令および法務省の資料に基づく一般的な情報提供です。個別案件における起算日の判断や期限の計算については、登記事項証明書等で事実関係を確認のうえ、司法書士・弁護士にご相談ください。

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