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「せっかくのブランド商品が、安売り店で値崩れしている。指定の価格で売ってほしい」——メーカーや卸、ブランドオーナーなら、一度は感じたことのある悩みではないでしょうか。

ですが、ここには独禁法上の落とし穴があります。ざっくり言うと、希望小売価格を「参考」として示すことと、販売店にその価格を「守らせる」ことは、まったく別物です。販売価格を拘束し、従わない販売店に不利益を与えると、再販売価格の拘束(再販売価格維持)として独禁法上問題になり得ます。

この記事は、独禁法シリーズ全15回の第8話です。メーカー営業・代理店管理・販売店管理・EC運営・新人法務の方に向けて、「販売店に価格を指示してよいのか」という疑問に、初心者向けに丁寧に答えます。

この記事でわかること
再販売価格維持(再販売価格の拘束)とは何か
なぜ販売店の価格を拘束すると問題になるのか
「希望小売価格を示すこと」と「守らせること」の違い
最低価格・値引き禁止・ポイント禁止・セール禁止の注意点
指定価格を守らない販売店への出荷停止・取引停止のリスク
契約書・マニュアル・EC運用ルールに書くと危ない文言
ブランド価値を守るための価格以外の代替策
書籍・音楽CD等の著作物再販という例外
📚 このシリーズについて(全15回)

本シリーズは、独占禁止法・独禁法の基礎を「営業・購買・事業企画・新人法務」の方が最後まで読めるように、15回に分けて整理するものです。第8話は、メーカー等が販売店の価格を縛る「再販売価格維持」を扱います。

記事末尾に全15回の一覧表を載せています。気になる回から読み進めても構いません。

取引先との「縦の関係」の続きです。あわせて読むと理解が深まります 👉 第6話:優越的地位の濫用とは何か第7話:値下げ要請・協賛金・返品要請はどこから危ないか
実務メモ
この記事の内容を、毎回ゼロから考えないために。
法務実務で効くのは、知識そのものよりも"再現できる型"です。記事で読んだ確認観点・依頼文・回答メモ・マスキングを次の案件でそのまま引き出せる形に残しておくと、判断と説明の質が一段安定します。
確認観点をチェックリスト化する
確認依頼文・回答文を文例に残す
相談回答・法改正対応を記録に残す
AIに入れる前の情報整理を安全に
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再販売価格維持とは何か

再販売価格維持とは、メーカーや卸売業者などが、その商品を仕入れて売る販売店・小売業者の「再販売価格」(販売店がさらに消費者などに売るときの価格)を拘束する行為です。独占禁止法上は「再販売価格の拘束」と呼ばれ、不公正な取引方法の一つとして問題になり得ます。

公正取引委員会は、再販売価格の拘束について、メーカーが指定した価格で販売しない小売業者等に対して、卸価格を高くしたり出荷を停止したりして、指定した価格を守らせることだと説明しています。つまり、単に価格を「示す」だけでなく、従わない販売店に不利益を与えてでも守らせる点がポイントです。まずは関連する言葉を整理しましょう。

用語意味問題になりやすさ誤解しやすい点
再販売価格維持販売店の販売価格を維持させる行為高い「お願い」でも拘束なら問題
再販売価格の拘束独禁法上の呼び方。販売価格を拘束する行為高い同じことを指す
希望小売価格メーカーが参考として示す価格参考なら低い守らせると拘束になる
推奨価格推奨として示す価格参考なら低い強制すれば拘束
参考価格参考として示す価格参考なら低い名称より実態で判断
最低販売価格これ以上下げてはいけない価格高い値引きを縛る拘束になりやすい
値引き禁止値引きを禁じる指示高い実質的な価格拘束
価格監視販売店の価格を監視する手段次第拘束の実効化手段になり得る
出荷停止指定価格を守らせるための出荷停止高い拘束の実効化として問題
取引停止指定価格を守らせるための取引停止高い拘束の実効化として問題

※表は横スクロールできます(スマホの場合)。

このセクションの要点:再販売価格維持=販売店の販売価格を拘束する行為。「示す」だけでなく「守らせる」点が問題。

なぜ販売店の価格を拘束すると問題になるのか

販売店は本来、自社の経営判断で販売価格を自由に決められる存在です。仕入れた商品をいくらで売るかは、その販売店の競争の手段そのものです。メーカーがこの価格を縛ってしまうと、販売店どうしの価格競争が弱まり、なくなってしまうおそれがあります。

公正取引委員会の説明をかみくだくと、メーカーが安売り店への出荷をやめさせるなどして価格を守らせると、その商品はどの販売店でもメーカーの指定価格で売られることになります。すると消費者は、価格で販売店を選べなくなり、本来なら安く買えたはずの商品を高く買わざるを得なくなります。こうして消費者のメリットが奪われるため、再販売価格の拘束は不公正な取引方法の一つとして問題になりやすいのです。

初心者向けのコツ

「この指示で、販売店が自由に値段を決められなくなっていないか?」「販売店どうしの価格競争を消していないか?」と考えると、なぜ価格拘束が問題なのかがイメージしやすくなります。

このセクションの要点:販売価格は販売店が自由に決めるもの。拘束すると価格競争が失われ、消費者のメリットが奪われる。

希望小売価格と価格拘束の違い

ここが実務で最も重要なポイントです。希望小売価格・参考価格・推奨価格を「単なる参考」として示すこと自体は、直ちに問題になるわけではありません。問題になるのは、それを販売店に守らせ、販売店の自由な価格決定を妨げる場合です。名称を「推奨価格」に変えても、実態として守らせていれば拘束と評価され得ます。名称ではなく実態で判断されると理解してください。

行為実務上の位置づけ独禁法上のリスク安全寄りにする工夫
希望小売価格を参考情報として示す参考の提示低い「参考」「自主決定」を明記
推奨価格を示す推奨の提示低い強制と受け取られない表現に
販売店が自由に価格を決められる本来の姿低い自由決定を妨げない
指定価格で売るよう求める価格の指定高い指定でなく参考にとどめる
値引きを禁止する値引きの制限高い値引き可否は販売店判断に
最低販売価格を設定する下限価格の設定高い下限の設定を避ける
指定価格を守らない販売店に警告する遵守の要請・警告高い価格遵守を求めない
守らない販売店への出荷を止める不利益取扱い高い価格を理由に出荷を止めない
リベート・仕入条件で差をつける不利益取扱い高い価格遵守を条件にしない

※表は横スクロールできます。

危ない指示・安全寄りの表現の例

表現評価理由・修正の方向性
「必ず定価で販売してください」危険価格を強制=拘束。参考提示にとどめる
「値引きは禁止です」危険値引き制限=実質的拘束
「最低販売価格を下回らないでください」危険下限価格の拘束
「セール販売は禁止です」危険価格設定の制限になり得る
「ポイント還元は禁止です」注意実質的な値引き制限になり得る
「指定価格を守らない場合は出荷停止します」危険拘束の実効化手段
「希望小売価格は参考情報です」比較的安全参考であることを明確化
「販売価格は各販売店が自主的に決定してください」比較的安全自由決定を明記
「ブランドイメージを損なわない表示をお願いします」表示の範囲なら可価格でなく表示の管理に
「商品説明・品質表示を正確にしてください」比較的安全品質・表示の管理は別問題

※表は横スクロールできます。表現は一般的な目安で、実際の評価は取引の実態によります。

このセクションの要点:参考価格を示すのは可。守らせれば拘束。名称ではなく「販売店の自由な価格決定を妨げているか」で判断される。

最低販売価格・値引き禁止・割引禁止で注意すべきこと

「定価で売れ」と直接言わなくても、最低販売価格の設定、値引き禁止、割引禁止、ポイント還元禁止、セール禁止などは、実質的に販売店の価格を縛ることになりやすく、注意が必要です。これらは「価格そのものの指定」ではないように見えても、販売店が自由に値段を下げられない状態を作り出すため、再販売価格の拘束と評価され得ます。

特にポイント還元やクーポンは、消費者から見れば実質的な値引きです。これらを一律に禁止すると、実質的な値引き制限として価格拘束につながり得ます。「直接の価格指定ではないから安全」と安易に考えないことが大切です。

このセクションの要点:最低価格・値引き禁止・ポイント禁止・セール禁止も、実質的な価格拘束になり得るため注意。

指定価格を守らない販売店への不利益取扱いが危ない理由

再販売価格の拘束が成立しやすくなるのは、指定価格を守らない販売店に「不利益」を与えて、価格を守らせるときです。公正取引委員会の説明でも、安売りをする販売店への卸価格引上げや出荷停止といった行為が、価格を守らせる手段として挙げられています。こうした不利益取扱いは、価格拘束を実効化する手段として問題になり得ます。

不利益取扱い何が問題になり得るか価格拘束との関係確認すべきこと
出荷停止取引を断つことで価格を守らせる拘束の典型的な実効化手段価格を理由にしていないか
取引停止取引終了で価格を守らせる拘束の実効化手段停止の真の理由は何か
卸価格の引上げ仕入条件を悪化させ守らせる拘束の実効化手段価格遵守と連動していないか
リベート停止リベート差で守らせる拘束の実効化手段価格を条件にしていないか
キャンペーン対象外優遇から外して守らせる拘束の実効化手段除外理由が価格でないか
人気商品の供給制限供給差で守らせる拘束の実効化手段供給制限の理由は何か
販促支援の打切り支援差で守らせる拘束の実効化手段打切りの理由は何か
契約更新拒絶更新拒絶で守らせる拘束の実効化手段拒絶の真の理由は何か
取引条件悪化条件差で守らせる拘束の実効化手段価格遵守と連動していないか
警告メール送付圧力で守らせる拘束につながり得る価格遵守を求めていないか

※表は横スクロールできます。なお、取引先の選択は本来自由ですが、「価格を守らせる手段」として行うと問題になります。取引拒絶一般は第11話で扱います。

このセクションの要点:価格を守らせる手段としての出荷停止・取引停止・条件悪化等は、拘束の実効化として問題になり得る。

代理店契約・販売店契約に書くと危ない文言

口頭やメールだけでなく、契約書・販売店向けマニュアル・ブランドガイドライン・EC運用ルールの文言にも注意が必要です。価格を拘束する条項は、契約に書いてあっても、また販売店が同意していても、再販売価格の拘束として問題が残り得ます。代表的な要注意条項を整理します。

条項例危険になりやすい点修正・確認の方向性法務確認
販売価格遵守条項指定価格の遵守を義務づける参考価格の提示にとどめる要確認
最低販売価格条項下限価格を拘束下限設定を削除要確認
値引き禁止条項値引きを制限値引き可否は販売店判断に要確認
セール禁止条項価格設定を制限価格制限を避ける要確認
価格変更承認条項価格変更に承認を要する価格決定の自由を残す要確認
価格違反時の出荷停止条項拘束の実効化を明文化価格を理由とする制裁を削除要確認
販売方法管理条項過度だと価格に波及し得る必要最小限・価格と切り離す要確認
ブランドガイドライン遵守条項価格遵守を含むと危険表示・品質の範囲に限定要確認
品質管理条項価格管理に転用すると危険品質の範囲にとどめる要確認
表示・広告確認条項価格表示の強制に注意表示の正確性の範囲で要確認

※表は横スクロールできます。代理店・販売店契約全体の論点は 第13話 で扱います。

このセクションの要点:契約・マニュアル・ガイドラインの文言も対象。価格を拘束する条項は同意があっても問題が残り得る。

EC販売・ネットショップ・ポイント還元で起きやすい問題

ネット販売では価格が一覧で比較されやすいため、「ECだけは価格を統一したい」というニーズが生まれがちです。しかし、ECでも販売店の価格を拘束すれば再販売価格の拘束になり得ます。「リアル店舗はよくてECはダメ」という線引きはありません。価格そのものではなく、価格以外の要素(表示・品質・ブランド表現)で管理できないかを考えるのがポイントです。

場面価格拘束になり得る場面価格以外で管理できること実務上の注意
ECモールでの値引き販売値引きを禁止・制限する商品説明・画像の品質価格は販売店判断に
ポイント還元還元率を一律に禁止・制限実質的値引き制限に注意
クーポン配布クーポンを一律に禁止実質的値引き制限に注意
タイムセールセールを禁止する価格設定の自由を残す
送料無料設定実質値引きとして禁止実質的値引き制限に注意
セット販売実質値引きとして禁止セット内容の表示ルール価格制限と切り離す
並行販売価格目的の制限正規品の表示・真贋管理目的を明確に
レビュー施策表示の適正さ景表法等も別途確認
ブランド公式画像の利用画像・商標の使用ルール知財の範囲で管理
価格比較サイトへの掲載掲載価格の制限掲載情報の正確性価格制限を避ける
無断出品対策価格目的の制限に転用正規流通・真贋の管理真の目的を明確に

※表は横スクロールできます。表示や景品表示法など、別の法令の確認が必要な場合もあります。

このセクションの要点:ECでも価格拘束は問題。ポイント・クーポン・送料無料の一律制限は実質的値引き制限になり得る。

ブランド価値・品質維持のためなら価格を縛れるのか

「安売りでブランドが傷つくのを防ぎたい」という思いは自然なものです。しかし、目的がブランド保護や品質維持であっても、価格そのものを拘束する方法は慎重に考えるべきです。目的が正当でも、手段として価格を縛れば再販売価格の拘束の問題は残り得ます。

そこで考えたいのが、価格ではなく、価格以外の要素を管理するという発想です。商品説明の正確性、品質表示、商標・ロゴの使用ルール、広告表現、保管・販売方法、アフターサービス体制、正規販売店の表示などは、ブランド価値を守るうえで有効で、価格拘束とは別の管理策になり得ます。

代替策目的価格拘束との違い注意点
商品説明の正確性を求める誤認防止価格に関与しない表示の範囲で
品質表示ルールを定める品質の担保価格に関与しない必要最小限に
商標・ロゴの使用ルールブランド表示の保護知財の管理知財の範囲で
広告表現のルール表現の適正化価格に関与しない過度に広げない
販売方法・保管方法を定める品質・安全の確保価格に関与しない価格に波及させない
アフターサービス体制を求める顧客満足の確保価格に関与しない合理的な範囲で
正規販売店表示ルール正規流通の明確化表示の管理差別の手段にしない
顧客対応基準を定めるサービス品質の確保価格に関与しない合理的な範囲で
表示・品質・サービスを管理総合的なブランド管理価格を縛らない価格拘束に転用しない

※表は横スクロールできます。価格以外の管理も、内容・態様によっては別の独禁法上の論点が生じ得るため、必要に応じて法務に相談してください。

このセクションの要点:ブランド保護目的でも価格拘束は慎重に。表示・品質・商標・サービスなど価格以外の管理が代替策になり得る。

著作物再販制度という例外

再販売価格の拘束には、例外的に認められている分野があります。それが「著作物再販制度」です。公正取引委員会も、書籍・雑誌・新聞・音楽CDなどの著作物については、再販売価格の拘束の例外として扱われると説明しています。書店で本が定価で売られているのは、この制度によるものです。

ただし、この例外を一般商品にそのまま当てはめてはいけません。例外の対象は限られており、一般の商品・デジタルコンテンツ・ソフトウェア・キャラクターグッズなどには適用されないと考えるのが基本です。「著作物に再販があるのだから、うちの商品も定価販売できる」という発想は誤りです。

対象例外の対象になり得るか誤解しやすい点
書籍著作物再販の対象になり得るすべての販売形態で当然とは限らない
雑誌著作物再販の対象になり得る同上
新聞著作物再販の対象になり得る同上
音楽用CD著作物再販の対象になり得る同上
音楽テープ著作物再販の対象になり得る媒体により扱いを確認
レコード盤著作物再販の対象になり得る媒体により扱いを確認
一般商品対象外定価販売を当然に強制できない
デジタルコンテンツ対象外と考えるのが基本媒体物との違いに注意
ソフトウェア対象外と考えるのが基本著作物だが再販対象とは別問題
キャラクターグッズ対象外著作権があっても再販対象ではない

※表は横スクロールできます。著作物再販制度の対象範囲や運用は、公正取引委員会の公式情報で必ず確認してください。

注意

「著作権がある=著作物再販の対象」ではありません。ソフトウェアやキャラクターグッズは著作権が関係しても、再販売価格の拘束の例外として定価販売を強制できるわけではないと考えるのが基本です。判断に迷う場合は公的情報を確認し、法務に相談してください。

このセクションの要点:書籍・雑誌・新聞・音楽CD等は著作物再販の例外。一般商品・ソフト・グッズには当てはめられない。

実務で最初に確認すべきポイント

販売店の価格を管理したいと感じたら、次の流れで確認しましょう。

図解:価格管理を考えるときの確認の流れ

1価格を管理したい安売り対策・ブランド保護など
2価格を拘束していないか販売店の自由な価格決定を妨げないか
3参考にとどまるか希望価格が「参考」の範囲か
4不利益取扱いがないか価格を理由に出荷停止等をしないか
5価格以外の管理+法務相談表示・品質で管理、迷えば法務へ

初期チェックリスト

チェック項目確認の視点
販売店の販売価格を指定していないか価格を強制していないか
値引き・割引・ポイント還元を禁止していないか実質的な価格制限でないか
最低販売価格を設定していないか下限価格の拘束でないか
守らない販売店に不利益を与えていないか拘束の実効化手段でないか
希望小売価格が参考情報にとどまっているか「参考」の範囲か
販売店が自由に価格を決められると明記しているか自主決定を明確にしているか
契約書・メール・マニュアルに危険な文言がないか価格拘束の文言が紛れていないか
ブランド管理を価格拘束で実現しようとしていないか目的と手段がずれていないか
価格以外の品質・表示・サービス管理で対応できないか代替策を検討したか
法務・コンプライアンスに相談すべきか迷ったら早めに相談する姿勢があるか

※表は横スクロールできます。チェックリストの総まとめは 第15話 で扱います。

法務・コンプライアンス部門としては、販売店契約・代理店契約・価格通知文・販売店向け資料・EC運用ルールを定期的に確認し、価格拘束につながる文言がないかをチェックしておくと安心です。実務では、公正取引委員会の公式情報や流通・取引慣行ガイドライン、契約書、販売実態、社内運用、法務部門の確認を踏まえて対応してください。最新情報は公正取引委員会等の公式情報を確認することをおすすめします。

このセクションの要点:「価格を拘束していないか→参考にとどまるか→不利益取扱いがないか→価格以外で管理→法務相談」の流れで確認。

よくある質問(FAQ)

Q1. 再販売価格維持とは何ですか?

メーカーや卸売業者などが、その商品を仕入れて売る販売店・小売業者の販売価格(再販売価格)を拘束する行為です。独占禁止法上は「再販売価格の拘束」と呼ばれ、不公正な取引方法の一つとして問題になり得ます。販売価格を指定し、従わない販売店に不利益を与えて守らせる点が特徴です。

Q2. 再販売価格維持と再販売価格の拘束は同じ意味ですか?

実務上はほぼ同じことを指します。「再販売価格維持」は販売店の価格を維持させる行為の通称で、独占禁止法上は「再販売価格の拘束」として整理されています。どちらも、販売店の自由な価格決定を妨げる点で問題になり得ます。

Q3. メーカーが販売店に希望小売価格を伝えることは問題になりますか?

希望小売価格・参考価格・推奨価格を「単なる参考」として示すこと自体は、直ちに問題になるわけではありません。問題になるのは、それを販売店に守らせ、販売店の自由な価格決定を妨げる場合です。「参考であり、販売価格は各販売店が自主的に決定する」ことを明確にしておくと安全側に倒せます。

Q4. 販売店に「この価格で売ってください」とお願いするだけなら問題ありませんか?

「お願い」でも、実態として販売店に価格を守らせ、自由な価格決定を妨げていれば、再販売価格の拘束として問題になり得ます。要請の形式(依頼か指示か)ではなく、販売店が実際に自由に価格を決められる状態にあるかどうかが重要です。繰り返しの要請や、守らない場合の不利益とセットになっていると、拘束と評価されやすくなります。

Q5. 最低販売価格や値引き禁止を定めることはできますか?

最低販売価格の設定や値引き禁止は、実質的に販売店の価格を縛ることになりやすく、再販売価格の拘束として問題になり得ます。「定価で売れ」と直接言わなくても、下限価格の設定や値引き・割引・ポイント還元・セールの一律禁止は、実質的な価格拘束と評価され得る点に注意してください。

Q6. 指定価格を守らない販売店への出荷停止は問題になりますか?

価格を守らせる手段として出荷停止や取引停止、卸価格の引上げ、リベート停止などを行うと、再販売価格の拘束を実効化する行為として問題になり得ます。公正取引委員会も、安売り店への卸価格引上げや出荷停止を、価格を守らせる手段の例として挙げています。取引先の選択は本来自由ですが、「価格遵守を理由とする不利益」は危険です。

Q7. ブランド価値を守るためなら販売価格を統一してもよいですか?

目的がブランド保護や品質維持であっても、価格そのものを拘束する方法は慎重に考えるべきです。目的が正当でも、手段として価格を縛れば再販売価格の拘束の問題は残り得ます。ブランド価値の維持は、商品説明・品質表示・商標やロゴの使用ルール・広告表現・販売方法・アフターサービスなど、価格以外の管理で実現できないかを検討するのが安全です。

Q8. EC販売やポイント還元を制限する場合、何に注意すべきですか?

ECでも、販売店の価格を拘束すれば再販売価格の拘束になり得ます。「リアル店舗はよくてECはダメ」という線引きはありません。特にポイント還元・クーポン・送料無料・タイムセールは消費者から見れば実質的な値引きであり、これらを一律に禁止すると実質的な価格制限になり得ます。価格以外(表示・品質・ブランド表現)で管理できないかを考えましょう。

Q9. 書籍や音楽CDの定価販売はなぜ認められているのですか?

書籍・雑誌・新聞・音楽CDなどの著作物については、再販売価格の拘束の例外として扱われる「著作物再販制度」があるためです。ただし、この例外の対象は限られており、一般商品・ソフトウェア・キャラクターグッズなどには当てはめられないと考えるのが基本です。「著作権があるから定価販売できる」という発想は誤りなので注意してください。

Q10. 販売店契約を作るとき、価格条項で何を確認すべきですか?

販売価格の遵守を義務づける条項、最低販売価格条項、値引き・セール禁止条項、価格変更の承認条項、価格違反時の出荷停止条項などは、再販売価格の拘束につながり得るため要注意です。希望小売価格は「参考」であり、販売価格は販売店が自主的に決定することを明確にしましょう。ブランドガイドラインや品質管理条項に価格遵守が紛れ込んでいないかも確認し、迷う場合は法務に相談してください。

初心者がしがちな誤解と正しい考え方

ありがちな誤解正しい考え方
希望小売価格なら必ず安全守らせれば名称に関わらず拘束になり得る
販売店にお願いするだけなら問題ない実態として守らせていれば問題になり得る
値引き禁止はブランド保護だから問題ない目的が正当でも価格拘束は問題が残り得る
安売り販売店だけ出荷停止してもよい価格遵守を理由とする不利益は問題になり得る
最低価格ではなく推奨価格と書けば安全名称ではなく実態で判断される
ECだけ価格を統一してよいECでも価格拘束は問題になり得る
代理店契約に書けば価格拘束できる契約にあっても拘束なら問題が残り得る
販売店が同意すれば問題ない同意があっても価格拘束は問題が残り得る
著作物再販があるから一般商品でも定価販売できる例外は限定的で一般商品には当てはまらない
価格以外の販売方法管理もすべて禁止される表示・品質等の管理は別問題(態様には注意)

※表は横スクロールできます。

まとめ

再販売価格維持(再販売価格の拘束)とは、メーカー等が販売店の販売価格を拘束する行為で、不公正な取引方法として問題になり得る
販売価格は販売店が自由に決めるもの。拘束すると価格競争が失われ、消費者のメリットが奪われる
希望小売価格を「参考」として示すのは可。守らせれば拘束になる(名称でなく実態で判断)
最低価格・値引き禁止・ポイント禁止・セール禁止も実質的な価格拘束になり得る
価格を守らせる手段としての出荷停止・取引停止・条件悪化は拘束の実効化として問題
契約・マニュアル・EC運用ルールの文言にも注意。同意があっても問題が残り得る
ブランド保護は、価格でなく表示・品質・商標・サービスの管理で実現を検討する
書籍・雑誌・新聞・音楽CD等は著作物再販の例外。一般商品には当てはめない
この記事の位置づけ

本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談ではありません。再販売価格の拘束に当たるかどうかは、取引の実態・拘束の有無・市場の状況などの個別事情によって変わります。実際の判断にあたっては、公正取引委員会の公式情報や流通・取引慣行ガイドライン、社内のコンプライアンス規程、契約書、販売実態を踏まえ、必要に応じて法務部門や専門家にご相談ください。最新の制度内容や個別事案の判断については、必ず公正取引委員会等の公式情報をご確認ください。

▶ 次回:第9話「抱き合わせ販売とは何か」

第9話では、ある商品を買うときに別の商品も一緒に買わせる「抱き合わせ販売」を取り上げます。正当なセット販売・バンドル販売との違いを、初心者向けに整理します。

第9話:抱き合わせ販売とは何かを読む →

参照した公的情報

本記事では、独占禁止法・再販売価格維持・再販売価格の拘束に関する基礎情報として、主に以下の公的情報を参照しています。最新の制度内容や個別事案の判断については、必ず公正取引委員会等の公式情報をご確認ください。

あわせて活用したい情報・ツール

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本シリーズで続けて読むと理解が深まる回として、第1話:独占禁止法とは何か第9話:抱き合わせ販売とは何か第10話:排他条件付き取引とは何か第13話:代理店・販売店契約で独禁法が問題になる場面第15話:独占禁止法チェックリスト もおすすめです。

シリーズ全15回の一覧

タイトルこの回で学ぶこと
第1話独占禁止法とは何か独禁法の全体像と4つの方向
第2話カルテルとは何か価格・数量・取引先を話し合う危険
第3話談合とは何か入札・見積合わせ・受注調整のNG
第4話競合他社との情報交換どこまで許されるかの線引き
第5話業界団体・懇親会・展示会の注意NG会話の具体例
第6話優越的地位の濫用とは何か強い立場の会社が注意すべき取引
第7話値下げ・協賛金・返品要請購買担当者の独禁法基礎
第8話再販売価格維持とは何か(本記事)販売店への価格指示の論点
第9話抱き合わせ販売とは何かセット販売との違い
第10話排他条件付き取引とは何か専属契約・競合排除の注意
第11話取引拒絶・取引停止取引先を切る前の確認事項
第12話不当廉売とは何か安売りが問題になる場合
第13話代理店・販売店契約価格・地域・顧客制限の注意
第14話独占禁止法と取適法の違い下請法から変わった取引適正化ルール
第15話独占禁止法チェックリスト営業・購買・企画が見る15項目

※表は横スクロールできます。各話は公開され次第リンクが有効になります。

※本記事は2026年時点の一般的な情報をもとに、公正取引委員会の公的情報を参考に整理したものです。法令・ガイドライン・制度内容は改正されることがあります。最新の内容や個別事案の判断は、公正取引委員会の公式情報等で必ずご確認ください。

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読み終えた内容を、次の案件でそのまま使える形に。
法務記事で理解した内容は、チェックリスト・文例・記録・検索・ツール化まで落とし込まないと、次の案件で再利用しにくいまま終わってしまいます。下の道具は、今日の業務にすぐ差し込める順に並べています。
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